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  • >>120

    住宅市場の規模は大きい。英不動産サービスのサヴィルズによると世界の住宅資産の価値は2020年時点で250兆ドルと株式市場(約100兆ドル)の2.5倍だ。縮小に向かえば家計や銀行など広範に悪影響をもたらす。

    韓国は家計への影響が不安視されている。可処分所得に対する債務の比率は200%程度と世界の中でも高い。過去5年間でマンション価格(全国平均)はおよそ2倍に高騰。ソウル市のマンション価格は円換算で1億円を上回っており、所得水準に見合わない住宅ローンを組んだ世帯も多い。ローンの8割超が変動金利のため利子負担の増加が家計を直撃する。

    東欧では銀行破綻につながった。ポーランドでは9月、中堅のゲティン・ノーブル銀行が公的支援の対象となった。同国の住宅ローンは金融危機以降、問題を抱えてきた。低利で借りられるスイスフラン建ての住宅ローンが流行したが、通貨ズロチがフランに対して下落し、返済できない個人が増えた。今年の通貨安や住宅価格の下落がさらに追い打ちをかけ、銀行経営を揺るがしている。

    住宅市場の変調に中銀の姿勢にも変化が見られはじめた。オーストラリア準備銀行(中銀)は10月の理事会で政策金利の引き上げを0.25%に縮小した。同国の住宅価格は11年ぶりの速いスピードで調整が進んでおり、住宅市場に配慮したとみられている。

    英オックスフォード・エコノミクスは住宅価格下落による逆資産効果、投資の減少、与信基準のタイト化という逆風が重なった場合には、世界の国内総生産(GDP)成長率はベースラインの1.3%から0.3%にまで急低下する可能性があると試算する。

    住宅価格の下落は、インフレの鎮圧という目的にはかなう。ただ、低金利になれきって膨張した市場は急激に縮小するリスクをはらむ。

  • 世界の住宅価格が高騰から値下がりに転じた。スウェーデンなどではピークに比べ約1割下げ、米英独など主要国も夏場から下落し始めた。インフレを抑えるための利上げの「効果」でもあるが、世界で250兆ドル(約3.5京円)の規模の市場が急収縮すれば家計債務や金融機関への影響は避けられない。東欧などでは金融システム不安の予兆もみられる。
    「北米の不動産市場は混乱している」。カナダの大手不動産ファンド、ロムスペンは8日、不安を感じた投資家から資金引き出し要請が殺到したことを受け、当面は出金に応じないと発表した。融資先の不動産業者のうち4割で元利払いが滞っているという。

    カナダ銀行(中央銀行)が政策金利を3.75%まで引き上げ、活況だったカナダの住宅市場は一変した。現地統計のテラネット・ナショナル銀行住宅価格総合指数によると9月は前月比3.1%低下と、遡れる1999年以降で最大の月間下落率となった。住宅が売れず業者が資金繰りに困り、ファンドや銀行のような資金の出し手へのしわ寄せが大きくなってきた。

    2020年に新型コロナウイルス禍への対応で世界の中央銀行が一斉に金利を引き下げた。低金利を生かして住宅を買う人が世界で増え、経済協力開発機構(OECD)によると加盟国の平均価格は19年に比べ35%上昇した。
    ところが、インフレを抑制するための急ピッチな利上げで市場が変調している。現地統計によるとニュージーランドでは22年1月をピークに10月までに価格が11%下がった。スウェーデンでは3月のピークから9月までに11%下落した。

    利上げで先んじた国や市場が過熱していた国の下げが大きくなっている。北欧はロシアのウクライナ侵攻で電気料金が高騰したことも住宅需要の後退につながっているとされる。続いて、米英独など主要国でも夏場から下落に転じはじめた。

    UBSによると主要25都市の22年半ばの住宅ローン金利は、1年前に比べ2倍となった。「住宅価格はこれから顕著な調整が予想される」とみる。住宅ローン金利が上昇し、米国では30年物が7%と21年ぶりの高水準になった。住宅ローン申請件数は1997年以来の低水準に落ち込んでいる。

  • 東京市場での為替売買におけるFX取引の割合は、全体の約半分を占めるほど巨大だ。欧米市場で投機筋が円を売るだけでなく、東京市場でもFX投資家が円を売れば、かれこれ半年以上にわたって長期円安局面が続くのも無理はない。

