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ノートの掲示板

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  • 2021/05/19 08:36
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掲示板のコメントはすべて投稿者の個人的な判断を表すものであり、
当社が投資の勧誘を目的としているものではありません。

  • >>32

    EV競争、巨額投資で巻き返し 中国台頭に危機感 米大統領

    【ワシントン時事】バイデン米大統領は18日、中西部ミシガン州にある米自動車大手フォード・モーターの電気自動車(EV)工場を視察した。

     政府補助金をてこにEV市場で台頭する中国に対抗するため、米政権の成長戦略に盛り込んだ1740億ドル(約19兆円)規模のEV向け予算の早期実現を訴えた。

     バイデン氏は、米国で最大規模の販売台数を誇る人気車種であるフォード製ピックアップトラック「F150」のEV版の発表に先立ち、工場を訪問した。「米自動車産業の未来は電気だ。競争をリードするのか、後れを取るかの岐路に立たされている」と危機感を示した。

     バイデン氏はEV市場拡大のカギを握る自動車用電池について「中国の技術が革新的というわけではなく、米国がリードしてきた」と技術力に自信も見せた。同氏は2月、EV向け大容量電池や半導体のサプライチェーン(供給網)を強化する大統領令に署名し、国産化を急ぐ方針を表明した。

  • バイデン米大統領、EV計画推進を強調-中国との対決姿勢鮮明に

    (ブルームバーグ): バイデン米大統領は18日、ミシガン州にあるフォード・モーターの新工場を視察した際の演説で、電気自動車(EV)向けの1740億ドル(約19兆円)規模の提案について重要性を強調した。ただ自動車業界では、世界的な半導体不足が生産の足かせになっている。

    同社主力ピックアップトラックのEVモデル「F-150ライトニング」を発表より一足早く披露されたバイデン大統領は「自動車業界の未来は電気だ。逆戻りはない」と語り、世界のEV市場をリードするため中国と対決していく姿勢を鮮明にした。

    バイデン大統領は、米国がEV市場規模と電池生産の両方で中国に出遅れていると認めながらも、「中国がこの競争で勝利することはない」と強調。「中国には勝たせない。われわれは迅速に動かなければならず、あなた方がここでやっていることがそれに当たる」と述べた。

    原題:Biden Pushes EV Plans With a Sneak Peek at Battery-Powered F-150(抜粋)

    (c)2021 Bloomberg L.P.

  • ロイター通信によると、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が国内の小規模自動車メーカーの電気自動車(EV)部門の経営権取得に向け協議していることが関係者の話で分かった。ファーウェイは米国の制裁で本業が打撃を受けており、戦略を転換しているもようだ。
    ファーウェイ側の交渉代表は、同社を世界有数のスマートフォンメーカーにした立役者である消費者向け事業の責任者、リチャード・ユー氏。ユー氏は最近、EVに重点を移したという。

  • 自動車メーカー以外で「EV」ビジネスに君臨しそうな日本企業

    ソニー、モビリティーの進化に関心
    昨年のCESで公開されたソニーの「VISION―S」と吉田憲一郎社長

     電気自動車(EV)への異業種参入が相次ぐ。国内勢はプラットフォーム(車台)などを足がかりに商機をうかがう。新興勢力は部品産業に大きな影響を与えそうだ。新興勢力から部品発注の打診があれば「相手次第だが、すぐ受ける」とある自動車部品メーカーの幹部は話す。「顧客網の築き方を変える必要がある」と危機感をにじませつつ、「新しいチャンスになり得る」と産業構造の変化を前向きに捉える。

     日本電産はモーターなどを一体化したEV駆動用トラクションモーターシステムの開発と生産体制の増強に注力するほか、EV用プラットフォーム事業への参入も明らかにしている。車の「走る・曲がる・止まる」に関連する製品を幅広く手がけており、これらを組み合わせる。バッテリーシステムなどは他社と協業する。顧客はプラットフォームを購入してボディーやシートなどを載せれば完成車として販売できるようになるといい、EV時代をけん引する構え。

     帝人は豪州のスタートアップのアプライドEV(ビクトリア州)と、低速EVのプロトタイプを共同開発した。環境への関心が高まる中、自動車の燃費向上などに向け、「軽量化へのニーズは高い」(鈴木純社長)と見る。低速EVの開発においても、強みとするポリカーボネート樹脂や複合材料に関する知見を生かしている。熱のマネジメントや吸音性に関する技術開発も進める考えだ。

     出光興産はタジマモーターコーポレーション(東京都中野区)の関連会社に少額出資し、両社で超小型EVの開発に乗り出した。既存の自動車ではカバーできないペーパードライバーや高齢者らの新たな市場を掘り起こす。出光興産はこの超小型EV2台を北海道製油所(北海道苫小牧市)の構内車両として導入。寒冷地におけるEVの有効性や課題を検証する。

     EVそのものやプラットフォーム以外の動向で注目されるのがソニーだ。ソニーは電動化や自動運転といったモビリティーの進化に関心が高い。家電・IT見本市「CES2020」で披露したEV「VISION―S」は、20年12月に試作車両を完成させた。

     車載用センサーの拡大を目指すソニーだが、VISION―Sには臨場感の高い音響システムや第5世代通信(5G)への接続機能などセンサー以外の技術も盛り込んだ。エンターテインメントに強いソニーにとっては、移動時間の過ごし方の変化も見逃せない商機だ。21日には英通信大手ボーダフォン・グループの独法人ボーダフォン・ジャーマニーと、5Gを活用した走行試験をドイツで始めたと発表した。

     IHSマークイットジャパンの西本真敏オートモーティブプリンシパルリサーチアナリストは、EVの新興勢力は次のように大別できる。まず、プラットフォーマーを中心に経済圏を形成するタイプ。中国・百度(バイドゥ)などが該当する。企画や開発に特化した「ファブレス」や、生産のみ手がける「受託生産」など特定の工程に特化したタイプもいる。それぞれ、新興メーカーの中国蔚来汽車(NIO)と米カヌー、世界最大の電子機器製造受託サービス(EMS)台湾・鴻海精密工業の攻勢が目立つ。

     部品点数が少ないEVでも、事業として軌道に乗せるには巨額の投資や量産技術の確立が不可欠だ。しかし、こうした新興勢力の台頭で「差別化戦略が多様化し、EV事業のハードルは低くなっている」(西本氏)。米アップルや鴻海はスマートフォンで確立した開発や生産をすみ分ける「水平分業」をEVで再現するとみられている。EV新興勢力は「垂直統合」で競争力を維持してきた自動車産業を揺さぶっている。

  • >>28

     世界一の日本の鉄道事業は、その淵源の多くを小林一三に負っている。

    ■ 来るべき大震災を大変革のチャンスとせよ

     あと2年、2023年で関東大震災から100年目を迎える。我々東京の住民は、明日をも知れぬ身である。

     東京だけではない。

     日本列島は、地球上の地殻の四大プレートが激突する上に位置し、地震発生の密度が地球上の平均の100倍に達する。日本各所に定期的に大震災が来るはずである。嘆いても仕方がない。

     後藤新平、小林一三、100年前に活躍した2人の大先達に学び、防災と減災、そして、新たな100年のためのconnectivity都市を作ることが、我々の使命ではないだろうか。

    山﨑 養世

  • >>27

    ■ AEVがもたらす新しい経済のエコシステム

     以下の図1は、2017年に作成し、最近では、大規模なコンファレンスで発表したものだ。

     AEV「自電車」がもたらすエネルギー革命、交通革命、情報革命、生活革命、居住革命、金融革命、そして全体として「太陽経済」という、石炭、石油、に続く「第3の産業革命」の見取り図である。

    ■ キーワードはconnectivity

     connectivityがこれからのAEV社会の最大の共通コンセプトになる。connectivityの勝者になる企業はどこだろうか? 

