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投稿コメント一覧 (2157コメント)

  • >>No. 4634

    〈「リクルート」川崎市誘致時 助役が関連株取得 公開で売却益1億円 資金も子会社の融資〉──1988年6月18日、朝日新聞の社会面トップに大見出しが躍る。

     株価や地価が急騰するバブル景気の真っ只中、ふつうの年収ではマイホームが買えなくなってしまった人々は、これを読んで怒りに震えた。その後、朝日のみならずすべてのマスコミが追及をはじめると、首相の竹下登、大蔵大臣の宮澤喜一、中曽根康弘・前首相、安倍晋太郎・自民党幹事長など政界実力者、官界では労働省(現・厚労省)、文部省(現・文科省)トップの事務次官、新聞社の社長やNTT幹部など財界の有力者に未公開株が譲渡されていたことが次々と発覚する。株を配った江副と、それを受け取った政・官・財の要人への悲憤慷慨は燎原の火のように燃え広がった。

     1988年11月に江副は、国会に証人喚問される。時代が昭和から平成になった翌89年2月13日、自分の会社の未公開株という「賄賂」をバラ撒いた容疑で東京地検特捜部に逮捕された。

     東京・銀座にふたつの自社ビルをもつ「成り上がりの起業家」江副浩正にバッシングを浴びせる人々の怒りを背に受けて、特捜部は、検事52人、事務官159人を動員して、延べ3800人を聴取、リクルートや関連会社など80ヵ所を捜索した。「戦後最大の疑獄」リクルート事件である。

     江副は、政財官の大物20人が有罪となった一大疑獄事件の「主犯」として断罪される。

    社史から消えた創業者
     こうして、戦後もっともイノベーティブだった天才起業家の業績は、見果てぬ夢とともに歴史から抹消された。

     創業者がいなくなったリクルートは、事件後も成長を持続すると、江副が亡くなった翌年の2014年10月東証一部上場を果たし、時価総額7兆8000億円の企業となった(2020年11月時点)。だが、リクルートのホームページ上の社史には、リクルート事件のことも、創業者・江副浩正の名前もない。

    「リクルート事件・江副冤罪説」を唱えるジャーナリストの田原総一朗は、当時、リクルートコスモス上場の主幹事を務めた大和証券会長の千野冝時に尋ねている。資本主義社会では株は上がりもするし下がりもする。上場前の株は「賄賂」になるのだろうか、と。千野はこう答えた。

    「企業がはじめて、店頭や東証二部などに上場するときに、つきあいのある人、知人、社会的に信用のある人々に公開前の株を持ってもらうのは、当たり前のことで、どの企業もがやっている証券業界の常識ですよ」

    世界の成長から取り残された日本経済
     ひとりの起業家を、社会全体で吊るし上げ、犯罪者の烙印を押した「リクルート事件」とは、いったい何だったのか。

     江副の「部下」だったジェフ・ベゾスは、アマゾンの株式時価総額が1兆5000億ドル(約160兆円)に迫り、1663億ドルを保有する世界一の資産家になった(『フォーブス』誌の世界長者番付)。アカデミー賞授賞式会場の客席に座ると、司会者が紹介しテレビで大写しになるほどアメリカを代表する名士でもある。

     コンピューター・ネットワークに未来を見たふたりのその後の明暗は、日本経済と米国経済の今に投影される。

     リクルート事件で江副が逮捕された1989年、日本企業はわが世の春を謳歌していた。その年の「世界の株式時価総額ランキング」を見ると、1位は民営化から5年を迎えたNTT。2位から5位までに日本興業銀行(現・みずほ銀行)、住友銀行(現・三井住友銀行)、富士銀行(現・みずほ銀行)、第一勧業銀行(同)の大銀行がずらりと並ぶ。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)が7位、東京電力が9位で、ベストテンのうち実に7社が日本企業である。その下にはトヨタ自動車、日立製作所、松下電器産業(現・パナソニック)、東芝といった製造業が名を連ね、ベスト20社のうち実に14社が日本企業だった。

     30年後の2020年10月末時点の世界ランキングで、50位以内に入っている日本企業はトヨタ自動車(49位)ただ1社。トヨタの時価総額は約24兆円で、韓国・サムスン電子(16位、約40兆円)にも遠く及ばない。ベスト10には中国のアリババ・グループ(6位)とテンセント・ホールディングス(8位)が顔を出し、トップ50には実に9社(香港のチャイナモバイルを含む)の中国企業が名を連ねている。

     リクルート事件から30年。つまり平成の30年間、日本経済は世界の成長から完全に取り残されたのである。

     一方、世界のランキングの上位はこうなっている。

    新しい企業を生まない国になってしまった日本
     1位アップル、2位はサウジアラビアの国営石油会社のサウジアラムコ、3位アマゾン・ドット・コム、4位マイクロソフト、5位がアルファベット(グーグルの持ち株会社)、6位アリババ・グループ・ホールディング(中国)、7位フェイスブック、8位テンセント・ホールディングス(中国)、9位がバークシャー・ハサウェイ、10位がウォルマート。10社中7社が、「知識産業」であるベンチャー企業だ。

     1989年の米国ランキングでトップ10に名を連ねたIBM、エクソン、ゼネラル・エレクトリック(GE)、AT&T、タバコのフィリップモリス、デュポン、ゼネラルモーターズ(GM)といった伝統企業はいずれも上位からはじき出されている。この30年で米国経済を構成する細胞はそっくり入れ替わった。

     新型コロナウイルスの感染拡大で消費や雇用が1930年代の大恐慌並みに落ち込んだ2020年の夏、知識産業を代表するGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)の株式時価総額の合計が600兆円を突破し、東証一部上場企業2170社の合計を上回った。

     日本の最強企業、トヨタ自動車を含む日本の自動車メーカー9社は時価総額の合計で米国の電気自動車(EV)ベンチャー、テスラに抜かれた。年間の販売台数で見れば900万台を超えるトヨタに対し、テスラはわずか37万台。だが株式市場は、EVと自動運転によって古い自動車産業を破壊しようとするテスラに軍配を上げた。

     日本はいつから、これほどまでに新しい企業を生まない国になってしまったのか。答えは「リクルート事件」の後からである。

     リクルート事件が戦後最大の疑獄になったことで、江副が成し遂げた「イノベーション」、つまり、知識産業会社リクルートによる既存の産業構造への創造的破壊は、江副浩正の名前とともに日本経済の歴史から抹消された。

    古い日本を脱ぎ捨てる千載一遇のチャンス
     だが日本のメディアが、いやわれわれ日本人が「大罪人」のレッテルを貼った江副浩正こそ、まだインターネットというインフラがない30年以上も前に、アマゾンのベゾスやグーグルの創業者であるラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリンと同じことをやろうとした大天才だった。その江副を、彼の「負の側面」ごと全否定したがために、日本経済は「失われた30年」の泥沼にはまり込んでしまったのである。

     新型コロナウイルスのパンデミック禍は、古い日本を脱ぎ捨てる千載一遇のチャンスでもある。しかし正しく生まれ変わるためには、どこでどう間違えたのかを、真摯に問い直さなければならないだろう。江副が遺した大いなる成功も大いなる失敗も歴史から葬り去ってはならない。なぜなら、大いなる失敗もまた、大いなる成功への始まりになることを、人類は歴史上なんども経験している。

     私(筆者)は、江副浩正の生涯をたどることで、戦後日本が生んだ稀代の起業家があのとき見ていた景色、そして「もし」この男の夢が実現していれば、どんな日本になっていたのかを考えてみたい。未完のままのイノベーションを完成させてみたい。

     コロナ禍という人類未曾有の危機にある私たちが、今からこの国で、未来を切り開き、生き抜いていくためにも。

    【前編を読む】「日本のネット広告の父」がまとめた“奇跡の買収”…ジェフ・ベゾスとリクルート、1987年の“伝説の交渉”とは

    大西 康之

  • 天才起業家か、一大疑獄事件の主犯か…ジェフ・ベゾスの上司だった“ヤバい日本人”の正体

    「日本のネット広告の父」がまとめた“奇跡の買収”…ジェフ・ベゾスとリクルート、1987年の“伝説の交渉”とは から続く

     時価総額8兆円を超える総合情報企業「リクルートホールディングス」を立ち上げた江副浩正氏。世界に通用する大企業をつくりあげた手腕には経営者としての能力に疑いの余地がない。しかし、彼の存在は、「起業の天才」ではなく「リクルート事件」の主犯者として歴史に名を刻むことになる。

     ここでは、“光”と“闇”を見た天才の生涯に迫った、ジャーナリストの大西康之氏による書籍『 起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男 』(東洋経済新報社)の序章を引用。日本が生んだ天才起業家の栄光と挫折の一端を紹介する。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

    ◆◆◆

    同じ未来を見ていたベゾスと江副

     ジェフ・ベゾスと江副浩正。1987年の秋から1988年の秋までのほんのわずかな時間、ふたりの天才の軌跡が交わった。

     江副がリクルートの前身「大学新聞広告社」を創業したのは、ベゾスが生まれる4年前の1960年(昭和35年)である。ふたりの間には親子ほどの年の差があった。ファイテルは創業まもないベンチャーでベゾスはそこの平社員。江副はそのファイテルを買収した会社のトップ。立場は天と地ほども違ったが、ふたりは間違いなく同じ未来を見ていた。もしあのとき、ふたりがコンピューター・ネットワークの未来について語り合っていたら、意気投合していたに違いない。

     ベゾスはプリンストン大学を出てからの自分のキャリア形成について、「後悔最小化のフレームワーク」という独特の思考方法を使ってこう説明している。

    「80歳になったら、自分はウォール街を去ったことを後悔するだろうか? ノー。インターネットの誕生に立ち会えなかったことを、自分は後悔するだろうか? イエス」

     ファイテルを買収したときの江副も同じである。江副は社業がコンピューター・ネットワークと融合する未来を予見していた。

     リクルートがコンピューターを導入したのは1968年。ほとんどの会社に電卓もなかった時代のことだ。企業から請け負っていた適性診断テストの採点にIBMのコンピューターを使った。コンピューター導入を決めたときの社内報で、江副は、日本経済新聞の『情報革命』という朝刊1面の特集記事を引用しながら、コンピューター・ネットワークへの熱い想いを語っている。