    こうしたFX投資家の異変を通貨当局も強く意識している。最近はFX取引業者に対する売買状況の照会が増えている。財務省が毎月公表する外国為替平衡操作の実施状況によると、政府・日銀は今回の介入で約2兆8000億円分の円買い・ドル売りを実行した。これは過去最大規模になった8月の貿易赤字額とほぼ同額だ。つまり需給面の円売りを円買い介入で相殺しても、投機筋とFX投資家の円売りを抑えられない計算になる。

    この半年間で大幅な円安が進んできたことで、市場関係者の間では「円安の余地が狭まり、投機筋が来年も積極的に円売り戦略を進めることは難しくなる」(マーケット・リスク・アドバイザリーの深谷幸司氏)との見方が浮上する。FRBの大幅な利上げによる米国景気の後退懸念も強まっており、来年にかけてドル資産への資金流入が滞る可能性は否めない。

    だがFX投資家の立場からみれば、潤沢なスワップポイントを得られるかぎり、あわてて円を買い戻す必要性は乏しい。その分、たとえ円安に歯止めがかかっても、大幅な円高局面に転じる可能性は小さい。FRBが明確に利上げを停止する姿勢を打ち出し、投機筋が本格的な円買い戦略にかじを切るまで、政府・日銀には円買い介入で円安の加速にブレーキをかけ続けるぐらいしか有効な手立てを見いだせそうにない。

  • 円安・ドル高が止まらない。気がつけば、3月の米連邦準備理事会(FRB)による利上げ開始から半年以上にわたって長期円安局面が続いている。政府・日銀による約24年ぶりの大規模な円買い介入にもかかわらず、なぜ歯止めがかからないのか。円相場の舞台裏を探ると、為替市場の巨大プレーヤーである外国為替証拠金(FX)投資家の取引姿勢の変化が見えてくる。
    「これまでのFX取引とは様相の異なる動きになっている」。長年、FX取引の最前線にいる外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏は、こんな見方を示す。違和感の原因は「ドルが上がったら売ろうというムードが感じられない」ことだ。

    逆張りのFX投資家。これまでFX取引を手がける国内の個人投資家は、ヘッジファンドなどの投機筋が経済統計や金融政策会合を材料に相場を大きく動かしたタイミングで即座に反対売買を入れ、狭い値幅で細かい利益を積み上げる手法を多用してきた。その意味では、投機筋とFX投資家の売買の対立が為替相場の急変動を抑えてきた側面があった。

    ところが現在のFX投資家の取引姿勢は、ほぼ円売り一辺倒。その結果、為替市場で何が起こったか。米利上げ継続による日米間の金利差拡大で円売りを仕掛ける投機筋に対し、FX投資家も追随して円を売り続ける。春以降の半年間は、投機筋とFX投資家が共闘して長期円安局面を築き上げる異例の構図になった。

    FX投資家による円売り一辺倒の行動はデータからも透けてみえる。外為どっとコム総研がFX取引を手がける個人顧客を対象に毎月実施している先行き1カ月の相場観調査によると、春以降は一貫して円安・ドル高予想が大勢になっている。

    なぜFX投資家は反対売買の円買いに動かないのか。理由の一つは、FRBが大幅な利上げを続けているために日米金利差が大きく開いたことだ。ドルを保有し続けていれば「スワップポイント」と呼ばれる、金利差から発生する利益を潤沢に得られる環境になっている。

  • >>116

    今や市場の構造も激変している。ニューヨークの市場最前線では、ディーラーが、人工知能(AI)やアルゴリズムを駆使して高速度取引で為替介入に対峙している。2011年の為替介入当時と比較すると、マーケットのインフラが劇的に変化していることを改めて痛感させられた。

    日銀に遠慮がないニューヨークのトレーダーたちと、「ジャパン・コーポレーション=日本株式会社」のトレーダーたちの立場の違いも鮮明である。

    振り返れば、今回の1ドル=110円台からの急速な円安は、基本的にニューヨーク市場主導であった。それから、彼らは連戦連勝の勢いに乗ってしまった。チャート上の抵抗線突破や大台超えも、おおむねニューヨーク時間で起こった。日本側は説明役に回ってしまった。ニューヨーク市場で為替介入は、まさに通貨戦争との認識だ。日銀・財務省とヘッジファンドのせめぎ合いは野球でいえばまだ五回表というところか。

