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(株)みずほフィナンシャルグループ【8411】の掲示板 2023/11/28〜2023/12/02

■サービス収支の5類型

サービス収支の赤字に注目してきたが、そもそもサービス収支とはどのようなものを含むのか、その中身を確認していく。

2023年8月10日に公表された日銀レビュー『国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化』では、サービス収支を主題に近年の構造変化を議論しており、非常に興味深い切り口を示している。

日銀レビューでは輸送収支・旅行収支・その他サービス収支の3項目から構成されるサービス収支を、以下の5つの類型に分類し直した上で、サービス収支全体の変化を捉えており、近年の構造変化を浮き彫りにしている。

(1)モノの移動や生産活動に関係するもの(モノ関連収支)
(2)ヒトの移動や現地での消費活動に関係するもの(ヒト関連収支)
(3)デジタルに関係するもの(デジタル関連収支)
(4)金融や保険に関係するもの(カネ関連収支)
(5)上記以外(その他)

例えば、サービス収支の構成項目としては最も話題になりやすいインバウンド関連の受払(要するに旅行収支)は(2)に計上される一方、米巨大IT企業のプラットフォームサービスやインターネット広告取引などへの受払は(3)に計上される。

なお、近年日本で業容を拡大し、売上を上げている外資系コンサルティング会社への支払も統計上、(3)に計上される(「専門・経営コンサルティングサービス」はインターネット広告やコンサルティング関連の受払を計上するため)。

なお、(4)は保険・年金サービスと金融サービスの合計だが、この赤字も近年拡大傾向にある。

円安や原油高といった分かりやすい市況要因で拡大する貿易赤字と違い、こうしたサービス収支の赤字は「新時代の赤字」とも呼べるものだ。今後、顕著に縮小する未来を思い浮かべるのが難しい。

■結局、デジタル赤字はどれくらいなのか?

なお、この「新時代の赤字」について、筆者は今年に入ってから繰り返し議論を重ねている。その過程で「実際のところ、デジタル関連の赤字に限定した場合、どれくらいのボリュームなのか」という照会は何度か頂戴した。

そこで上記の日銀分類に倣ってサービス収支の組替えを行い、2023年8月までの変化が分かるように筆者が試算した。

(外部配信先では図表、グラフなどの画像を全て閲覧できない場合があります。その際は楽待新聞内でお読みください)

2022年にマイナス5兆4202億円と2002年以来、約20年ぶりの高水準に達したサービス収支赤字のうち、マイナス4兆7814億円がデジタル関連収支の赤字であった。日銀分類に従うと「ほとんどがデジタル関連」と言って差し支えない。

もっとも、統計上の限界もあって、上述したような、近年増勢傾向にありそうな外資系コンサルティング会社への支払や国際的なスポーツ大会へのスポンサー料の支払などもデジタル関連収支に混入する。

このため、「ほとんどがデジタル関連」と断言して良いかは議論の余地も残る。ただ、仮にそうであったとしても大きな違和感がないのも事実だろう。

ちなみに、デジタル関連収支の赤字は遡及可能な2014年においてマイナス2兆1483億円であったので、8年間で倍以上に膨らんだことになる。

同じ期間に、旅行収支を主軸とする「ヒト関連収支」はマイナス8166億円からプラス7696億円へ黒字転化した。さらに今後はおそらくプラス2兆円を超える黒字で安定しそうなことを差し引いても、デジタル関連収支の赤字を半分相殺するのが関の山というイメージにとどまる。

今年1~8月合計で見た場合、サービス収支赤字はマイナス2兆7198億円に達しているが、このうちマイナス3兆7984億円がデジタル関連だ。

インバウンド需要の急回復を主軸としてヒト関連で稼いだプラス2兆3329億円の黒字が、全て掻き消されてしまっている構図が良く分かる。

その上で損害保険会社が海外の保険会社に支払う再保険料支払などを中心として、赤字を拡げるカネ関連収支が常時マイナス1兆円を超える赤字を記録している。

インバウンド需要を背景にヒト関連収支で黒字を積み上げても、相応の赤字が残る構造になっている(※紙幅の関係上、カネ関連収支についての議論は別の機会に譲る)。

■デジタル関連赤字、やはり多い米国向け

また、参考までに、デジタル関連収支の支払先について、完全ではないがイメージを掴むこともできるので紹介しておく。

ここでは、米巨大IT企業のプラットフォームサービスへの支払などが含まれる通信・コンピューター・情報サービスに限定して、国・地域別に支払を確認することになる。

(外部配信先では図表、グラフなどの画像を全て閲覧できない場合があります。その際は楽待新聞内でお読みください)