    〈記事はその結びで、「第一次産業革命は農業社会から工業社会への歴史を開いたが、情報革命は工業社会の次にくる知識産業社会──知識産業が主導する未来社会を形成する、いわば21世紀への階段なのだ(中略)」と新たな可能性への追求を迫っている。(中略)わが社でもテスト事業における新たな可能性を追求すべく電子計算組織の導入を決定しました。(中略)同システムのレンタル料は、既に導入済みの1230(筆者注:IBMの機種)、同追加分および付帯費用含めて月額150万円、年間1800万円になります。これはわが社の現在の資本金に近い額です。経営的にはかなり危険性の高い投資活動です。しかし導入が遅れれば、それだけ別の危険性を大きくします〉(1967年8月11日付『週刊リクルート』)

     資本金に匹敵する投資で社運をかけたコンピューターの導入から20年間、江副はずっとコンピューター・ネットワークによる「知識産業社会」の到来を待ち続けた。

     そしてついに、1984年、日本でも通信の自由化が決定する。日本の通信を独占していた日本電信電話公社(電電公社)が民営化されNTTになると同時に、民間企業に通信事業への門戸が開放された。江副は、情報通信分野に怒濤のような投資を開始する。1987年のファイテル買収はその流れの中で打った重要な布石のひとつだった。

    30年前に江副が着手していたクラウド・サービス
     断じてその場の思いつきではない。タイミングを計り、狙いすました上での買収だ。待ちに待った知識産業社会、コンピューター・ネットワークの時代がやってくる。東大、京大の理工系の学生を大量採用し、腕っこきのコンピューター・エンジニアを中途採用して、江副は新しい時代に飛び込んだ。

     1987年にファイテルを買収した江副は、ニューヨークとロンドン、そして日本の川崎に「テレポート(通信機能を備えた巨大コンピューター基地)」を作り、3つの拠点を国際回線で結んで金融機関などにサービスを提供しようとしていた。コンピューターのパワーや通信回線の速度は今とは比べ物にならないが、現在アマゾンの収益源の柱となっている「アマゾンウェブサービス(AWS)」と同じものを、30年以上も前に構想していたのだ。つまりクラウド・コンピューティングである。

     アマゾンは、世界最大のネット小売業者だが、もはやそれはアマゾンの一部でしかない。アマゾンの事業の中でもっとも高い収益を上げている(年間約130億ドル)のが、企業向けのクラウド・コンピューティングのAWSなのである。

     AWSは、各企業がコストをかけて独自のサーバーを持つという、それまでの常識を覆した。財務会計から給与計算、顧客管理からそのデータの解析まで、ありとあらゆるサービスを用意している。セキュリティも万全。なんとCIA(米中央情報局)までもが顧客になっている。しかも、江副が狙っていたとおり、地球上あらゆるところにサーバーがあるので、たとえば深夜ロンドンで使われていないサーバーを日中の東京で企業向けに稼働させれば、電力コストが下げられるうえ、使用効率が上がるのでメンテナンスにかかる人件費も相対的におさえられる。サービス価格は企業が自前のコンピューターを持つよりはるかに安い。

     アメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)、マクドナルド、あるいは動画配信で急成長しているネットフリックス、日本企業では、日立製作所、キヤノン、キリンビール、ファーストリテイリング(ユニクロ)、三菱UFJ銀行など、世界中の名立たる企業がAWSを利用している。

    「あれだよ、あれ。僕はあれがやりたかったんだ」

     もし江副浩正が生きていたら、アマゾンのAWSを見て、そう言ったことだろう。

    襲いかかった最強の捜査機関
     江副は2013年1月31日に東京駅で倒れ、人事不省のまま2月8日に息を引き取った。76歳だった。

     いや、実際にはもっと前、52歳のときに日本という国に殺されていたのかもしれない。

     日米欧を繫ぐ夢の実現に着手した矢先、思いもしない方向から飛んできた直撃弾によって、その社会的生命を撃ち抜かれたからだ。

     江副に襲いかかったのは、捜査権(被疑者を逮捕・拘束し取り調べる)と公訴権(被疑者を裁判にかける)を併せ持ちほぼ百パーセントの有罪率を誇る“最強の捜査機関”東京地検特捜部だった。通常、事件は、警察官が捜査し、容疑者の身柄や証拠類を検察に送致して(送検)、検察官が事件を起訴するか不起訴にするか決める。しかし特捜部だけは、容疑者を拘束し取り調べ、起訴できるオールマイティな捜査機関なのである。

    「賄賂」をバラ撒いた容疑で逮捕
     皮肉なことに、追及の火の手は江副が築こうとした「日米欧テレポート」のひとつ、日本の川崎から上がる。

     江副がつくろうとしたのは大型コンピューターを何十台も設置し、大容量の高速回線で結ばれた情報通信ネットワークの要となる「データセンター」。そんなものは当時の日本にはない。前例のないものを作ろうとするとさまざまな規制の壁が立ちはだかった。だが、川崎市のやり手の助役(いまの副市長職に当たる)は、川崎駅西口前の広大な工場跡地の再開発に強い意欲を持ち、江副の「テレポート構想」に理解を示した。再開発の敷地は容積率の制限で14階建てのビルしか建てられなかったが、「特定街区」に指定され、20階建てが可能になった。

     江副は、子会社のマンション・デベロッパー「リクルートコスモス」がグループ企業で初めて上場することが決定すると、この助役にコスモスの未公開株を譲渡した。譲渡といっても無料で渡したわけではなく、同じくリクルートの子会社のノンバンク「ファーストファイナンス」から資金を貸し付けて、株を買ってもらったのだ。コスモス株は上場後に値上がりし、株をすぐに売った助役は、あっというまに1億2000万円の差益を手にした。

  • 超富裕層の資産を専属管理する「ファミリー・オフィス」の実態

    「ヘッジファンド」とは、様々な運用手法を駆使して相場の下落局面でもプラスの収益を目指すファンドのことです。今回は、ヘッジファンドを利用している投資家について見ていきます。※本連載は、GCIアセット・マネジメント代表取締役CEOの山内英貴氏の著書『オルタナティブ投資入門―ヘッジファンドのすべて』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

    日本ではなじみが薄い「ファミリー・オフィス」とは?

    ヘッジファンドは1990年代まで、海外の富裕個人投資家を中心に利用され、発展してきた。しかし、最近になって、機関投資家や金融機関、政府系機関等の利用も拡大している。

    本記事では、海外におけるヘッジファンドへの主たる投資家の顔ぶれを紹介する。

    日本ではまだなじみの薄いファミリー・オフィスとは、数十億円を超す金融資産を持つ超富裕層が、専属のファンド・マネジャー、弁護士、会計士、税理士等を雇用して、一族の資産管理などを行う会社である。

    歴史ある名家や起業に成功した創業者一族(ファミリー)が、株式を公開・売却して得た莫大な資金等を元手に、税金対策も考えながら効率的運用を行う専属オフィスだ。

    米国では80年代以降のハイテクブームで成功した起業家が続出し、ファミリー・オフィスを設立することがブーム化した。

    多くの専門家を雇うことにはコストがかかるが、有名な長者番付フォーブズ上位500の50%以上が、親からの相続を受けたのではなく、自分で裸一貫から財を成した人物たちといわれており、このようなニーズは根強いものがあるという。

    ファミリー・オフィスには、それぞれのファミリーの目的や構成によって多様な形態が存在する。複数のヘッジファンドに資金配分して運用委託することのみを行っているところから、積極的に社内に運用者を雇用して自己運用するファミリー・オフィスまである。

    また、運用も、ヘッジファンドに限らず、プライベート・エクイティ、実物投資から投資銀行的業務(企業買収・再建等)まで手がけるものもあり、多種多様であるといえよう。

    市場変動による影響を極力排して、低リスクで安定的な絶対リターンを常に狙う点が共通の特色であり、伝統的なヘッジファンドの運用スタイルに相通じるところである。

    しかも、高い運用成果ではなく、資産の実質的価値を長期間にわたって保全すること、税効果を勘案した税引後リターンの極大化を目指す点にも特徴がある。資産保全(Capital Preservation)が最重視される運用スタイルである。

    ファミリー・オフィスには、運用業務の実務経験者が、運用成果に基づく魅力的な報酬制度でスカウトされているケースが多い。

    また、意思決定も機関投資家と違って機動的に行えるために、すばらしい運用成果を持続し、多額の成功報酬を得たマネジャーが自分自身のファミリー・オフィスを設立して独立するケースも少なくない。

    しかし、小規模組織での資産運用には限界がある。そのため、あるリサーチによれば、著名なファミリー・オフィスの大半が外部の投資顧問会社を利用しており、さらにその約半数がそれら投資顧問会社を監視するための外部コンサルタントを利用している。

    運用委託している投資顧問会社の50%超がヘッジファンドであり、資産保全という観点から、伝統的運用スタイルよりもオルタナティブ投資をいかに重視しているかがうかがえる。

    一方、運用ノウハウとトラックレコード(運用成績)を身に着けたファミリー・オフィスが、外部の投資家からの資金を受け入れて、ファンド・オブ・ファンズとして合同運用を行うケースもある。

    授業料や寄付金で運営されている「大学財団・基金」
    超富裕層の資産を専属管理する「ファミリー・オフィス」の実態

    日本人にとっては意外だが、ヘッジファンドの主要投資家のひとつが欧米の大学であることは金融業界ではよく知られている。ハーバードやイェール等米国の大学の多くは私学であり、授業料・助成金・寄付金で運営されている。

    最近では、多くの大学で蓄積された金融資産の規模が大きくなっているが、大学としての競争力の源泉は財務力であるとの認識も根強く、将来に備えて効率運用を図る大学が増加している。

    3大財団の中でも最大のハーバード大学の運用総額は307億ドル(2012年6月時点)に達しており、イェール大学も190億ドルを超える資産規模となっている。

    全米大学ビジネス・オフィサー協会(NACUBO)が米国823大学、運用総資産4081億ドルを対象に行ったアンケート調査(2011年6月末)によると、10億ドル超の運用資産を持つ大学基金ではポートフォリオの20%をヘッジファンドに投資している。プライベート・エクイティ16%、不動産8%、エネルギー・天然資源9%などと合わせると全資産の約6割をオルタナティブ投資に回している。

    運用方針としては、基金の性格上、元本の保全が最優先の運用目標に掲げられている。その方針に基づいて分散されたポートフォリオを組成して運用が行われているのだが、オルタナティブ投資への配分は総じて高く、特に運用資産規模の大きい大学基金においては50%超の資産配分が実施されている。

    3大基金のひとつ、イェール大学は1991年以降の過去20年間にわたり、年平均14.2%のリターンを上げているが、ヘッジファンドを個別の資産クラスとして最初に位置づけた機関投資家として著名な存在だ。1990年7月にポートフォリオの15%をヘッジファンドに振り向ける決定を行ったのである。