     AEVがもたらす新しい「コネクトされた」経済エコシステムの全体像をここで説明するのは、このコラムの範囲を超えてしまう。

     興味のある方は、2020年11月に出版した「21世紀型大恐慌」(PHP出版/書籍の帯に、「田園からの産業革命」)の、「自電車が革命を起こす低炭素な未来」の章を読んでいただきたい。

     ほとんどの人間生活の要素が、AEVによりコネクトされ、ネットワーク化された時に、これまでの人類の問題であった「都会の過密」と「田舎の不便」は、同時に解消される。

     田舎でも、クリーンで安全で超低コストで、お年寄りも子供も病人も、1人で外出できて、病院にも学校にもショッピングにも行ける電車と自動車の「いいとこどり」のモビリティが実現できる。

     そして、劇的に自動車の台数が減り、駐車場や道路に使われていた都市空間が開放され、交通の流れの最適化がリアルタイムで実現した都市では、「交通渋滞」や「駐車場待ち」は歴史の遺物になる。

    ■ 戦争よりも人を殺してきた旧来の自動車

     いまだに20世紀型の自動車社会は、2016年にはWHO(世界保健機関)の統計では年間135万人の死者を人類にもたらしている。病気以外では、「交通事故」は、人類の最大級の死因である。

     一体、自動車誕生以来、何人の人が「自動車事故」の犠牲になっただろうか。20世紀の戦争犠牲者よりも多いのではないか。

     旧来の自動車が抱えてきたこの人類に対する巨大な問題を、正面から取り上げた経済学者を、私は宇沢弘文先生以外には知らない。

     宇沢先生の1974年の著作「自動車の社会的費用」(岩波新書)を自動車に関係する日本人すべてが再読すべきだろう。

    ■ 旧来型の自動車は禁止される

     これまでは、自動車事故は、運転者や歩行者の責任とされてきた。

     自動車メーカーや道路管理者や政府の責任ではなかった。だから、世界中で、ごく普通の人が、自動車事故によって、殺人者と被害者になり、それぞれの家庭に悲劇をもたらしてきた。

     その一方で、日本が誇る新幹線は、1964年の開業以来、列車事故による乗客の死亡は無い。乗客は、運転のリスクを負うことなく、安全に高速に移動できる。

     新幹線では、利用者は、殺人者にも被害者になることなく、寝こけていても高速で目的地に届けてもらえる。

     AEVが「自動車による殺人」に終止符を打つだろう。

     十分に安全性を高めたAEVと、その円滑な運航を可能にする道路と建物が実現した時には、旧来の「コネクトされていない」自動車の運転は犯罪とみなされる。

     運転者はもとより、そのような自動車を生産する企業、そのような自動車の通行を許している道路管理者や政府は、刑事と民事の大きな罰則の対象となる。

     「殺人可能な自動車」は、自己責任でスピードを楽しみたい、隔離された「サーキット」以外には、通行を禁じられるだろう。

     つまり、日本でも繰り返されている酔っ払い運転、ブレーキの踏み間違い、わき見運転で、お年寄りやお母さん、子供たちが轢き殺される惨劇は、ついに終わりを告げるだろう。

    ■ 交通事故のない街

     図2は、そんな「交通事故のない町」を高速道路の出口に「道の町」として作ることのコンセプト図だ。

     アートの才能のない私では、この程度のものしか作れないが、世界最高水準の「建築家大国」日本の、我こそはと思う方が、美しく環境に調和し豊かで安全な「人間中心の街」をデザインしていただきたいものだ。

    ■ 高速道路は新幹線になれる

     そして、高速道路は新幹線のような高速大量、無事故安全の公共交通機関になれる。「非接触充電」で走りながら給電し、連結したバスが長距離を高速で走れるようになる。そのコンセプトを以下の図3に提示した。

    ■ 誰がconnectivityを担うのか? 

     AEVは、再生可能エネルギー、移動手段、情報、金融、サービスを結びつけた「新しい町」を生み出す。

     この新しいconnectivityを最も「人間本位で」提供するものが、21世紀経済の中心を担うだろう。

     どのような計画となり、誰が担うのだろうか? 

     まだ、分からない。でも、日本にそのヒントはある。

    ■ 東京はすでに世界一のconnectivity都市

     100年前に、電気、移動、生活、観光、勉学を提供して、connectivityを大都市部で提供することに成功した、唯一の国家が日本だった。

     今でも、東京首都圏、関西、中京、日本の三大都市圏は、世界一のconnectivity都市圏である。

     2018年、私は、返還20年を記念して香港で開催された「Greater Bay Area 会議」に招待され、日本代表として東京ベイエリアの基調講演を行った。

     2010年に私が、竹村真一さんとの共著で出版した「環東京湾構想」が評価されてのことだった。

    ■ 後藤新平の偉業

     その場で少し驚いたのが、後の2つの世界的なベイエリア、すなわち、米国のグレートベイエリア(サンフランシスコ、シリコンバレー、バークレーなどのカリフォルニア北部湾岸部)と、中国のグレートベイエリア(香港、マカオ、広東省)の代表がともに、東京ベイエリアを、「世界一の質と規模のベイエリア」として、絶賛したことだった。

     私が説明したのは、東京首都圏の優れた質と規模を支える中心が2つあることだった。

     都市計画と鉄道網である。

     1923年の関東大震災直後に、世界の大都市で初めて生態学的なデザインを行い、皇居を中心とした同心円状の環状道路と生態学的な見地からの網の目のネットワーク化した鉄道網に、緑豊かな公園を配置し、防災設計を施した区画整理を断行したのが、20世紀の世界最高の都市計画家である後藤新平を中心とした「首都圏大改造計画」である。

     医者であり、35歳で内務省衛生局長になり、日清戦争の帰還兵の検疫業務を、巧みな行政手腕で成功させた後藤新平は、コロナ禍の現代日本で、一部で注目されているが、その事績は、多方面にわたり、万能というほかない。

    ■ 「大風呂敷」は周到に準備された

     東京市長を関東大震災の直前まで勤めた後藤新平は、徳川家康の偉大だが300年前の都市計画に基づく「江戸」を、「近代都市東京」に改造するための、学官民の勉強会を組織した。

     また、ニューヨーク市から高明な歴史学者で科学的調査と市民社会の発意に基づく行政学(今で言うエビデンスに基づく参加型行政)の先駆者であるビーアドを招いた。ビーアドは、後藤のことを「天才」として深く尊敬したと伝えられる。

     市長を引退した直後に発生した、関東大震災の危機に際して、帝都復興院総裁の職についた後藤新平が、極めて短時間に「大風呂敷」と言われた東京大改造計画を打ち出せたのも、それまでの東京市長時代の蓄積があったからだった。

     環状道路、昭和通り、靖国通り、明治通り、行幸通り、防災道路、堤防、隅田公園、浜町公園、などを含めた今の東京の骨格を作ったのは後藤新平である。

     通称「マッカーサー道路」などは真っ赤な嘘であり、後藤新平の計画の実行に過ぎないことを実証したのは、都市計画史の泰斗、越澤明先生だ。

    ■ 100年前にconnectivityを実現した小林一三

     当時の日本には、もう一人の世界的な天才がいた。小林一三である。

     NHKドラマにもなったように、小林一三が三井銀行員から鉄道経営者になった時の「箕面有馬電気鉄道」は、後発の小さな会社だった。

     そこから、阪急電鉄に改名し、鉄道ターミナルに阪急百貨店を直結し、千里山などの住宅地を開発し、住宅地にスーパーマーケットやタクシー会社を開業し、関西学院や関西大学などの教育機関を沿線に誘致し、宝塚歌劇団、東宝、阪急ブレーブス、などのエンタメ、スポーツ事業も起こした。

     鉄道事業と不動産、小売、文化やエンタメなどの「生活産業」とのシナジー効果を実現するだけでなく、自らも宝塚の台本を書き、ライバル松永安左ヱ門とは、茶人として交流した。

     さらには、小林一三は、現東京電力の社長を務めてエネルギーと鉄道をコネクトし、毎日曜日には、東急電鉄の取締役として、小林一三が鉄道省から招聘した五島慶太とともに、日本独自の鉄道の「シナジー経営」を東急に移植した。

     今日、世界ダントツの日本の私鉄のネットワーク密度と利便性、最低料金、そして、何よりも、交通と「生活」「経済」をコネクトしている世界でも日本だけの特性は、旧国鉄が新生JRとして、「エキナカ」や不動産事業に進出して、都市部の日本国民の日常生活を支えていることにも生かされている。

  • 日本電産が時価総額70兆円のテスラを超える日

    ■ 交通革命が世界を変える

     石炭経済における蒸気機関車、石油経済における自動車。

     エネルギー革命が交通革命を起こしたときに、生活が、都市が、経済が変わり、文明が変わった。

     同じことが起こる。再生可能エネルギー、私の言葉で言えば、(すべて太陽起源の電力になるから)「太陽電力」で動く電気自動車(EV)が、次の交通革命を引き起こす。

     その時、いまや時価総額が70兆円に達するテスラは、時価総額が8兆円の日本電産に、EVの主役の座を奪われるだろう。

     そして、EVの主力が、自動運転電気自動車(AEV autonomous electronic vehicle)、私の言葉で言えば「自電車」が交通の主力になるときに、新しい「交通革命」が起きる。

     道路を変え、建物を変え、町や村を変え、通信や情報、金融、医療や買い物、教育、つまり、生活全体を変えていく。

     AEV、あるいは「自電車」が交通革命を起こし、交通革命が「都市革命」を起こし、全体の「経済革命」を起こす。

    ■ 主役交代が起きる

     完成車メーカーからキーコンポーネント企業へ、自動車社会の主役の移動が、これから起きる。

     変化できない企業は淘汰される。2つの先例がある。

     かつて、コンピューターの主役は、コンピューターメーカーだった。

     1968年の映画「2001年宇宙の旅」の「HAL」、1文字ずつずらすと(H→I、A→B、L→M)「IBM」が、メインフレーム中心のコンピューターの永遠の独占企業と見られていた時代が長かった。

