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件名:日本学術会議 首相が推薦者の一部を拒否したことの妥当性

結論から言うと、現行の学術会議法において首相が実質的な任命権を行使することは適法と言え、学術会議が推薦して来た者の一部について、その任命を首相が拒否しても何の問題はありません。

以下、その理由です。

一.憲法の第十五条には、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」とされていますから、公務員の選定には民主的統制が及ばなければなりません。

まず、国会議員は選挙で選ばれますから、当然に民主的統制が及んでいます。

次に、選挙で選ばれない国会議員以外の公務員はどうでしょうか。
憲法の第七十三条で、内閣は、法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理する権限を与えられていますから、選挙で選ばれないような公務員の職についての事務は、内閣に最終的な権限があると言えます。そして、内閣府の長は内閣総理大臣(設置法)ですから、最終的な権限は、総理にあると言っても良いでしょう。

また、ここでいう法律の定める基準とは、例えば、国家公務員法や地方公務員法などが該当します。国家公務員法は、公務員を一般職と特別職に分けて、特別職には原則として同法の適用がないとしています(第2条5項)が、それは別法に委ねているだけであって、特別職公務員に関する事務についても内閣が掌理していることに変わりはありません。

二.では、日本学術会議法が定める会員の選定・任命方法はどうなっていたのでしょうか?

当初の法律では、その第七条で「日本学術会議は、選挙された二百十人の日本学術会議会員(以下会員という。)をもつて、これを組織する」と定めれ、会員は全国の学者による選挙で選ばれましたから(直接的な民主的統制あり)、学術会議の会員の任免に内閣が関与するような法内容とはなっていたかったのです。

この点、選挙で選ばれる地方議会の議員の任免に内閣が干渉できないのと、その趣旨は同じと言って良いでしょう。

しかし、昭和58年の改正で会員の選挙制から学術会議による選考・推薦制へと移行したことで、直接的な民主的統制がなくなりましたから、それに変わる間接的な民主的統制として首相による任命の制度が法律に盛り込まれることになったのです。

そうした経緯を考えれば、現在の首相の任命権が実質的な任命権であることが容易に分かるというものです。