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呼吸困難

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  • 2021/04/13 01:46
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掲示板のコメントはすべて投稿者の個人的な判断を表すものであり、
当社が投資の勧誘を目的としているものではありません。

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    hardWorker 4月13日 01:46

    リスク回避の尺度であり、米株投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE) ボラティリティー(VIX)指数は、14カ月ぶりの低水準に低下してきた(リスク選好)。

    短期的には過熱感があり、14日前後から本格化する米企業の決算発表などを受けた反動調整が警戒される。決算発表は一旦の好材料出尽くしや事前期待比での失望が警戒されるほか、金利上昇・ドル高・コスト高の遅行打撃も注視される。米株はワクチン普及による株式投資からの消費シフトや、反対の変異種拡大なども懸念材料になる。

    米国株は昨年11月以降、1−3月期決算を含めた企業収益のV字回復を織り込む形で大幅高となっている。その意味で4月後半にかけて続く決算発表のシーズンでは、良好でも一旦の好材料出尽くしや最良期の先行きピークアウト懸念、悪ければ過剰期待の反動失望などにより、短期的な米株安が警戒される。

    しかも米国株市場では、リスク回避の尺度であり、米株投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE) ボラティリティー(VIX)指数が、4月9日の終値で16.69となった。直近の日中最高である3月4日の31.90から大きく低下し、昨年2月以来、約14カ月ぶりの低水準となっている(リスク選好)。過去実績として「1年スパンのレンジ下限下抜け」となるようなVIX急低下は、その後に揺り戻し的なVIX上昇と短期株安が警戒されやすい。

    短中期のトレンド判断で参考になる週足テクニカルでも、VIXは低下の行き過ぎ過熱シグナルが点滅してきた。8日の終値が16.95に対し、1年スパンのトレンド・ラインを示す52週移動平均線は25.90となっている。52週移動平均線からの乖離率(終値÷52週平均)は−34.6%という大幅な下方乖離となり、実に2016年8月以来、約4年半ぶりの低下過熱が示唆されている。

    2016年8月の場合、VIX指数は同月の最低11.02から、9月に20.51、11月に23.01という反動調整的なVIX上昇が見られていた(リスク回避、米国株は反落)。最近では同乖離率が昨年12月4日週に、−26.1%への下振れ過熱となっている(リスク選好の行き過ぎ過熱)。
    当時はその後、12月18日から21日にかけて、VIXは一時的ながらも21.57から31.46へと急上昇する短期波乱に直面していた。
    米国株の先行上昇と当座の収益改善の織り込み度合いでいえば、米株S&P500は8日時点で四半期別の前年同期比が+26.8%の上昇率となってきた(期中の高値比較)。最近では2010年4−6月の+27.6%以来の大幅株高となっている。同期の米経済分析局による米企業収益(在庫調整・資本消費調整後)は、前年比+27.8%となっていた。レアケースながらも、増益率と同水準の株価上昇率となっている。


    これから発表が相次ぐ米国企業の決算発表については、ブルームバーグ・インテリジェンスがまとめたアナリスト予想で、「S&P500種構成企業の通年の1株利益は前年比+25%増の172.90ドルと過去最高が見込まれている。2桁増益は少なくとも23年まで続く見通し」(4月2日時点)とされる。しかも年初以降、「アナリストらは今年1−3月(第1四半期)の企業の利益予想を引き上げており、その上方修正ペースは少なくとも2004年以降で最速」となっていた。こうした上方修正の織り込みが、足元4月8日までに至る株高加速の一因となっている。

    一方でS&P500は8日時点で、四半期別の前年同期比が+26.8%の上昇率となってきた。単純に現時点での通年「前年比+25%増益」という予想は織り込みが進捗しつつある。その意味でも14日前後からの決算発表では、一旦の好業績消化と米国株の調整下落、あるいは日柄調整による高値横這い移行が注視されやすい。米国株の季節アノマリーとしても、4−5月は調整下落となるパターンが目立っている。

    今年の米企業収益については、1月5日時点のリフィニティブ分析で「S&P500種構成企業の2021年予想増益率は+23.9%で、2020年の−12%減から大きく盛り返す」という見通しがなされていた。その点でもS&P500の現在の前年比+26.8%上昇は、一旦の織り込み進展を示唆するものだ。一方で「昨年の−12%減から今年の+23.9%増益(先行き上方修正余地)」を織り込む過程との見合いでは、一定程度は整合的であり、まだ異常なバブル割高にはなっていない。

    一方、米国の企業収益については、今回1−3月実績のあと、4−6月以降など先行き見通しで重石となるのが、金利上昇やドル高、各種コスト上昇、供給制約などの遅行打撃だ。米株はワクチン普及による株式投資からの消費シフトや、反対の変異種拡大なども懸念材料になる。

    米10年債金利でいえば月間最高金利の前年同月比が、4月8日時点で前年比+0.97%の上昇となってきた。最近では2014年1月の+1.02%以来という、大幅な金利上昇幅となっている。当時は遅行影響を含めて、米国株が上げ渋りから調整下落へと移行。S&P500の3カ月前比・騰落率(月間安値÷3カ月前の月間高値)は、前月2013年12月の+2.20%から、当該月の2014年1月が−0.27%、翌2月が−4.17%という調整株安に見舞われている。

    その前では2010年1月に、米10年債金利が前年比+1.01%の大幅上昇となった。当時もS&P500は3カ月前比で同月が−2.70%、翌2月が−6.21%という調整株安に転じている。こうした金利上昇の株安打撃は、2018年10月以降の株価急落でも時間差で観測されていた。

    また、ドルと米企業収益の関係では、ドルの総合力を示すドル指数(インターコンチネンタル取引所)は今年1−3月に89.21と2018年1−3月以来の安値をつけたあと、4−6月からは92−93へとドルが反発している。

    過去にドル指数が長期90割れから90を回復したドル反発局面として、2015年1−3月があった。米企業収益は同期こそ+7.8%という増益となったが、翌4−6月からは−1.4%へと悪化。ドル高も一因となる形で、2015年10−12月は−10.9%の大幅減益となっている(同期のドル指数は93−100のドル高)。

    その前では1998年などで「ドル指数90超えからの収益マイナス化」という相関性があり、今回もドル反発からタイムラグを経た企業収益の鈍化が警戒される。

  • VIX指数は小幅に下落しての推移。米株の堅調地合いを眺めてリスク志向の動きが意識されている。

    現状の水準は以下の通り。

    VIX指数:16.91(-0.04)

  •  9日のシカゴ・オプション市場(CBOE)でS&P500種株価指数オプションの値動きに基づいて算出される変動性指数(VIX、恐怖指数)は低下。4時34分時点では16.65と前営業日の清算値16.95から0.30ポイント低い水準で推移している。

  • リスク回避の尺度であり、米株投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE) ボラティリティー(VIX)指数は、14カ月ぶりの低水準に低下してきた(リスク選好)。

    短期的には過熱感があり、14日前後から本格化する米企業の決算発表などを受けた反動調整が警戒される。決算発表は一旦の好材料出尽くしや事前期待比での失望が警戒されるほか、金利上昇・ドル高・コスト高の遅行打撃も注視される。米株はワクチン普及による株式投資からの消費シフトや、反対の変異種拡大なども懸念材料になる。

    米国株は昨年11月以降、1−3月期決算を含めた企業収益のV字回復を織り込む形で大幅高となっている。その意味で4月後半にかけて続く決算発表のシーズンでは、良好でも一旦の好材料出尽くしや最良期の先行きピークアウト懸念、悪ければ過剰期待の反動失望などにより、短期的な米株安が警戒される。

    しかも米国株市場では、リスク回避の尺度であり、米株投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE) ボラティリティー(VIX)指数が、4月8日の終値で16.95となった。直近の日中最高である3月4日の31.90から大きく低下し、昨年2月以来、約14カ月ぶりの低水準となっている(リスク選好)。過去実績として「1年スパンのレンジ下限下抜け」となるようなVIX急低下は、その後に揺り戻し的なVIX上昇と短期株安が警戒されやすい。

    短中期のトレンド判断で参考になる週足テクニカルでも、VIXは低下の行き過ぎ過熱シグナルが点滅してきた。8日の終値が16.95に対し、1年スパンのトレンド・ラインを示す52週移動平均線は25.90となっている。52週移動平均線からの乖離率(終値÷52週平均)は−34.6%という大幅な下方乖離となり、実に2016年8月以来、約4年半ぶりの低下過熱が示唆されている。

    2016年8月の場合、VIX指数は同月の最低11.02から、9月に20.51、11月に23.01という反動調整的なVIX上昇が見られていた(リスク回避、米国株は反落)。最近では同乖離率が昨年12月4日週に、−26.1%への下振れ過熱となっている(リスク選好の行き過ぎ過熱)。
    当時はその後、12月18日から21日にかけて、VIXは一時的ながらも21.57から31.46へと急上昇する短期波乱に直面していた。
    米国株の先行上昇と当座の収益改善の織り込み度合いでいえば、米株S&P500は8日時点で四半期別の前年同期比が+26.8%の上昇率となってきた(期中の高値比較)。最近では2010年4−6月の+27.6%以来の大幅株高となっている。同期の米経済分析局による米企業収益(在庫調整・資本消費調整後)は、前年比+27.8%となっていた。レアケースながらも、増益率と同水準の株価上昇率となっている。

    これから発表が相次ぐ米国企業の決算発表については、ブルームバーグ・インテリジェンスがまとめたアナリスト予想で、「S&P500種構成企業の通年の1株利益は前年比+25%増の172.90ドルと過去最高が見込まれている。2桁増益は少なくとも23年まで続く見通し」(4月2日時点)とされる。しかも年初以降、「アナリストらは今年1−3月(第1四半期)の企業の利益予想を引き上げており、その上方修正ペースは少なくとも2004年以降で最速」となっていた。こうした上方修正の織り込みが、足元4月8日までに至る株高加速の一因となっている。

    一方でS&P500は8日時点で、四半期別の前年同期比が+26.8%の上昇率となってきた。単純に現時点での通年「前年比+25%増益」という予想は織り込みが進捗しつつある。その意味でも14日前後からの決算発表では、一旦の好業績消化と米国株の調整下落、あるいは日柄調整による高値横這い移行が注視されやすい。米国株の季節アノマリーとしても、4−5月は調整下落となるパターンが目立っている。

    今年の米企業収益については、1月5日時点のリフィニティブ分析で「S&P500種構成企業の2021年予想増益率は+23.9%で、2020年の−12%減から大きく盛り返す」という見通しがなされていた。その点でもS&P500の現在の前年比+26.8%上昇は、一旦の織り込み進展を示唆するものだ。一方で「昨年の−12%減から今年の+23.9%増益(先行き上方修正余地)」を織り込む過程との見合いでは、一定程度は整合的であり、まだ異常なバブル割高にはなっていない。