     そして、1980年代に、本格的なパソコンの時代が始まった。

     IBM、NEC、富士通、東芝、コンパック・・・。多くの企業が参入して成功を収めた。相変わらず、主役は「PCメーカー」だった。

     しかし、1990年代のマイクロソフトの「Windows」、インテルのマイクロプロセッサー、2つ合わせて、ウィンテル(WINTEL)の時代が登場して、コンピューターの主役は、「コンピューターメーカー」から、ソフトウエアとハードウエアの「コンポーネント企業」に移った。

     マイクロソフトは今もGAMFAの一角を占めて一貫した高収益を誇り、インテルの経営は低迷して台湾のTSMCやエヌビディアに半導体の主役の地位を奪われているが、半導体の付加価値自体は、むしろさらに巨大化している。

    ■ レンズという参入障壁がなくなったカメラ

     かつて、高級一眼レフが若者の憧れだった時代があった。

     精密な「レンズ」の製造がカメラへの参入障壁であり、ドイツのツァイス、ライカ、日本のニコン、キヤノンのカメラとレンズが、「写す」市場の最上位を占めた。

     しかし、「写す」という行為の主力が、デジカメへ、そしてスマホへと変わり、一眼レフカメラの最大の参入障壁であった「レンズ」は、もはや「写す」ことの参入障壁ではなくなった。

     そして、「写す」ことが、「送る」「保存する」「共有する」「メッセージをつける」「アルバムにする」ための、ネットワークへの接続と一体化した。

     そして、IT化とネットワークのconnectivity が、「写す」産業の新たな参入障壁となった。

    ■ エンジンという自動車の参入障壁の消失

     一度だけ、当時の経団連の奥田会碩長にお目にかかったことがある。トヨタの会長でもあった奥田さんは、「高速道路債権債務保有機構の政府保証債を、連結してみれば同じ政府債務である、建設国債に振り替えれば、高速道路は無料にしなくてはいけなくなる」という私の持論を聞いてくれた。18年前のことだ。

     そして、自動車社会の未来の話になった。

     奥田さんは「山﨑さん、電気自動車の時代になったら、電気屋さんの方が上手に作れるようになるよ」とおっしゃった。

     その時には分からなかったが、今は、「電気自動車では、エンジンがなくなり、モーターが主力部品になる。エンジン技術で参入障壁を築いてきた自動車の完成車メーカーの優位性はなくなる。参入は簡単になる」という意味だったと解釈している。

     ただし、ご本人に確認したわけではない。

    ■ 電気自動車の価格破壊

     EVでは、エンジンにまつわる複雑なシステムが不要になり、モーター主体のシンプルな構造になるから、部品の点数や組み立て・加工の複雑性は劇的に減る。

     「電気製品」になるから、ガソリンエンジンやさらに複雑なハイブリッドの車に比べてEVの参入障壁は劇的に低下する。

     EVの価格破壊は、すでに世界最大の自動車市場である中国で始まっている。現在、50万円で販売されている格安EV価格は、量産効果と競争により一層低下していくだろう。

    ■ 再生可能エネルギー電力も価格破壊

     太陽光発電は、大きな太陽光パネルへの半導体技術の応用であり、恒常的な価格低下かいまも続く。

     ムーアの法則が生きている。

     世界的に、太陽光発電を中心に再生可能エネルギー電力価格の低下は続くだろうし、「脱炭素化」の世界的な流れは、再生可能エネルギー化→電力価格低下→EVのエネルギーコスト低下を招くだろう。

     つまり、エネルギーコストの面からも、環境面からも、旧来のガソリンエンジン車の競争力は低下し、EVへの転換が進み、量産効果からEVの価格破壊が進むだろう。

    ■ 「モーターは共通」になるEV

     これからEVと電力の低価格化が、新たなEV需要を呼び、EVメーカーの価格競争が熾烈になる。

     モーターには、エンジンのような参入障壁が築けない以上、EVメーカーの多くは、モーターなどの「コンポーネント」を仕入れる「組み立てメーカー」になるだろう。

     PCメーカーの多くが、WINTEL搭載の「組み立てメーカー」になったのに似てくる。

     そうなると、PCで起きたのと同様に、テスラのような「完成車メーカー」の価格競争力や付加価値は激減する。

    ■ 「高級EV」テスラの限界

     EVの黎明期には、最富裕層やセレブのシンボルとしての、テスラの価値は高かった。しかし、中国を震源地とする世界的な「EV大衆化」と「低価格化」にテスラは脆弱だ。

     そして、これから低価格メーカーが仕掛けていくだろう「EV高機能化」「EV社会実装化」「EVの社会システムの部品化」の流れには、テスラはさらに脆弱である。

     テスラの価格帯は、日本では400万~2000万円台である。完全な高級車路線である。

     ガソリンエンジンとラグジュアリーで差別化し、道路システムや建物システムや情報に「コネクトしていない」20世紀型の自動車産業システムを引きずっている。

     後で説明するが、今後の完全自動運転電気自動車(AEV)、私の言葉では「自電車」の時代には、シェアリングが主流になり、台数は劇的に減る。

     そして、付加価値は、EV車両から、EVを使った「道路と建物」「人の生活」「お金や決済」「情報」へと移るだろう。

     そうなると、EVはトータルシステムの一部に過ぎなくなり、人々の支払いは、サービスや情報、そして移動の確実性と安全性に移り、EV車両にかける費用は劇的に低下するだろう。

    ■ シェアリングで激減する売り上げ

     AEVの安全性が一定以上高まれば、AEVの主流は無人運転のシェアリングとなる。つまり、車両1台あたりの稼働率は、大きく向上する。

     現在の自動車シェアリングの中心であるタクシーの稼働率は、50~70%と見られる。一方で、「マイカー」の稼働率は5%程度と推計される。

     マイカーからシェアリングに移行するということは、稼働率の劇的な向上、つまり社会的に必要なAEVの台数の劇的な減少を意味する。

     先ほど述べたように、AEV単体の価格破壊が進むだろうから、そこに販売台数の劇的な減少が加われば、もはや「自動車製造販売」という巨大な産業の消滅に近い収縮を意味する。

     その時には、高級完成車の販売を根幹とするテスラのビジネスモデルは限界を迎えるだろう。

    ■ EVコンポーネントの主役狙う日本電産

     日本電産の強みは、今後、自動車の主流となるEV(HCVも含めて)において、最大の付加価値を持つ「モーター」という「キーコンポーネント」と、その関連領域の、世界最強水準の企業であることだ。

     また、日本電産の強みは、モーターと周辺領域の内外の企業を統合して、単に買収するだけでなく、その価値と技術を向上して、高度な世界企業集団を作り上げたことにおいて、日本一の実績を持つことだ。

     今後、中国を中心として、世界中で、電気自動車(EV)への参入は加速していく。同時に、パソコン市場で起きたような、「完成メーカー」から「コンポーネントメーカー」への付加価値の移動が起きるだろう。

     これからのEVの世界で、かつてパソコンの世界でインテルが築いたのによく似た、「キーコンポーネント製造企業」の地位に日本企業の中で最短距離にあるのが、日本電産だろう。

     さらには次のAEVの社会実装が、車両だけからあらゆる道路、建物、施設にまで及び、しかも、高い安全基準の充足を求められる時に、拡張したキーコンポーネントメーカーとしての、日本電産のフィールドは、飛躍的に拡大が可能になるだろう.

  • トヨタがいよいよEVと自動運転 ライバルたちを一気に抜き去るのか、それとも?

     先月、ホンダは世界初の自動運転レベル3を搭載したレジェンドを発売したが、それを追い掛けるようにして、トヨタは最新の運転支援技術を採用した新機能「Advanced Drive」をレクサスLSとMIRAIに搭載して発売した。

     ハンズフリー機能そのものは、すでに日産やBMW、メルセデス・ベンツが導入しており、目新しいものではない。そういう意味では日産の「プロパイロット2.0」に近いものと判断することもできるが、プロパイロット2.0では追い越し時にはステアリングに手を添える必要がある。それに対しAdvanced Driveは追い越し時もステアリングを握る必要はなく、ドライバーが承認するだけで自動的に追い越し操作まで完了する。システムの複雑さとその完成度ではトヨタの方がワンランク上だ。

     その上で、トヨタがレベル3に踏み込まなかったのは、実際に使う人のことを考えているからだ。

     ホンダはリースで100台限りの販売であるのに対し、トヨタはレクサスLSとトヨタMIRAIの最上級グレードとして用意している。その価格はMIRAIでは同じ装備の従来グレードより55万円高、LSはグレードにより66~98万円高。レジェンドに比べればリーズナブルで、多くのオーナーが選択するであろうことが予想できる。

     そしてドライバーに優しい自動運転を本当に考えた時、よそ見をしてもいいが何かあった時にはドライバーの責任が追求される可能性があるレベル3より、そもそもよそ見ができないレベル2を維持していた方が分かりやすく、ユーザーに誤った認識による使われ方をされる危険性も少ない。しかも、その上で自動運転としての技術は最高レベルを目指している。