  • 先週末にニューヨークのヘッジファンドの知り合いたちと「Zoom」による会議の機会があった。結局、日銀が為替介入で、はからずも1ドル=140円台前半の値固めをしてくれた、との見解が目立つ。「サンキュー、ミスタークロダ」とのつぶやきが印象に残った。先週末は、ポンド売りに回っていた投機マネーも、一巡すれば、円売りに戻ってくるもくろみが透ける。短期投機筋は「新黒田ライン」を1ドル=146円に見立て、1ドル=140円台前半のレンジ内で円売買を繰り返し利ザヤを稼ぐ姿勢だ。

    しかし、中期運用のグローバル・マクロ系は1ドル=150円、さらには1ドル=160円も視野に、円キャリートレードの継続あるいは新たな設定に動く構えだ。

    おりからドルインデックスは113を突破して新高値を更新。歯止めがかからない歴史的ドル高の流れに逆らう、ドル売り・円買いの単独介入は所詮無理筋との意見が主流だ。

    BOJ(日銀)を「永遠のハト派」と決めつける投機筋は、特に日本の経済データを追うわけでもなく、日本経済に関する知見も薄く、さらに、円を売ったからといって特に日本について勉強する姿勢も感じられない。アナリストの理論的説明には無関心だ。

    たしかに、筆者の体験でも、欧米市場において外為ディーラーで成績を上げるには、理論的説明より、市場の乱高下というストレスに耐える「胆力」のほうがはるかに大事だ。スイス銀行チューリヒ本店外為トレーディングルームのトレーダーで大卒は少数派であった。アメリカンフットボールの選手みたいな男性ディーラーが、おろおろする時に、隣席の小柄の女性が冷静に売買を続ける光景が忘れられない。

  • >>114

    複数のターミナルがある国際空港での移動をもじって、「ターミナル4からターミナル5へ移動した」との声もあがる。FRBのインフレ対応が後手後手で、足元の拙速な金融引き締めが歴史的な株安を招いていることを暗に非難する。

    来年にはターミナル6や7へ移動するとの警戒も強い。バンク・オブ・アメリカのラルフ・アクセル氏は、物価水準などから機械的に適切な金利水準を算出する「テイラールール」に基づくと、あるべき政策金利の水準は「7~13%のどこか」と試算した。強烈な利上げでハードランディングのリスクがさらに高まる。

    景気不安に加え、債券利回りの上昇で株式の分は悪い。米国の投資適格債券の平均利回りは5%と、09年以来の高水準だ。1年物の財務省短期証券(Tビル)の利回りは4%を超え、元本がインフレ率に連動する「シリーズI」と呼ばれる貯蓄用の米国債は9%台の利率で人気を集める。

    貯蓄口座でも年3%の利率を提供する地方銀行が出てきた。半面、株式市場では高配当株が多く含まれる上場投資信託(ETF)からの資金流出が目立つ。

    経済学に「金融政策の非対称性」との言葉がある。諸説はあるが、緩和による景気浮揚の効果は限られる半面、引き締めによる景気の押し下げの影響は大きくなることを意味する。今回の引き締めが年内になんらかの金融ショックにつながる可能性があるとみるエバコアISIのエド・ハイマン氏の「FRBがやり過ぎないように祈るだけ」との言葉が印象的だ。

  • 米経済が本格的な金融引き締め局面に突入した。株式市場は早くも拒絶反応を示す。株式相場の「冬の時代」にまだ終わりはみえない。

    23日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日続落し、3カ月ぶりに年初来安値を更新した。年初来の下落率は19%と、リーマン危機が発生した2008年の34%に迫る。

    S&P500種株価指数も4日続落し、23日は3693で終えた。6月に付けた年初来安値(3666)が近づく。米投資銀行BTIGによると、S&P500種の3900近辺は過去3年間で累積の売買代金が最も多い価格帯だ。これを下回る水準では、投資家の損失覚悟の投げ売りが膨らんでいる可能性が高い。

    どこまで利上げをすればインフレが沈静化するかわからないとの警戒が、投資家の株売りを加速させる。米連邦準備理事会(FRB)は21日、0.75%の追加利上げを決めた。政策金利は3.0~3.25%となり、長期的に景気を熱しも冷ましもしない水準である中立金利(2.5%)を明確に上回った。米金融政策はこれまでの「緩和縮小」から「引き締め」局面に名実ともに突入した。