    一方、米国の企業収益については、今回1−3月実績のあと、4−6月以降など先行き見通しで重石となるのが、金利上昇やドル高、各種コスト上昇、供給制約などの遅行打撃だ。米株はワクチン普及による株式投資からの消費シフトや、反対の変異種拡大なども懸念材料になる。

    米10年債金利でいえば月間最高金利の前年同月比が、4月8日時点で前年比+0.97%の上昇となってきた。最近では2014年1月の+1.02%以来という、大幅な金利上昇幅となっている。当時は遅行影響を含めて、米国株が上げ渋りから調整下落へと移行。S&P500の3カ月前比・騰落率(月間安値÷3カ月前の月間高値)は、前月2013年12月の+2.20%から、当該月の2014年1月が−0.27%、翌2月が−4.17%という調整株安に見舞われている。

    その前では2010年1月に、米10年債金利が前年比+1.01%の大幅上昇となった。当時もS&P500は3カ月前比で同月が−2.70%、翌2月が−6.21%という調整株安に転じている。こうした金利上昇の株安打撃は、2018年10月以降の株価急落でも時間差で観測されていた。

    また、ドルと米企業収益の関係では、ドルの総合力を示すドル指数(インターコンチネンタル取引所)は今年1−3月に89.21と2018年1−3月以来の安値をつけたあと、4−6月からは92−93へとドルが反発している。

    過去にドル指数が長期90割れから90を回復したドル反発局面として、2015年1−3月があった。米企業収益は同期こそ+7.8%という増益となったが、翌4−6月からは−1.4%へと悪化。ドル高も一因となる形で、2015年10−12月は−10.9%の大幅減益となっている(同期のドル指数は93−100のドル高)。

    その前では1998年などで「ドル指数90超えからの収益マイナス化」という相関性があり、今回もドル反発からタイムラグを経た企業収益の鈍化が警戒される。

  • 米オプション市場で株価変動見込む取引、弱気見通し反映も

    [ニューヨーク 8日 ロイター] - 8日の米オプション市場で、向こう3カ月間の米株価変動率の高まりを見込んだとみられる大規模な取引が行われた。

    8日の取引データによると、株式投資家の不安心理を示すボラティリティー・インデックス(VIX指数)が7月中旬までに25の水準を突破して40に向け上昇すると見込む約4000万ドル規模の取引が行われた。

    VIX指数は16.95で8日の取引を終え、新型コロナウイルス感染拡大で市場に混乱が広がる直前の昨年2月20日以来の低水準となった。

    トレード・アラートによると、8日は午前10時から2時間の間に、VIXの7月限25─40コールスプレッドが約20万枚取引され、VIXオプションの1日平均出来高の約3分の2に上った。

    権利行使価格がスプレッド下限付近のコールを平均3.37ドルで買い、行使価格がより高いコールを平均1.30ドルで売る取引が行われた。

    VIX指数が7月中旬までに25を上回れば利益が出る。

    株価が揺れ動く局面でVIXが大きく上昇する傾向にある点を踏まえると、オプション市場でのこうした取引は株式に対する弱気の見通しを反映している可能性がある。

  • VIXオプションで大規模取引、米株市場の落ち着き持続せずと想定か

    (ブルームバーグ): 米株式市場は最高値を連日更新しつつも落ち着きを見せているが、あるオプショントレーダーは無風状態は長続きしないとみて大きな賭けに動いているようだ。

    8日午前には、シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)が現水準の約17から7月に40に向かって上昇し25を下回らないと見込む投資を行い、オプション市場を揺さぶった。このトレーダーは複数回のブロック取引を行ったもようで、合計約20万枚のコールオプションを購入した。ブルームバーグの集計データによると、これはVIXのコールの1日当たり売買高20日平均とほぼ同水準。

    迫り来る増税や景気回復ペース、物価上昇などを巡るさまざまな不安から、今の株式市場の落ち着きは短命に終わると市場参加者は懸念している。株価上昇の中で相場が下落に転じた場合に備えるコストが下がり、プロテクションを大量に買い込む向きもいる。

    アンブラス・グループのクリス・シディアル共同最高投資責任者(CIO)は「VIXの価格が17台前半にあるため、今後、こうした比較的大規模な賭けがもっと出てくると推測する」と述べ、 「ここ2カ月にボラティリティーは大きく低下したものの、市場の行き過ぎた脆弱(ぜいじゃく)性の兆候がさまざまな角度から依然見られることをスマートマネーは理解していると思う」と語った。

    原題:Giant VIX Options Trades Bet That Stock-Market Calm Won’t Last(抜粋)

    (c)2021 Bloomberg L.P.

  • 世界経済の回復見通しなお不確実、金利上昇を懸念=IMF声明

    [ワシントン 8日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)の運営方針を決める国際通貨金融委員会(IMFC)は8日、声明を発表し、世界経済は新型コロナウイルス危機から予想以上の速さで回復しているものの、回復の見通しはなお極めて不確実で、金利の急上昇は特に新興国への打撃になりかねないとの認識を示した。

    コロナワクチンの世界的な配布を加速させることが重要であり、国際的な協力を強化すると約束。世界の金融情勢が逼迫した場合、金融の脆弱性の高まりがリスクになり得るほか、コロナ禍による被害が拡大し、貧困や不平等が進む可能性もある中で、気候変動やその他の共通課題が一段と差し迫っていると警告した。

    ゲオルギエワIMF専務理事は、力強い米経済見通しで世界全体にプラスの波及的な影響が及ぶと指摘。ただ、一段と速い成長が金利上昇につながれば、経済活動を再開できていない国が打撃を受ける恐れがあると懸念を示した。

    ゲオルギエワ氏はIMF・世銀の春季会合で、市場でインフレ期待に対する「熱狂的な」見方が出ていることが国債利回りの上昇につながっているとし、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長に対し、インフレは制御されているとのFRBの見解を明確に伝達するよう要請。「パウエル議長の極めて慎重なアプローチは大きな助けになる」と述べた。

    同時に、インフレが新興国に及ぼす影響に懸念を表明。貿易の促進がインフレ圧力の制限に役立つ可能性があるとの考えを示した。

    <SDR新規配分>

    IMFの準備資産である特別引き出し権(SDR)に関し、ゲオルギエワ専務理事は会見で、前日に20カ国・地域(G20)が合意した6500億ドルの新規配分を委員会の全メンバーが強く支持したと表明。クォータ(出資割当額)に関する交渉は容易でないものの、各加盟国とも関心の高さを示していると述べた。

    SDR新規配分でパンデミックで痛手を受けている中所得国が特に恩恵を受けられるとし、「これらの会合で、世界金融の安全網の中心にあるIMFへの強い支持と、IMFが責務を果たすために適切な資源を備えていることに対する全ての加盟国の明確な意思が示された」と話した。

    *内容を追加します。

  • SPACを激しく批判、個人投資家「略奪行為」の餌食に-ブロック氏

    (ブルームバーグ): 空売り投資家カーソン・ブロック氏は、より多くの特別買収目的会社(SPAC)を対象に市場価格の下落に賭ける投資を増やしていると述べ、一部の個人投資家が「略奪行為」の餌食になるとの見通しを示した。

    マディー・ウォーターズ・キャピタル の最高経営責任者(CEO)であるブロック氏は5日の電話取材で、「怪しげなものが非常に多く存在する。市場は今や詐欺の時代だ」と発言。その一方で、空売りの最近のターゲットを特定することは避けた。

    ブロック氏は最近、SPACを通じて株式を公開したXLフリートとマルチプランについて下落に賭ける投資を行っており、前者は年初来約70%、後者も約25%値下がりしている。

    原題:Carson Block Steps Up SPAC Attacks, Citing ‘Predatory’ Behavior(抜粋)

    (c)2021 Bloomberg L.P.

  • >>300

     トランプの政治資金団体である「Save America(アメリカを救え)」はすでに約8000万ドルもの寄付金を集めており、来年の中間選挙でトランプに忠誠を誓う共和党候補につぎ込む手はずだ。

     弾劾裁判でトランプに反旗を翻した共和党議員への仕返しも忘れていない。「復讐リスト」には、下院共和党ナンバー3のリズ・チェイニー下院議員を含む10人以上の共和党議員の名前がズラリと並んでいる。どんな汚い手を使っても彼らを落選させるつもりだ。

     とにかくトランプは蛇のように執念深い。実業家時代に黒い組織の人脈から2つのおきてを学んでいるからだ。ひとつは「やられたら容赦なくやり返せ」。もうひとつは「ボスを裏切ったヤツを絶対に許さない」である。

     そんな負けず嫌いのトランプも今度ばかりは無傷で逃げ切るのは難しいだろう。検察側が時間をかけて周到に物的証拠や証言を積み重ねてきているからだ。

     コロナ感染対策と経済再建で手いっぱいのバイデン大統領はトランプ起訴には消極的だ。だが、これほどまでに悪質な「大統領の犯罪」を見逃せば、民主主義の根幹である法の支配を揺るがすことになりかねない。不安の声が法曹界や民主党支持者の間で高まっている。

     アメリカ社会を分断し世界秩序を混乱させたトランプ前大統領は、果たしてどのように裁かれるのか。重厚なローマ様式のニューヨーク郡裁判所ビルの正面を見上げると、初代大統領ジョージ・ワシントンの次のような碑文が刻まれている。

     「真の司法権は良識ある政府の最も強固な柱である」

  • 「トランプ逮捕」はあるか、財務記録入手で不正疑惑捜査は核心に

    ● ハードディスクの入手で トランプへの捜査は核心へ

     逮捕され刑務所に送られるのか。それともお得意のウソとハッタリでまたも法の網を潜り抜けるのか。司法当局によるドナルド・トランプ前米大統領に対する捜査が核心に迫りつつある。

     吹雪の中、ニューヨーク郊外の会計事務所を訪れた地方検事補佐と2人の捜査官は「ある物」を受け取ると急いでマンハッタン南端に立つ古びた州庁舎へ車を走らせた。2月末のことである。

     「ある物」とは、トランプの過去8年分の納税記録など財務資料が記録されたハードディスクだ。脱税や保険詐欺、業務記録の改ざんなど前大統領の犯罪を裏付ける重要な証拠である。

     地元メディアの報道によると、そのハードディスクは州庁舎の特別な部屋に保管されている。入口は頑丈な二重の金属ドアで、内部の壁や天井には銅箔が張られているという。外部からリモートでデジタル情報にアクセスさせないためだ。そんな厳重な警戒ぶりからみても、資料の中には「大統領の犯罪」を立証する決め手が含まれていることは間違いないだろう。