     その証拠となるのがLiDARの採用だ。赤外線レーザー光を幅広く照射して、その反射から対象物の形状と距離を分析できる、数ある障害物を検知するセンサー類でも最も緻密で高性能なレーザースキャナーである。

     自動運転のレベル分けを考え直すことも視野に入るほど、トヨタは自動運転に対して技術面では最高レベルを実現しながら、その扱いについては慎重さを失わない姿勢を維持している。

     このあたりは、報道の方向性によってコロコロと説明を変えるテスラとは対照的だ。オートパイロットを自動運転と呼んだり、FSDと呼ばれる追加機能を完全自動運転とうたったりする一方で、事故が起これば自動運転ではないと釈明するというシーンをこれまで何度か見てきた。

     ベンチャーらしいしたたかさと言ってしまえばそうだが、イーロン・マスクほど強じんなメンタルを持ち合わせていなければとても乗り切れない戦術で、マスコミや政府機関を相手に立ち回ってきた。

     トヨタはドライバーが例え間違った使い方をしても、乗員を危険な目に遭わせることがないように、幾重にもフェイルセーフを重ねている。ステアリングに重りをつるしただけで、ドライバーが運転席に居ると判断してしまうようなシステムは、トヨタでは絶対に作らないのだ。

    EVを徐々に増やすか、一気に変えるかは社会の受容性次第
     同じことはEVに対する戦略にも通じる。日本の経済界を支える25兆円企業としての責任感と、斬新なアイデアを魅力たっぷりに見せユーザーや投資家を少々欺いても資金や売り上げを手にしようという灰色の商魂とでは、ビジネスの方向性がまったく違うのだ。

     先日の上海モーターショーで、トヨタは新しいEVを発表した。すでに試作モデルとして発表していたデザインの完成形であったものの、そのスタイリングと明かされている機能は、今後の売れ行きを予感させるに十分なもので、来年半ばとされる発売が待たれる。

     そして一昨年発表されたEVの試作車群の中には、他にもユニークで魅力的なモデルがいくつも存在している。今後4年間でEV15車種をグローバル市場で展開すると発表しているのだ。これはEV市場が拡大しても、EVベンチャーにやすやすとパイを奪わせない、というトヨタの決意の現れともいえる。

     国内を見れば、昨年よりトヨタは4チャンネルの販売体制による専売体制を廃止した。販売車種の整理と共に、今後はEV化が同時並行で進められることになる。販売の現場は大変だがタイミングとしては絶妙で、むしろコロナ禍など想定外の災害が重なったことは、後から見れば先に戦略を決めていた分、対応が早められたことにつながるだろう。

     そしておそらくディーラーの販売拠点も整理されていく中で、充電ステーションやカーシェアリングの専門拠点といった、新たなサービスを展開していくことになる可能性も高い。EV販売の機が熟してくれば、即座に現場に対応できる。トヨタの強みをそう予測した論評は少なくなかったが、いよいよそれが現実になろうとしているのだ。

    水素利用のモビリティも商用分野で一気に現実味
     FCVも新局面に入って、これからが面白くなってきた。新型MIRAIの出来の良さもさることながら、燃料電池スタックを外販し、さらには子会社の日野自動車ばかりか、いすゞも巻き込んで商用車業界で水素燃料電池を普及させようという一大プロジェクトを仕掛けようとしている。

     日野といすゞを結び付けたトヨタの大胆さは、カーボンニュートラルへ向かって禁じ手はないことを身をもって示したものだとも言える。

     自動車業界のアライアンスは混迷を極めつつあるが、限定分野でのみ提携を結ぶことは、今後も進むだろう。ましてや水素利用のモビリティは、メーカー単位ではなく首都圏など地域レベルでのさまざまな企業や自治体が参加することによって、現実性が高まる。

     そして驚いたのは、トヨタが今さら水素エンジンにまで触手を伸ばしてきたことだ。つい先日、トヨタが水素エンジンを搭載したツーリングカーを製作し、耐久レースに参戦する(実際の参戦は豊田章男社長もドライバーを務めるチームへ委託)と発表したのである。

     筆者は、水素エンジンは燃料電池車にたどり着くまでの過渡的なモデルだと思っている。そのため、今後は水素を直接燃やすことはなくなるのではないか(ガスタービン発電の水素利用は別だ)と考えているのだが、トヨタの捉え方はやや異なるようだ。

     確かに水素と炭素を合成させる「eフューエル」より、水素だけで燃やした方が合成の手間は掛からず、二酸化炭素も排出しない。燃料電池の変換効率が高まれば、試みだけで終わるかもしれないが、トヨタとしては長年研究は続けており、選択肢は多く持っておきたいところなのだろう。

     それにこれはエンジンを存続させるためにも、有効な施策であるといえる。それはモーターでは味気ない、鼓動や熱気を感じさせるエンジンへの愛着といったノスタルジーではなく、日本の自動車産業がこれまで培ってきた高いエンジン製造技術を、今後も武器として持ち続けるためには水素を燃料として利用する方法もある、ということだ。

     政治家が2050年のカーボンニュートラルという目標を語ってもそれは絵空事で、どこかひと事のような責任感の希薄さを感じてしまう。それは政治家がエンジニアではなく、実際に額に汗をかいて実現へ努力する現場の人間ではないからだ。そして現状の把握と将来への展望に、発言者本人が理解力に乏しく、説得力に欠けるからだろう。

     しかし30年先を見据えて常に種まきをしてきた企業は、行動にも目標にも現実感が漂う。まさに日本の屋台骨であり、日本の産業界をけん引してきた実績とプライドが漂うのだ。自社だけでない、自動車業界だけでない、日本全体の将来のことを考えて戦略を立てていることが、このところのトヨタの活発な動きで感じ取れるのだ。

    (高根英幸)

  • EVで異業種参入相次ぐ、本命アップルは今度こそ「クルマ」を変えるか

    垂直統合→水平分業で自動車産業揺さぶる
    アップル創業者のスティーブ・ジョブズも自動車開発を目指していた

     電気自動車(EV)への異業種参入が相次でいる。1月には米アップルがEV参入に向け、複数の自動車メーカーと交渉していることが明らかになった。中国では百度(バイドゥ)、滴滴出行(ディディ)などが現地自動車大手との提携やEVの共同開発を発表。台湾の鴻海精密工業もEVプラットフォームを開発するなど、自動車メーカーとの提携を急速に広げている。背景には自動車産業を取り巻く環境変化がある。新興勢力は既存の産業構造に風穴を開けるかもしれない。

    アップルの自動車開発、2008年にジョブズが検討していた仰天プラン

     アップルのEV参入の可能性について、日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は「新しい産業やテクノロジーカンパニーが入ることは自動車産業に将来性があるということであり、お客さまにとって選択肢の幅が広がることになる」と歓迎する。一方、自動車は40年ともされる商品サイクルの中で過酷な条件でも使用され、安定して機能を維持することで信頼を得てきた。豊田会長は「車をつくることは技術力があればできるが、つくった後に40年のいろいろな変化に対応する覚悟を持っていただきたい」と強調する。

     日産自動車の内田誠社長は2月の会見で、アップルから打診があったか問われ、「各分野で優れた知見や経験を持つ企業が、パートナーシップやコラボレーションを活用する選択は十分に出てくると思う」と述べつつ、明確な回答は避けた。ボルボ・カー・ジャパン(東京都港区)のマーティン・パーソン社長は「ハイテク企業は事業展開が早く、同じペースで変革していかなければ恐竜のように死に絶えてしまう」と警戒心を強める。

     新興勢力は部品産業にも大きな影響を与えそうだ。新興勢力から部品発注の打診があれば「相手次第だが、すぐ受ける」とある自動車部品メーカーの幹部は話す。「顧客網の築き方を変える必要がある」と危機感をにじませつつ、「新しいチャンスになり得る」と産業構造の変化を前向きに捉える。

     EVへの異業種参入が相次ぐ背景に「四つの『脱』がある」と話すのは、IHSマークイットジャパンの西本真敏オートモーティブプリンシパルリサーチアナリストだ。まず、世界的な温室効果ガス排出削減の潮流で「脱・内燃機関」が進む。二つ目が「脱・成長主義」。伝統的な自動車メーカーは、規模拡大でコストを下げ、利益を確保するというビジネスモデルで生き残ってきた。しかし、電動化や自動運転など開発コストが膨らむ中で、「不採算部門を大胆に切り捨て、専用ブランドの創出やバッテリーの内製化、専業化などEV事業への集中化が目立っている」(西本氏)。

     温暖化ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」。ガソリン車の新車販売禁止ありきの政策も進むが、自工会の豊田会長は「選択肢を自ら狭め、日本の強みを失いかねない」とし、日本独自の道筋を目指すべきだと訴える。

     例えば水素由来の新燃料と、日本の強みとなる高効率エンジンとモーターの複合技術を組み合わせることで「大幅な二酸化炭素(CO2)低減という新しい世界がみえてくる」という。また脱炭素実現に向け「企業の研究開発や設備投資への税額控除」(同)などが必要だろう。