    直近の2011年次報告書によると、そのポートフォリオは非常に特徴的である。オルタナティブ投資に総資産の8割以上を配分しており、その内訳をみると、ヘッジファンドを含む絶対収益が17.5%、プライベート・エクイティが35.1%、その他に不動産・天然資源等への実物投資が28.9%となっており、伝統的な株式・債券投資は19.6%にすぎない。

    イェール大学は、債券以外の資産では外部の優秀なマネジャーに運用委託し、長期的かつ良好な関係を構築することに努めているという。

    一方、全米最大のハーバード大学の基金を運営するHMC(ハーバード・マネジメント・カンパニー)は、2012年6月までの過去20年間にわたり年平均12.3%のリターンを上げているが、運用姿勢はイェール大学と異なり、多数の有能なスタッフによるインハウスでの投資戦略の実行と外部マネジャーへの委託を組み合わせて運用してきた点に特徴がある。

    長期的指針となる政策ポートフォリオにおけるオルタナティブ資産は56%だが、実際には株式や債券の資産クラスでもヘッジファンド的なロング・ショートのエクスポージャーを有しており、基金全体が巨大なヘッジファンドと理解することもできる。天然資源投資のために、森林投資の専門家チームを雇っているほどの徹底振りである。

    元本保全を目指す大学基金の運用は、投資委員会のメンバーによって政策決定されるが、こうしたメンバーにはウォール街関係者も多数含まれる。投資のリスク・リワードを理解していることが、オルタナティブ投資への先駆的な取り組みを進めてきた背景にあると考えられる。

    また、とくに米国では、金融業界と学界の融合が相当程度進んでいる。一体化していると言っても過言ではない。これも、大学側のオルタナティブ投資を受け入れる素地といえよう。

    大学基金は、投機的に高い運用成果を求めてオルタナティブ投資を積極化しているのではなく、元本保全を優先した長期的リスク分散投資として、ヘッジファンドなどオルタナティブ投資を積極活用しているのである。

    山内 英貴

    株式会社GCIアセット・マネジメント 代表取締役CEO

  • PEが狙う日本企業 英CVCの東芝への買収提案はすんなり通るのか?【馬医金満のマネー通信】

    みなさん、こんにちは。馬医金満です。

    2021年4月7日、大手電機メーカーの東芝がイギリスに本拠を置く投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズから買収の提案を受けたことが明らかになりました。僕なりの考えをまとめてみました。

    CVCと東芝、このディールは成立するのか
    東芝への買収提案の内容は、CVC側が東芝の株式を大量に取得して、非公開化するとみられており、その際の時価総額は約2兆円といわれています。

    東芝では2020年7月の株主総会の運営などをめぐり、経営陣と大株主の投資ファンドなどとのあいだで対立が続いていて、CVC側は買収によってアクティビスト、いわゆる「物言う株主」などの影響を受けない体制にすることができるとして、東芝からの賛同を求めるものとみられます。

    長らくトップを争っていた三菱電機やパナソニックが時価総額3~4兆円ということを考えると、ちょっと寂しい数字ではあるのですが、原子力発電事業などで行き詰った経験も加味すると、まあ仕方ないのかなと思っています。

    ここで個人的に気になる視点が、大きく二つあります。

    一つ目は、現実的にこのディール(売買)が成立するのかということです。東芝が原子力や防衛関連など安全保障上、重要な事業を手がけているため、法律に基づく政府の事前審査も必要になります。

    先例としては、現在の株式会社IHIエアロスペースが挙げられます。この会社は、もともと日産自動車の宇宙航空部門だったのですが、日産自動車がルノーの資本参入を受けたことによって、日産自動車の宇宙航空部門が分離され、IHIに買収されました。

    日産からIHIへ事業譲渡された理由については、日産が経営効率化のために自動車関連以外の事業から撤退したかった一方で、政府の目線として日本のロケット技術が海外資本の参入したメーカーの下にあることをよしとしない、という判断も働いたのではないかといわれています。

    これらの事情から、今回の買収提案もすんなり通るのか、はまだ疑問符を持っています。

    個人投資家はもう少し日本株に注目したほうがいい
    二つ目は、個人投資家はもう少し日本株に注目したほうがいいのではないか、ということです。

    今回の事例のように、米KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)やCVCというグローバルの名だたるPE(Private Equity=プライベート・エクイティ)ファンドは、日本の投資に拍車を掛けているという現状があります。

    特にKKRはアジアに新ファンドを組成し、日本に向けた投資額を引き上げているといったニュースが、最近ありました。

    基本的に日本の株価は割安な銘柄が残っている印象があり、そういった会社に対して今後PEやアクティビストが攻勢を仕掛けていくんじゃないかと見ています。

    なので、今後を見据えて日本株も仕込んでおくことをオススメしたいと考えています。

    ではまた来週!(馬医金満)

  • IMFは1980年以降で最大規模の世界経済の回復を予測

     国際通貨基金(IMF)は、6日に改定した世界経済見通しを発表し、このなかで2021年の世界の経済成長率見通しを6.0%とした。1月に今年の世界成長率予測を5.5%に引き上げており、そこから0.5%の上方修正となる。

    「IMF世界経済見通し」IMFの日本語サイトより https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2021/03/23/world-economic-outlook-april-2021

     もし6%の経済成長が実現すれば現行のIMF統計で遡れる1980年以降で最高となる。

     IMFのレポートの見通しによると、「この上方修正は、一部の経済大国における追加の財政支援や、年後半にワクチン接種効果による景気回復が期待されること、移動量の低迷への適応が続くことを反映したものです。」とある。

     一部の経済大国とは、特に米国のバイデン政権を意識したものであろう。ワクチン接種に関しては、日本はさておき、米政権は19日までに全成人をワクチン接種対象にするよう州政府に要請するなど、国によってはかなり普及が進み、それが経済活動の再開に直結しつつある。

     国別でみると、先進国ではトータルで5.1%。国別で、米国とスペインが6.4%と高い。スペインのサンチェス首相は8月末までに人口の約70%がワクチン接種を完了するとの見通しを表明している。

     続いてフランスの5.8%、英国の5.3%、カナダの5.0%と続く。日本は3.3%と先進国のなかでは最下位となり、次はドイツの3.6%となっている。

     日本での感染率等は他の国と比べ低いものの、ワクチン接種は進まず、景気そのものの回復も鈍い。ドイツでは、ワクチン接種が英国やイスラエル、米国に遅れを取っていることに加え、数か月に及ぶ規制にもかかわらず新型コロナウイルスの感染が拡大している。これが経済回復の重しとなっているようである。

     新興国と発展途上国では、トータルで6.7%と先進国より高い。国別ではインドの12.5%、中国の8.4%が目立つ。インド政府は夏までに3億人にワクチンを接種する計画となっている。中国もワクチンの接種を強化している。

     IMFのレポートでは、「パンデミックの今後の展開や、ワクチンが牽引する経済活動の正常化が進むまでのつなぎとなる政策支援の有効性、金融環境の動向に関連して、予測を取り巻く不確実性は大きなものとなっています」ともある。

     しかし、大規模な経済対策や非常時対応の中央銀行による金融政策は、経済が正常化に向かえば、より強力に経済に作用する可能性がある。経済の正常化が当然、優先され、経済政策や金融政策の「正常化」は遅れる可能性も高い。その分、経済成長は記録的なものとなる可能性もあり、それは物価にも影響を与えよう。それに応じて長期金利には上昇余地が生まれることになる。

  • >>No. 16

    日銀はいよいよデジタル通貨の実証実験を開始、
    デジタル通貨時代到来というよりも念の為の準備という様相も

    本日4月5日に、日銀は「中央銀行デジタル通貨に関する実証実験の開始について」をサイトにアップし、デジタル通貨の実証実験を開始したこと表明した。

     これによると、今般、必要な準備が整い、本日より実証実験(概念実証フェーズ1)を開始しましたので、お知らせしますとあり、概念実証フェーズ1においては、システム的な実験環境を構築し、決済手段としてのCBDCの中核をなす発行、送金、還収等の基本機能に関する検証を行う予定。実施期間は、2022年3月までの1年を想定している。

     日銀の黒田総裁は3月16日のFIN/SUM(フィンサム)2021における挨拶のなかで、中央銀行デジタル通貨(CBDC)についても言及した。

     「最後に、中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、一言触れておきたいと思います。日本銀行では、昨年10月に中央銀行デジタル通貨に関する取り組み方針を公表したあと、この方針に沿って、実証実験に向けた準備を進めてきました。この春からはいよいよ実験を開始する予定です」(日銀のサイトにアップされた挨拶文より)

     日銀による中央銀行デジタル通貨の実証実験は、3段階に分けて行われる。令和3年度の早い時期に始めるとしている第1段階の実験では、発行や流通といったCBDCの基本機能に関する検証を行う。

     これが今回開始される第一段階となる。第1段階の実験を1年程度行った上で行われる第2段階では、保有金額に上限を設定できたり、通信障害といった環境下でも利用できたりするかなど、通貨に求められる機能を試す。第2段階の具体的な期間については明らかにしていない。第3段階では実際に民間事業者や消費者が参加して、実用に向け実験を行う計画となる。

     黒田総裁は、日本銀行として、現時点でCBDCを発行する計画はないとの考え方に変わりはないとしている。しかし、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくことが重要であると考えているとも指摘した。

     カンボジアの中央銀行は昨年10月に、中央銀行デジタル通貨システム「バコン」の運用を開始した。カリブ海の島国バハマでも本格的な運用が始まった。中国も昨年10月に、ハイテク都市の深センを皮切りにデジタル人民元の大規模な実証実験をスタートさせた。

     さらに中国は、中央銀行が発行するデジタル通貨をめぐり国境をまたぐ決済システムの研究を加速すると2月25日に日経新聞が報じた。

     デジタル通貨については、取引情報や個人情報の保護といった課題が存在する。それとともに、個人や企業の決済や取引を記録することも可能になり、脱税やマネーロンダリングを防止しやすい利点もある。

     日銀による中央銀行デジタル通貨は、日銀に個人が口座を設けてすべて直接管理する方式ではなく、既存の金融機関が個人との間でデータをやり取りし、金融機関と日銀でデータのやり取りをするなど二段階方式で行われるようである。

     今後、実証実験を経て、それが一部で活用される可能性はある。しかし、災害時に利用できるのか、セキュリティーは大丈夫なのか、既存のネット決済への影響といった問題に加え、資金の流れが透明化されることを嫌がる人たちもいることも確かで実用化には疑問は残る。