     トランプは在任中、大統領の免責特権を盾に背任、共謀、職権乱用、司法妨害、脱税、詐欺などさまざまな疑惑の追及を逃れてきた。歴代大統領が慣例として行ってきた納税申告書の公開も、「政治的な魔女狩りだ!」と叫んで拒否し続けた。

     しかし、今や「ただの一市民」となったトランプに免責特権はない。最高裁は2月22日、ニューヨーク州マンハッタン地区主席検事サイラス・ヴァンスの要請を認め、前大統領に財務資料の提出を命令した。さすがのトランプもこれには逆らえない。判決からわずか数時間後、膨大な資料が収められたハードディスクがトランプの会計事務所から司直の手に渡った。

     この資料を基に検察が起訴すれば、内容が一般にも公開される可能性がある。場合によってはトランプ自身が法廷で証言を求められるかもしれない。そうなれば見ものだ。

    ● 脱税と不正税申告を 集中的に捜査

     ニューヨーク州検察が集中的に捜査しているのは脱税と不正税申告だ。そのため州検察は捜査チームにFTIコンサルティングというフォレンジック会計の専門家を雇った。フォレンジック会計は訴訟会計とも呼ばれ、会計上の違法行為を見つけて裁判に耐えうるデータを集める作業のことだ。トランプの不明朗な金の流れを精査するのが目的だが、捜査の中立性を担保する狙いもある。

     それだけではない。ニューヨーク・マフィア5大ファミリーのひとつ、ガンビーノ一家のボスの息子を有罪にしたことで有名な元連邦検察官マーク・ポメランツも捜査チームに加わっている。マフィアの巧妙な脱税手口を知り尽くしたベテランだ。

     「彼らは本気だ。すでに確証に近いものを手に入れ、その仕上げにかかっているようだ」と、トランプ大統領上級顧問だったケリーアン・コンウェイの夫で反トランプ弁護士のジョージ・コンウェイは地元誌のインタビューで語っている。

     トランプの財務記録を巡っては、すでに米ニューヨーク・タイムズ紙が独自入手した資料を基にスッパ抜いている。例えば、富豪のはずのトランプが大統領選以前の15年間のうち10年間にわたり連邦所得税を納めなくて済んだカラクリや、勝利が決まった2016年の納税額がたったの750ドル(約8万円)だったことなどだ。

     そもそもトランプの犯罪捜査は2018年までさかのぼる。当初は2016年の大統領選挙中にポルノ女優とのセックススキャンダルをもみ消すために数十万ドルの口止め料を支払ったことが公職選挙法違反に当たるというものだった。しかしその後、捜査はトランプ個人の不正疑惑だけでなく一族が経営するトランプ・オーガニゼーションを巻き込んだ粉飾決算、詐欺、背任などに広がっていった。

     すでに元顧問弁護士でトランプの忠実な「ピットブル(闘犬)」と呼ばれたマイケル・コーエンが司法取引に応じて有罪を認め、脱税と選挙資金法違反で禁固3年の有罪判決を受けている。ボスに見捨てられた恨みは深い。「あいつ(トランプ)はずるいウソつき、詐欺師だ」と議会証言で前大統領をこき下ろし、今も捜査に協力している。

     新司法長官メリック・ガーランド(民主党)が許可すれば、検察は年内にもトランプを複数の容疑で刑事告発できるとヴァンス主席検事は自信を深めているという。

    ● 検察の切り札は 金庫番との司法取引

     しかし法律専門家の間では、前大統領の刑事告発はそう簡単ではないという指摘がある。なぜなら裁判では、トランプに「合理的疑いの余地のない」明確な犯罪の意図があったことを陪審に証明しなくてはならないからだ。そのためには財務資料とともに決め手となる関係者の証言が欠かせない。

     すでに検察はトランプ一族と関係の深いドイツ銀行従業員など関係者多数に聞き取りを行った模様だが、油断は禁物だ。実業家時代にトランプは4000件近くの訴訟を抱えたが、いずれも狡猾な手段を使って切り抜けているからだ。

     じつはトランプの側にはマフィアの守護神といわれた悪徳弁護士ロイ・コーンが常についていた。ウソとハッタリで敵を容赦なくたたきつぶす者が最後に勝者となるという処世訓をトランプにたたき込んだのもこの男だった。

     コーンはすでにこの世を去っているが、トランプは彼から犯罪の痕跡を残さない術を学んでいる。例えば、自分の机にはコンピューターを置かず個人的電子メールアドレスも持たない。メッセージは側近に書かせる。不正行為を指示するときには言質を取られないよう曖昧な言葉を使って自分の意図を部下に忖度(そんたく)させる。悪徳政治家やヤクザの常とう手段だ。いざとなったら知らんふりをして責任を他人になすりつけることができる。

     そんな悪賢い前大統領に対して、検察の切り札は長年トランプ一族の忠実な金庫番を務め誰よりも黒い金の流れを知る最高財務責任者のアレン・ワイゼルバーグ(73歳)だ。もしワイゼルバーグがコーエン受刑者と同じように司法取引に応じて証言すれば、トランプは窮地に追い込まれるだろう。

     前大統領のめいで自著でトランプ一家の暗部を暴露したメアリー・トランプはこう言ってはばからない。

     「すべての死体(犯罪の証拠)がどこに埋められているかはワイゼルバーグが知っています」

    ● 平静を装うトランプだが 無傷の逃げ切りは困難

     それではトランプ本人は何をしているのだろうか。知人で米ニュース誌記者のビル・パウエルによると、フェイスブックやツイッターから排除されて発信力を失った前大統領は平静を装ってフロリダの高級リゾートでゴルフ三昧の日々を過ごしているそうだ。

     しかし、誇大妄想で偏執狂のトランプがそうたやすく引き下がるわけがない。パームビーチに「The Office of the Former President(元大統領のオフィス)」という珍妙な名前の事務所を開設し、陣営の上級顧問ジェイソン・ミラーや元主席戦略官だったスティーブ・バノンたちと共和党乗っ取りをひそかに画策しているという。いまだにトランプを恐れる大多数の共和党議員を利用して白人至上主義とアメリカファーストを推し進めようというのだ。

  • >>298

    ■ 「マエストロ」と言われたグリーンスパン

     このパターンを確立したのが、1987年から2006年まで19年間にわたり米国の金融政策のトップであったFRBのアラン・グリースパン議長である。

     金融だけでなく経済と株式市場の長期成長までもたらしたグリースパン議長は、その絶頂期には「マエストロ」と呼ばれた。

     グリースパン議長は、低金利政策により株式や不動産などの資産価値を高めて富裕層の消費を拡大して経済成長を持続させ(その間に貧富の格差は拡大したが)、マーケットが加熱すると金利を引き上げ続けた。

     一旦マーケットが暴落すると瞬時に大幅に金利を引き下げて債券価格を上昇させて暴落を緩和し、超低金利効果による経済と株式市場の回復を導いた。

     2000年のITバブルの崩壊から回復と成長をもたらし、2006年の退任の直前までは過熱する株式市場を抑制するために金利を引き上げ続けた。

     グリースパンの後継者であるベン・バーナンキFRB議長もグリースパン路線を踏襲して金利を引き上げ続け、リーマンショックの暴落が発生すると直ちに金利を低下させて危機を乗り切り、その後の株式と経済の成長に道をつけた。

    ■ FRBは株式市場に責任を持つ

     ではなぜ、米国の中央銀行であるFRBは株式市場を動かすのだろうか。

     FRBが雇用の最大化、つまり経済に責任を持っているからだ。そして、株式市場が株式上昇→消費→雇用→経済、という経路で米国経済に及ぼす影響が大きいからだ。

     米国は資本主義の総本山であり、米国資本主義の最大の装置が株式市場であることは過去100年間変わらない。1929年の米国発の大恐慌は株式市場の突然の暴落から始まった。

     FRBを含めた米政府にとって、株式市場をコントロールすることは、経済に直結する死活問題である。

     1990年代以降の米国の財務長官に、私も共同経営者(パートナー)であったゴールドマンサックスから3人も就任していることも、マーケット重視の表れだ。

    ■ 日銀には制度上、株式市場に責任がない

     ここで注意しなくてはいけないのは、日本の中央銀行である日本銀行が法律で定められた責任を持っているのは「物価の安定」だけだ。

     日銀は雇用にも経済にも株式市場にも、制度としては責任がない。

     日銀が1980年代の株式や不動産のバブルを放置したことも、1990年代以降のバブルの崩壊にも手をこまぬいたことにも、こうした制度上の日米の違いが作用した。

     ただし、日銀史上最も国際金融論に通暁した現在の黒田総裁が、2013年の就任以来、日銀の伝統的な手法ではなく、FRBによく似た「金融による成長戦略」をとり、ここまで株式市場を上昇させ、少子高齢化が進む日本経済のマイナス成長を緩和してきたことは特筆すべきだ。

     もちろん、世界最大の対外純資産を持つ点では米国と対極的だが、日本の黒田日銀の政策にも、FRBと共通するリスクが内包されている。

    ■ コロナが変えたパターン

     ドナルド・トランプ政権が誕生した2016年から2019年にはFRBはFF金利をゼロから3.5%まで引き上げていた。

     株式市場の上昇が続き、経済は好調で物価上昇の兆候が見られたためだった。

     しかし、2020年から始まったコロナ禍により、FRBはFF金利をゼロにまで引き下げた。ここから、米株式市場、特にGAMFAを擁するナスダック(NASDAQ)市場の暴騰が始まった。

     「FF金利の大幅低下は買い」という過去の経験則から個人投資家を含む世界中の投資家が米株式市場に資金を流入させたからだ。

    ■ 共同幻想が消えるとき

     大いなる錯覚である。

     過去のFRBによる大幅な金利低下は、株式市場の暴落に対応するためだった。しかし、今回の大幅な金利低下の前には株式市場の暴落は起きていない。

     それどころか、米株式市場は歴史的な高値水準にまで上昇した。

     この本質的な違いを無視して、「ゼロ金利は買い」という過去の成功の方程式を信じた資金が米国株を押し上げた。

     株式市場がどの程度「バブル」状態なのかを表す指標にPER(株価収益率)という「倍数」がある。株価が年間の純利益の何倍なのかを表す。

     日本経済がバブルと言われた1989年末で、PERは時期にもよるが、およそ50倍程度であった。

     直近の2021年1月末のナスダックの平均PERは約71倍、つまり年間利益の71年分、株が買われているということだ。

     グラフ(2)を見ても、ナスダックがこの1年間でいかに上昇したかが分かる。

     この大いなる錯覚が米国株急上昇の最大の原因である。「共同幻想」が消えた時には、暴落の危険をはらんでいる。

    ■ コロナはきっかけに過ぎない

     パンドラの箱を開けたらあらゆる災いが人類にもたらされたとギリシア神話ではいう。

     トランプ大統領が開けたパンドラの箱に、コロナという突風が吹き込んで、これからの米国と世界には「21世紀型大恐慌」のリスクが高まっている。

     そして、2020年からのコロナをきっかけとして、再びFRBが経済とマーケットのコントロールできない時代に入ろうとしている。

  • 米株式市場がまもなく大暴落に至る仕組みを詳解

    改めて断っておくが、私は悲観論者ではない。また、常に「大恐慌が来る」と脅かしてきたわけではない。

     2009年2月に執筆した『日本「復活」の最終シナリオ 「太陽経済」を主導せよ!!』では、2008年9月に起きたリーマンショックから「戦前型大恐慌が起きない理由」を説明した。