    「脱・自動車社会」が進む
    国内勢はプラットフォーム(車台)などを足がかりに商機をうかがう。

     一方で、「脱・自動車社会」が進む可能性が高い。これまでは経済成長に比例して自動車産業も伸長したが、大気汚染など都市化に伴う課題の解決が今や最優先事項だ。最後に「脱・自動車製造業」。MaaS(統合型移動サービス)では、大量生産・大量消費を志向してきた自動車メーカーの枠に留まらず、新たな移動サービスが台頭する。

     自動車産業をめぐる四つの「脱」に加え、EVはガソリン車と比べて部品点数が少ないという構造上の特徴も参入障壁を下げている。

     西本氏によれば、EVの新興勢力は次のように大別できる。まず、プラットフォーマーを中心に経済圏を形成するタイプ。バイドゥなどが該当する。企画や開発に特化した「ファブレス」や、生産のみ手がける「受託生産」など特定の工程に特化したタイプもいる。それぞれ、新興メーカーの中国蔚来汽車(NIO)と米カヌー、鴻海の攻勢が目立つ。

     部品点数が少ないEVでも、事業として軌道に乗せるには巨額の投資や量産技術の確立が不可欠だ。しかし、こうした新興勢力の台頭で「差別化戦略が多様化し、EV事業のハードルは低くなっている」(西本氏)。アップルや鴻海はスマートフォンで確立した開発や生産をすみ分ける「水平分業」をEVで再現するとみられている。EV新興勢力は「垂直統合」で競争力を維持してきた自動車産業を揺さぶっている。

  • ソニー、ドイツで「ビジョンS」の5G試験走行 高速走行中の通信環境最適化

    ソニーは21日、ボーダフォン・ジャーマニーとともに電気自動車(EV)コンセプトカー「ビジョンSプロトタイプ」を5G(第5世代移動通信システム)で走行する試験をドイツ・アルデンホーフェンにあるテストコースで開始したと発表した。

     テスト車両には5Gで車載システムとクラウドが常時接続し、データや制御信号の同期や無線通信でソフトウエアをアップデートするOTA(オーバー・ジ・エア)が可能。試験では、車両に搭載した各種センサーから取得したデータをクラウドへ5Gによる低遅延伝送するとともに、クラウドから車両にリアルタイムで制御する可能性を検証する。高速走行中の車両の通信環境を最適化するための検証と開発を進めるとしている。

    ソニー、EV「ビジョン-S」を二子玉川で一般公開 年内に国内で走行試験

     5Gをコネクテッドカーに適用するためには、基地局間をまたぐ走行でもシームレスに接続を維持するためのテレマティクス・コントロールユニットのモデム制御の最適化が必要となる。同社では、通信システムのハードウエア・ソフトウエア設計ノウハウやフィールドテストでの伝搬特性解析などの技術をスマートフォン開発で培ってきた。これらの技術をモビリティ分野に応用していく。

  • トヨタ新EV「bZ」発表 スバル共同開発SUV ソーラー充電 EV戦略本格化へ

    トヨタの新EVシリーズ「bZ」、まずはSUVから

     トヨタは2021年4月19日(月)、新EVシリーズ「TOYOTA bZ(トヨタ ビーズィー)」を発表し、開催中の上海モーターショーにてシリーズ第1弾となる「TOYOTA bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」のコンセプト車両を初披露しました。「bZ」シリーズは、電動車のフルラインアップ化の一環としています。

     発表された「bZ4X」は、スバルと共同開発したSUVタイプのEVです。両社で共同開発した「e-TNGA」EV専用プラットフォームを採用し、HV(ハイブリッド)やPHV(プラグインハイブリッド)など電動化を得意とするトヨタと、AWD(四駆)技術を得意とするスバルが互いの強みを持ち寄ったものといい、次の特徴を挙げています。

    ・EV専用プラットフォームによる、ショートオーバーハング・ロングホイールベース化により、特徴的なスタイリングと、Dセグメントセダン並みの室内空間を実現。

    ・円形ではない異形ハンドルを採用し、操舵時に持ち変える必要がなく、広々としたスペースの演出にも寄与する。

    ・スバルと共同開発した新AWDシステムを採用。電動車ならではの素早いレスポンスを生かした安全で気持ちの良い走りと、高い走破性を実現。

    ・ソーラー充電システムを採用。回生エネルギーの活用に加え、停車中も充電を行い、冬場などでも不便を感じさせない航続距離を確保。

     この「bZ4X」は、日本と中国で生産を予定し、2022年の年央までにグローバルでの販売を開始する計画とのこと。また、2025年までにEV15車種、そのうち「bZ」シリーズについては7車種を導入する計画だそうです。

    乗りものニュース編集部

  • インテル、自動車用チップの生産に向け協議--半導体不足で

    Intelは米国時間4月12日、自動車向け半導体チップの生産に向けて自動車メーカーと協議中であることを明らかにした。Intelの最高経営責任者(CEO)であるPat Gelsinger氏は、12日にホワイトハウスで開かれたハイテク業界リーダーらとの半導体不足に関する会合の後、Reutersに対し、同社が今後6~9カ月以内にそうしたチップの生産開始を目指す考えを明らかにした。Intelは現在、コンピューターやスマートフォン用のチップを生産している。

     今回の発表に先立ち、Intelは3月、他社開発のチップを製造するファウンドリー事業に乗り出すと発表していたが、今回は、自社工場で自動車業界向けのチップを製造する可能性を示唆している。Intelは、この発表が好意的に受け止められていると述べたが、提携先候補となる自動車メーカーを具体的に挙げることはしなかった。

     Gelsinger氏は12日、Intelはチップ不足を解消するために、200億ドル(約2兆1800億円)を投じてアリゾナ州に2つの新しいチップ工場を建設すると語った。

     ホワイトハウスの会合には、Intel、Dell、サムスン、Ford、HP、AT&T、Alphabet、General MotorsなどのCEOが出席した。世界的なチップ不足で、Ford、General Motors、トヨタなどの自動車メーカーは、一部のチップを入手できない状態となっており、それが自動車の減産につながっている。

     Joe Biden米大統領は2月、半導体チップのサプライチェーンを100日以内に見直して改善するための大統領令に署名した。Biden氏はその際、「サプライチェーンを安全で信頼できるものにする必要がある」と述べ、半導体チップは自動車やスマートフォンから医療機器に至るまでのあらゆるものを支えているとしていた。

    この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

  • Appleカー、韓国LGが生産受託交渉で「合意間近」

    韓国の英字紙コリア・タイムズは4月14日、米アップルと韓国LG電子関連会社による電気自動車(EV)の生産委託交渉が合意間近だと報じた。

     LG電子とカナダの自動車部品大手マグナ・インターナショナルが近く設立する合弁会社「LGマグナ e-パワートレイン(仮称)」が、「Appleカー」とも呼ばれるアップルブランドEVの初期量産分を担当する見通し。双方が契約の詳細について交渉を続けていると関係者は話している。

     米メディアによると、EV用モーターや減速機などの「パワートレイン(駆動系)」の設計をLG電子がマグナとともに行い、マグナが車両の製造を手がけるもよう。

     ただ、アップルは初代モデルを市場調査のための評価車と位置付けており、当初の生産台数はそれほど多くはないとコリア・タイムズは伝えている。

    ■ アップルとの取引実績があるLGグループ

     LGにはアップル製品の部品サプライチェーン(供給網)となっているグループ企業がいくつもある。液晶パネルのLGディスプレーのほか、電子部品のLGイノテック、電池事業を手がけるLG化学、LG化学から2020年に分社した電池子会社LGエネルギーソリューションなどだ。これらのグループ企業はアップルと十分な取引実績があり、歩留まり(良品率)や納期などの点で信頼を得ているという。

     LGグループは米テスラや、米ゼネラル・モーターズ(GM)の「シボレー・ボルトEV」にEV用駆動モーターやバッテリーパックなどを供給した実績がある。マグナもEV用電子機器を手がけている。

     LG電子は先ごろ、スマートフォン事業から撤退すると発表した。21年7月末をメドに自社スマホの販売を終了する予定。不採算事業からの撤退により利益率の改善が見込まれ、自動車部品関連事業に資金を投じることができるという。

     一方、LG電子とマグナ・インターナショナルの合弁会社は、EV用駆動モーターや車載充電器、インバーター(駆動時と減速時に直流・交流電流を変換)などを製造する計画。出資比率はLGが51%、マグナが49%。株主の承認などを経て21年7月に設立手続きが完了する見通し。

     アップルとの契約が成立すれば、LGとマグナはAppleカー生産計画の詳細をまとめる。アップルは24年初頭をメドに試作車を公開するとコリア・タイムズは報じている。

    ■ 現代自との交渉決裂、日本の自動車大手と協議か

     Appleカーの計画を巡っては20年末以降、米国や韓国で関連報道が続いている。ロイターは20年12月、アップルが自動運転技術の開発を進めており、24年までの乗用車生産開始を目指していると報じた。