    さらにFRBが今回の利上げ局面における政策金利の到達点(ターミナルレート)を引き上げたことに対し、市場は動揺した。FRBメンバーが予想する22年末時点の政策金利は4.4%と前回6月(3.4%)から上方修正された。23年末時点も4.6%と前回(3.8%)から切り上がった。さらに4.9%が適切だとみるメンバーも複数おり、5%までの利上げを視野に入れる。ターミナルレートは4%近辺とみていた金融市場は5%への修正を迫られた。

  • >>112

    さらに、前回2011年の為替介入から10年余りの期間に生じた外為市場の構造変化も見逃せない。NY市場では高速売買が一般化した。外為投資層も個人「共闘買い」で名を馳(は)せたレディットマネー層から富裕層まで新規参入者が急増した。
    暗号資産(仮想通貨)売買や新規上場で機関投資家並みの資産規模を持つ個人投資家も少なくない。原資は親の持つテキサスの大牧場を売却して得た、という事例が印象的であった。ウォール街離れの傾向も目立つ。筆者は、NYマンハッタンの古い貸しビルや、郊外の大きな住宅に大型コンピューターを据え付け、数人の若者を雇い、通貨投機を仕掛ける人たちに会ったことがある。真夏だったが、機材保護のため、フロアは寒かった。そこでは、日本についての知見はほとんど持たず、直接会った日本人市場関係者も筆者が初めてという人たちが、円を売買していた。


    為替介入は、もぐらたたき、あるいは、藪蛇(やぶへび)となるリスクをはらむ。

  • 米国のレーバーデー連休が終わり、ニューヨーク(NY)市場もいよいよ秋相場入りだ。

    株価が読みにくいので、「ローリスク、ハイリターン」のトレードとして円売りが週明けから注目を浴びている。1ドル=144円台まで円安が進んでいる。これまで日本や円に興味も示さなかった外国人投資家層までが、噂を聞きつけ、大挙、新規参入あるいは参入を検討中だ。売りが売りを呼ぶ連鎖の様相である。

    「ローリスク」と判断されるのは、日銀と財務省は動けず、との認識が共有されているからだ。特に、140円台になると、為替介入リスクが話題になるのだが、日銀・財務省に勝ち目はないと見切られている。米インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出する主要通貨に対するドルの総合的な強さを示す「ドルインデックス」は110台まで上昇。世界的ドル高傾向に逆らって日銀・財務省が単独で円買い・ドル売りに走っても、限界がある。さらに今回は、欧州中央銀行(ECB)の大幅利上げを視野に、対ドルでの投機的ユーロ売りも同時進行している。円売りを制限すれば、ユーロ売りに飛び火の勢いが加速する。ここは日米欧など主要中銀の協調が必要となろう。しかも、寄り合い所帯で難題山積のECBは、内部の意見統一に手間取りがちだ。

    マクロの視点でも、今回ばかりは、これまでの「介入の常識」が通用しない。新型コロナウイルス対応で未曽有の規模のマネーがばらまかれ、外為市場にも大量流入。レバレッジも含めマーケットの流動性が桁違いに増加しているからだ。

  • >>110

    中国中央テレビによると、中国外交トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)は、国際社会と共にロシアとウクライナの和平交渉を支持するとした。だが、ロシアに軍事・経済面での援助をしないよう中国に求めた米側への回答などは一切、報じていない。

    中ロ共同声明の当事者である習近平が従来方針からいきなり全面転換するのは難しい。とはいえ2カ月前から米側が打診していたという米中高官会談に今になって応じたこと自体、中国の微妙な変化を示す。ウクライナ問題に限れば、楊潔篪が米国を直接批判したり、対ロシア制裁に明確に反対したとは報じられていない。1年前、米アラスカ州でカメラを前に米側を激しく非難した態度とは様変わりだ。
    胡偉は5日の時点で、中国が決断するために残された時間は1、2週間しかなく、遅れるならば窓口は閉まり、転換の機会が失われる、と指摘していた。米中高官会談が1、2週間という指摘通りの期間内に突如、開かれたのは偶然だろうか。中国は今、将来を左右する重大な岐路に立たされている。