     事実、大恐慌が起きるどころか、今年までに米株式市場は最高値を更新してきた。

     しかし、アフターコロナが見えてきたことで、今後大暴落すると想定せざるを得ない。しかも、リーマンショックとは違って、株式だけでなく債券とドルも大暴落するリスクが高い。

     リーマンショックに際しては瞬時に形成された国際協調体制は、今は機能不全だ。そうなると、第2次世界大戦後初の事態である。

     マーケットの大暴落から「21世紀型大恐慌」に至るリスクが高い。

     どうしても警告しなくてはいけないと思い、昨年、2020年11月に、『21世紀型大恐慌 「アメリカ型経済システム」が変わるとき』(PHP出版)を書いた。詳しくはこちらを参照してほしい。

    ■ 米マーケット全体が大暴落のリスク

     先進国を中心にワクチンの接種が進み、世界最大の犠牲者を出してきた米国でもアフターコロナが見えてきたと思われている。

     新型コロナウイルス感染症の被害が世界に広がった昨年の初めから、米国を中心に世界の株式市場は上昇を続けた。アフターコロナになれば、世界のマーケットはどう動くのだろうか? 

     このシリーズの前回のコラムでは、「アフターコロナが見えてきた米株式市場は大暴落すると想定せざるを得ない。しかも、リーマンショックとは違って、債券とドルも大暴落するリスクが高い」と述べた。

     なぜだろうか。マーケットの上昇や暴落のメカニズムはどうなっているのだろうか。メカニズムが分かれば対処法も見えてくる。

    ■ FRBがコントロールできない時代に

     米国の経済と金融、そしてマーケットの仕組みの中心に存在するのが米国の中央銀行、FRB(連邦準備制度理事会)だ。

     コロナはFRBにも影響を与え、FRBはマーケットに影響を与える。1980年からコロナ以前の2019年までは、FRBの政策をよく理解すれば、経済もマーケットも十分に予測可能だった。

     しかし、FRBも常に万能ではない。1970年代まではFRBは経済もマーケットもコンロールできなかった。スタグフレーションと呼ばれた時代だ。

    ■ FRBの最大の道具がFF金利

     下に示しているのがFRBの最大の道具であり政策金利といわれるFF金利(Fed Fund Rate)とインフレ率の過去60年間のグラフ(1)である。

     驚くほどの変動を示しているのがお分かりいただけるだろう。

     40年前にはFF金利は20%に近かった。歴史的にみたら今のゼロ金利やゼロインフレはとてもノーマルとは言えない。

     なぜ、当時はそんな高金利になったのだろうか? 

     1970年代の米国は、「偉大な社会」建設を目指した福祉支出拡大とベトナム戦争支出で財政が急速に悪化した。

     その上、中東戦争とイランイラク戦争を契機とした2つの「石油ショック」に見舞われ、インフレに襲われて市場の金利が急上昇した。急速に経済が悪化した。

     当時のFRBは、景気刺激のために金利を引き下げようと通貨供給量を増やしたが、逆にインフレを高進させる「過剰流動性」を発生させて、金利はさらに上昇してしまった。

     高金利に圧迫されて、企業の収益は急速に悪化し、消費や住宅需要は低迷した。

     不景気とインフレーションが一緒にやってきたから、「スタグフレーション」という洒落た名前が作られたが、国民はたまったものではなかった。

    ■ FF金利でインフレを退治したボルカー

     インフレを退治するのに成功したのが、ジミー・カーター政権末期の1979年にFRB議長に就任したポール・ボルカーだった。

     ボルカーは、それまでとは逆の発想で、FF金利を大幅に引き上げて、市場に出回る通貨の量を大きく減らした。厳格な「通貨供給量政策」といわれた。

     昨今のようにFRBが国債を大量に買って「流動性」つまりお金を供給することなどボルカーには論外だった。

     FF金利の大幅な引き上げによってボルカーはインフレ率の大幅低下に成功し、金利も低下して、1980年から始まったロナルド・レーガン大統領時代の「強いアメリカ」を経済から支えた。

     ボルカーによってようやく、FRBがFF金利で経済をコントロールできる時代が到来した。

    ■ FRBの株式市場操作の道具もFF金利

     次に掲げるグラフ(2)には、アメリカの経済とマーケットのエッセンスが詰まっている。

     まず、黒い線が米国の金融当局であるFRBが決定するFF金利だ。FRBが民間銀行に強制的に預けさせる「準備預金」に付ける金利だから、民間銀行の「仕入れ値」であり、金利の「元締め」のような役割を果たす。

     FF金利は、FRBが米国の経済とマーケットをコントロールする最大の道具である。

     冷え込んでいる時にはFF金利を下げて温め(緩和)、過熱だと判断すればFF金利を引き上げて冷まそうとする(引き締め)。

    ■ FF金利でマーケットをコントロール

     もちろん、FF金利は株式市場も動かす。

     ゼロ金利になると、企業の収益が好転するだけでなく、ヘッジファンドや投資銀行といった米国株を動かしている主力投資家の「借入コスト」が劇的に改善する。

     なぜなら、彼らは巨額の「レバレッジ」、つまり借り入れを行なっているから、金利が低下すると借入コストも「レバレッジ」、つまり自己資本に対する借入の倍数分低下するからだ。

     例えば、レバレッジが5倍の場合、1%金利が上下すれば、自己資本に対する借入コストは5倍上下する。5%金利が上下すれば、自己資本に対する借入コストは25%変化する。

     だから、金利を上げられればレバレッジ投資家の収支は大きく悪化し、金利が下がれば収支は大きく改善する。

     投資家に投資資金を貸すのは民間銀行だが、銀行の金利は仕入れ値であるFEDのFF金利によって上下する。

     つまり、FRBはFF金利を上下させることで、FRB→民間銀行→株式投資家の借入コスト→株式投資の収益性、という経路で株式市場に影響を与えることができる。

     こうして、FF金利上げ(引き締め)→株式投資の収益性悪化、FF金利下げ(緩和)→株式投資の収益性改善、という経路で株式市場の上げ下げに影響を与えてきた。

    ■ 過去30年の米株式市場の上昇パターン

     再び、グラフ(2)を見ていただきたい。

     1990年から2019年末までは、米国の中央銀行であり金利と金融政策を決定する連邦準備制度(FRB)の政策金利であるFF金利と、米国の株式市場との間には、顕著な「因果関係」が存在した。

     FRBが米国の株式市場を相当程度コントロールしてきたからだ。その間のパターンは

     (1)FRBの政策金利であるFF金利が低い時から、経済成長、好景気、株高が継続

     (2)FRBが市場は過熱と判断、FF金利を継続的に引き上げ、それでも株は上昇

     (3)FF金利をさらに引き上げ高金利に、やがて株式暴落

     (4)FF金利を大幅に引き下げ、金利の低下により債券価格は暴騰することで株式市場の暴落ショックを緩和する

     (5)は(1)のパターンに戻り、経済と株式が上昇開始

     過去2回の株式市場の暴落であった2000年のITバブルの崩壊と2008年のリーマンショックの双方では以上の(1)から(5)のパターンが見られた。

     いずれの場合にも、経済と株式の上昇はFF金利が低い時に始まり、FRBが金融を引き締めるためにFF金利を引き上げても株式の上昇は止まらず、さらにFF金利を引き上げてから株式「暴落」が起きた。

     すると、FRBはFF金利を直ちに5%以上大幅に引き下げたから、それと同時に債券市場は「暴騰」し、低金利をテコに経済活動も活発化して、大底からの経済成長と株価上昇が始まった。

     つまり、「FF金利の大幅低下は株式の買いチャンス」というパターンがみられた。

  • バフェットは本当に過去の人? 大暴落を予見していた人たちの共通点

    地球最後の日に備えてツナ缶を備蓄するタイプ

     経済危機の話となると、それを予見していた人々の話がつきものだ。そして、そういう話の主人公はFUD(恐れ(fear)、不確実(uncertainty)、疑い(doubt))を心に抱いているような性格である場合が多い。彼らは、自分のオフィスのブラインドをおろし、世間の多数意見や仲間からのプレッシャーとは距離を置いて、孤独に仕事に集中するようなタイプだ。

     二〇〇八年の大暴落の当時、利益をあげた数少ない投資家のひとりは、〈ボウポスト・グループ〉と呼ばれるヘッジファンドのマネジャーであるセス・クラーマンだ。クラーマンは着実にリスクを避けながら成果をあげる手腕で知られ、自分の資産のかなりの部分をキャッシュで保有していることでも有名だ。二〇〇八年の大暴落から二年間、多くの投資家が群れをなしてヘッジファンドから撤退するなか、クラーマンはボウポスト・グループの資産をほぼ二倍の二二〇億ドルにまで増やした。

     クラーマンはその偉業を、明確にFUDにもとづいた投資戦略でなし遂げた。「ボウポストでは、恐れが大人気で、投資について言えば、あとで残念がるよりも今怖がるほうがずっといい」と、彼はかつて投資家への手紙に書いた。

     二〇〇八年の大暴落へと続く数年間、クラーマンは「慎重さを固持した数少ないうちのひとりで、その発言はちょっとどうかしているのではないかと受けとられていた」とカリーは言う。「みんながお祭り騒ぎをしているときに、彼はきっと地球最後の日に備えてツナの缶詰を地下に備蓄していたのだろう。そして、誰もがパニックに陥ったとき、彼は買いに回った。それは分析の結果じゃない。そういう性分なんだ。たぶん、彼はセールスマネジャーになっても成功しなかっただろう。だが、今の時代の偉大な投資家のひとりだ」