     米CNBCは21年2月3日、韓国・現代自動車の系列自動車メーカー韓国・起亜に生産委託する交渉がまとまりつつあると報じた。米ウォール・ストリート・ジャーナルは2月5日、起亜がアップルのEV生産に関し提携企業を探していると報じた。起亜が米ジョージア州に持つ完成車工場で24年にも生産を始め、初年で最大10万台を生産する可能性があると、関係者は話した。

     だが、現代自は2月8日、これらの報道を否定するコメントを出した。現代自と起亜は、規制当局に提出した文書で「自動運転EVの共同開発について複数の企業から協力要請を受けているものの、まだ初期段階であり何も決まっていない」と説明。そのうえで、「アップルと自動運転車開発の協議をしていない」と否定した。

     ウォール・ストリート・ジャーナルは2月9日、「現代自との交渉は決裂したもようだが、アップルは1社に依存することはなく、日本の自動車メーカー数社とも協議している」と報じた。

    ■ 「iPhone」の生産モデルをEVに

     4月5日には、アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)がポッドキャストのインタビュー番組に出演して自動運転車の開発計画を示唆したと伝えられた。この中で同氏は「我々は製品を取り巻く重要技術を自社で持ちたいと考えている」とし、「ハードウエアやソフトウエア、サービスを統合したいと考えており、それらの交点を探っている。そこに不思議な力が宿ると信じているからだ」と語った。

     アップルはEV分野でもスマートフォン「iPhone」のように中核技術を自社開発・保有し、製造を協力企業に依頼するモデルを考えていることがうかがえる。これまでの成功体験を基に製造委託先を探しているようだ。

     ただ、単なる下請けになりたくない自動車大手とは馬が合わない。それが現代自・起亜との交渉が決裂した理由ではないかと想像できる。かつて、大手通信事業者が「IT大手の『土管』にはならない」と言っていた記憶がある。同様のことが、自動車産業にあるのかもしれない。

     EVは長年培われた内燃機関の技術が不要になり、自動車生産の垣根が低くなったと言われている。一方、センサーやソフトウエア、通信技術が、EVと相性の良い自動運転技術で重要になっている。自動車大手はこうした動きを警戒しつつ、時代がEV化に向かう中、IT大手と手を組む方法を模索している。

     (参考・関連記事)「アップルCEO、「Appleカー」の存在を示唆」

    小久保 重信

  • エヌビディアの自動運転車開発オープンプラットフォーム、複数のロボタクシー企業が採用

    エヌビディア(NVIDIA)は4月12日、自動運転車開発のオープンプラットフォーム「NVIDIA DRIVE」が、次世代の自動運転車を開発している複数のロボタクシー企業に採用された、と発表した。

    ロボタクシーは、全世界での移動距離が1年間に数兆マイルにのぼり、この距離がサービスとして提供される比率が増えている。これに貢献しているのが、NVIDIA DRIVE をベースにして開発を行っているロボタクシー企業だ。

    たとえば、ロボタクシー企業のZoox は、都市部で日常的に走行することを想定した専用のロボタクシーを発表した。この車両は、NVIDIA DRIVE を活用しており、双方向性機能を備えた最初のロボタクシーのひとつになるという。

    中国の大手 「MaaS(サービスとしてのモビリティ)プロバイダーである DiDiも、自動運転テスト車両すべてに NVIDIA DRIVE を採用すると発表した。これらのロボタクシー企業は、「Pony.ai」や 「Auto X」など、すでに NVIDIA DRIVE プラットフォーム上で開発を行っている企業のリストに加わることになる。

    エヌビディアは、NVIDIA DRIVEの次世代自動車、トラック、ロボタクシー、新エネルギー車 (NEV) への採用が拡大しているのを受け、オートモーティブ関連企業からの NVIDIA DRIVE の受注高が、今後 6 年間で 80 億ドル以上に達する見込み、としている。

    レスポンス 森脇稔

  • >>18

    シャオミ、EV分野に正式参入 スマホのように革命を起こせるか

    3月30日夜、スマホ・IoT家電大手のシャオミ(小米)が、自動車事業を行う100%子会社を設立する旨の公告を発表した。開発するのはスマートEVで、初期投資額は100億元(約1700億円)、今後10年間で合計100億ドル(約1兆1000億円)を投資する予定だ。シャオミの雷軍CEOが子会社のCEOを兼任することも併せて発表された。

    ■ 早くから自動車事業を準備
    シャオミや雷軍氏は早くから自動車事業のために準備をしてきた。

    雷氏が創設した「順為資本(Shunwei Capital)」は新興EVメーカーの「蔚来汽車(NIO)」と「小鵬汽車(Xpeng)」に出資しており、シャオミのスマホにBYDや小鵬汽車のドアを解錠できる機能を内蔵し、蔚来汽車のスマートコントロール機能も備えている。ほかにも、国産大手の「一汽轎車(FAW Car)」とスマートカーに関する協力契約を締結している。

    また、シャオミのエコシステムには車載スマート製品を開発する企業が複数あり、シャオミ自身も2015年から2020年にかけて自動車に関する特許を約800件取得している。これらのことからすれば、シャオミの自動車産業への進出は、満を持してのことだと言える。

    ■ スマートフォンを製造するようにクルマを作る
    シャオミがどのような体制でクルマを製造するのかが注目されているが、消息筋によると、アセンブリを外部委託する予定だという。これは同社のスマホ製造と同じ体制である。

    スマホの委託製造において最も成功したのはアップルと台湾のフォックスコンの提携であり、アップルのイノベーションとフォックスコンの製造能力が融合した結果、ノキアの牙城を崩すことに成功した。

    それに続いた中国の各社も同じ手法を採用した。シャオミは2011年にスマホの開発を発表し、「OPPO」、「vivo」は同年に初のスマホを発売した。ファーウェイのスマホ参入は2012年だった。2011年前後にこれらの企業が一気にスマホ産業に進出し急成長できたのは、スマホの産業チェーンが十分に成長していたためだ。

    テック大手がこぞって自動車製造に乗り出す今の状況は、当時のスマホ業界と似ている。そのベースにあるのも、同じくEVの産業チェーンの成長により、迅速に製品化できるようになったためだ。それだけに、どこに生産を委託するのかが大事になる。

    蔚来は「江淮汽車(JAC Motors)」、「長安汽車(Changan Automobile)」、「広州汽車集団(GAC Group)」に生産を委託しており、コスト抑制および開発から量産化までの時間短縮を実現した。他方、自動車がスマホよりはるかに複雑な製品であることから、委託生産に慎重な企業もある。同じく新興EVメーカーの「威馬汽車(WM Motor)」は、委託生産では品質コントロールが難しいと考え、自社工場に巨額の投資をしている。

    このように、新興EVメーカーでも委託生産をするかどうかで方針が分かれている。しかし、シャオミ、アップル、バイドゥ(百度)のような後発企業からすれば、テスラがすでに安定した収益モデルを確立させ、蔚来、「理想汽車(Li Auto)」、小鵬が上場した今、自社工場を作っていては参入があまりにも遅れてしまう恐れがある。

    したがって、テック大手の参入により、かつてスマホ産業がそうであったように、委託生産モデルで自動車産業の変革を導く可能性がある。シャオミはまさにスマホ市場の構造を変えた企業であり、自動車産業にもサプライズを起こせるのか、今後も目が離せない。

    原作者:「深響」(Wechat ID:deep-echo) 周永亮

  • シャオミが1兆円投資で「EV」に参入する本気度

    中国のスマートフォン大手の小米(シャオミ)は3月30日、同社董事会(取締役会に相当)が電気自動車(EV)事業への参入を正式に決議したと発表した。100%子会社を新設し、シャオミの創業者で会長兼CEO(最高経営責任者)である雷軍氏が新会社のCEOとして陣頭指揮を執る。

     シャオミは以前からEV事業への参入を検討していたが、今回それを正式に宣言した格好だ。投資額は第1段階で100億元(約1671億円)、今後10年間で延べ100億ドル(約1兆967億円)を見込んでいる。

     発表が行われたその夜、雷CEOはシャオミの春の新製品発表会でこう語った。

     「この決定が何を意味しているのか、私はよくわかっている。私の人生で培ってきたすべての成果と名誉を賭け、シャオミ・カーのために戦う。決定を下したからには、少なくとも5年から10年間、全力で突進する覚悟が必要だ」

     雷氏によれば、EV事業への参入は「シャオミの歴史上最も重大な決定」であり、同氏にとって「人生最後の重大な創業プロジェクト」だという。

    ■資金はすべてシャオミが出す

     なお、シャオミのEV事業の経営形態について、雷CEOは社外からの出資を仰がない単独資本で経営するとし、「必要な資金はすべてシャオミ自身が出す」と強調した。

     雷CEOの説明によると、多くの投資家がシャオミのEV事業への出資に意欲を示した。しかしシャオミが独自に築いてきたスマートフォンのサプライチェーンを自動車製造に生かしてこそ、顧客に最高の体験を提供できると考えて、単独資本を選択したという。