  • 好調な米雇用統計を受けての米債の動きは利上げを意識か

     2日に発表された3月の米雇用統計では、非農業雇用者数が前月比91.6万人増となり、市場予想の65万人増程度を大きく上回り、昨年8月以来の大幅な増加となった。2月の雇用者数は37.9万人増から46.8万人増に上方修正され、1月分も16.6万人増から23.3万人増へ上方修正された。

     3月は全ての業種で雇用者数が増加したほか、労働参加率も上昇した。失業率は6.0%と、2月の6.2%から低下。しかし、コロナ禍に伴う「雇用されているが休職中」の人の扱いが引き続きデータのゆがみとなっている。こうした影響を除くと失業率は6.4%だった(2日付ロイター)。

     米国のバイデン大統領は、好調な内容となった雇用統計を称賛すると同時に、新型コロナワクチンの普及など「これまでに遂げた進展が反転する恐れがある」と気を緩めないよう釘を刺した。また、米国はインフレリスクに直面していないとの見方も示した。

     たしかに現状、米国ではインフレリスクに直面しているわけではない。しかし、物価が今後上がるであろうとの兆しはあちらこちらで出てきている。

     2日の米国市場は、グッドフライデー(聖金曜日)の祝日のため、株式市場や商品の立ち会い取引は休場となった。債券市場は東部時間正午までの短縮取引、いわゆる半ドンとなった。

     その米国債券市場では、期間の短い国債主体に利回りが上昇した。長い期間の国債の利回りも上昇したのだが、上げ幅は短い方が大きい。短い金利のほうが中央銀行であるFRBの動きに影響を受けやすく、これはFRBが想定しているよりも早い時期に行動に出る可能性も意識した動きといえる。

     すぐに利上げがあると予想したわけではないが、年内に緩和縮小を巡る討議を始めガイダンスを修正する可能性があるとの見方が出るなど、利上げ時期が想定以上に前倒しされる可能性を意識した米長期金利の動きといえた。

     市場参加者の思惑、もしくはそれをリスクと捉えて先んじて動いたことではあるが、それだけ米長期金利には上方圧力が掛かりやすい地合であるということも言える。2日の米10年債利回りは1.73%に上昇したが、1.9%もいずれ視野に入ってこよう。

  • 日本の長期金利の調整が大幅に遅れ、その反動が大きくなる懸念も

    長期金利は本来、経済実態に応じて動くものとなる。もちろん、それだけでなく需給やテクニカルに応じて動く。

     教科書的には景気が回復し、物価が上昇するとなれば、長期金利は上昇する。これが普通の姿であり、金利が上昇することで、設備投資のオーバーヒートなどを抑えることになる。それによって景気の過熱を抑えるような仕組みとなっている。景気が悪化し、物価が下落基調となれば、長期金利は低下する。これによって設備投資などを後押しするような格好となる。

     たとえば、2日に発表された米国の3月の米雇用統計では、非農業雇用者数が前月比91.6万人増と市場予想の65万人増程度を大きく上回り、昨年8月以来の大幅な増加となった。これを受けて米国の景気の回復が意識され、米長期金利は上昇した。

     長期金利はこのようなファンダメンタルズと呼ばれるものによって市場参加者の思惑も加わり、先んじて動く習性を本来持っている。米雇用統計を受けてFRB予想よりも早期に利上げに動く可能性があるとの観測も背景にあった。

     短期金利は中央銀行が物価の安定のために操作して誘導するが、長期金利は市場参加者の思惑によって市場で形成され、揺れ動くことにより、より適正な水準を模索することになる。

     長期金利(10年国債の利回り)に影響を与えるものとしてのひとつに国債の需給がある。国債の需要側としては本来、国内の金融機関などがどれだけ国債へのニーズがあるのかに応じて計られる。これに対して供給側としては国がどの程度、国債を発行するのかによって左右される。

     本来、長期金利は株式や外為などと同様に市場で形成され、参加者の思惑で値が動く。その市場心理は債券先物のチャートなどで示されることで、テクニカル分析も可能となる。つまり先行き予測に応じて、市場参加者が動きやすくなる。

     以上がある意味、教科書的な見方であるが、現在はこれらがすべて日銀の大規模な金融緩和政策、「長短金利操作付き量的・質的緩和」と呼ばれるものによって抑えられてしまい、市場参加者は身動きができない状態にある。正確には日銀が身動きが取れなくなり、米国のような中央銀行の金融政策の先行きを読んだ動きが日本では起きにくくなってしまっている面もある。

     世界的なリスクが蔓延している最中であれば、リスク回避による国債買いという動きによって長期金利が抑えられる。この状況であれば、一見、長期金利が押さえ付けられているという債券市場の異常さは感じられないかもしれない。

     しかし、リスクが回避され、あらためて景気が回復し、物価が上昇する兆しが出て、そのなかにあって国債の巨額の発行が続くという状況は、本来であれば、長期金利の上昇によってそれらが調整されるべきものである。

     長期金利の上昇を無理矢理に押さえ込んでしまうと、その反動がいずれ大きく出てくる可能性を強めることにもなりかねない。ファンダメンタルズや需給に応じた長期金利の調整が遅れればおくれるほど、跳ね上がるエネルギーが蓄積されることもありうるのである。

  • 今はバブルなのか、2000年のITバブルとの比較

     現在の金融市場をみると欧米の株価指数が過去最高値を更新し、東京株式市場でも日経平均は3万円台を回復し、30年ぶりの高値をつけている。これは果たしてバブルなのであろうか。

     2002年に元FRB議長のグリーンスパン氏は「バブルは崩壊して、初めてバブルと分かる」という言葉を残している。これは2000年における米国のITバブルの崩壊をみてのものであった。

     グリーンスパン氏がFRB議長として在任中に、米国でのいわゆる「ITバブル」が発生した。グリーンスパン氏は1996年の講演で、米国株式の上昇に対し、「根拠なき熱狂が資産価格を不当につり上げている」とリスクを指摘したが、ITバブル発生を防ぐことはできなかった。 

     1995年に米マイクロソフトのウインドウズ95が発売され、ブラウザ・ソフトのネットスケープが新規公開を果たした。このあたりからインターネット株ブームが始まった。1998年から1999年にかけては、ベンチャーの創業資金や株式への投資資金の調達が容易であったことなどを受け、IT関連企業の株価は急速に上昇。その後も過度な投資が行われたことから、IT関連企業の株価は急騰し、バブルへと発展していったのである。

     2000年の春以降、IT関連企業の収益に改善の兆しがみられなかったことなどから、IT関連企業に対する期待は急速に縮小した。1999年6月から2000年5月にかけて、FRBは政策金利を4.75%から 6.5%へと引き上げていた。このFRBの利上げも重なったことから、株価は急速に下落し、ITバブルは崩壊した。

     現在もバブルを匂わす兆候が株価そのもの以外でも、あちらこちらでみられている。ビットコインの上昇などもそのひとつであろう。また、投資家は株式を購入するために巨額の資金を借り入れていることが指摘されていたが、ニューヨーク証券取引所証拠金債務、つまりポートフォリオに対する借入金は前年同期を49%も上回り、これほど増加したのはITバブル崩壊前の1999年以来となる。

     今回の米国を主体とする株式市場の上昇の根拠としては、政府の大規模な財政政策と中央銀行による大胆な金融政策がある。その資金が資産価格を不当につり上げている可能性は十分にあり、その結果、アルケゴスの巨大損失などを招いた。

     ここにきて長期金利の上昇はいったん落ち着いてはいるが、物価などの動向次第でいずれ2%を超えて上昇してくる可能性は十分にあり、この金利上昇が、バブル崩壊のきっかけになる可能性もある。

     ただし、FRBのパウエル議長は8日、景気回復は不均一で不完全なままだと述べ、金融緩和の縮小には米国経済の一段の改善が必要との見方を示したように、大胆な金融政策が今後も続き、今後もバブルがさらに膨らむ可能性もある。

     日本のバブル崩壊前(1989年)もすでに長期金利は上昇基調となっていた。そこからタイムラグがあってのバブル崩壊となった。

     グリーンスパン氏の言にもあったが、バブルは崩壊して、初めてバブルと分かるため、現在がバブルとの認定はできない。また、それがいずれ崩壊すると指摘しても、オオカミ少年としてみられる可能性も高い。それでも、そのリスクは意識しておくべきで、細かい兆候も見逃すべきではない。

  • 顧客目線欠いたみずほ 2度の障害教訓生かせず 問われる経営責任〔深層探訪〕

     みずほフィナンシャルグループ(FG)と傘下のみずほ銀行は5日に発表した中間報告で、一連のシステム障害の対応が顧客目線を欠いていたことを認めた。最優先とすべき顧客対応で、二度にわたる大規模障害の教訓は生かされなかった。坂井辰史みずほFG社長らの経営責任が問われるのは避けられない。

     ◇初動対応は情報収集中心
     「広範な影響を認識できる情報をいくつも検知したのに、(問題)把握が遅れた」。坂井社長は5日の会見で、反省の弁を述べた。

     2月末、現金自動預払機(ATM)にキャッシュカードなどが取り込まれ、多数の顧客が店内で長時間待たされた。交流サイト(SNS)では被害情報の発信が相次いでいたにもかかわらず、結果的に放置された。

     中間報告は「初動対応として、システム障害の原因に係る情報収集が中心となり、結果として営業店への対応指示や対外告知など最優先すべきお客さま対応が遅れた」と指摘した。夜間や休日にカード・預金通帳取り込みが大量発生することへの想定や備えも不足していたという。

     ◇新システムに過信
     みずほでは2002年と11年に大規模なシステム障害が発生している。一因とされるグループ内に根強く残る「旧行意識」の払拭(ふっしょく)を目指し、基幹システムの一本化に着手した。

     新システムは、取引を処理する共通基盤「MINORI」と、周辺システムであるATMやインターネットバンキングなどそれぞれの取引機能が接続する仕組みだ。いずれかで不具合が発生した場合、その部分だけを切り離せる。影響を最小限にできるとして、「障害に強い」(関係者)との自負があった。

     あるみずほ幹部は、「新システムが全面稼働して2年程度たち、安心感が出たかもしれない」と振り返る。新システムへの過信があだとなり、切り離された部分で起こり得る顧客への影響に思いが及んでいなかった格好だ。

     ◇取引解約の声
     坂井社長は会見で、システム開発人員の再増強やトラブルが生じた際の駆け付け体制など、危機管理体制を強化すると表明した。

     ただ11年の障害後「3度目は許されない」として再発防止を誓ったにもかかわらず、今回の事態を招いた。「結果として障害が起きており、過去の取り組みを十分生かせていない」。坂井社長は過去の失敗から何を学んだかとの質問に対し、言葉少なくこう答えた。なぜみずほで障害が繰り返されるのかという疑問も残ったままだ。