     同じように、マイケル・ルイスは二〇〇八年の大暴落への道筋を描いた『世紀の空売り』(東江一紀訳)のなかで、世間が好況に酔っていた二〇〇〇年代半ばに破滅がやってくることを見通していた数人の人物を描いた。そのひとりはヘッジファンド・マネジャーのマイケル・バーリ。バーリは大暴落までの数年間、カリフォルニア州サンノゼのオフィスにこもって財務諸表を綿密に検討した末に、世間の人々とは反対の見解に達した。そして、FUDにもとづいた投資戦略をとった。人づきあいが苦手な投資家ペアの、チャーリー・レドリーとジェイミー・マイ。彼らの投資戦略もFUDだった。

    投資で成功するのに必要な唯一のこと

     もうひとつの例は、二〇〇〇年のITバブルの崩壊を背景にしている。登場人物はネブラスカ州オマハ出身で、内向型を自認し、気が向けば何時間もひとりでオフィスにこもることで知られている。そのウォーレン・バフェットは、あきらかに知的な持続性、賢明な思慮分別、警告信号に気づいて対処する能力の持ち主であり、彼自身だけでなく投資会社〈バークシャー・ハサウェイ〉の株主たちに巨額の富をもたらした。バフェットは周囲の人々が判断力を失っているときに注意深く考えることで知られている。「投資で成功するのにIQは関係ない。普通の知性を持っているなら、必要なのは、トラブルの種になるような衝動をコントロールする気質だ」とバフェットは言う。

     一九八三年から毎夏、ブティック型投資銀行〈アレン&Co.〉はアイダホ州サンヴァレーで一週間のカンファレンスを開催する。これはただのカンファレンスではない。派手なパーティや多様なアクティビティ、そして招待客が同伴する子供たちを世話する大勢のベビーシッターまで用意された、至れり尽くせりの豪華な催しなのだ。接待側はメディア産業に顧客が多く、これまでの招待客のリストには、トム・ハンクス、キャンディス・バーゲン、ルパート・マードック、スティーブ・ジョブズといった、ハリウッドセレブや新聞業界の大物、シリコンバレーのスター、有名ジャーナリストらが名前を連ねている。

     アリス・シュローダーが書いたバフェットのすばらしい評伝『スノーボール』(伏見威蕃訳)によれば、一九九九年七月、バフェットはこのカンファレンスにいた。彼は毎年、ビジネスジェット機で家族をひきつれてここを訪れ、ゴルフコースを見渡せるコンドミニアムで他のVIP招待客とともに過ごしていた。年に一度のサンヴァレーでの休暇を楽しみ、家族一緒の時間を持ち、旧友たちと再会できることを喜んでいた。

     だが、この年、カンファレンスの雰囲気は例年とは違っていた。ちょうどテクノロジー・ブームの最盛期で、新顔の参加者が数多くいた。まさに一夜にして大金持ちになったIT企業の社長や、彼らに資金を提供するベンチャー投資家たちだ。彼らはすばらしい成功を収めていた。人物写真で知られるアニー・リーボヴィッツが『ヴァニティフェア』誌に掲載する「メディアのオールスターたち」と題した写真を撮るためにやってくると、彼らは口々に自分も被写体にしてくれとかけあった。

    「ウォーレンも老いたな」

     もちろん、バフェットはそのひとりではなかった。彼は先行き不透明な企業をめぐる投機的な熱狂に巻き込まれたりはしない、保守的な投資家だ。彼のことを過去の遺物として片づける者もいた。だが、バフェットはまだまだ強力な存在で、カンファレンスの最終日に基調講演をした。

     バフェットは数週間かけて講演内容を熟考し、入念に準備をした。演壇に立つと、まずは自分の短所に触れる話をして注目を集めてから(昔の彼は人前で話すのが苦手で、デール・カーネギーの話し方講座で学んだという)テクノロジー関連企業の勢いがもたらしている好景気がそう長くは続かない理由について、詳細な分析を披露した。データを調べ、警告信号に気づいたバフェットは、それが意味するものについてじっくり考えたのだ。彼が予測を公的に発表したのはじつに三〇年ぶりだった。

     シュローダーによれば、その講演を聴いた人々はあまり感銘を受けなかった。それどころか、バフェットの話はその場の人々の雰囲気に水をさすものだった。彼らはスタンディングオベーションで拍手を送ったものの、多くの人々が彼の考えを無視した。「ウォーレンも老いた。頭のいい男だが、今回は機会を逃したな」と彼らは陰で言い合った。

     その日の夜、カンファレンスは盛大な花火とともに閉幕した。例年どおり、大成功だった。だが、その集まりのもっとも重要な部分――ウォーレン・バフェットが発した、市場が衰退する兆しありとの警告――は翌年、まさに彼の警告どおりに、ITバブルが弾けるまであきらかにされなかった。

     バフェットは過去の実績を誇りに思っているだけでなく、つねに自分の「内なるスコアカード」にしたがっていることも誇りに思っている。彼はこの世界を、自分の本能に焦点をあてる人と、周囲に流される人とに二分している。「自分であれこれ判断するのが好きなんだ」とバフェットは投資家としての人生を語る。

     「システィーナ礼拝堂の天井画を描いているようなものだ。『なんてすばらしい絵だろう』と褒めてもらうのはうれしい。けれど、それは自分の絵なのだから、誰かに『なぜ青ではなく、もっと赤を使わないんだ? 』と言われたら、それで終わり。あくまでも自分の絵だから。彼らがなんと言おうがかまわない。絵を描くことに終わりはない。それがなによりすばらしいことのひとつだ」(古草秀子)

  • 外向型は間違いがあるとかえってペースを速める
    では、熱狂が正しい判断を遠ざけるのは、正確にはどんなメカニズムによるものだろう? ジャニス・ドーンの顧客のアランは、いったいどのようにして、財産の七〇%が消えてしまうぞという重要な危険信号を見逃したのか。まるでFUDが存在しないかのように、人々を駆りたてるものはなんだろう?

    ウィスコンシン大学の心理学者ジョセフ・ニューマンが実施した一連の興味深い実験は、ひとつの答えを示している。ニューマンの実験室へ招かれて、研究の被験者になったと想像してみよう。あなたはそこでゲームをして、ポイントを稼げば稼ぐほど現金を手に入れられる。パソコン画面に一二個の数字がひとつずつ順不同に現れる。手元にはボタンがあって、被験者は数字が現れるごとにボタンを押す。押した数字が「正解」ならばポイントを獲得でき、「不正解」ならばポイントを失う。ボタンを押さなければポイントは変化しない。何度か試行錯誤してから、4が正解で9が不正解だとわかった。つまり、今度9が登場したらボタンを押さないでいればいいのだ。

    ところが、そうとわかっていてもボタンを押してしまうことがある。外向型のなかでも特別に衝動的な人は、内向型と比較して、このような誤りをすることが多い。なぜだろう? 心理学者のジョン・ブレブナーとクリス・クーパーによれば、外向型はあまり考えずにすばやく行動するそうだ。内向型は「調べること」に、外向型は「反応すること」に適応しているのだ。

    だが、外向型の不可思議な行動がさらに興味深いのは、間違った行動をしたあとにある。不正解である9を押してしまうと、内向型はつぎの番号に移る前に時間をかけて、なにが悪かったのかを考えている。だが、外向型はそこで速度を落とさないどころか、かえってペースを速める。

    これは奇妙に感じられる。いったいなぜ、そんなことをしてしまうのか? それにはちゃんとした理由があるのだ、とニューマンは説明する。報酬に敏感な外向型は、目的を達することに集中してしまうと、なんだろうと邪魔はされたくない――否定する人だろうと、9という数字だろうと。そういう邪魔者を払いのけるためにペースを速めるのだ。

    熱狂を殺せ
    だが、時間をかけて見きわめるほど学ぶことも多くなるのだから、これは決定的に重大な失策だ。もっとゆっくりやりなさいと命令すれば、外向型も内向型と同じようにポイントを稼げる。ところが、好きにやらせておくと、けっして休まない。そのため、どうして間違えたのか学習しない。それはテッド・ターナーのような外向型が合併金額の入札で競り勝とうとするのと同じ仕組みだ、とニューマンは言う。「高すぎる値段をつけるのは、抑制すべき反応を抑えていないのです。決定を左右する情報を考慮していないのです」とニューマンは説明した。

    対照的に、内向型は報酬を重要視せず――熱狂を殺す、とも表現できる――問題点を入念に調べるように、生まれつきプログラムされている。「彼らは興奮するとすぐにブレーキを踏んで、もしかしたら重要かもしれない関連事項について考えます。内向型はそのように配線されていて、あるいは訓練されていて、興奮を感じると警戒を強めるのです」とニューマンは語る。

    さらに、内向型は新しい情報を自分の予想と比較する傾向があるそうだ。「予期したとおりのことが起きたのか。なるべくしてこうなったのか」と、彼らは自分自身に問いかける。そして、予想が当たらないと、失望の瞬間(ポイントを失う)と、そのときに周囲でなにが起きていたか(数字の9を押した)とを結びつける。それによって、つぎに警告信号にどう反応するかについて明確な予測をする。

  • 「恐れ・不確実・疑い」にバツ印。株高に熱狂する人たち共通の特徴

    「熱狂」は忘れがたい「初体験」のようなもの
    熱狂は楽しげに踊るシャンパンの泡のようなものだ。仕事でも遊びでも、私たちをやる気にさせる。危険な賭けをする勇気をくれる。ふだんならば絶対にできないと思っていることをやってみようという気にさせる。

    たとえばスピーチ。一生懸命に準備をして、大事な講演をしたとしよう。伝えたいことを話し終えると、聴衆が立ちあがって心からの盛大な拍手を送ってくれる。講演を終えて会場から去るとき、ある人は「言いたいことをわかってもらえてうれしい。役目を果たせてうれしい。これで解放される」と思うかもしれない。ところが、熱狂に敏感な人は、「すばらしい体験だった! あの喝采が聞こえるかい? 話を聴いていた人たちの表情を見たか? 本当にすばらしい!」と思うのだろう。

    だが、熱狂には否定的な面もある。「肯定的な感情を強調するのはいいことだと誰もが考えるけれど、必ずしもそうではない」心理学教授のリチャード・ハワードは、サッカーの勝利に興奮した観客が暴れて損害が生じる例をあげて指摘した。「人々が肯定的な感情を増幅させた結果、反社会的で自滅的な行動を引き起こすのだ」と。

    熱狂のもうひとつの欠点は、リスクにつながることだろう。それがきわめて大きなリスクである場合もある。熱狂は私たちに用心しなさいという警告信号を無視させる。テッド・ターナー(彼は極端な外向型のようだ)が、AOLとタイム・ワーナーとの合併を初体験になぞらえた本当の意味は、自分はガールフレンドとはじめて夜を過ごすことに興奮して、それがどんな結果をもたらすか考えもしない思春期の青年と同じような熱狂状態だった、ということだったのかもしれない。

