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Achilles Last Standの掲示板

>>108

この提言は既に中国の主要なインターネットのサイト上から削除された。だが、それは内部で1週間も閲覧された後のことだ。現在の政治情勢から考えて、率直な分析を一般公開しても処分されないという自信があったとみてよい。
胡偉は、上海市党委員会党校マルクス主義学院の教授で、「上海市習近平新時代中国特色社会主義思想研究センター」の研究員でもある。上海を中心とする政治グループとのつながりもうかがわれる。一方、2月に冬季五輪が開かれた河北省張家口に拠点がある独立色の強いシンクタンク「チャハル学会」のメンバーであるのも興味深い。

胡偉は提言の冒頭で、ロシアによるウクライナへの「特別軍事行動」は「中国内で極度に大きな対立を引き起こした」と記し、中国の中での深刻な分断について率直に触れた。それを証明するように、論文が流布された直後、党内左派から激しい反論が出た。
「この人(胡偉)は、(政府)参謀機構の公務員で、親米反ロの旗を公然と振れば問題が大きい」「表向き個人の見解だが、肩書からして背後に(有力な)指導者がいる」。毛沢東左派(毛左)と呼ばれる極左の有力者らの反応からも党内世論の分裂がみてとれる。胡錦濤(フー・ジンタオ)政権の時代までは日陰の存在だった「毛左」はいま、プーチンを支持する中ロ結託の中心にいる。

ときに意見がぶつかる雰囲気は、中国最高指導部メンバー7人の議論にもある。北京冬季五輪が開幕した2月4日、北京で習近平がプーチンと会談した。その後、五輪期間中からウクライナを巡る共産党政治局常務委員会の集中討議があり、断続的にあらゆる角度から情勢を議論してきた。
各メンバーの考え方には差があり、行き過ぎたロシア傾斜に一部から疑義が出ていたという経緯は、前々週のこのコラムで触れた通りである。プーチンがウクライナ侵攻に打って出た後、同国の多くの市民が犠牲になる悲劇を受け、議論が一段と白熱したのは想像に難くない。それでも中国指導部として方針を転換することはなかった。

  • >>109

    守られてきた従来方針は①ロシアのウクライナ侵攻を「戦争である」とは認めず、公式報道ではロシアの「特別軍事行動」という言葉だけを使用②ロシア、ウクライナ双方の利益を考えるべきだが、深刻な事態に至った原因は全て北大西洋条約機構(NATO)の拡大を狙った米欧側にあり、彼らが責任を負うべきだ③勝利目前の強大なロシアとことを構えるのは愚策――というものだ。

    これは明らかにロシアを議論の余地のない勝ち馬だとみなした発想だ。だが、北京冬季パラリンピック開幕日の3月4日より前に大勢が決し、戦闘も終わるとみた中国の期待は裏切られた。情勢が激変しても方針を変えない硬直性は、中国の国際イメージを傷つけた。ロシアとベラルーシはパラリンピックから排除され、競技で活躍が目立ったウクライナの国内では、ロシア軍の攻撃でさらに多くの人命が失われた。悪夢である。
    国際パラリンピック委員会会長のパーソンズは開会式と閉会式で、ウクライナを念頭に平和を訴えた。これほど深刻な事態に至っても、中国国営テレビの中継はその部分を中国語に訳さなかったり、訳を改変したりした。平和を掲げるパラリンピックなのに、平和の訴えを隅に追いやり覆い隠すのは論理矛盾だ。それは中国が陥ったジレンマを象徴している。

    ジレンマは李克強の首相としての最後の記者会見にも表れた。中国のイメージ悪化を避けるため、ロシアメディアの質問は受けず、2月4日の中ロ共同声明で確認した「制限のない中ロ友好関係」にも触れなかった。
    胡偉論文そのものは既に閲覧困難とはいえ、中国のネット上では論文内容を一部引用した激論が続いた。結果としてウクライナ情勢と中ロ関係を議論できる環境が少しずつ整い、ロシア寄りの報道を続ける中国メディアと一般世論のズレも目立っている。
    中国内で意見対立があらわになった頃、米中高官会談をローマで開く日程がタイミングよく決まった。米側によると、米大統領補佐官のサリバンは、中国によるロシア支援に懸念を伝えた。米メディアは、ロシアが全面侵攻後、中国に軍装備品の提供と、追加経済支援を要請したと報じている。