  • >>109

    守られてきた従来方針は①ロシアのウクライナ侵攻を「戦争である」とは認めず、公式報道ではロシアの「特別軍事行動」という言葉だけを使用②ロシア、ウクライナ双方の利益を考えるべきだが、深刻な事態に至った原因は全て北大西洋条約機構(NATO)の拡大を狙った米欧側にあり、彼らが責任を負うべきだ③勝利目前の強大なロシアとことを構えるのは愚策――というものだ。

    これは明らかにロシアを議論の余地のない勝ち馬だとみなした発想だ。だが、北京冬季パラリンピック開幕日の3月4日より前に大勢が決し、戦闘も終わるとみた中国の期待は裏切られた。情勢が激変しても方針を変えない硬直性は、中国の国際イメージを傷つけた。ロシアとベラルーシはパラリンピックから排除され、競技で活躍が目立ったウクライナの国内では、ロシア軍の攻撃でさらに多くの人命が失われた。悪夢である。
    国際パラリンピック委員会会長のパーソンズは開会式と閉会式で、ウクライナを念頭に平和を訴えた。これほど深刻な事態に至っても、中国国営テレビの中継はその部分を中国語に訳さなかったり、訳を改変したりした。平和を掲げるパラリンピックなのに、平和の訴えを隅に追いやり覆い隠すのは論理矛盾だ。それは中国が陥ったジレンマを象徴している。

    ジレンマは李克強の首相としての最後の記者会見にも表れた。中国のイメージ悪化を避けるため、ロシアメディアの質問は受けず、2月4日の中ロ共同声明で確認した「制限のない中ロ友好関係」にも触れなかった。
    胡偉論文そのものは既に閲覧困難とはいえ、中国のネット上では論文内容を一部引用した激論が続いた。結果としてウクライナ情勢と中ロ関係を議論できる環境が少しずつ整い、ロシア寄りの報道を続ける中国メディアと一般世論のズレも目立っている。
    中国内で意見対立があらわになった頃、米中高官会談をローマで開く日程がタイミングよく決まった。米側によると、米大統領補佐官のサリバンは、中国によるロシア支援に懸念を伝えた。米メディアは、ロシアが全面侵攻後、中国に軍装備品の提供と、追加経済支援を要請したと報じている。

  • >>108

    この提言は既に中国の主要なインターネットのサイト上から削除された。だが、それは内部で1週間も閲覧された後のことだ。現在の政治情勢から考えて、率直な分析を一般公開しても処分されないという自信があったとみてよい。
    胡偉は、上海市党委員会党校マルクス主義学院の教授で、「上海市習近平新時代中国特色社会主義思想研究センター」の研究員でもある。上海を中心とする政治グループとのつながりもうかがわれる。一方、2月に冬季五輪が開かれた河北省張家口に拠点がある独立色の強いシンクタンク「チャハル学会」のメンバーであるのも興味深い。

    胡偉は提言の冒頭で、ロシアによるウクライナへの「特別軍事行動」は「中国内で極度に大きな対立を引き起こした」と記し、中国の中での深刻な分断について率直に触れた。それを証明するように、論文が流布された直後、党内左派から激しい反論が出た。
    「この人(胡偉)は、(政府)参謀機構の公務員で、親米反ロの旗を公然と振れば問題が大きい」「表向き個人の見解だが、肩書からして背後に(有力な)指導者がいる」。毛沢東左派(毛左)と呼ばれる極左の有力者らの反応からも党内世論の分裂がみてとれる。胡錦濤(フー・ジンタオ)政権の時代までは日陰の存在だった「毛左」はいま、プーチンを支持する中ロ結託の中心にいる。

    ときに意見がぶつかる雰囲気は、中国最高指導部メンバー7人の議論にもある。北京冬季五輪が開幕した2月4日、北京で習近平がプーチンと会談した。その後、五輪期間中からウクライナを巡る共産党政治局常務委員会の集中討議があり、断続的にあらゆる角度から情勢を議論してきた。
    各メンバーの考え方には差があり、行き過ぎたロシア傾斜に一部から疑義が出ていたという経緯は、前々週のこのコラムで触れた通りである。プーチンがウクライナ侵攻に打って出た後、同国の多くの市民が犠牲になる悲劇を受け、議論が一段と白熱したのは想像に難くない。それでも中国指導部として方針を転換することはなかった。