    そんな具合に危険を無視しがちなことは、外向型が内向型よりも、交通事故死や事故による入院、危険なセックス、危険なスポーツ、不倫、再婚などの確率が高い理由を説明してくれる。さらには、なぜ外向型が自信過剰に陥りやすいかを説明する助けにもなる――自信過剰とは能力につり合わない自信を持つことだ。

    不正行為ぎっしりの書類なのに気にもせず
    一九九〇年代、私はウォール街の法律事務所に勤めていた。他行が貸し出したサブプライムローンの一括購入を考えている銀行の代理人をつとめるチームの一員だったのだ。私の仕事は調査活動全般で、関連文書に目を通して各ローンの事務処理がきちんと行われているかを調べるのが仕事だった。借り手は支払い予定の利率を知らされているか、利率が漸次上昇すると周知されているか、そうした点を確認していた。

    書類には不正行為がぎっしり詰まっていた。もし、私が銀行家だったら、徹底的に調査するところだ。だが、私たち法律家チームが会議でリスクを指摘したところ、銀行側はまったく問題を感じていないようだった。彼らは安い価格でローンを買い取って得られる利益ばかり見て、契約を進めることを望んだ。このような目先の利益を追求しようとした誤算が、二〇〇八年の大暴落のときに数多くの銀行の破滅を助長したのだろう。

    ちょうど同じ頃、いくつかの投資銀行が大きなビジネスを獲得しようと競合しているという噂がウォール街に流れた。それぞれの銀行が選任チームをつくって、顧客に売り込みをかけた。どのチームも、スプレッドシートや提案用資料を呈示し、パワーポイントでプレゼンをした。だが、勝利を得たチームはそこに演出をひと味加えた。野球帽をかぶり、胸にFUDと書かれたTシャツを着て、会議室に登場したのだ。FUDは、恐れ(fear)、不確実(uncertainty)、疑い(doubt)の頭文字で、その三文字が太い×印で消されていた。FUDは世俗の三位一体の象徴だった。そのチームはFUDを克服し、競争に勝った。

    二〇〇八年の大暴落を目のあたりにした投資会社〈イーグル・キャピタル〉社長のボイキン・カリーは、FUDに対する軽蔑――そして、FUDを感じる傾向がある人々に対する軽蔑が、大暴落の発生をうながしたのだと表現した。攻撃的なリスクテイカーたちにあまりにもパワーが集中しすぎていたのだ。

    エンロンに取りついた悪魔
    「二〇年にわたって、ほぼすべての金融機関のDNAが……危険なものへと変化した」と、当時カリーは『ニューズウィーク』誌に語っている。「誰かがレバレッジ比率を上げて、もっとリスクをとろうと強く主張するたびに、つぎの数年間でその意見が『正しい』と立証された。そう主張した人々は賞賛され、昇進し、発言権を増した。逆に、強気に出ることを躊躇し、警告を発した人は『間違っている』と立証された。彼らは糾弾され、無視されるようになり、発言権を失った。どの金融機関でも、そんなことが日々くりかえされ、ついには、先頭に立つのは特殊な種類の人ばかりになった」

    カリーはハーバード・ビジネススクール卒で、パームビーチ生まれのデザイナーである妻のセレリー・ケンブルとともに、ニューヨークの政界と社交界の有名人だ。いうなれば、彼こそ「とても積極的な」人々の一員のはずだが、思いがけないことに、内向型の重要性を訴えるひとりでもあった。世界的な金融危機をもたらしたのは押しの強い外向型だというのが、彼の持論だ。

    「特定の性格を持つ人々が資本や組織や権力を握った。そして、生まれつき用心深く内向的で物事を統計的に考える人々は正しく評価されず、片隅に追いやられたのだ」と彼は語った。

    不正経理や粉飾決算を重ねたあげく、二〇〇一年に倒産した悪名高い〈エンロン〉のリスク管理担当役員をつとめていた、ライス大学ビジネススクールのヴィンセント・カミンスキー教授も、『ワシントン・ポスト』紙にアグレッシブなリスクテイカーたちが用心深い内向型よりもはるかに高い地位にいた企業内風土について、似たような話を語った。穏やかな口調で言葉を選んで語るカミンスキーは、エンロン・スキャンダルに登場する数少ないヒーローのひとりだ。彼は、会社が存続の危機にさらされるような危険な状態にあると上層部にくりかえし警告を試みた。上層部が聞く耳を持たないとわかると、カミンスキーは危険な業務処理を決裁するのを拒み、自分のチームにも働かないように指示した。すると会社は彼の権限を奪った。

    「ヴィンス、きみが書類を決裁してくれないとあちこちから苦情が来ているぞ。まるで警官みたいなことをしているそうじゃないか。うちには警察なんかいらないぞ」エンロンのスキャンダルを描いたカート・アイヘンワルドの『愚か者の陰謀』(Conspiracy of Fools)によれば、社長がカミンスキーにそう言った。

    だが、彼らは警察を必要としていたし、それは現在も同じだ。二〇〇七年に信用危機がウォール街の大銀行を存亡の危機にさらしたとき、あちこちで同じようなことが起きたのをカミンスキーは見た。「エンロンに取りついた悪魔たちはまだ追い払われていない」と、彼はその年の一一月に『ワシントン・ポスト』紙に語った。多くの人々が銀行の抱えているリスクを理解していないことだけが問題なのではない、と彼は説明した。現実を理解している人々がそれを無視しつづけていることもまた問題なのだ――その理由のひとつは間違った性格タイプを持っているからだ。

    「私は何度となくトレーダーに面と向かって、これこれこうなったら、あなたのポートフォリオは崩壊すると指摘した。すると彼は、そんなことがあるわけがないと怒り、私を罵倒した。問題なのは、会社にとって向こうは雨を降らせてくれる呪い師のようなもので、こちらは内向的な愚か者ということだ。となれば、どちらが勝つかは明白だろ?」

  • 餓死するまで興奮して走り回らせるドーパミンの威力
    もちろん、人間はみな古い脳を持っている。だが、高反応の人の扁桃体が刺激に対してより敏感であるのと同じように、外向型は内向型よりも、報酬を求める古い脳の反応が敏感らしい。

    報酬を求めることの根底にあるものはなんだろう? 鍵となるのは肯定的な感情のようだ。外向型は内向型よりも多くの喜びを体験する傾向がある。喜びの感情は「たとえば、価値のあるなにかを追い求めて、手に入れることに反応して活性化する。手に入れると予想すると興奮が生じ、いざ手に入ると、喜びが続くのだ」と心理学者のダニエル・ネトルが著書で述べている。すなわち、外向型は「熱狂」と呼ばれるべき感情を頻繁に抱く。これは、急激に活性化する、熱烈な感情だ。人は誰でもそういう感情を抱くことがあるが、その強さや頻度には個人差がある。外向型は目標の追求と達成に対して、格別な熱狂を抱くようだ。

    熱狂をもたらすのは、眼窩前頭皮質、側座核、扁桃体を含む、「報酬系」と呼ばれる脳内の構造ネットワークの強力な活性化だ。なんらかの報酬を得られるという期待に対して、興奮を起こさせるのが報酬系の働きだ。たとえば、ジュースや現金や魅力的な異性の写真を被験者の目の前に呈示して、脳のfMRIを撮ると、期待による興奮で報酬系が活性化しているのがわかる。

    神経細胞が報酬系に情報を伝える際に、ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質――脳細胞間で情報を運ぶ化学物質――が使われる場合がある。なんらかの報酬を期待すると、それに反応してドーパミンが分泌され、いい気分をもたらす。脳がドーパミンに敏感であるほど、あるいはドーパミンの分泌量が多いほど、たとえばセックスやチョコレートや現金や社会的地位といった、報酬を追い求める可能性が高くなる。実験で、ネズミの中脳のドーパミンを活性化する部分を電気で刺激すると、興奮してケージのなかで走りまわり、結局は餓死してしまう。人間でも、コカインやヘロインは神経細胞を刺激してドーパミンを分泌させ、多幸感をもたらす。

    内向型は大ケガをしない
    外向型は内向型よりもドーパミンの活性が強いようだ。外向性とドーパミン、そして脳の報酬系との正確な関係は完全には解明されていないが、これまでの発見は好奇心をそそる。コーネル大学の神経生物学者リチャード・デピューが、ドーパミンの分泌をうながすアンフェタミンを外向型と内向型それぞれの集団に与える実験をしたところ、外向型のほうが強く反応することがわかった。別の実験では、ギャンブルで勝ったとき、外向型は内向型よりも脳の報酬系の活性化が著しいとわかった。また、ある調査では、脳領域で報酬系の鍵となる役割を担っている眼窩前頭皮質が、外向型では内向型よりも大きいとわかった。

    対照的に、内向型の報酬系は「反応が比較的鈍く、報酬を求めて逸脱することが外向型よりも少ない」と心理学者のネトルは書いている。内向型は「そうでない人たちと同じようにセックスやパーティや社会的地位に心惹かれることがあるが、彼らを駆りたてる力は比較的小さいので、それらを手にしようとして大ケガをすることはない」のだ。要するに、内向型は簡単には熱狂しない。

  • 他人が株で儲かっていると居ても立っても居られなくなる人たちへ

    株価大暴落が続く朝の電話
    株価が大暴落した二〇〇八年のことだ。一二月一一日、午前七時三〇分にジャニス・ドーン博士の電話が鳴った。東海岸の市場がふたたび大殺戮の幕を開けていた。住宅価格相場が急落し、債券市場は凍りつき、〈ゼネラルモーターズ(GM)〉は破産の瀬戸際だった。

    いつものように寝室で電話を受けたドーンは、緑色の羽根布団の上でヘッドホンをつけた。殺風景な部屋のなかで、豊かな赤毛に象牙色の肌、成熟したレディ・ゴディヴァを思わせるドーンは、なによりも色彩豊かな存在だ。ドーンは神経科学の博士号を持ち、専門は脳神経解剖学。精神科の専門医でもあり、金の先物取引の有力なトレーダーでもあり、そのうえ、〈経済精神科医〉として約六〇〇人のトレーダーのカウンセリングをしている。

    「やあ、ジャニス! ちょっと話をしたいんだが、いいかな?」その朝電話してきたアランという名前の男性が尋ねた。そんな時間はなかった。三〇分に一度は必ずトレーディングをすることにしているので、今日も早くはじめたかった。だが、アランの声にはどこか必死な響きが感じられたので、彼女はどうぞ、と答えた。