     シャオミのEV事業参入の動きは、かねてより市場関係者の注目を集めていた。シャオミは2月21日夜に発表した投資家向け広報の中で、EVの研究開発を始めたことを明らかにしたが、事業化はまだ取締役会の承認を得てないとしていた。しかし、「シャオミがEV参入を準備」とのニュースが流れると、株価は瞬く間に跳ね上がった。

     自動車業界では現在、スマート化と電動化に向けた方向転換が進んでいる。スマート化した自動車とは、誤認を恐れずに言えば「スマートフォンにタイヤを4つ付けたもの」である。中国の華為技術(ファーウェイ)やアメリカのアップルなど、多くのスマートフォンメーカーが自動車事業に参入しつつあるのはそのためだ。自動車はスマートフォンに続く次世代のスマート端末となる可能性を秘めているのだ。

     (財新記者:何書静)

  • 【高論卓説】米アップルがテスラを買収する日 世紀の大合併、実現ならEV普及加速

    米アップルが電気自動車(EV)参入の準備を進めている。これは提携している自動車メーカーや参加していた技術者などを通じて何度も報じられてきたことだ。「タイタン」というプロジェクト名も明らかになっている。しかし、アップル経営陣が公式に自動車参入について語ったことはなく、あくまでも「憶測」ということになっていた。

     だが、ステージは変わりつつあるようだ。4月5日、ニューヨーク・タイムズ紙のポッドキャストインタビューで、ティム・クックCEO(最高経営責任者)は「自律走行車はロボットそのもの。自律性があれば、さまざまなことが可能になるだろう。ここでアップルが何をするか、私たちは社内で多くのことを調査している」と語り、自動車に関する研究を進めていることをはっきりと認めたのだ。

     どんな形であれ、アップルがEVに参入した場合、最大のライバルになると目されるのが、先行するテスラだ。アップルはテスラの技術者を引き抜いており、テスラのイーロン・マスクCEOは「アップルはテスラ技術者の墓場」とTwitter(ツイッター)でバッサリ。アップルが取り組んでいるとされる技術については「実現は無理」と全否定するなどけんか腰だ。昨年12月には「今よりも10分の1の時価総額だったときにティム・クックに買収を持ち掛けたが、彼はミーティングを拒否した」と暴露するなど、言いたい放題である。

     一方のクックCEO。同じインタビューで「私はイーロンと話したことはないが、彼が作り上げた会社を尊敬している。テスラは、EVの分野でトップの座を確立しただけでなく、長期間にわたってトップの座を維持するという、信じられないような仕事をした。私は彼らに感謝している」と手放しの褒めようだ。

     社交辞令もあるだろうが、少なくともクックCEOはマスク氏を嫌いではない。この2社がいがみ合うのではなく、ガッチリ手を組む、つまりアップルがテスラを買収し、グループ会社とすることは十分にありえるのではないか。

     「自前主義」「垂直統合」の印象が強いアップルだが、「買収による事業領域の拡大」は既に繰り返し行っている。2010年に買収した「siri(シリ)」は同社のAI(人工知能)サービスの中核となっており、14年に買収した高級ヘッドホンの「ビーツ」も、アップルの重要なブランドだ。新領域への進出を買収で行うこと、そして買収後も独立会社として発展させていくことは、確立された選択肢なのである。

     一方のテスラにとっては、強敵の出現を未然に防ぐことができる。消耗戦による時間の無駄を防ぐことができる。

     3月末時点のアップルの時価総額は2兆ドル(約220兆円)を上回り、世界首位。テスラの時価総額は6000億ドル(世界8位)である。過去にない巨額買収になるが、不可能ではないだろう。

     この買収はクック氏の後継選びともつながる。14年に英バーバリーの元CEOを雇い入れた際、後継CEO候補と噂されたが、19年にアップルを去っている。IT・ネット業界における絶対的なカリスマはアップル共同創業者の故スティーブ・ジョブズ氏であり、その人気を引き継いでいるのがマスク氏だ。未来へのビジョンを語ることができるため、アップルの後継CEOとしてしっくり来る。やや強引な予測かもしれないが、世紀の大合併は十分にあり得るはずだ。

  • 電気自動車に惚れ込んだ2人の起業家

     このころ、「リチウムイオン電池駆動のクルマ」というアイデアに惚れ込んだ起業家が北カリフォルニアにも2人いた。マーティン・エバーハードとマーク・ターペニングである。2人は1997年にヌーボメディアという会社を立ち上げ、電子ブックリーダー草創期に「ロケットイーブック」を開発している。この業務を通じて、最先端のデジタル家電の世界に精通し、ノートPCなどのリチウムイオン電池の驚異的な進化も知っていた。

     電子ブックリーダーは時代を先取りしすぎて商業的には失敗に終わったが、その技術力はTVガイドなどの電子番組ガイド技術を持つジェムスター・インターナショナルの目に留まり、2000年3月にジェムスターがヌーボメディアを1億8700万ドルで買収する。莫大な利益を手にした後も2人は連絡を取り合い、シリコンバレーの高級住宅街に移り住み、次のターゲットを探していた。

     エバーハードは才能あふれるエンジニアだが慈善活動にも熱心で、地球温暖化対策にも早くから真剣に向き合っていた。そのため、ガソリン車に代わる代替策には敏感だったのだ。まずは水素燃料電池の可能性を探ったが、いまひとつだった。かといって、ゼネラルモーターズ(GM)が発表した電気自動車「EV1」のリースというアイデアもピンとこなかった。

     そんなとき、ACプロパルジョンが提唱する「100%の電気自動車」というアイデアには大いに興味をそそられた。エバーハードは2001年にACプロパルジョンを訪れ、「50万ドル出すので、鉛蓄電池ではなく、リチウムイオン電池版を作ってもらえないか」と頼んだが、受け入れてもらえなかった。そこで自ら会社を起こし、リチウムイオン電池の電気自動車を開発しようと考えた。

     エバーハードは、重量、バッテリー搭載数、タイヤや車体の抵抗などといったバランスを調整しながら最適な形状と性能を検討した。その結果、当時流行っていたSUV車や小型トラックでは難しいことがわかった。軽量の高級スポーツカーに最適だと結論を下した。走りが速く、運転する楽しさがあるのはもちろんだが、人々の予想を超える走行距離を確保することも大切だ。

     一方、仲間のマーク・ターペニングは、電気自動車購入者層の財務面を調査していた。これにエバーハードの技術仕様を重ね合わせ、プロジェクトの実現性を探ろうとしたのである。当時、カリフォルニアではトヨタのプリウスが発売され、環境問題に敏感な富裕層を中心に広がりを見せていた。

     「ゼネラルモーターズのEV1のオーナーの平均年収を調べたんですが、だいたい20万ドルでした」とターペニング。レクサスやBMW、キャデラックを追いかけていた層にとって、電気自動車やハイブリッド車はまた別の意味でステータスシンボルだった。こうした米国の高級車市場規模は当時30億ドル。2人はこの市場に狙いを定め、富裕層が乗って楽しいクルマの開発をめざすことにしたのだった。

    新会社「テスラモーターズ」を立ち上げ

     2003年7月1日、エバーハードとターペニングは新会社「テスラモーターズ」を立ち上げた。電気モーター技術に道を開いた発明家のニコラ・テスラに敬意を表したものであり、同時に響きがよかったことも採用の理由となった。

     数ヵ月後、イアン・ライトというエンジニアが入社する。ライトもまた、電気自動車の可能性を夢見ていたが、身近な友人らに事業プランを話しても、いつも一笑に付されるばかりだった。

     一からクルマの設計・製造を行うには、当然ながら幾多の困難を乗り越えなければならない。テスラの創業者らもそのことは重々承知していた。電気モーターの動力を車輪に伝えるドライブトレーン(動力伝達装置)の開発は決して不可能ではないとエバーハードらは考えた。自動車本体や関連部品の製造工場を造るのも大きなハードルだと彼らは思っていたが、自動車業界を調査しているうちに、実は大手自動車メーカーでさえ、もはやクルマの製造にはほとんどかかわっていないことに気づく。

     「BMWはフロントガラスも内装もバックミラーも作っていなかったんです。大手が今も手放していない部分は、内燃機関の研究、クルマの販売、マーケティング、最終組み立て工程だけでした。素人なもので、全部同じ業者から部品を調達できると僕らは思ってたんです」とターペニングは笑う。

     テスラ社が考えたプランは、ACプロパルジョンからtzeroの技術のライセンス供与を受け、英国のスポーツカーメーカー、ロータスの「エリーゼ」のシャーシ(車体を支える台)を車体に採用するというものだった。ロータスは1996年に2ドアのエリーゼを発売、車高を抑えた流れるようなデザインで高級車ファンの心をつかんだ。カーディーラー業界の関係者の話を聞いた末に、パートナー経由で販売するのではなく、直販方式にこだわることに決めた。

    「これはダメですな」

     2003年1月、テスラの3人は資金調達のため、ベンチャーキャピタルまわりを開始する。投資家にリアリティのある話をするため、ACプロパルジョンからtzeroを借り、ベンチャーキャピタルがひしめくサンドヒルロードに乗りつけた。フェラーリよりも加速力がある電気自動車。それだけでも投資家にはぐっとくる謳い文句だった。