     既にみずほとの取引を見直す動きが出てきており、銀行ビジネスへの影響も避けられない情勢だ。経営責任について坂井社長は明言を避けたが、「顧客最優先」を掲げながら、大勢の顧客を混乱させた責任は重い。

     ◇みずほ銀行のシステム障害をめぐる動き
     2月28日   デジタル口座へのデータ移行作業で不具合が生じ、ATMの7割が一時停止。顧客のキャッシュカードや預金通帳を取り込む騒ぎが5244件発生
     3月 1日   藤原弘治頭取が記者会見で陳謝
        3日   システムセンター間のネットワークが一時寸断。ATM29台が停止し、カードなどが取り込まれた
        7日   カードローンのデータ更新作業で不具合が発生し、定期預金取引が一部できない状態に
    11~12日   ハードウエアの故障に加え、バックアップができず、外貨建て送金に263件の遅れが発生
             藤原頭取が記者会見
       17日   坂井辰史みずほフィナンシャルグループ社長が記者会見し陳謝
             4月1日付で予定していた頭取交代の延期を発表
       18日   坂井社長の全国銀行協会の次期会長人事を延期
       31日   金融庁に報告書提出
     4月 5日   坂井社長が会見を開き、再発防止策などを発表

  • 東芝、英ファンド「2兆円買収提案」は渡りに船か
    東芝経営陣が問われる上場維持方針との整合性

    日本を代表する電機大手の東芝に対し、イギリスの投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズが買収を提案した。

    株式公開買い付け(TOB)による東京証券取引所への上場廃止を想定しており、買収総額は2兆円を超える見通しだ。東芝は副社長をトップとした専門チームを設置する予定で、CVCから詳細な提案を受けた後に、上場廃止の影響などを含めて買収提案の賛否について本格的に検討を開始する。

    巨額買収案に飛び交う「臆測」
    東芝は現在、既存株主のアクティビスト(モノ言う株主)との対立が深まっており、3月の臨時株主総会では株主提案が可決される異例の事態に発展。6月の定時株主総会では車谷暢昭社長兼CEOの再任が危ぶまれていた。

    CVCはTOBとそれに伴う上場廃止によって、こうした対立が解消されることを東芝に伝え、賛同を得ていくとみられる。いわば「ホワイトナイト」(友好的な買収者)との位置づけで、東芝関係者からは前向きに評価する声も出ている。ただ、東芝が上場維持にこだわってきた経緯があるため、その整合性も問われそうだ。

    CVCは欧州を中心に約12兆円を運用しており、日本では資生堂から「TSUBAKI」などの日用品事業を買収することを発表するなど10件程度の案件を手掛けてきた。今回は買収額がケタ違いに大きく、ほかの投資ファンドなどにも参加を呼びかけるとみられる。

    CVCが車谷社長の古巣ゆえに、買収提案に関連したさまざまな臆測も飛び交っている。車谷氏は三井住友銀行副頭取からCVC日本法人会長に転じ、2018年に東芝会長に就くまでの約1年間在籍した。東芝の社外取締役である藤森義明氏は現在、CVC日本法人の最高顧問でもある。「利害関係を考慮して2人は買収交渉を担わない」(東芝関係者)とみられるが、東芝首脳陣と親しいファンドに見えかねない。

    東芝は2015年に不正会計が発覚。翌2016年にはアメリカの原子力発電事業で巨額損失が明らかになった。会社存続も危ぶまれる中、2017年末に約60もの海外投資家を対象にした6000億円の大型増資を実施した。

    これによって、会社の資金繰りが安定し、上場廃止も避けられた一方、増資から3年以上経った今でも、モノ言う株主は議決権ベースで約25%を占めている。

    3月の臨時株主総会では旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールの投資ファンドで筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントと、アメリカのヘッジファンドであるファラロン・キャピタルがそれぞれ株主提案を出して東芝側と対立。ファラロンの提案は否決されたが、エフィッシモ提案の議案は約58%の賛成を得て可決された。

    東芝の成長に欠かせない長期投資家
    エフィッシモは2020年の株主総会で、東芝による既存株主への圧力と議決権行使の集計作業に不正がなかったかをめぐり、株主が選任する第三者が改めて調査するよう求めていた。

    6月の定時株主総会までに新たな調査結果が出るとみられるが、その結果次第では車谷社長の再任が厳しくなる可能性もある。エフィッシモとは2020年の定時株主総会でも対立し、車谷社長の再任賛成率は約57%にとどまっていた。

    もっとも、東芝の再建自体は順調に進んでいる。約50年ぶりに外部から東芝トップに就任した車谷氏は大胆なリストラを次々実行し、業績が回復。1月には約3年半ぶりに東証2部から1部にも復帰した。

    車谷社長は東洋経済による3月31日のインタビューで、「東芝での僕のミッションは(社長に就任してからの)3年ですべてやった。フェーズは再建から成長に変わる」と指摘したうえで、今後の成長に欠かせないのが「東芝を長く支えてくれる機関投資家」と断言していた。

    モノ言う株主は一般的に配当や事業再編など短期的成果を迫り、投資先企業の株価を上げた後、株式を売却して利益を得るのが常套手段だ。しかし、次の成長事業を中長期的な時間軸で育成したい東芝にとって、モノ言う株主と考え方が大きく違ってきていた。

    モノ言う株主がいまだに東芝株を保有するのは、東芝の株価がまだ割安だとみているからにほかならない。4月2日にはシンガポールの3Dインベストメント・パートナーズが東芝株4.7%分を3月29日付で追加取得し、保有比率を7.2%まで高めたことが大量保有報告書で明らかになった。同社は2020年の株主総会で東芝側と対立しており、第2位株主に浮上したようだ。

    今回CVCが示した株式の買い取り価格は、買収報道前の株価に対してプレミアム(上乗せ幅)を3割程度乗せた、1株当たり約5000円とみられる。東芝の株価は東証1部に復帰後も4000円を超えずに推移していたが、買収報道があった4月7日には前日比18%高の4530円へ急騰した。5000円にはまだ遠く、モノ言う株主がすぐに売却する環境ではなさそうだ。

    東証1部への復帰を機に、アメリカの資産運用会社ブラックロックが東芝株の5%超を保有。みずほフィナンシャルグループも5%超まで増やすなど機関投資家が大株主に浮上してきている。

    東芝の株価は5000円でも割安という声もあり、市場関係者の間では「将来は6000円が視野に入っている」という見方もある。「東芝はインフラサービスなど長期安定したビジネスにシフトしており、採算も良くなってきている。業績がしっかり積み上がれば、今後も国内外の機関投資家が戻ってくる可能性が高く、株価は上がる余地がある」(市場関係者)という。

    キオクシアの企業価値も焦点に
    今後は東芝が約4割を保有する半導体大手キオクシアホールディングスの企業価値も焦点になる。

    同業大手であるアメリカのマイクロン・テクノロジーやウエスタンデジタルがキオクシアを3兆円規模で買収検討しているという報道もあり、非上場のキオクシアの企業価値をどう見るかでも東芝の企業価値が変わってくる。CVCの買収額が割安とみられれば、今後はより高い価格で買収提案する新たなファンドや企業が現れ、東芝争奪戦に発展する可能性もある。

    東芝が上場廃止を受け入れるかも課題だ。債務超過を避けて上場維持するため、百戦錬磨のモノ言う株主をわざわざ引き連れてきたのはほかならぬ東芝自身。さらに東証2部から1部への復帰を「再建の象徴」にも掲げてきた。

    東芝関係者の中には「これまで東証1部復帰に尽力してきた。復帰したばかりで再び上場廃止を選択するのか」という疑問の声がある。こうした声は個人株主にもあるほか、約6割を占める外国人投資家の判断も焦点になる。実際に上場廃止を選択する場合は政府や株主、取引先、従業員など幅広いステークフォルダー(利害関係者)への説明が求められ、ハードルは相当高い。

    最終的には当局の審査も必要になる。日本政府は2020年、安全保障に関わる日本企業に対して、外資が出資する場合の規制を強化する改正外為法を施行。特に東芝は原子力発電や防衛などの事業を手掛けており、手続きが厳格な重点審査の対象にもなっている。

    東芝の取締役会議長である永山治氏(中外製薬名誉会長)は4月9日、「CVCの提案は当社の要請によるものではなく、当社の事業などに関する詳細な検討を経た上で行われているものでもありません。各国競争法や外国為替及び外国貿易法上のクリアランスが得られることや、資金調達が可能となることなど、多くの事項を条件としています。(中略)その検討には相応の時間を要し、複雑性を伴うものと考えられます」とコメントを出した。

    さまざまな関係者の思惑がうずまく東芝。まだ病み上がりだが、大きな岐路に立たされている。

  • 5日間で91%上昇、暗号資産の「コインベース効果」とは?

    暗号資産市場には「コインベース効果」という言葉がある。カルダノ(ADA)のような比較的に新しい暗号資産が米大手暗号資産取引所のコインベース(Coinbase)に上場されると、価格が一気に上昇することを表す言葉だ。 

    この現象は以前から知られていたが、今回、暗号資産分析会社のMessari(メッサーリ)が、コインベースに上場した暗号資産の取引開始から5日間の価格変動を調査し、バイナンス(Binance)やFTX、オーケーエックス(OKEx)、クラーケン(Kraken)、ジェミニ(Gemini)などの他の大手暗号資産取引所と比較した。

    そして、「コインベース効果」は本物であると結論づけた。

    上場後5日間で91%上昇
    「コインベースに上場された暗号資産は、91%という最も高い平均リターンとなっている。同時にマイナス32%からプラス645%と広いレンジに分布している」とメッサーリのアナリスト、ロベルト・タラマス(Roberto Talamas)氏は「The Crypto Exchange Pump Phenomenon」と題したニュースレターに記した。

    コインベースに上場した新たな暗号資産は、カルダノ(ADA)をはじめに、ankr(ANKR)、curve DAO token(CRV)、storj(STORJ)、ファイルコイン(FIL)などだ。

    カルダノは、コインベースが3月16日に同暗号資産を上場する計画を発表した際、ライバルの取引所のクラーケンにおいて2日間で36%上昇した。だがコインベースで取引が始まった3月18日には逆転した。

    コインベースでの取引開始後5日間のデータを見ると、「District0x(分散型マーケットプレイスとコミュニティのためのプラットフォーム)とCivic(ID認証ソリューション)が、それぞれ645%、493%の上昇となった」(タラマス氏)。