    アランは六〇歳の中西部人で、仕事熱心で忠誠心に溢れた、世の模範たる存在という印象の人物だ。外向型特有の陽気で独断的なタイプの彼は、悲惨な話をしようとしているにもかかわらず快活な口調だった。アランと妻は引退するまでしっかり働いて、一〇〇万ドルもの老後資金を貯めた。だが、四ヵ月前、米政府が自動車業界を救済するかもしれないという話をもとに、株売買の経験がまったくないにもかかわらず、GMの株を一〇万ドルも買うことを決めた。絶対に負けない投資だと確信していた。

    老後資金の七〇%を失う
    その後、政府が自動車業界を救済しないという報道が出た。GMの株は売られ、株価は暴落。それでも、アランはまだ、大きく勝つ夢を見て、株を持ちつづけた。そのうちにきっと相場が反発すると確信していた。だが、株価は下がりつづけ、とうとうアランは巨額の損失を出して持ち株を売ることにした。

    悪いことはそれで終わりではなかった。その後、政府が救済を実施するというニュースがふたたび流れると、アランはここぞとばかりに数十万ドルを投じて、安くなったGM株を買った。だが、またしても同じことが起こった。救済が実施されるかどうか、先行きが不透明になったのだ。

    そこで、アランはまたしても株を持ちつづけた。株価がこれ以上、下がるなどありえないと思ったというのが、彼の「説明」(説明という言葉を括弧でくくったのは、ドーンによれば、アランの行動には意識的な説明はあまり関連がないからだ)だった。彼は株が大きく値上がりするのを期待した。だが、株価は下がった。一株七ドルまで下がった時点で、アランは持ち株を売った。そして、またしても救済措置の話が取りざたされると、性懲りもなく株を買って……。結局のところ、GM株が一株二ドルにまで下落したとき、アランは七〇万ドル、つまりは老後資金の七〇%を失っていた。

    アランは狼狽した。そして、どうしたら損失を取り戻せるかとドーンに尋ねた。彼女にはどうしようもないことだった。「なくなってしまったのです。投資金を取り戻すことはできません」彼女はアランに答えた。

    いったいなにがいけなかったのかと彼は訊いた。なにがいけなかったのか。それについてドーンが思いあたることはいろいろある。そもそも、なんの予備知識もなしに株に手を出すべきではなかった。しかも、投資額が大きすぎた。資産の五%、つまり五万ドル程度に制限すべきだった。だが、最大の問題はアランが自分で自分をコントロールできないことにあったのかもしれない。彼は心理学者が言うところの「報酬に対する感度」が過敏な状態に陥ってしまったのだ。

    ブレーキを踏むべきときにアクセルを踏む
    報酬に対する感度が過敏な人は、宝くじを買うとか、友人と夜ごと出かけて楽しむとか、さまざまな報酬を得ようと夢中になってしまう。報酬に対する感度は、セックスや金銭や社会的地位や影響力といった目標を達成しようと私たちを駆りたてる。階段をのぼって、高い枝に手を伸ばし、人生の最高の果実を獲得しろとハッパをかける。

    だが、時として、報酬に対して過敏になってしまう人がいる。暴走した過敏性は、ありとあらゆるトラブルをもたらす。たとえば、株売買で大金を手に入れられるだろうと期待して興奮するあまりに、大きすぎるリスクを冒して、明白な警告信号を無視してしまうのだ。

    警告信号はたくさんあったのに、大金を手に入れられると期待するあまり興奮していたアランには、それがまったく見えなかった。報酬に対する感度が平静さを失ったときの典型的なパターンに陥っていたのだ。速度を落としなさいという警告信号を受けたのに、かえって速度を上げてしまった――投機的な株取引にのめり込んでかけがえのない財産を捨ててしまったのだ。

    経済界の歴史には、ブレーキを踏むべきときにアクセルを踏んでしまった例がたくさんある。行動経済学者たちは、企業買収の際に競争相手に勝とうと夢中になるあまり、法外な大金を投じてしまう経営者たちをたくさん見てきた。そうした事例はあまりにも多く、「ディール・フィーバー」という言葉があるほどで、それには「勝利者の呪い」がつきものだ。その典型的な例が、合併後の新会社が驚異的な赤字を出し、「世紀の失敗合併」と呼ばれたタイム・ワーナーとAOLの合併だ。AOLの株価は大幅に過大評価されているという警告がたくさんあったにもかかわらず、タイム・ワーナーの重役陣は満場一致で合併を承認した。

    「合併話をまとめたとき、私は四二年ほど前にはじめて女性と愛を交わしたとき以上に興奮し、夢中になっていた」というのは、重役陣のひとりであり、最大の個人株主でもあるテッド・ターナーの発言だ。合併が合意に達した翌日の『ニューヨーク・ポスト』紙には、「テッド・ターナーいわく、セックスよりも最高」と見出しが躍った。頭のいい人間が、なぜ時として報酬過敏になるのかを考えさせられる事例だ。

    外向型は経済的にも政治的にも報酬を求める
    ドーンは経験からして、外向型の顧客は報酬に非常に過敏であり、対照的に内向型の顧客は警告信号に注意を払うと言う。内向型は欲望や興奮といった感情を調節するのがうまい。彼らは損をしないように自分を守る。「私が相談を受けている顧客のなかで、内向型の人は『大丈夫だよ、ジャニス。興奮してわれを忘れてしまいそうだけれど、そんなことをしてはいけないとわかっているから』と言えることが多いのです。内向型は計画を立てるのが上手で、いったん立てた計画はきちんと守ります」とドーンは言う。

    ドーンによれば、報酬に対する反応の点で、外向型と内向型との違いを理解するには、脳の構造について少し知らなければならない。大脳辺縁系はもっとも原始的な哺乳類にも共通するもので、感情や本能を司っているが、ドーンはそれを「古い脳」と呼んでいる。古い脳は、つねに私たちに「イエス! イエス! イエス! もっと食べて、飲んで、セックスして、危険を冒して、楽しむだけ楽しみなさい! とにかく、なにも考えてはいけません!」と言っている。古い脳の、報酬を求め快楽を愛する部分が、アランをけしかけて大事な老後資金をまるでカジノのチップのように扱わせたのだ、とドーンは信じている。

    私たちの脳には、大脳辺縁系よりも数百万年もあとに進化した、新皮質と呼ばれる「新しい脳」がある。新しい脳は、思考や計画、言語、意思決定など、人間を人間たらしめる機能を司っている。新しい脳もまた、私たちの感情の働きに重大な役割を担っていて、合理性の中枢部なのだ。新しい脳は、私たちに「ノー! ノー! ノー! 危険で、でたらめなことをしてはいけません! あなたにとっても、あなたの家族にとっても、社会にとっても利益になりません!」と言っている。

    では、アランが株投資でわれを忘れていたとき、新皮質はどうしていたのだろう? 新しい脳と古い脳は連係して働くが、それは必ずしもうまくいかない。両者が衝突した場合、私たちはより強い信号を送っているほうの言いなりになる。つまり、アランの新皮質は「用心しろ!」という信号を送っていたが、古い脳との力ずくの綱引きに負けたのだ。

  • 日本は家族に金を借り、米国は他人から借金をする
     日本の巨額の財政赤字も議論の的だが、海外から借りまくっている米国とは違って日本は身内(日本国民)からの借金が中心だ。個人的に日本国債を保有している人はそれほど多くはないであろうが、我々の資金を運用している投資信託、年金をはじめとする機関投資家は大量の日本国債を保有している。

     だから、日本は米国のように海外からの借金が返せなくなって破綻することは無いという意見は正しい。しかし、それは「破綻の被害者が外国人なのか日本国民なのか」という違いだけである。

     例えば父親の事業に息子が資金を融通して返せなくなっても、父親の会社は(法的に)倒産しないが、息子の資産が消えてなくなってしまうことには変わりが無いのと同じだ。

     預金封鎖については、冒頭の「コロナ危機で、じつは『銀行預金』より『株』が安全になりそうなワケ」6ページ目で述べたように、現行憲法の規定に基づいて行うことは難しい。

     しかし、日本国債が償還不能になったり、あるいは金利が高騰して暴落したりすることはあり得る。

     日本の場合は円(紙幣)が紙くずになることよりも「国債」が紙くずになることを心配したほうが良いかもしれない。

     例え直接国債を保有していなくても、前述のような機関投資家を通じて実質的に保有しているし、我々が預金を預けている銀行も少なからぬ国債を保有しているのだ。

     もちろん、昨年4月14日の記事「コロナ危機で、じつは日本が『世界で一人勝ち』する時代がきそうなワケ」で述べたように、日本の将来には強気だが「いつやってくるのかわからない危機に常に備えるべき」ことはバフェットも強調している。

     また、2月28日の記事「1400年の歴史、世界最古の会社が日本に存在している…!」で述べたように、日本の目覚ましい発展の前には、黒船来航や第2次世界大戦敗戦などの危機があった。

     パンデミック以上の危機がやってこない保証はないから「備えあれば憂いなし」である。

  • 最強通貨・ドル、じつは間もなく「紙くず」になるかもしれないワケ…!

