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呼吸困難の掲示板

リスク回避の尺度であり、米株投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE) ボラティリティー(VIX)指数は、14カ月ぶりの低水準からの反動調整的な上昇が本格化してきた(リスク回避)。

最近はVIX急上昇のあと、6−9週は上昇警戒の不安定さが続くこともあり、6月15−16日の米FRBによるFOMCにかけては警戒が続く。一方で最近のカネ余り下での米株安は、月替わり後の新規資金流入などもあって「月末底値」の傾向もあり、当座は短期的にインフレを押し上げている供給ノイズの見極めなどが焦点になる。

「米グーグルの共同創業者が5月7−11日にかけて、保有するグーグル親会社アルファベットの持ち株を放出したことは、米ITハイテク株のコロナ特需やFRB緩和恩恵など受けた高騰の一旦の天井ピーク前兆として注視される」。
外国人投資家の動向に詳しい国内証券の関係者はこのように警戒感を示す。

同社創業者であるセルゲイ・ブリン氏は5月7日、10、11日にかけて、「1億6300万ドル(約180億円)相当のアルファベット株を売却した」(13日ブルームバーグ)。今回の売却は、あくまで事前に取り決められた取引計画に基づいて行われたもので、同氏の相場観や資産事情との関係は不明ながら、2017年2月以来の売却とされている。その後の約4年は保有を続けていたわけで、一旦の高値売り抜けや、現状からの株高のバブル化リスク、米バイデン政権によるIT企業への規制リスクなどとの関係で注視される。

こうした個別株の動き以前の問題として、米国株はインフレ懸念の高まりが、FRB超緩和策などによる過剰流動性相場の「終わりの始まり」として警戒され始めた。FRBによる量的緩和縮小の議論開始時期などについて、前倒しリスクに疑心暗鬼となりつつある。リスク管理の観点として、一旦の高値売り抜けや、ヘッジ対応の強化などが意識されやすい。

もっとも、米国株市場ではリスク回避の尺度であり、米株投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE) ボラティリティー(VIX)指数が、4月14日に一時15.38にまで急低下するという「過剰楽観の行き過ぎ」が見られてきた。コロナ危機直前である昨年2月以来、約14カ月ぶりの低水準となっている(リスク選好、米株は上昇)。

過去実績として「1年スパンのレンジ下限下抜け」となるようなVIX急低下と過剰楽観は、その後に揺り戻し的なVIX急上昇と短期株安に見舞われている。今回もまた4月中旬からの米国企業による決算発表での「総体的なV字回復」という好材料の消化一巡もあって、リスク軽視の揺り戻しがVIX上昇と米株安の一因となってきた。

直近でVIXは5月7日の16.68を最低として、12日には一時28.38へと急上昇している(リスク回避、米株は下落)。現在と同じように米長期金利の上昇が警戒された、3月8日以来の高水準となってきた。
VIXは2019年以降の直近傾向として急上昇した場合、「6−9週間」はVIX再上昇が警戒される不安定さとリスク回避の地合いが持続している。

中長期スパンではFRBによるインフレ一時的判断と、雇用修復に向けた金融緩和策の長期化、米バイデン政権による来秋の中間選挙などを意識した経済対策の余地などにより、株高トレンドの継続期待は根強い。それでも短期的には米国株の季節的な「5月の株安」アノマリーなどもあって、当座は調整株安の持続リスクが注視されそうだ。

しかも現在は短期的なインフレ上振れを受けて、6月15−16日の米FRBによるFOMCでの物価判断や今後の金融政策スタンスに注目度が高まっている。6月16日のFOMCまでは、VIXの上昇波乱と米株安、株価上下動のボラティリティー(市場変動率)上昇が警戒されやすい。

最近のVIX上昇局面でいえば、今年1月22日週(0週の起点)の翌週からVIXが上昇となり、週間最高ベースでは1週目に37.51、6週目に31.90という大幅上昇を経て低下基調へと転換(=米株は反発)している。その前の昨年8月28日週以降のVIX急上昇では、1週目に38.28、9週目に41.16という跳ね上がりを経て上昇がピークアウトした。

コロナ・ショックが直撃した2020年2月21日週の翌週以降の場合、4週目の85.47、6週目の67.69という記録的な上昇のあと、VIXは上昇一服からリスク回避の緩和方向に向かっている。このように6−9週間はVIX再上昇が警戒される不安定さが続く反面、カネ余りや超低金利の長期化安心感もあって、6−9週間で当座の悪材料は織り込みが進むパターンが繰り返されてきた。

今回の場合、VIX低下の行き過ぎ過熱があった4月16日週の翌週からは4週目となっており、カウントの仕方は微妙なところだ。4月16日週を0週とすると現状5月14日週は4週目にあたり、残り2−5週間、もしくは現状から6週間から9週間は不安定な相場が警戒される。

一方で米国ではFRBの先行き緩和縮小が警戒されても、現状はカネ余りが持続したままだ。米国株の「買い遅れマネー」や、高値警戒による米株の下落待ち「押し目買いマネー」が潤沢に残されている。

コロナ危機対応以前でも、人口の多いベビーブーマー・ジュニア世代を含めた年金資金の機械的な株式流入の増加などもあって、米国株の下落局面では月末が底値で底入れを形成。月替わりからは機械的な新規資金流入などにより、反発となる日柄パターンが目立ってきた。その意味で今回についても、5月後半から5月末にかけて一旦の下げ止まりが注視される。

5月後半にかけては、短期的にインフレを押し上げている複合的な供給ノイズの影響持続と、今後の影響一段落を見定める展開となりそうだ。12日には米国の4月CPI(消費者物価指数)が急上昇したが、同統計を踏まえてもFRBのクラリダ副議長は同日、あくまで前年の経済封鎖などによる大幅下振れの反動というベース効果と、サプライチェーンの目詰まりなどによる供給制約といった「短期要因」と強調している。

なお、最近のNYダウの急落局面と、調整株安が底入れとなった「底値日」としては、今年3月の25日、1月の29日、昨年10月の30日、昨年3月の23日(コロナ打撃のあと)、2019年5月の31日、2018年12月の26日など、月後半から月末という日柄パターンが目立っている。