  • 「中国は一刻も早く(ロシア大統領の)プーチンと手を切れ」。中国政府の政策アドバイザーといえる立場の学者が、ウクライナ情勢を巡って中国最高指導層に方針転換を迫る大胆な提言をしていたことが、中国の外交・安全保障関係者らの間で話題になっている。提言内容の公開が、ローマで14日開かれた7時間にわたる米中高官会談の直前だった点も注目される。

    提言者の胡偉は、首相の李克強(リー・クォーチャン)がトップである国務院(政府)の調査研究・献策部門である参事室公共政策研究センターの副理事長だ。このほか、上海市公共政策研究会会長などの地位も提言末尾に明記した事実が目を引く。冒頭では個人の見解としているが、要人が執務する北京・中南海に出入りできる肩書からみて、背後に多数の支持者がいるのは明らかだ。
    提言の論旨は明快である。仮にロシアがウクライナ占領後、同国に傀儡(かいらい)政権を樹立しても、西側の制裁と現地での反乱でプーチンが所期の目的を達成するのは難しく、数年もへずにロシア経済は持続困難になる。中国は中立政策を放棄し、世界で主流となっている方の立場を選んで世界大戦と核戦争を阻止すべきだ。そうすれば米欧との緊張関係が緩和され、孤立から抜け出せる。そんな内容の献策だ。
    プーチンが狙った短期間で全てを決着させる電撃戦の失敗で、想定以上のロシア包囲網ができあがった以上、早々に中ロ結託から抜け出して「勝ち馬」に乗るのが常道だ、と勧めているのだ。それは何より「利」をとる選択である。

    提言は全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕した5日付で、最高意思決定層の参考に供すると明記して内部で発出された。当然、その層には中国共産党トップの総書記で国家主席の習近平(シー・ジンピン)も含まれる。12日には元米大統領のカーターが設立にかかわった米中関係を扱う非政府組織のサイト上で提言が公開され、一気に流布した。

    提言が発出された5日は、ロシアによるウクライナ侵攻開始から10日目。短期間でウクライナのゼレンスキー政権を倒すロシア側の作戦の失敗が明らかになった時期だ。

  • >>106

    その推測は当たっている。キーエンスでは情報共有が当たり前。顧客の了承は前提だが、営業担当者が誰といつ会い、何を話したかといった情報は、上司だけでなく同じ顧客を抱える営業担当や時に海外担当にも共有する。

    それでもなお顧客は逃れられない。AGCの担当者は「キーエンス営業担当の商品知識はずぬけている。競合の製品の使い方ですら懇切丁寧に教えてくれるので、ついつい相談してしまう」と話す。その過程で自社製品を売り込み、シェア拡大につなげていても不思議ではない。

    世界では半導体不足や原材料高騰により納期の遅れが深刻化している。そうした中で、キーエンスがこだわる「当日出荷」が改めて強みになっている。同社は営業担当が得た顧客の声から需要動向を迅速に把握し、取引先工場への発注量や製品在庫を精緻に管理することで知られる。今回は競合に先駆けて半導体不足を察知し、普段より在庫を積み増した。多くの中小企業は「今は価格より納期。キーエンスには助けられている」と口をそろえる。

    こうした顧客の支持が、キーエンスの業績を押し上げている。新型コロナウイルス禍で規模拡大は一時足踏みしたが、22年3月期の売上高は過去最高を更新し、10年前の3倍超になる公算が大きい。
    注目すべきは規模拡大と収益性の向上を両立させてきたこと。21年4~12月期の売上高営業利益率は55.4%で、10年前の同期と比べて9.6ポイント上昇した。製造業平均の3.1%(20年度、法人企業統計)はもちろん、ファナックの25.9%(21年4~12月期)をも大きく引き離す。

    キーエンスは創業以来、工場を持たない「ファブレス」経営を貫き、製造は委託工場で行っている。21年3月期末の総資産は2兆98億円あるが、有形固定資産は238億円にすぎない。ほとんどの資産は現預金と有価証券の形で保有する。だが本当の資産は、利益を生み出している一人ひとりの社員だ。

  • キーエンスの営業担当者が探るのは、製品に関するニーズに限らない。

    「〇〇さんは最近どちらにいらっしゃるんですか」。ガラス大手AGCの「AGC横浜テクニカルセンター」で生産技術を担当する男性は、キーエンス営業担当の一言に時々ドキリとさせられる。臆面もなく人事異動や投資計画を聞き出そうとするその様子を、ライバルは嫉妬心も込めて「産業スパイのようだ」と表現する。