    米ドルが実は危ない

     100年スケールで考えると、2月8日の記事「コロナ危機で、じつは『銀行預金』より『株』が安全になりそうなワケ」の冒頭で述べたように、「金に対するドルの価値」は約90年で概ね100分の1になっている。

     同じように金を基準に考えると、第1次世界大戦後のハイパー・インフレを経験したドイツ、さらには第2次世界大戦後に預金封鎖が行われた日本だけではなく、世界の主要通貨が金に対して下落を続けていることが分かる。

     どのように下落しているのかは、「Why Do Most Nations Use Fiat Money Today? (なぜ世界の国々は不換紙幣(金に交換できない)を使用するのですか)」という記事の、「All Major Currencies Have Depreciated Relative to Gold(世界の主要通貨は金に対して下落している)」の図が分かりやすい。

     もちろん、金の価値は「普遍ではあるが増えてはいない」から、投資対象としてお勧めではない。価値が大幅に減ってしまう「通貨(預金)」よりもましだということである。

     このように「不換紙幣(以下紙幣)」の価値が下がり続けるのは、簡単に言えば紙幣は輪転機を回せばいくらでも刷れる、バフェットが述べるところの「コモディティ」だからである。「コモディティ」は、いつでもどこでも誰もが生産できる「大量生産可能な価値の低いもの」である。

     読者は「お金がコモディティ」だと言うと、「そんなことはないよ! いつも手に入れるのに苦労している貴重品だ!」と反論したくなるであろう。しかし、我々が「お金を手に入れにくいのは(紙幣そのものが貴重なのではなく)政府(中央銀行)がその流通を規制」しているからなのである。

     つまり、政府がその流通を規制しなければ、紙幣は究極のコモディティであり、文字通り紙屑にしか過ぎない。だから、中央銀行の「マネーサプライ」などの金融政策が非常に重要なのだ。

     そのため、先進国の政府は日々、通貨流通量のコントロールに励んでいるが、長期的な流通量のコントロールには無頓着だ。

     その典型が米国であり、特に1971年のニクソンショックによって「事実上の金本位制」を放棄した後は、世界中にドルをばら撒いた。

     米国が世界最強の軍事大国であり、ドルが「基軸通貨」である間はそのようなやり方も機能するであろうが、2020年の大統領選挙の混乱とバイデン政権の誕生は、(20~30年周期の)「米国衰退のサイン」にも思える。

    始まりは「ユーロドル」
     先進国でもそうだが、特に経済・社会が不安定な発展途上国では、「ドル紙幣」が普通に流通している。

     例えば、海外の土産物屋やレストランなどで「その国の通貨ではなくドル紙幣」で支払いをしたことがある読者は多いのではないだろうか? むしろドル紙幣を持っている観光客に対しては、自国通貨ではなく、ドル紙幣での支払いをせがむ場合も多い。

     確かに、「明日クーデターで転覆するかもしれない自国」の通貨よりも、ドルを持ちたい心理はよくわかる。世界の国々の中で、円のように強くて安定的な通貨がある国は珍しいのだ。

     個人の支払いレベルで圧倒的な強さを持つドルだが、世界的に大きな取引でも強烈な存在感を持つ。

     最近、個人向けのFX取引が普及したこともあって、世界中の国々の通貨が「ドルとの交換レートで表示される」ことはよく知られている。例えば、外国為替市場では、円とスイスフランを交換するときにも、その間に「それぞれの通貨とドルとの交換」が介在するので「クロス取引」と呼ばれる。

     また、「ユ―ロドル」というものがある。この言葉の定義はなかなか難しいのだが、冷戦期に、政治的理由で米国とのドル取引が難しくなった共産圏の国々などが、欧州の金融機関に預けた大量の「ドル預金」が起源だとされる。

     政治思想で激しく米国と対立していた国々も、「自国の通貨は信用できすにドルを頼っていた」というわけだ。

    金融制裁はなぜ効果があるか?
     現在の共産主義中国でも同様だ。胡錦濤一族の100兆円ともいわれるものを含めた蓄財のほとんどは「自国通貨の『元』」ではなく、貿易戦争や人権問題で激しく対峙している米国の通貨である「ドル」で行っていると推定される。

     自国通貨の元など全く信用していない。それは、共産党に支配されている国民も同じだ。だから、共産主義中国は自国通貨である元の持ち出し(外貨への交換)を厳しく制限するのだ。そうしなければ、多くの国民が資産を安全な外国に移し、中国国内は空っぽになってしまうだろう。

     ビットコインの価格が上昇し始めたのは、中国などの投資家が「海外へ資産を合法的に持ち出す手段」として目をつけたからともいわれる。しかし、その後当局の規制の網がこの分野にもかけられた。

     だが、元持ち出しの数少ない「抜け道」であった香港の弾圧が強化され自由度が失われる中で、「上に政策あり、下に対策あり」と言われるたくましい中国の民衆のドルへの渇望はますます強まっている。

     このような事情はイランなど米国と厳しい対立を続けている国々でも同じだ。だから、政府組織や政府高官への「金融制裁」の効果が極めて高い。

     しかし、もし敵国も含めた世界中の人々が固く信じている「ドルの価値」が実は蜃気楼であったとしたらどうであろうか? 世界中が大パニックに陥るのは間違いない。

    ニクソンショックの比ではない
     1971年のニクソンショックは、私が上田ハーローに入社するかなり前の出来事であるが、東京外国為替市場が1週間ほど閉鎖されたなどの市場の大混乱ぶりを諸先輩から聞いたことがある。

     「金ドル交換停止」はそれほどの激震であったのだ。しかも、当時の東京外国為替市場の取引高など、現在から比べれば米粒のようなものだ。

     現在の市場規模で「ドルが紙くずになる」ことがどれほど恐ろしい影響を与えるのか想像もつかない。

    なぜ「ドルの価値」は危ういのか?
     対外債務の残高や、逆に海外に保有している資産などのデータを全く無視するわけではない。

     しかし、最も重要なのは「海外で流通しているドル=ユーロドル」の量である。

     紙幣(法定通貨)というものは、その成立の過程から明らかなように「永遠に返済しなくてもよい国家の借用証」といえる。その永遠に返済しなくてもよい借用証(ユーロドル)の規模が膨れ上がった現在は大変危険だと言える。

     ユーロドルは、前述のようにもともと冷戦時代の共産圏国家の預金から始まっており、現在でも政府高官の不正蓄財資金などの裏金が大きな比重を占めているから、その実態をつかむのは難しい。しかし「とてつもなく巨大」であることだけは明らかだ。

     この膨れ上がった「ドルの価値」を世界中の人々が信じているのは主に次の3つの理由からだと言える

     1.世界最強の軍事大国である
    2.借り手として巨大だ
    3.世界最大のGDPを生み出す経済大国である

     1については、近年弱体化が語られてはいるが、今でも世界中の国々が米軍の力を恐れている。「借金返してくださいよ!」と詰め寄って、逆に爆弾を落とされても困るから、「借り手の方がむしろ強い」といえる。

     2については、米国だけではない。日本での融資においても多額の借金をしている企業は、「倒産すると貸し手の金融機関も巻き添えになりかねない」からむしろ立場が強くなる現象はよく見られる。米国を倒産させてしまったら、自国も危ういから返済を迫れないというのが世界中の「貸し手」の事情だ。

     3については、米国の産業構造に懸念がある。ここ数十年間、米国は金融とIT分野に注力し、GDPの多くもそれらの産業から生み出されるが、それがいつまで続くのであろうか? 
     3月6日公開の「投資の神様・バフェットが『日本の商社』に投資した『本当の理由』がわかった…!」で述べたように、彼はBNSF(鉄道会社)やBHE(電力会社)のように、一見、資金効率が悪く見えるインフラ産業の重要性を強調している。バフェットも「バ―チャル」とも言える米国の産業構造に懸念を抱いているのかもしれない。

     もちろん、1~3の条件がすぐに崩れるわけではないと思うが、2020年の選挙が大混乱し、バイデン大統領就任後も「ほとんど何も解決していない」米国は、南北戦争という悲劇が起こらなくても、1971年のニクソンショック、そして1975年の事実上のベトナム戦争敗戦以降の「暗くて長い」時代に向かっているような気がする。

  • ●緊縮財政で暮らしは苦しくなっても、再浮上の道はある

    藤巻氏:もしも、日本の財政が破綻したら、そこで改めて資本主義になればいいと思うのです。3~4年は厳しい時期が続くと思いますが、希望はあります。これだけ頭がよくて勤勉な国民は、そういないからです。きちんとした資本主義国家の仕組みさえつくれば、必ず再浮上、いえ“大浮上”できると思います。こんなに優秀でまじめで勤勉な国が30年間、世界でダントツのビリ成長って、おかしい話です。

    相場氏:私も日本人には希望があると思います。今の状態が続くのは、あり得ない。さらに、若者にはもっとチャンスが与えられるといいと思います。携帯電話料金を下げるとか、そういう話ではなく、正規労働者と非正規の違いをどうするのか、など、国のシステムとしても考えるべきことはたくさんあります。

    藤巻氏:財政再建を考えるなら、基本的には年間70兆円弱の税収+税外収入でやりくりすることを考える必要があります。これまでは国債を発行して年に100兆円使っていました。つまり借金をして100兆円使うから今の暮らしができていたわけです。今回はコロナ対策もあり、160兆円使うわけですが。

    相場氏:日本のように国民皆保険で守られている国は世界では恵まれているほうです。70兆円でやりくりとなると、社会保障なども含めて、相当切り捨てないといけない部分が出てくるでしょう。

    藤巻氏:これほどの借金を未来永劫(えいごう)に続けるわけにはいきませんから、今後は今のような豊かな生活は望めません。生活水準を今の6割、7割程度にしないともたないわけです。でも、終身雇用制がなくなり、自己責任になったら皆、必死で勉強しますよ。競争は激しくなるかもしれませんが、そうすれば生産性も上がり、パイも大きくなると思います。競争も厳しくなるということは、今の社会主義的な体制から、働かなければ食べていけない真の資本主義体制に変貌するということです。汗をかいた人ほど、より多く働いた人ほど豊かになる社会です。もちろん、その前提としてセーフティーネットの構築は重要です。

    相場氏:確かにそういう面はあるでしょうね。

    ●財政赤字をためないために財政均衡法の制定を

    藤巻氏:日本の一番いけなかったところは、財政赤字を放置して、財政再建を行わなかったことだと思います。なぜ、これほど深刻な赤字に鈍感だったのか。実は、以前は赤字がたまったときには警戒警報を鳴らす設定をしていたのです。

     例えば、赤字国債を発行する場合は1年限りの特例公債法案を毎年国会で通さなければならないというルールがありました。これは先人の知恵であり、警報の役割を果たしていました。それを5年ごとに変更してしまったのです。つまり警報を切ってしまったので、赤字国債を堂々と発行できるようになってしまいました。

     また、市場の警戒警報装置も取り除いてしまったのです。普通だったら、借金がたまっていけば長期金利が上がります。となると、政治家が橋や道路をつくって予算をばらまいて景気を上げようとしても、金利上昇が景気の足を引っ張ります。ここで再び、市場から警報が鳴るわけです。金利が上がれば、赤字が増えますよ、と。言ってみれば、長期国債のマーケットが、あるべき財政支出の額や赤字の額を示してくれていたのです。

     しかし日銀が国債の爆買いを始めたことにより、いくら財政赤字が増えても長期金利が上がらなくなり、ここでも警戒警報が鳴らなくなった。痛みを感じることなく、借金がたまっていったのです。

    相場氏:そうした実態をメディアが伝えることも大事です。多くの人に分かってもらうためにしっかり伝える。一方、一般の人も、どういうメディアを読むのかを選び、きちんと情報を得る。誰が正しいことを言っているのかを判断し、もちろん選挙に行って政治家を選ぶことも大切です。

    藤巻氏:私はいつも、憲法にスイスやドイツのような財政均衡条項を入れてはどうかと思うのです。憲法を変えるのは難しくても、例えば、仮に新しくスタートする新日本銀行ができたときには財政均衡法をつくる。そして、二度と財政赤字をためないと戒める。そうしないと、また財政危機を繰り返すことになると思うのです。

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