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ソフトバンクグループ(株)【9984】の掲示板 2018/09/28〜2018/09/30

つづき

アームの設計はすでに、毎年150億個以上出荷される半導体に使われている。だが、これは孫氏が考えているビッグピクチャーから比べれば、小さなものであろう。

 アームの半導体の設計は世界のスマホの95%に使われているが、この市場はすでに成熟化している。アームは自動運転車、拡張現実(AR)ゲーム、医療機器、ロボットなど、孫氏が考える「未来を創造」し、ライフスタイルを変えるさまざまな機器に自社の技術とグラフィックス(設計)の用途を広めようとしている。

 アームにとっても、ウォール街が望む非常に高い利益率と着実な成長という退屈な財務戦略から脱皮するチャンスになると思う。

 孫氏は電気自動車のテスラモーターズのイーロン・マスク氏とも親交があり、思想に共感している。ひょっとしたら、孫氏は今後、「未来の自動車」に挑戦するかもしれない。

時価総額トップ10への武器

 企業家を動かす第3は、勝利への意志、目標到達への執念である。目標は数字として語られなければ意味がない。

 孫氏は2015年の株主総会で、株主から「大きな目標を聞かせてほしい」と質問されたのに対し、「2010年に掲げた世界で時価総額トップ10に入り、200兆円となるビジョンを何としても実現させる」と話した。

 時価総額世界一は、アップルの約54兆円、2位はアルファベット(グーグル)の約49兆円、3位がマイクロソフトの約42兆円、アマゾン・ドット・コムが約35兆円で6位である。日本ではトヨタ自動車が約15兆円でやっと39位(2016年6月末)である。

上位企業はみな、ビジネスの基盤であるプラットホームを持つ企業である。プラットホーム型の企業は時間がたつにつれ、売上高や利益が尻上がりに増えるからだ。日本にはこうしたポジションの会社がない。

 ソフトバンクの時価総額は6兆5000億円である。トップ10を目指すには普通の成長ではだめでプラットホーム型企業へ“瞬間移動”する「ワープ」が必要となる。

 圧倒的なシェアと高い収益力を持ち、プラットホームになりうるアームは、ソフトバンクが時価総額トップ10入りを目指すにはどうしても必要だった。だからこそ、プレミアを払ってでも手に入れたかったのである。

 ちなみに、2016年6月の株主総会で副社長を退任したニケシュ・アローラ氏は165億円という高額な報酬で知られた。優秀なCEO(最高経営責任者)の候補を、魅力的な報酬を提示して獲得することはグローバル市場ではよくあることだ。

 ただ、シカゴ大学のスティーブン・N・カプラン教授は、「アメリカの上場企業のCEOの報酬は自社の株価と連動して決定されている。当然、実績が悪いと、報酬額の引き下げ、あるいは解任というペナルティーが科される」としている。

 2015年を見ると、NTTの株価が36%上昇し、時価総額の増加額2兆5500億円は日本一だった。一方のソフトバンクは株価が14%下降、時価総額は1兆3300億円減少し、減少額で不名誉な日本一となった。

 孫氏は、「後継者は10年で時価総額を5倍にする」というミッションを課していた。ニケシュ氏がソフトバンクに入ったときの時価総額は約8兆円。ニケシュが5倍の40兆円にして、次のトップが5倍にすれば目標の200兆円になるというシナリオである。このシナリオが崩れかけたのも、ニケシュ退任の一つの理由であろう。

 アームは、時価総額200兆円達成のための「ワープ」に必要だったのである。