ここから本文です
投稿一覧に戻る

呼吸困難の掲示板

外向型は間違いがあるとかえってペースを速める
では、熱狂が正しい判断を遠ざけるのは、正確にはどんなメカニズムによるものだろう? ジャニス・ドーンの顧客のアランは、いったいどのようにして、財産の七〇%が消えてしまうぞという重要な危険信号を見逃したのか。まるでFUDが存在しないかのように、人々を駆りたてるものはなんだろう?

ウィスコンシン大学の心理学者ジョセフ・ニューマンが実施した一連の興味深い実験は、ひとつの答えを示している。ニューマンの実験室へ招かれて、研究の被験者になったと想像してみよう。あなたはそこでゲームをして、ポイントを稼げば稼ぐほど現金を手に入れられる。パソコン画面に一二個の数字がひとつずつ順不同に現れる。手元にはボタンがあって、被験者は数字が現れるごとにボタンを押す。押した数字が「正解」ならばポイントを獲得でき、「不正解」ならばポイントを失う。ボタンを押さなければポイントは変化しない。何度か試行錯誤してから、4が正解で9が不正解だとわかった。つまり、今度9が登場したらボタンを押さないでいればいいのだ。

ところが、そうとわかっていてもボタンを押してしまうことがある。外向型のなかでも特別に衝動的な人は、内向型と比較して、このような誤りをすることが多い。なぜだろう? 心理学者のジョン・ブレブナーとクリス・クーパーによれば、外向型はあまり考えずにすばやく行動するそうだ。内向型は「調べること」に、外向型は「反応すること」に適応しているのだ。

だが、外向型の不可思議な行動がさらに興味深いのは、間違った行動をしたあとにある。不正解である9を押してしまうと、内向型はつぎの番号に移る前に時間をかけて、なにが悪かったのかを考えている。だが、外向型はそこで速度を落とさないどころか、かえってペースを速める。

これは奇妙に感じられる。いったいなぜ、そんなことをしてしまうのか? それにはちゃんとした理由があるのだ、とニューマンは説明する。報酬に敏感な外向型は、目的を達することに集中してしまうと、なんだろうと邪魔はされたくない――否定する人だろうと、9という数字だろうと。そういう邪魔者を払いのけるためにペースを速めるのだ。

熱狂を殺せ
だが、時間をかけて見きわめるほど学ぶことも多くなるのだから、これは決定的に重大な失策だ。もっとゆっくりやりなさいと命令すれば、外向型も内向型と同じようにポイントを稼げる。ところが、好きにやらせておくと、けっして休まない。そのため、どうして間違えたのか学習しない。それはテッド・ターナーのような外向型が合併金額の入札で競り勝とうとするのと同じ仕組みだ、とニューマンは言う。「高すぎる値段をつけるのは、抑制すべき反応を抑えていないのです。決定を左右する情報を考慮していないのです」とニューマンは説明した。

対照的に、内向型は報酬を重要視せず――熱狂を殺す、とも表現できる――問題点を入念に調べるように、生まれつきプログラムされている。「彼らは興奮するとすぐにブレーキを踏んで、もしかしたら重要かもしれない関連事項について考えます。内向型はそのように配線されていて、あるいは訓練されていて、興奮を感じると警戒を強めるのです」とニューマンは語る。

さらに、内向型は新しい情報を自分の予想と比較する傾向があるそうだ。「予期したとおりのことが起きたのか。なるべくしてこうなったのか」と、彼らは自分自身に問いかける。そして、予想が当たらないと、失望の瞬間(ポイントを失う)と、そのときに周囲でなにが起きていたか(数字の9を押した)とを結びつける。それによって、つぎに警告信号にどう反応するかについて明確な予測をする。