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(株)カイオム・バイオサイエンス【4583】の掲示板 〜2015/04/28

 スイスの製薬大手ロシュは、中外製薬に100億ドル(約1兆0260億円)を追加出資して完全子会社化する方向で交渉していると報じられた。ロシュはすでに中外製薬の株式60%を保有している。中外製薬は報道を否定したものの、株価は15%急騰した。
 ロシュにとっては容易に出資可能な額で、単なるグループ組織改編の一環に過ぎないかもしれない。だが今回の報道は、中外製薬以外に魅力的な投資先が少ないことを表している可能性もある。
 ロシュは2002年に中外製薬の50%を取得して提携関係を結び、08年に出資比率を引き上げた。ロシュの主力の抗がん薬を販売していることもあり、中外製薬の株価はきょうの上げを除いてもこの1年で60%上昇しているため、なぜこの時期に完全子会社化を目指すかは定かでない。
 一方、ロシュもすでに中外製薬の医薬品へのアクセスを事実上掌握している状態だ。臨床試験の初期段階にある血友病治療薬「ACE910」が注目を集める中、ロシュは中外製薬の価値を現在の時価総額よりも高く見積もっているのかもしれない。また、日本の法人税率がスイスよりも高いことなど、経費削減余地を見込んでいる可能性がある。
 中外製薬が保有する自社株を調整すると、ロシュは前週末終値に対して40%を超えるプレミアムを上乗せした水準を支払うことになる。ただ、中外株を現金で買い増せばロシュの1株利益は増加する可能性もあるほか、バークレイズによると、ロシュは少数株主への税引き後支払いを年間2億フランほど抑えることができる。
 懸念されるのは、ロシュの潤沢なキャッシュフローが一気に減少することだ。同社は09年のジェネンテック買収に絡む債務をほぼ完済しており、来年には正味キャッシュポジションがプラスに転じる見通し。約70億ドルの配当を支払う前のフリーキャッシュフローは年間140億ドルに上り、同族経営のために自社株買いも行わない。特別配当を実施する可能性もある。だが医薬品メーカーは原則として、将来の成長につながる科学や医薬品の買収に資金を費やしたいと考えるはずだ。
 ただ、バイオ医薬品企業の現在の株価水準をみれば、それが難しいことは明らかだ。ロシュは価値の低い企業に対して過度な買収金を支払うリスクを負うよりは、中外製薬を完全子会社化する方が得策だと判断したのかもしれない。