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今どき持ち合い、住友不動産の我が道

住友不動産は2019年3月期に約290億円を投じて政策保有株式を49銘柄も増やした。このほとんどは株式を相互保有する、いわゆる「持ち合い」とみられ、同社の株主となっている上場企業は200社を超えたようだ。18年改訂のコーポレート・ガバナンスコード(企業統治指針)に逆行するような新たな持ち合い構造の構築は、連続最高益の業績があってこそだが、投資家は冷めた目でみている。

「住友不動産と株式を持ち合いませんか」。ある上場企業の幹部は昨年、メーンバンクからこう打診されたが、断ったという。経営に一般株主の意向が反映されにくくなる政策保有株式は、企業統治指針で「縮減に関する方針・考え方」を開示すべきとされており、必要性や合理性が厳しく問われるからだ。

それでも、富士フイルムホールディングスなど「取引関係の維持強化」といった理由で新たに持ち合いに応じた企業は少なくなかった。住友不動産は「一概に好ましくないと断じるべきではない。安定的に継続して事業を進めるために、当社にとって持ち合いは有益と判断している」(副島伸一広報部長)と説明する。

前期中に持ち合い先を大きく増やしたのは、「6月の株主総会で買収防衛策を更新するためだったのではないか」(国内運用会社)との声がある。実際、買収防衛策は賛成55%という薄氷の可決だった。3月末の権利落ち後に株価が17営業日連続で下げたことも、市場では「総会に向けた持ち合いの買いで上昇した反動」との見方がもっぱらだった。前期末の事業法人の持ち株比率は34%と、5年前に比べて9ポイント上昇している。

住友不動産が市場改革の流れに逆行して我が道を行けるのは、しっかりと稼いでいるからだ。三井不動産や三菱地所の成長が鈍化する中で、住友不動産の2020年3月期の連結純利益は前期比7%増の1400億円と、7期連続で過去最高を更新する見通しだ。アナリストからは「優良資産が多く、好業績は続きそうだ」(野村証券の福島大輔氏)との声が聞かれる。

  • >>523

    しかし、投資家の評価はいまひとつだ。4月以降の株価は12%安と、三菱地所(横ばい)や三井不動産(10%安)に見劣りする。SMBC日興証券の田沢淳一氏は「不動産株を見るポイントが、保有資産の含み益からガバナンス意識、株主還元の充実などに移ってきている」と指摘する。三菱地所は初めて、三井不動産は2年連続の自社株買いに踏み切ったほか、三菱地所は買収防衛策を更新しなかった。このため、住友不動産への投資は見送られやすい。

    不動産株は開発中の土地の含み益などを考慮した保有資産に対して足元の利益水準が低く、買収のターゲットになりやすい面がある。このため、資産売却で短期的な利益を狙う買収者に対する防衛策には一定の合理性があるが、市場は経営の規律が緩むことを懸念している。住友不動産が我が道を行きながら投資家の支持を得るには、業績面でさらにポジティブな材料が必要になりそうだ。

  • >>523

    住友不動産、インドにオフィスビル 700億円投資

    住友不動産は17日、インド西部のムンバイで賃貸オフィスビルを開発すると発表した。土地の取得と建設費を合わせた総事業費は700億円程度で、2023年3月期以降の開業を見込む。同社が海外でオフィスビル事業を展開するのは約20年ぶり。ムンバイはオフィスビルの新規供給が少なく、需給が逼迫しているという。旺盛な企業のオフィス需要を取り込む。

    マハラシュトラ州ムンバイ市内で開発が進む新都心BKC地区の土地を取得することが17日決定した。新設の現地法人を通じて、年内に州政府傘下のムンバイ大都市圏開発庁から358億円で開発用地を取得する。敷地面積は1万2486平方メートルで、地区最大級のオフィスビル用地となる。建物規模は延べ床面積約9万9000平方メートルを想定し、長期保有する。

    ムンバイは商業都市だけでなく金融の中心地であり、銀行や商社も多く集積するインド経済中枢の都市だ。その中でも、BKC地区は空港に最も近いビジネス街として急速に整備が進められている。ビルの開発予定地は地区の中心に位置し、インド高速鉄道の新駅予定地から徒歩約8分、開発中のメトロ新駅からも徒歩7分というオフィスビルに適した立地だ。

    近年、ムンバイ中心部では、国内大手企業の成長や日本を含む外資の進出によって、オフィス需給が逼迫している。BKC地区では16年6月竣工以降、オフィスビルの供給がなく、州政府も将来のオフィス不足を懸念しているという。今後も、住友不動産はインドでの賃貸事業の展開を検討していく考えだ。

    同社はかつて香港やタイでオフィスビルを開発・保有し、賃貸事業を手掛けていたが、2000年前後までに撤退していた。