    聞き方は礼儀正しいが、裏側にある意図ははっきりしている。AGCで購買や投資判断に関わるキーマンの動向を把握することだ。異動先のエリアを担当するキーエンス社員と共有できれば、次の製品の売り込みが容易になる。自身の営業成績にはならなくても、会社全体の受注が増えればボーナスとして跳ね返ってくる。

    AGCレベルの大企業であれば、そうした営業担当が10人規模で張り付いている。電話やメールでのまめな接触により、横浜テクニカルセンターで生産技術を担当する数百人規模の社員の約半数がキーエンスと何らかの接点を持つようになった。あまりに情報通であるため、「キーエンスの社内にシステムがあって共有されているのでは」とAGCの技術者は不思議がる。
    キーエンスの営業担当者が探るのは、製品に関するニーズに限らない。

    「〇〇さんは最近どちらにいらっしゃるんですか」。ガラス大手AGCの「AGC横浜テクニカルセンター」で生産技術を担当する男性は、キーエンス営業担当の一言に時々ドキリとさせられる。臆面もなく人事異動や投資計画を聞き出そうとするその様子を、ライバルは嫉妬心も込めて「産業スパイのようだ」と表現する。

    聞き方は礼儀正しいが、裏側にある意図ははっきりしている。AGCで購買や投資判断に関わるキーマンの動向を把握することだ。異動先のエリアを担当するキーエンス社員と共有できれば、次の製品の売り込みが容易になる。自身の営業成績にはならなくても、会社全体の受注が増えればボーナスとして跳ね返ってくる。

    AGCレベルの大企業であれば、そうした営業担当が10人規模で張り付いている。電話やメールでのまめな接触により、横浜テクニカルセンターで生産技術を担当する数百人規模の社員の約半数がキーエンスと何らかの接点を持つようになった。あまりに情報通であるため、「キーエンスの社内にシステムがあって共有されているのでは」とAGCの技術者は不思議がる。

  • >>104

    兵庫県宝塚市で電子機器を生産するニッシンの役員は「ウェブサイトから製品カタログをダウンロードした1時間後に、突然電話がかかってきた」と打ち明ける。キーエンスに「待ち」の姿勢はない。顧客の興味の兆しが見えた途端にアプローチし、自らのペースに巻き込んでいく。

    もう1つは「潜在ニーズ」の掘り起こし。営業担当者が現場を直接見ることが、顧客自身も気付かなかった欲求を浮き彫りにしていく。

    「こんなに簡単なんですか? 初見で使えますね!」

    「ガーナ」などのチョコレートを製造するロッテ浦和工場(さいたま市)。生産技術の担当者は18年、キーエンス製の画像センサー導入を決めた。工場内に持ち込まれたデモ機を見るだけで、設定のシンプルさが分かったからだ。
    ロッテの担当者が悩んでいたのは歩留まりの悪さ。チョコレートの「割れ」や「欠け」を判別する装置を用いていたが、精度が足りずに良品まではじいてしまっていた。そこで声をかけたのは、毎月のように来訪するキーエンスの営業担当者だった。頻繁に顔を出し、「相談を持ちかけると喜んで応じてくれ、早いと翌週には具体的な提案に仕上げてくる」(ロッテ)姿勢に好感を持っていたからだ。

    回答はロッテの想像を超えていた。問題解決に特化するなら、判別精度の高い機械に置き換えるのが近道だ。歩留まりは改善し、当面の不満は解消される。しかしキーエンスが持ち込んだのは、高精度でも使いやすさに特化した製品だった。

    多くの製造現場では高価だが複雑な装置を作業員が使いこなせず、宝の持ち腐れになっている。調整が難しい機械は、次第に敬遠されるようになる。

    一握りの専門家ではなく、生産ラインに関わる多くの人の知恵を結集して歩留まりを高めたい――。ロッテのニーズを先回りして具体化し、目の前に示したからこそ、キーエンスは新製品の導入に成功したわけだ。