    また、5日間ではないが、ファイルコイン(FIL)は2020年12月にコインベースに上場して以来、価格は6倍になっている。

    |翻訳:coindesk JAPAN|編集:増田隆幸、佐藤茂|画像:Messari|原文:‘Coinbase Effect’ Means Average 91% Token Price Gain in 5 Days, Messari Says

  • あるある信用調査会社幹部によれば、「10年続くとされる中小・零細『コロナ構造不況』だが、株価は強弱『K字回復』二極化の勝組が牽引する形で堅調推移が見込まれる」という。

    コロナ禍に直撃されて経済が急激に落ち込んだ後、回復する産業と停滞する産業と「2極化」が進むことを「K字回復」という。

    急激に全体が回復する「V字」や、落ち込んだままの「L字」と比べられる。コロナ禍からの回復は、急回復の「V字」、低迷が続く「L字」、回復に時間を要する「U字回復」のいずれでもない強い企業がより強く、弱い企業がより弱くなる「K字回復」のような二極化が加速するという見立てだ。

    新型コロナ禍からの回復局面では、業種ごとの回復速度の違いだけでなく、貧富の差の拡大や一部の銘柄に限られた株価急騰など多くの場面で「K字」が出現している。

    大企業の景況感にも「K字」が顕在化していることが日銀「3月短観」で判明した。その軌跡は「V字回復」ならぬ「K字回復」であり、製造業が右肩上がりなのに対し、「宿泊・飲食サービス」は厳しさを増し「K字」の右下部分のようだ。

    景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた大企業製造業の業況判断DIは+5と市場予測を大きく上回り、前回20年12月調査から+15pt改善し19年9月のコロナ前に復活を果たした。

    米中など海外経済は昨夏以降回復に転じ、外需依存度の高い製造業に追い風となり業種別DIをみると、コロナ禍で手控えられた自動車など製造業の更新投資持ち直し等を反映し生産用機械+8(+29pt)、電気機械+18(+19pt)等が大幅改善した。

    対照的なのがサービス業の停滞であり、大企業非製造業の業況判断DIは-1と前回から4pt改善したがコロナ前19年12月+20と比べれば回復には程遠い。

    特に、年明け大都市圏での緊急事態宣言の再発令に外出自粛や店舗の営業時間短縮の動きがサービス業に逆風となり、宿泊・飲食サービスは15pt低い-81と歴史的な低水準に落ち込んだ。

    ハイテクなど製造業の回復力の強さとコロナ禍に直撃されたサービス業の停滞という「K字」の二極化である。

    コロナ禍で深刻な打撃を受けた中小企業非製造業は雇用の裾野も広く、家計には恩恵がなかなか行き届かない。コロナ禍に直撃された中小・零細企業の多くは内需産業であり、円安による輸入物価上昇が輸出製造業と内需産業の格差を一段と広がる。

    いずれにせよ、「コロナ構造不況」は向こう10年にわたって「K字回復」が象徴する産業「二極化」を深化させるが、株価は二極化の「勝ち組」が牽引する格好で堅調裡の推移が見込まれる。

  • ビットコインは横ばい、先物プレミアムは上昇──投資家の強気姿勢を反映【市場動向】

    ●ビットコイン(BTC)は6日16時(日本時間7日6時)時点、58,246.41ドル付近で取引され、過去24時間で1.31%下落した。

    ●過去24時間の価格レンジは、57,421.85~59,484.20ドル(CoinDesk 20のデータ)。

    ●1時間足チャートは、10時間平均と50時間平均を下回っており、テクニカル分析では弱気シグナルとなっている。

    先物プレミアムは再び上昇
    このところのビットコイン(BTC)の値動きは、アルトコインの上昇に比べるとエキサイティングなものではなかった。

    ビットコインはこの1週間、56,552ドルから60,102ドルの狭いレンジで取引されている。一方、イーサリアム(ETH)は20%以上値を上げ、2,100ドル超の史上最高値を記録した。

    一方、ビットコインのデリバティブ市場のトレーダーは、将来の価格上昇への期待を強めている。

    FTX、ビットメックス(BitMEX)、デリビット(Deribit)、バイナンス(Binance)のような個人投資家向けデリバティブ取引所では、強気投資の指標となる「先物プレミアムレート(年率)」が平均22~25%となっている。一方、機関投資家向けのシカゴ・マーカンタイル取引所では約13%。

    先物プレミアム(先物価格と現物価格の差)の上昇は、このところビットコイン価格が比較的横ばいで推移しているにもかかわらず、多くの個人投資家は価格上昇を予測していることを示している。

    「価格上昇を期待するトレーダーが、積極的にロングポジションをとっている」とアーケーン・リサーチ(Arcane Research)のリサーチ責任者はコメントした。

    強気姿勢を強めると、反発時のリスクも大きくなる。

    ビットコイン先物市場は2021年第1四半期(1月~3月)、275億ドルのロングポジションの清算を経験している。これはビットコインが2020年末から2021年にかけて上昇したことで、市場に膨大なレバレッジが積み上がったことを反映していたとアーケーン・リサーチは4月6日に発行したニュースレターで指摘した。

    「先物プレミアムが高くなり過ぎた時はいつも懸念が生まれる。市場が過度に自信を持ち、レバレッジをかけていることを示しているからだ。このような状況は通常、ポジションの清算や急激な引き下げにつながるため、トレーダーは現在の環境ではリスク回避を検討すべきだろう」(アーケーン・リサーチのニュースレター)

    |翻訳:coindesk JAPAN|編集:増田隆幸、佐藤茂|画像:CoinDesk Bitcoin Price Index|原文:Market Wrap: Bitcoin Futures Premium Rises Again Despite Bitcoin’s Relatively Flat Performance

  • 巨額負債を抱える日本で、流行りの経済理論「MMT」を財務省があっさり否定したワケ

    そもそもMMTとは?

     近年、「MMT」(現代貨幣理論)なる言葉を耳にする機会が増えてきた。

     「通貨発行権を持つ国の国債はデフォルトしないので、政府が膨大な借金を抱えていても問題はない」

     端的に言えばそういう理屈だが、巨額債務を抱えているにもかかわらず、インフレも金利上昇も起きていない現在の日本の状況を説明する理屈として、注目されているようだ。

     2月には、国民民主党・無所属クラブの高井崇志衆院議員が財務省とやりとりし、角田隆主計局次長から「財務省はMMTをまともな理論だとは思っていない。『実験的にやってみて失敗した』では済まない」という言葉を引き出している。

     先に言っておけば、欧米諸国の経済学界では、「MMT」は新たな経済理論として認識されていない。

     理屈の中身はケインズ、シュンペーターらが残した標準的な経済理論を原型に、会計論など様々な理論を加味して導かれたもので、そこに何ら新鮮味はないからだ。

     「財政赤字なんて気にする必要はない」という言い方をすると、いかにも極端な主張のように思われるが、「巨額な財政出動をしても、インフレ率は目標の範囲内に収束する」という標準理論と、言っていることは根本的に変わらない。

     その主張は、日本において「リフレ派」と呼ばれる人々が唱えてきたことにも重なる部分がある。

     リフレ派とは、量的緩和や日銀の国債引き受け、ゼロ金利政策の継続など、インフレ目標値を設定した上でさまざまなマクロ経済政策を推奨し、長く続くデフレ不況からの脱却を目指す立場を指す日本独特の用語である。

     リフレ派の考え方では、日銀を政府の「連結子会社」のように捉え、政府と日銀を一つの統合したバランスシートによって分析する。

     この手法は、標準的なファイナンス理論と何ら変わらず、米国主流経済学者から見れば、あえて「派」などと名指しするほどの目新しさはない。それが、日本で「リフレ派」とわざわざ呼ばれているのは、日本の経済学界があまりに後進的で、標準理論にキャッチアップできていないからだろう。

     こうしてみると、「リフレ派」とほぼ同じ主張である「MMT」も、経済理論から見れば、標準に則ったものであり(強いて言えば、ワルラスの法則やインフレ目標といった正統的な手法に準拠するリフレ派のほうが、説得力には長ける)、いまさらもてはやすような内容ではないのだ。

     それを、一部の政治家が都合よく取り上げ、あたかも目新しい理論がでてきたかのように、喧伝しているだけである。

     耳慣れない言葉で耳目を引き、世間の注目を集める。政治の文脈のなかでは、こうした「借用」はしばしば見られる。

     たとえば、小泉純一郎政権で盛んに用いられていた「構造改革」というキャッチフレーズは、そもそも左派運動で使われていたものだ。それを、小泉氏がスローガンとして効果的に借用したのだ。

     最近のMMTの扱われ方も同じ。政治的な文脈で使われている理屈でしかない以上、国の財政を預かる財務省が否定的なスタンスをとるのも、無理からぬ話なのだ。

  • ビットコインよりも小さな需要がイーサリアムを高値に押し上げた:データ分析

    イーサリアム(ETH)を史上最高値の2100ドルへと導いた需要は、ビットコイン(BTC)を3月に6万1000ドルに押し上げた需要よりも少ないことが、ブロックチェーン・データアナリストの分析でわかった。

    チェイナリシス(Chainalysis)のチーフエコノミスト、フィリップ・グラッドウェル氏は、1850ドルを上回る価格で購入されたイーサリアム(ETH)は比較的少なく、2000ドル以上の値段で買われたボリュームはさらに少なかったと米CoinDesk TVの番組「First Mover」で述べた。

    「重要なことは、人々の購入価格はその価格水準での需要レベルを示す。つまり、2000ドルでは、需要はあまり大きくない」(グラッドウェル氏)

    4月5日時点のブロックチェーンデータは、1800ドル付近にイーサリアム購入のきわめて大きな動きが存在したことを示していると同氏はニュースレターの中で指摘する。

    この価格レベルは、強いサポートになる可能性が高い。なぜなら獲得コストは過去の異なる価格レベルでの需要を示しているからだ。分析は、買い手が獲得コストを下回る価格で暗号資産を売却する可能性は低いと想定している。

    イーサリアムが史上最高値を更新した3日後の4月5日、1850ドル以上の価格で購入されたイーサリアムは70万ほどに過ぎず、そのコストは約14億ドル。一方、ビットコインが史上最高値に達してから2週間後の3月29日、5万7000ドル以上の価格で購入されたビットコインは約23万8000、そのコストは約140億ドルだったと同氏は指摘した。

    「(直近の)2151ドルの史上最高値は大規模なサポートレベルをいく分超えるものであり、比較的少ない需要が牽引していた。これは高価格レベルでの先行需要が大きかったビットコインとは対照的だ」(グラッドウェル氏)

