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プレシジョン・システム・サイエンス(株)【7707】の掲示板 2021/04/15〜2021/04/19

>>514

4.PCR 検査は何故進まなかったか。⺠間臨調報告書から

arXiv(19)で『新型コロナ対応⺠間臨時調査会・調査検証報告書』
(図 6)を紹介した。
膨大な資料と政策決定に関わった⼈々へのインタビューにより、
政府の対応を検証している。
これまで、外の⼈間が知り得なかったような貴重な情報が掲載されている。
今回は、その中から、PCR 検査を巡る政府、とくに厚労省の対応について検証を
紹介する。

図 6 新型コロナ対応⺠間臨時調査会・調査検証報告書
アキレス腱
よく知られている事実であるが、⽇本の PCR 検査は⾮常に少ない
私の周囲の友⼈、医師たちは、何故 PCR 検査がこんなに少な
いのか理解できないでいた。保健所を通さなければ検査ができず、
保健所には電話がつながらず、つながっても検査を断られるような状態が⻑く続いていた。

アメリカ⼤使館は、在⽇アメリカ⼈に対して、検査をおろそかにしている⽇本から
本国に引き揚げるよう勧告した
(今となって考えれば、⽇本にいた⽅がはるかに安全であったが)。

アメリカ⼤使館からも信頼されていないのは、
安倍⾸相にとってすごく恥ずかしいことであったに違いない。

首相はPCR 検査の⽬詰まりをなくすと国会で繰り返し答弁したが、
厚労省は動かなかった。「⽬詰まり」しているのは厚労省そのものであったのだ。

⺠間臨調の報告書は、PCR 検査は「⽇本モデルのアキレス腱」と表現している。

【ダイヤモンド・プリンセス号の全員検査に厚労省が猛反対 】

厚労省は、ごく初期、2 ⽉のダイヤモンド・プリンセス号の時から
PCR 検査拡⼤に反対していたことが、⺠間臨調の報告書で明らかになった
官邸はクルーズ船の乗客全員検査の⽅針であったが、それに対して、
加藤厚労⼤⾂(現官房⻑官)を先頭に、厚労省が猛反対したのだという。
その理由は、検査は症状のある⼈と、濃厚接触者に限られる
べきとする厚労省の⽅針に反するからであった。
「そうやったら他の医療ができません」、
「容器が⾜りません」、「試薬がありません」と反対した。
しかし、この理由は官邸に通じなかった。

厚労省の専⾨にとらわれた狭い考え⽅よりも、官邸の常識が勝ったのだ。
国会議員に対する PCR 検査のネガティブ・キャンペーン
⾸相官邸は、PCR 検査が進まないことに対する国⺠の不満と不安を
深刻に受け⽌め始め国際的にも、アメリカ⼤使館の帰国勧告のように、
⽇本は検査⼩国と⾒られ,信頼されていないことを憂慮し、
厚労省に検査拡⼤を指⽰したのに進まなかったのは何故か。

⺠間臨調の報告書は、驚くような事実を明らかにした(報告書 197 ページ)。
厚労省が 5 ⽉、PCR 検査拡⼤に反対する内部秘密⽂書を作り、
国会議員、官僚を対象にネガティブ・キャンペーンを⾏っていたのである

⺠間臨調報告書は、その⽂書を「補⾜資料」として明らかにした
「不安解消のために,希望者には広く検査を受けられるようにすべきという
主張について」という⽂書には
PCR 検査の感度と特異度が 100%でないことを指摘し、
検査を広げた場合、擬陽性者が増え、医療が崩壊するという内容であった。

国会議員、官僚に PCR 検査拡⼤に反対して説明を⾏った厚労省内部⽂書。
偽陽性 1%、偽陰性 30%のため
100 万⼈を検査すると、擬陽性者が 10000 ⼈になり、
医療崩壊が起こると強調した

わざわざ韓国の検査指針(⾚字)を引⽤し、
単純な不安から検査を受ける必検査権と既得権益

さらに、厚労省と外郭団体の中には、
「⾏政検査による検査権と既得権益の維持を優先」す
る⼈たちがいたと、⺠間臨調の報告書に書かれている(50 ページ)。
これも驚くべき事実である

厚労省が「⾏政検査」に固執していたのは、「検査権と既得権益」
のためだったのだ。

コロナ禍という国家的⼤事件の下で、縦割り⾏政がここまでの弊害を残していたとは信じがたいが 消極的な専⾨家会議専⾨家会議のメンバーの多くも
PCR 検査の対象者の拡⼤に慎重な⽴場だったという(報告
書(196 ページ)。

拡⼤すると重症者に対する検査に⽀障を来すことを懸念するメンバーが
いたと報告書は書いている。
さらに広範なテストが、⾏動変容などと⽐較して感染抑⽌効果
が弱いという論⽂を根拠に反対する者もいたという。

尾⾝専⾨家会議副座⻑(当時)の記者会
⾒(5 ⽉ 4 ⽇)のパワーポイントには、PCR 検査の少ないことを
正当化するエクスキューズが並んでいる

厚労省と専⾨家会議が消極的では、PCR 検査がさらに広がることはない。
かくして、⽇本は世界でもまれに⾒る検査⼩国となった。

https://www.youtube.com/watch?v=5ASBthOcKhY
渋⾕健司教授の証⾔
報告書は、WHO 上級顧問で Kings College London の渋⾕健司教授のコメント
渋⾕健司教授の証⾔
報告書は、WHO 上級顧問で Kings College London の渋⾕健司教授の
コメントを引⽤して
いる(32 ページ)。

「検査を抑えて医療体制を守るという議論は世界で全くなかった。
 ⽇本の現状は、検査をしないことにより
 市中感染と院内感染が広がり医療崩壊を招く危険がある」。

4 ⽉ 18 ⽇の渋⾕教授のコメントは、半年後に現実となった。
検査体制の基本的な考え・戦略
検査の充実を求める国⺠の声に応えることなく
PCR 検査に消極的な厚労省と専⾨会議。

一方、国⺠の要望をかなえ、国際的な信頼を得たい官邸。

その間で遅々として進まない検査体制
このような状態に陥ったのは、新型コロナ検査についての基本的な考えと
戦略がなかったためである

厚労省は、7 ⽉にその第⼀版、10 ⽉に第⼆版を出すことになる。その内容と
問題点については、次号で紹介することにする。