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呼吸困難の掲示板

リスク回避の尺度であり、米株投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE) ボラティリティー(VIX)指数は、14カ月ぶりの低水準に低下してきた(リスク選好)。

短期的には過熱感があり、14日前後から本格化する米企業の決算発表などを受けた反動調整が警戒される。決算発表は一旦の好材料出尽くしや事前期待比での失望が警戒されるほか、金利上昇・ドル高・コスト高の遅行打撃も注視される。米株はワクチン普及による株式投資からの消費シフトや、反対の変異種拡大なども懸念材料になる。

米国株は昨年11月以降、1−3月期決算を含めた企業収益のV字回復を織り込む形で大幅高となっている。その意味で4月後半にかけて続く決算発表のシーズンでは、良好でも一旦の好材料出尽くしや最良期の先行きピークアウト懸念、悪ければ過剰期待の反動失望などにより、短期的な米株安が警戒される。

しかも米国株市場では、リスク回避の尺度であり、米株投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE) ボラティリティー(VIX)指数が、4月9日の終値で16.69となった。直近の日中最高である3月4日の31.90から大きく低下し、昨年2月以来、約14カ月ぶりの低水準となっている(リスク選好)。過去実績として「1年スパンのレンジ下限下抜け」となるようなVIX急低下は、その後に揺り戻し的なVIX上昇と短期株安が警戒されやすい。

短中期のトレンド判断で参考になる週足テクニカルでも、VIXは低下の行き過ぎ過熱シグナルが点滅してきた。8日の終値が16.95に対し、1年スパンのトレンド・ラインを示す52週移動平均線は25.90となっている。52週移動平均線からの乖離率(終値÷52週平均)は−34.6%という大幅な下方乖離となり、実に2016年8月以来、約4年半ぶりの低下過熱が示唆されている。

2016年8月の場合、VIX指数は同月の最低11.02から、9月に20.51、11月に23.01という反動調整的なVIX上昇が見られていた(リスク回避、米国株は反落)。最近では同乖離率が昨年12月4日週に、−26.1%への下振れ過熱となっている(リスク選好の行き過ぎ過熱)。
当時はその後、12月18日から21日にかけて、VIXは一時的ながらも21.57から31.46へと急上昇する短期波乱に直面していた。
米国株の先行上昇と当座の収益改善の織り込み度合いでいえば、米株S&P500は8日時点で四半期別の前年同期比が+26.8%の上昇率となってきた(期中の高値比較)。最近では2010年4−6月の+27.6%以来の大幅株高となっている。同期の米経済分析局による米企業収益(在庫調整・資本消費調整後)は、前年比+27.8%となっていた。レアケースながらも、増益率と同水準の株価上昇率となっている。


これから発表が相次ぐ米国企業の決算発表については、ブルームバーグ・インテリジェンスがまとめたアナリスト予想で、「S&P500種構成企業の通年の1株利益は前年比+25%増の172.90ドルと過去最高が見込まれている。2桁増益は少なくとも23年まで続く見通し」(4月2日時点)とされる。しかも年初以降、「アナリストらは今年1−3月(第1四半期)の企業の利益予想を引き上げており、その上方修正ペースは少なくとも2004年以降で最速」となっていた。こうした上方修正の織り込みが、足元4月8日までに至る株高加速の一因となっている。

一方でS&P500は8日時点で、四半期別の前年同期比が+26.8%の上昇率となってきた。単純に現時点での通年「前年比+25%増益」という予想は織り込みが進捗しつつある。その意味でも14日前後からの決算発表では、一旦の好業績消化と米国株の調整下落、あるいは日柄調整による高値横這い移行が注視されやすい。米国株の季節アノマリーとしても、4−5月は調整下落となるパターンが目立っている。

今年の米企業収益については、1月5日時点のリフィニティブ分析で「S&P500種構成企業の2021年予想増益率は+23.9%で、2020年の−12%減から大きく盛り返す」という見通しがなされていた。その点でもS&P500の現在の前年比+26.8%上昇は、一旦の織り込み進展を示唆するものだ。一方で「昨年の−12%減から今年の+23.9%増益(先行き上方修正余地)」を織り込む過程との見合いでは、一定程度は整合的であり、まだ異常なバブル割高にはなっていない。

一方、米国の企業収益については、今回1−3月実績のあと、4−6月以降など先行き見通しで重石となるのが、金利上昇やドル高、各種コスト上昇、供給制約などの遅行打撃だ。米株はワクチン普及による株式投資からの消費シフトや、反対の変異種拡大なども懸念材料になる。

米10年債金利でいえば月間最高金利の前年同月比が、4月8日時点で前年比+0.97%の上昇となってきた。最近では2014年1月の+1.02%以来という、大幅な金利上昇幅となっている。当時は遅行影響を含めて、米国株が上げ渋りから調整下落へと移行。S&P500の3カ月前比・騰落率(月間安値÷3カ月前の月間高値)は、前月2013年12月の+2.20%から、当該月の2014年1月が−0.27%、翌2月が−4.17%という調整株安に見舞われている。

その前では2010年1月に、米10年債金利が前年比+1.01%の大幅上昇となった。当時もS&P500は3カ月前比で同月が−2.70%、翌2月が−6.21%という調整株安に転じている。こうした金利上昇の株安打撃は、2018年10月以降の株価急落でも時間差で観測されていた。

また、ドルと米企業収益の関係では、ドルの総合力を示すドル指数(インターコンチネンタル取引所)は今年1−3月に89.21と2018年1−3月以来の安値をつけたあと、4−6月からは92−93へとドルが反発している。

過去にドル指数が長期90割れから90を回復したドル反発局面として、2015年1−3月があった。米企業収益は同期こそ+7.8%という増益となったが、翌4−6月からは−1.4%へと悪化。ドル高も一因となる形で、2015年10−12月は−10.9%の大幅減益となっている(同期のドル指数は93−100のドル高)。

その前では1998年などで「ドル指数90超えからの収益マイナス化」という相関性があり、今回もドル反発からタイムラグを経た企業収益の鈍化が警戒される。