    グラッドウェル氏の4月1日のニュースレターから引用した下図も、3月29日の現物価格よりも高い値段で10万ビットコインが購入されたことを示している。

    ヒューマンバイアス
    だがブロックチェーンデータをもとに市場の動きを分析することには限界がある。データは高い透明性をもたらし、暗号資産がネットワーク上でどのような動きをしているかを投資家やトレーダーが理解する手助けになるものの、その解釈や投資家心理の推測は人間に依存しており、データは我々の判断を誤らせる可能性もある。

    グラッドウェル氏は、自身の分析には多少の「下方バイアス」が含まれており、イーサリアムのサポート価格レベルを低くしている可能性があると述べた。

    同氏の分析は、人々は損失を出してイーサリアムを売ることはないという仮定に基づいている。仮にイーサリアム保有者が損失を出してもイーサリアムを売却することを厭わないとすれば、1800ドルのサポートレベルは期待したほど強いものではなくなる可能性がある。

    グラッドウェル氏によると、2018年にイーサリアムを高値で購入した投資家の多くは、損失を出してイーサリアムを売却したが、当時、多くのビットコイン保有者は弱気市場を通じてビットコインを保有し続けたという。

    「小規模だが非常に強気のイーサリアム購入者が存在していることは、イーサリアムの史上最高値は、少なくともビットコインに比べてサポートベースが小さい傾向にあるという私の懸念を裏付けている」とグラッドウェル氏は述べた。

    |翻訳:山口晶子|編集:増田隆幸、佐藤茂|画像:Chainalysis|原文:Ether’s Record Run Came With Less Support Than Bitcoin’s, Blockchain Analysis Shows

  • 東芝2兆円買収提案に利益相反の懸念!? ちらつくのはあの「プロ経営者」の影

    「提案は来ている。これから取締役会で議論する」

     7日朝、日経新聞が「東芝に買収提案へ 2兆円超で非公開化 英ファンド」との記事を1面トップで報じた。M&Aがらみのスクープが飛び出すと、当事者は「ノーコメント」と言うケースが多い。しかし、東芝の車谷暢昭社長兼最高経営責任者(CEO)は新聞を見て自宅へ集まった報道陣に対して、「その話ですか」と言わんばかりの口調で冒頭のように述べた。

    車谷社長を救うために買収提案は行われたのか?
     その後、東芝は英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズ(以下CVC)などによる買収の初期提案を受領し、審議を開始したと発表。CVCは2兆円を超える金額を投じて、東芝を買収し、株式を非公開化する提案をしたという。

     しかし、この突然の買収提案にはいくつもの疑問点が残る。

     まず、車谷社長とCVCとの関係性だ。実は車谷氏はいま窮地に立たされており、彼を救うためにこの買収提案は行われたのではないかという見方ができるのだ。

     昨年7月に開かれた株主総会で車谷氏は苦い思いをした。議案の1つだった「取締役の再任」で車谷氏の続投に賛成したのは約57%と12人の取締役の中で最低だった。

     さらにこの総会にはケチがついた。開催後に一部株主の議決権が無効になったことが判明。一部の外国人投資家が東芝からの圧力を受けて議決権行使を断念したことも明らかとなった。

    エフィッシモが放った「二の矢」
     そこで東芝の筆頭株主で、「物言う株主」としても知られるエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが昨年末に株主総会の公正性を調査するよう求めた。東芝がこれを拒否したため、エフィッシモは「ニの矢」を放った。再調査をするかどうか、株主に判断を委ねようと、臨時株主総会の開催を請求したのだ。この請求により、臨時総会が今年3月18日に開かれ、エフィッシモの主張は賛成多数で可決された。

     臨時株主総会で決まった「再調査」の結果はまだ出ていない。しかし議案が可決されたのを見て、「昨年の株主総会が現経営陣によって都合よく運営された」という心象を持った株主は増えたはずである。陣頭指揮を執っていた車谷氏のイメージが悪化する可能性は高い。このため、今年の6月に開かれる予定の株主総会で、車谷氏の再任に賛成する比率はさらに下がり、場合によっては50%を切って再任を否決される可能性も出てきた。

    CVCは“車谷社長の”ホワイトナイト?
     車谷氏が絶体絶命の状況の中、CVCの買収提案は飛び込んできた。今後、東芝が買収を受け入れ、株式を非公開化すれば、エフィッシモを含む「物言う株主」の揺さぶりから現経営陣は逃れることができる。さらに、CVCが現在提案しているように、東芝の株式を現在の株価よりも3割高い水準で買い取るというのであれば、うるさ型の株主は東芝株を手放す可能性もある。

     つまり、CVCは“東芝の”というよりも“車谷氏の”ホワイトナイト(白馬の騎士)のように映るのだ。

     そもそも車谷氏は三井住友銀行で副頭取を務めたバンカーだが、東芝の社長兼CEOに就く前はCVC日本法人会長の座にあった。車谷氏が「現在、CVCとは何の関係もない」といくら強弁したとしても、古巣が手を差し伸べている構図そのものは変わらない。

    日経新聞では「広い意味での利益相反にあたる」
     さらに怪しいことがある。社外取締役に就いている藤森義明氏の存在だ。ひょっとすると、車谷氏よりこちらの方が問題かもしれない。

     同氏は現在、CVC日本法人の最高顧問でもある。そのポストに見合う報酬をもらっているであろう人が、片や東芝の取締役として、「買収提案に賛成するか反対するか」を主張できる立場にあるのだ。日経新聞の8日付朝刊は、車谷氏や藤森氏とCVCとの関係について触れたあとで、国内外のM&Aに携わる弁護士による次のコメントを伝えている。

    〈広い意味での利益相反にあたる。注意して対応しなければ株式買収請求権や役員責任の問題につながるリスクもある〉

     別のビジネス系の弁護士は「文春オンライン」の取材にこう答えた。

    「車谷社長がCVCのOBだからといって、直ちに利益相反とか違法性ということにはなりません。しかし、疑念を抱かれやすい状況であることは確かです。

     車谷社長にせよ藤森取締役にせよ、特別な利害関係のある取締役として、本件の取締役会決議には参加しない対応を取ることになるでしょう」

    資生堂、武田薬品でも同じ構図のM&Aが
     藤森氏に関しては、今回の東芝と全く同じ構図のM&Aが最近あった。2月に資生堂がヘアケア商品「TSUBAKI」を含む日用品事業をCVCに1600億円で売却した件だ。藤森氏は旧知の間柄である資生堂社長兼CEOの魚谷雅彦氏に誘われ、昨年から同社の社外取締役にも就いている。

    「さらに藤森氏は過去に東芝の子会社である東芝テックをCVCに売却しようと動いたこともあります。また武田薬品工業の社外取締役という肩書を持つ一方、同社の子会社で一般用医薬品を手掛ける武田コンシューマーヘルスケアをCVCに売ろうと画策したこともある」(経済ジャーナリスト)

    華麗な転身を続け「プロ経営者」と評価された
     一体、藤森氏とはどんな人物なのか。藤森氏は1975年に東京大学工学部を卒業した後、日商岩井(現双日)に入社。その後に転職した米ゼネラル・エレクトリック(GE)で頭角を表し、2008年には日本GE会長兼社長兼CEOに就任。2011年にはLIXILグループ(現LIXIL)の社長兼CEOに就いている。

     当時、華麗な転身を続けた藤森氏を「プロ経営者」と評価する声が高まった。同氏はLIXILグループで、海外企業を相次ぎ買収した。

     11年12月にはカーテンウォール業界の名門で、イタリアにあるペルマスティリーザに約600億円、13年8月には米衛生陶器大手のアメリカンスタンダードに約530億円、14年1月には水栓金具で欧州最大の独グローエに約4000億円を投じ、それぞれ手に入れた。

     しかし買収にあたって実施するデューデリジェンスがかなり甘かったようだ。グローエの中国子会社の不正会計が見抜けず、LIXILグループは660億円の損失を計上。ペルマスティリーザも巨額の損失を出した。その経営責任を取って、同グループを退任したのは2016年のことだった。

     その後、LIXILグループでは藤森氏の後任社長兼CEOとなった瀬戸欣哉氏と同社の創業家出身で実質的なオーナーだった潮田洋一郎氏が対立。潮田氏は瀬戸氏を実質的に解任する一方で、CVCにLIXILを買収させ、株式を非公開化しようとした。この時にも藤森氏は潮田氏と手を結び、暗躍している。

    CVC日本法人社長は東大アメフト部の後輩
     ちなみにCVC日本法人で社長を務める赤池敦史氏は藤森が東大在学中に所属したアメリカンフットボール部「ウォリアーズ」の後輩である。こうした人間関係も踏まえると、藤森氏はその人脈を伝って社外取締役に就いた先で、M&A案件を探し、それを後輩が日本法人の代表を務め、自身も最高顧問として籍を置くCVCに買わせているように映る。

     7日午後、東芝は取締役会を開き、買収提案について副社長をトップとするチームで検討していくことを決めた。今後、この買収劇がどう進むかは予断を許さない。しかし、今回の買収提案には、解かれるべき謎が既にいくつもあることだけは間違いない。

    西田 壮太/Webオリジナル(特集班)

  • 増税などを含む米税制改革の要点整理

    本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

    ●法人税収を歴史的、国際的な規範に向け方向転換するメイド・イン・アメリカ税制案が公表された。

    ●税制案は法人税引き上げなど思い切った内容を含み、増税反対の共和党との協議はすでに困難。

    ●ただ、関連法は民主党単独で9月までに成立も、市場への影響は、審議の行方の見極めが必要。

    法人税収を歴史的、国際的な規範に向け方向転換するメイド・イン・アメリカ税制案が公表された
    バイデン米政権は4月7日、「メイド・イン・アメリカ税制案(Made in America Tax Plan)」を発表しました。この税制案の目的は、インフラ投資、研究開発、製造業支援を持続的に増やすための資金を新たに生み出すことです。15年で約2.5兆ドルの税収増が見込まれており、関連法が成立すれば、3月31日に公表された「米国雇用計画(American Jobs Plan)」の支出(8年で約2.25兆ドル)は、完全に回収されることになります。

    税制案の基本的な考え方は、米国企業と労働者の競争力を高めることを念頭に置き、米国企業に利益や投資の海外移転を促すような現行の税制を改訂し、各国による法人税率の引き下げ競争を終わらせるため国際的な最低税率の導入を目指すというものです。また、化石燃料の生産者への長年にわたる補助金を廃止し、クリーンエネルギーの生産者に対する税制優遇措置を提供する方針も示されています。

    税制案は法人税引き上げなど思い切った内容を含み、増税反対の共和党との協議はすでに困難
    [図表1]法人税の具体的な改革案 (出所)米財務省の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