     ただ、ベンチャーキャピタルの連中はそれほど想像力が豊かなわけではない。安っぽいプラスチック仕上げのキットカーを目の前にして、その先に生まれるであろう高級車の姿を想像してもらうのは無理があった。反応してくれたのは、コンパス・テクノロジー・パートナーズとSDLベンチャーズだけだったが、どちらもあまり乗り気ではなかった。消極的ながらもコンパスが手を挙げたのは、同社が、彼らが以前に手がけていたヌーボメディアに関わって利益を上げたことがあり、創業者の2人にはそれなりの恩義を感じていたからでもある。

     「『これはダメですな。でも、まあ、この40年、弊社は自動車ベンチャーにはもれなく投資してきたので、今回もお断りはしませんがね』と言われてしまって」とターペニング。多少の足しにはなったが、とても足りない。テスラとしては、試作車開発に必要な700万ドルの大部分をポンと出してくれるメインスポンサーが必要だった。そこまでたどり着けば、現物を使って売り込みができるので、資金調達もスムーズに進むという計算だった。(翻訳 斎藤栄一郎)

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    気候変動への認識の変化が自動車産業界を大きく変え、電気自動車の開発にトップ企業がしのぎを削るようになった。火付け役にして先頭ランナーはもちろん、イーロン・マスクが率いるテスラモーターズだ。2人の起業家が「テスラモーターズ」を立ち上げ、イーロン・マスクが出資したのが2003年。株式時価総額が世界7位になった今からは信じられないことだが、創業当初、テスラの事業計画は周囲から一笑に付されていた。しかし創業者には気候変動を何とか止めたいという強い信念があった。どんな思いと先見性が世界市場を開拓したのだろうか。創業前から最初の試作車「ロードスター」完成までの「100%の電気自動車」誕生史を、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」2016年グランプリを受賞した『イーロン・マスク 未来を創る男』第7章「100%の電気自動車」から4回にわたってご紹介しよう。
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    中古ポルシェを電気自動車に作り替えた男

     J・B・ストラウベルという男がいる。頰には5センチほどの傷跡がある。高校時代に化学実験で負った怪我が原因だった。13歳のとき、ゴミ捨て場で古いゴルフカートを見つけた。家に持ち帰って修理し、電気モーターを分解修理したところ、再び動くようになった。何でも分解して組み立て直すのは、一種の趣味のようなものだった。

     スタンフォード大学に進学し、物理学者を目指した。だが、物理学は自分に向いていないことに気づく。上級コースは理論に偏り過ぎており、手を動かすのが好きなストラウベルは興味を持てなかったのだ。そこで彼はエネルギーシステム工学という分野を自ら作り上げてしまった。90年代も終わろうとしているころのことである。

     「ソフトと電気を生かして、エネルギーを制御したかった。コンピューティングとパワーエレクトロニクス(大電力エネルギーの高度な制御技術)の融合を目指しました。要するに自分の好きなことを組み合わせたんです」とストラウベルは語る。

     当時はまだ地球環境問題の解決策となるクリーンテクノロジーの動きは見られなかったものの、太陽光エネルギーや電気自動車に実験的に手を出す企業はあった。ストラウベルは、そんなベンチャーを見つけては、交流を持つようになった。やがて自宅のガレージでも友人を集めて同じような実験に着手するようになった。

     「ゴミ同然のポルシェ」を20万円ほどで手に入れ、電気自動車に作り替えた。つまり、電気モーターを制御するコントローラーを自作し、充電器も一から開発し、クルマ全体の動作を担うソフトも自ら書き上げたのである。このとき、4分の1マイル(約402メートル、日本風に言えばゼロヨン)を17・28秒で走り、電気自動車の世界記録を打ち立てている。

    リチウムイオン電池なら1万メートル走れる
     2002年ごろ、ストラウベルはロサンゼルスに移り住み、スタンフォード大学の修士課程を修め、ローゼン・モーターズという会社で働くことに決めた。ここは世界初のハイブリッドカーの開発元だった。だが、会社は倒産。ストラウベルは、創業者ハロルド・ローゼンについていくことにした。ローゼンは「静止衛星の父」と呼ばれる高名なエンジニアだった。

     「電気飛行機を造りたかった。操縦ライセンスを持っているし、空を飛ぶのが大好きなので、うってつけの仕事だと考えました」とストラウベルは語る。その傍ら、夜や週末はベンチャー企業向けのエレクトロニクスコンサルタントとしても活躍した。

     ある日、ストラウベルは大学時代の仲間と話しているうちに、ある疑問が浮かんだ。クルマに積んだリチウムイオン電池を太陽光で充電する方法はすでに経験済みだが、ノートPCなどに使われている、いわゆる「18650リチウムイオン電池」を使ったらどうなるか興味がわいたのだ。18650は、単三電池と同じ形状のセル(電池の最小構成単位)をひとまとめにしたようなもの。「これを1万本連結したらどうなるだろうと思ったんです。単純計算だと電気自動車で1万メートル走行可能なんです。興味津々でした」

     さっそくストラウベルは、ソーラーカー関係者にもちかけて、リチウムイオン電池搭載の電気自動車開発を打診してみた。彼のアイデアは、空力性能を極限まで追求したスタイリングで、全体の8割がバッテリーという、電気ナマズにタイヤをつけたようなクルマだ。

     将来的にこれがどこへ向かうのか、誰にもわからない。いや、当のストラウベルにも確信が持てなかった。実際、自動車メーカーを立ち上げるといったことよりも、リチウムイオン電池のパワーに目を向けてもらうための実験的な性格が強かった。

     プロジェクトを進めるには資金が必要だ。ストラウベルは、見本市などに顔を出しては、めぼしい企業に企画書を配り歩いた。だが、誰1人として見向きもしない。そんな日々が続いていたが、2003年秋にイーロン・マスクと巡り合った。

    「イーロンは一発で気に入ってくれた」
     お膳立てをしたのは、ハロルド・ローゼンだった。スペースX本社に近いシーフードレストランでマスクとランチをともにしながら、まずは電気飛行機のアイデアを持ち出してみた。だが、マスクは食いつかない。そこで、ついでのプロジェクトだった電気自動車のアイデアも披露してみた。すると、マスクは乗り出すように話を聞き始めたのだった。

     マスク自身、電気自動車についてはずっと考えていた。マスクの構想は電源にウルトラキャパシターを使うものだったが、リチウムイオン電池の進化の凄まじさを耳にして、大いに興奮していた。

     「みんな僕のことを頭がおかしいと思っていたけど、イーロンは一発で気に入ってくれた。『もちろんだ、金を出そう』と言ってくれたんです」とストラウベル。マスクは1万ドルの出資を約束した。目指す予算総額は10万ドルだ。このときに芽生えた絆が、紆余曲折を経ながらも10年以上にわたって続き、世界を変えることになろうとは──。

     マスクから、電気自動車の研究開発を手がけるACプロパルジョンという企業を紹介された。1992年創業で、電気自動車の最前線を走っていた会社だ。ACプロパルジョンには、「tzero」という最高級スポーツカーがあった。tzeroは、1997年のデビュー時点で時速0─60マイル加速(時速60マイル=時速約96キロまで加速するのにかかる時間)4・9秒を叩き出した、モンスター級の電気自動車だった。ただし、量産車ではなく、愛好者向けのキットという扱いだった。

     ストラウベルは、同社社長のトム・ゲージに「マスクと一緒にtzeroに試乗したい」と依頼した。予想どおり、マスクはこの車に一目惚れだった。それまでの電気自動車といえば、スピードが遅くておもしろみもないというイメージだったが、これは違った。すっかり惚れ込んだマスクは、キットではなく、量産してはどうかと資金提供を持ちかけたが、なかなか色よい返事はもらえなかった。

     「あくまでもコンセプトモデルであって、量産するにはもっと細部を作り込む必要がありました。ACプロパルジョンには素晴らしい人たちがそろっていましたが、商売としては見込み薄だったためにマスクのこの提案を断ったのです。その代わり、性能も見た目もイマイチなeボックスというクルマをイーロンに売り込んでいましたけどね」(ストラウベル)この日の会談は見るべき成果がなかったが、マスクの関心がますます高まったのは確かだった。

  • 国内で28日、新たに2684人の新型コロナウイルス感染者が確認され、過去最多を更新した。厚生労働省が発表した全国の重症者も、これまでで最も多い440人となった。重症者は自治体から報告された前日までのデータをまとめており、ほぼ半月で倍増した。

     菅義偉首相が26日に「この3週間が極めて重要な時期だ」と述べ、政府は観光支援事業「Go To トラベル」の対象から札幌市と大阪市を除外する中、全国的に感染拡大に歯止めがかからない状況だ。

     東京都では28日、都内ほぼ全域を対象に、酒類を提供する飲食店などの営業を午後10時までに短縮する要請が始まった。

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