  • >>103

    見たことがある人はほとんどいないだろう。

    特徴は、ハイスペック製品というよりアイデア製品だ。例えば、複数の機械を制御するプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)。キーエンスは2019年、PLCに世界で初めて「ドライブレコーダー」を搭載した。クルマの事故状況を把握するように、PLC搭載装置のトラブルを記録するのが目的だ。これが、中小製造業の心を捉えて大ヒット。今では三菱電機などの競合もPLCにドライブレコーダー機能を加えられるようにしている。
    原理はさほど難しくないが、キーエンスが真っ先に商品アイデアを思いついた。こうした例は珍しくない。同社は1万種類以上とされる製品を手掛けるが、新製品の約7割が「世界初」あるいは「業界初」だと豪語する。他にない機能を持つ製品が、高く売れるのは当然だ。同社製品の粗利は約8割とされる。原価2000円の製品を1万円で売っている計算だ。

    原動力になっているのが、代名詞でもある「直接営業」だ。競合が代理店を使った間接営業を主軸とするのとは対照的に、キーエンスは社員が営業担当として直接顧客企業を訪ね歩く。前出のエーワンの幹部は「あまりの訪問頻度の多さに『こちらが連絡するまで来ないでほしい』と言ったことがある」と苦笑いする。

    直接営業を貫く理由は2つある。まずは競合を出し抜く「スピード」だ。

    19年秋、キーエンス製品を導入したクボタは商談の展開スピードに驚いた。同社は農機や建機のエンジン製造に用いる3Dロボットビジョンシステムの導入を検討し、数社に見積もりを依頼した。代理店を挟むメーカーでは1週間かかるところもあったが、キーエンスは即日返答。翌日には大阪市内のラボでの試用まで提案してきた。クボタ生産技術統括部の竹野陽山・第一課長は「圧倒的な速さだった」と舌を巻く。

  • 「レーザーマーカーを購入されるご予定ですか」

    2021年冬、工作機械用部品を手掛けるエーワン精密の山梨工場でレーザーマーカーが故障した。同社は旋盤などを固定する「コレットチャック」で、国内シェア60%を占める最大手。少量多品種を扱うため、1点ずつ大きさは異なる。小さいもので高さ3センチほど。顧客によって製品の大きさは微妙に異なるため、レーザーマーカーで寸法を印字しなければ部品の判別ができない。

    同社の室田武師専務は既存の生産ラインとの相性を考慮し、これまで通りパナソニック製を再び購入しようと考えていた。ところが声をかけてきたのはキーエンスの営業担当者。まるで、故障を知っていたかのようなタイミングだった。
    種明かしをすれば単純だ。キーエンスの営業担当は室田氏を訪ねる直前、エーワン社内の別部署でレーザーマーカーの販売を終えていた。その去り際、いつもの習慣でこう尋ねた。「他にお困りの方はいませんか?」。その答えが彼を、隣の建屋に向かわせた。

    それからの動きは早かった。数日後に再び来訪。1分ほどで自らレーザーマーカーを組み立てて、室田氏の目の前でデモを披露した。訓練を積んだ口調で機能を紹介し、質問への返事もよどみない。納得した室田氏はその場で購入を決断した。

    パナソニックに対しては故障直後に連絡し、購入意向も伝えていた。だが同社の営業担当が返事の電話をかけてきたのは、キーエンス製の購入後。パナソニックはみすみす販売機会を逃した。

    訓練された営業担当者が常に需要を探り続け、チャンスとみたら電光石火で勝負をかける。山梨工場での受注は決して偶然ではない。
    強さは数字に表れている。キーエンスが2月1日に発表した2021年4~12月期の連結売上高は、前年同期比44.7%増の5453億円。同社は業績見通しを開示していないが、通期では過去最高を更新するとの見方が根強い。エーワンで見たようなシェア奪取劇が、世界中で起きているのは間違いない。

    手掛ける製品を見る限り、キーエンスは極めて地味な会社だ。1974年の設立以来、主力にしてきたのはセンサーを中心とした電子部品。工場の製造現場で異常を発見したり、生産性を高めたりするための機器だ。自動化の進展につれて、ハンディーターミナルやロボットビジョンなどでも存在感を高めてきたが、工場や倉庫、研究所の外でキーエンス製品を

  • 米製薬大手ファイザーは8日、開発した新型コロナウイルスのワクチンと治療薬の売上高が、2022年12月期通期に計540億ドル(約6兆2000億円)になるとの見通しを発表した。全体の売上高もワクチンと治療薬が押し上げ、前期比で21~25%増になると予想した。

    あほくさ( ^ω^)・・・

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