    法人税の具体的な改革案は図表1の通りです。すなわち、(1)法人税の税率を21%から28%に引き上げる。(2)多国籍企業に課す最低税率を強化する。(3)国際的な最低税率の導入を目指す。(4)高い利益を計上している一方、課税所得が少ない大企業に対し、15%の最低税率を制定する。(5)超過収益を生む無形資産に対する税制上の優遇を、新しい研究開発に対する優遇に置き換える、などです。

    このように、バイデン米政権の税制案は、かなり思い切った内容になっていますが、野党共和党は、もともと増税そのものに反対の立場です。共和党指導部内からは、米国雇用計画についても、インフラ投資は老朽したインフラの刷新に絞り込むべきとし、計画の規模を3割程度に圧縮するよう求める声も出ています。そのため、税制改革を共和党との協議で進めることはすでに困難な状況です。

    ただ、関連法は民主党単独で9月までに成立も、市場への影響は、審議の行方の見極めが必要
    [図表2]米国株式市場の動き (注)データは2021年3月30日から4月8日。SOX指数はフィラデルフィア証券取引所の半導体株指数。(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

    税制改革を含む米国雇用計画について、民主党単独で関連法を成立させるには、財政調整措置という特別な審議手法を使うことになります。ただ、財政調整措置は会計年度1回の使用が原則とされており、今年度(2020年10月~2021年9月)は、3月に成立した追加経済対策で、すでに使用済みです。ところが、米上院の議事運営専門家は5日、米国雇用計画の関連法案について、今年度の審議で財政調整措置を再利用できるとの判断を下しました。

    これにより、民主党単独で9月までに米国雇用計画の関連法が成立する可能性が高まりました。ただ、民主党内には、法人税率の28%への引き上げには反対する向きもみられ、また、米国の株式市場も、今のところ落ち着いた動きとなっており、増税を強く懸念する様子はみられません(図表2)。増税の最終的な規模や、市場への影響については、今後の具体的な審議の行方を見極める必要があると思われます。

  • <12日・月>
    16:00 トルコ2月経常収支
    16:00 トルコ2月失業率
    (トルコ・リラは下げ止まりからの反発と、再下落をにらんだ展開)
    18:00 ユーロ圏2月小売売上高
    (コロナ変異種の拡大や経済制限などが悪材料。先行きワクチン期待は下支え)
    22:00 テンレイロ英中銀委員、講演[ウェブセミナー]
    (ワクチン普及や経済制限の緩和などで、緩和様子見や前向き判断ならポンドを支援)
    23:30 加1-3月期企業景況感調査
    (ワクチン期待や米国などの景気回復が下支え)
    26:00 米財務省3年債、10年債入札
    (金利上昇一服=債券価格下落一服で、押し目買い需要が示されると金利低下とドル安に)
    26:00 ローゼングレン・ボストン連銀総裁、経済見通しについて講演
    (金利上昇やインフレ・リスクへの考え方、インフラ投資計画の政策影響判断などが焦点に)

    <13日・火>
    08:01 英3月BRC小売売上高
    (ワクチン普及や経済制限の緩和などが下支え)
    10:30 豪3月NAB企業景況感指数
    10:30 豪3月NAB企業信頼感指数
    (資源相場の底堅さや世界経済の回復傾向、先行きワクチン期待が下支え)
    15:00 英2月鉱工業生産
    15:00 英2月製造業生産
    (ワクチン普及や経済制限の緩和などが下支え)
    15:00 英2月商品貿易収支
    (EU離脱影響による輸出減と貿易赤字の拡大はリスク)
    16:00 トルコ2月鉱工業生産
    (トルコ・リラは下げ止まりからの反発と、再下落をにらんだ展開)
    18:00 ユーロ圏4月ZEW景況感指数
    18:00 独4月ZEW景況感指数
    (コロナ変異種の拡大や経済制限などが悪材料。先行きワクチン期待は下支え)
    21:30 米3月消費者物価指数
    (資源高や感染要因での供給制約、コロナ打撃の反動などが、短期的な物価の上昇要因に)
    25:00 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、オンラインイベントで講演
    25:00 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、FRBイベントに参加
    (金利上昇やインフレ・リスクへの考え方、インフラ投資計画の政策影響判断などが焦点に)
    26:00 米財務省30年債入札
    (金利上昇一服=債券価格下落一服で、押し目買い需要が示されると金利低下とドル安に)
    時間未定
    中国3月貿易収支
    (不動産抑制などによる引き締め策や半導体不足、米中対立などが、輸入と輸出の鈍化要因にも)

    <14日・水>
    09:30 豪4月ウエストパック消費者信頼感
    (資源相場の底堅さや世界経済の回復傾向、住宅活況などが下支え)
    11:00 ニュージーランド中銀、政策金利発表
    (市場予想は現状維持。住宅過熱への警戒姿勢は、利上げ思惑の通貨高と景気抑制の通貨安の綱引き)
    16:00 デギンドスECB副総裁、欧州議会に出席
    (金利上昇や変異種などへの懸念が示されると、緩和強化思惑でユーロ安にも)
    18:00 ユーロ圏2月鉱工業生産
    (コロナ変異種の拡大や経済制限などが悪材料。先行きワクチン期待は下支え)
    20:00 南ア2月小売売上高
    (ランドは調整下落を経ながらの下限切り上がりトレンドの持続をにらむ)
    20:45 パネッタECB理事、欧州議会に出席
    21:30 米3月輸出入物価指数
    (資源高や感染要因での供給制約、コロナ打撃の反動などが、短期的な物価の上昇要因に)
    23:30 EIA週間石油在庫統計
    (ワクチン普及や景気改善、夏季に向けた資源需要が、在庫減と原油下支え要因に)
    23:30 ハスケル英中銀委員、講演[ウェブセミナー]
    (ワクチン普及や経済制限の緩和などで、緩和様子見や前向き判断ならポンドを支援)
    26:00 シュナーベルECB理事、講演[ウェブセミナー]
    (金利上昇や変異種などへの懸念が示されると、緩和強化思惑でユーロ安にも)
    27:00 米地区連銀経済報告[ベージュブック]公表
    (ワクチン普及や経済対策の進展がプラス材料。金利上昇や変異種懸念は悪材料)
    25:00 パウエルFRB議長、ワシントン経済クラブで講演[オンライン]
    27:30 ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会に参加
    28:00 クラリダFRB副議長、オンラインイベントに参加
    29:00 ボスティック・アトランタ連銀総裁、オンラインイベントに参加
    31:05 カプラン・ダラス連銀総裁、国内外の経済問題に関する討論会に参加
    (金利上昇やインフレ・リスクへの考え方、インフラ投資計画の政策影響判断などが焦点に)
    米企業決算
    JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー[20:00]
    ゴールドマン・サックス・グループ[20:30]
    ウェルズ・ファーゴ[21:00]
    (すでに収益V字回復期待で株高が進む。一旦の好材料出尽くしや、伸び悩みの失望などに警戒)

    <15日・木>
    10:00 豪4月消費者インフレ期待
    10:30 豪3月雇用統計
    (資源相場の底堅さや世界経済の回復傾向、住宅活況などが下支え)
    15:00 独3月消費者物価指数[確報]
    (資源相場の上昇やユーロ高の一服などが、物価の押し上げ要因にも)
    20:00 トルコ中銀、政策金利発表
    (市場予想は現状維持。先行きインフレ対処の利上げが示唆されると通貨反発を後押し)
    21:30 加2月製造業出荷
    (原油相場上昇や雇用復調、先行きワクチン期待などが下支え)
    21:30 米3月小売売上高
    21:30 米4月ニューヨーク連銀製造業景況指数
    21:30 米4月フィラデルフィア連銀景況指数
    (追加経済対策やワクチンの進展期待.雇用復調が支援材料。金利上昇や変異種懸念は悪材料)
    21:30 米新規失業保険申請件数
    (前週は2週連続での申請増加=失業悪化となっていた)
    22:00 加3月中古住宅販売件数
    (金利低下効果や雇用復調、先行きワクチン期待などが下支え)
    22:15 米3月鉱工業生産
    (追加経済対策やワクチンの進展期待.雇用復調が支援材料。金利上昇や変異種懸念は悪材料)
    23:00 米4月NAHB住宅市場指数
    (2月の寒波打撃の反動や雇用復調などが下支え。金利上昇は悪材料)
    24:30 ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会に参加[オンライン]
    27:00 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演[オンライン]
    28:45 クラリダFRB副議長、SOAC[シャドウオープンマーケット委員会]に出席
    29:00 メスター・クリーブランド連銀総裁、講演[オンライン]
    (金利上昇やインフレ・リスクへの考え方、インフラ投資計画の政策影響判断などが焦点に)
    米企業決算
    アルコア
    ペプシコ[19:00]
    バンク・オブ・アメリカ[19:45]
    チャールズ・シュワブ
    USバンコープ
    ブラックロック
    デルタ航空
    シティグループ[21:00]
    (すでに収益V字回復期待で株高が進む。一旦の好材料出尽くしや、伸び悩みの失望などに警戒)

    <16日・金>
    11:00 中国1-3月期GDP統計
    11:00 中国3月小売売上高
    11:00 中国3月鉱工業生産
    (不動産抑制などによる引き締め策や半導体不足、米中対立などが鈍化要因にも)
    18:00 ユーロ圏2月貿易収支
    (世界景気の復調や、英国のEU離脱による対英収支の改善が黒字増要因にも。ユーロ下支え)
    18:00 ユーロ圏3月消費者物価指数[改定値]
    (資源相場の上昇やユーロ高の一服などが、物価の押し上げ要因にも)
    18:00 英中銀のカンリフ副総裁、ウッズ副総裁が講演[ウェブセミナー]
    (ワクチン普及や経済制限の緩和などで、緩和様子見や前向き判断ならポンドを支援)
    20:30 トルコ2月住宅価格指数
    (トルコ・リラは下げ止まりからの反発と、再下落をにらんだ展開)
    21:15 加3月住宅着工件数
    (金利低下効果や雇用復調、先行きワクチン期待などが下支え)
    21:30 米3月住宅着工件数
    21:30 米3月建設許可件数
    (2月の寒波打撃の反動や雇用復調などが下支え。金利上昇は悪材料)
    23:00 米4月ミシガン大学消費者信頼感指数[速報]
    (追加経済対策やワクチンの進展期待.雇用復調が支援材料。金利上昇や変異種懸念は悪材料)
    日米首脳会談[ワシントン]
    (供給網の再構築や中国包囲での同盟強化が示されると、ドル/円の安定化要因に)

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