これを見ると、2022年の約3兆円のうち米国向けが約1兆円と3分の1を占める。これにシンガポール(約4000億円)、オランダ(約2900億円)、中国(約2000億円)と続いている。

想像通り、米国向けへの支払がずば抜けており、2017年の約4600億円と比較すれば5年間で2倍以上に膨らんだことになる。この増勢傾向に今後、大きな変化があるとは考えにくいだろう。

ちなみに、上述した通り、カネ関連サービス赤字の拡大は別途、機会を設けて論じることにするが、この項目でも支払先は米国が筆頭で国や税制上メリットが見込める中南米が続く。

ドル/円相場が堅調に推移する背景として、米国へのサービス支払が増えていることの影響は徐々に注目度を増していく論点ではないだろうか。

///////////////////////////

為替に関わらず、金額の大きさに関わらず、、、
サービス収支の中身の検討はした方が良いだろうネ^^

ps
第一次所得収支への報道は今でも少ない‼️

ー風に吹かれてー

画像:国際収支
2023年は10月まで。
折線グラフは経常収支
橙色棒グラフは第一次所得収支
黄色棒グラフは貿易収支

(株)みずほフィナンシャルグループ【8411】 ■サービス収支の5類型  サービス収支の赤字に注目してきたが、そもそもサービス収支とはどのようなものを含むのか、その中身を確認していく。  2023年8月10日に公表された日銀レビュー『国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化』では、サービス収支を主題に近年の構造変化を議論しており、非常に興味深い切り口を示している。  日銀レビューでは輸送収支・旅行収支・その他サービス収支の3項目から構成されるサービス収支を、以下の5つの類型に分類し直した上で、サービス収支全体の変化を捉えており、近年の構造変化を浮き彫りにしている。  (1)モノの移動や生産活動に関係するもの(モノ関連収支) (2)ヒトの移動や現地での消費活動に関係するもの(ヒト関連収支) (3)デジタルに関係するもの(デジタル関連収支) (4)金融や保険に関係するもの(カネ関連収支) (5)上記以外(その他)  例えば、サービス収支の構成項目としては最も話題になりやすいインバウンド関連の受払(要するに旅行収支)は(2)に計上される一方、米巨大IT企業のプラットフォームサービスやインターネット広告取引などへの受払は(3)に計上される。  なお、近年日本で業容を拡大し、売上を上げている外資系コンサルティング会社への支払も統計上、(3)に計上される(「専門・経営コンサルティングサービス」はインターネット広告やコンサルティング関連の受払を計上するため)。  なお、(4)は保険・年金サービスと金融サービスの合計だが、この赤字も近年拡大傾向にある。  円安や原油高といった分かりやすい市況要因で拡大する貿易赤字と違い、こうしたサービス収支の赤字は「新時代の赤字」とも呼べるものだ。今後、顕著に縮小する未来を思い浮かべるのが難しい。  ■結局、デジタル赤字はどれくらいなのか?  なお、この「新時代の赤字」について、筆者は今年に入ってから繰り返し議論を重ねている。その過程で「実際のところ、デジタル関連の赤字に限定した場合、どれくらいのボリュームなのか」という照会は何度か頂戴した。  そこで上記の日銀分類に倣ってサービス収支の組替えを行い、2023年8月までの変化が分かるように筆者が試算した。  (外部配信先では図表、グラフなどの画像を全て閲覧できない場合があります。その際は楽待新聞内でお読みください)  2022年にマイナス5兆4202億円と2002年以来、約20年ぶりの高水準に達したサービス収支赤字のうち、マイナス4兆7814億円がデジタル関連収支の赤字であった。日銀分類に従うと「ほとんどがデジタル関連」と言って差し支えない。  もっとも、統計上の限界もあって、上述したような、近年増勢傾向にありそうな外資系コンサルティング会社への支払や国際的なスポーツ大会へのスポンサー料の支払などもデジタル関連収支に混入する。  このため、「ほとんどがデジタル関連」と断言して良いかは議論の余地も残る。ただ、仮にそうであったとしても大きな違和感がないのも事実だろう。  ちなみに、デジタル関連収支の赤字は遡及可能な2014年においてマイナス2兆1483億円であったので、8年間で倍以上に膨らんだことになる。  同じ期間に、旅行収支を主軸とする「ヒト関連収支」はマイナス8166億円からプラス7696億円へ黒字転化した。さらに今後はおそらくプラス2兆円を超える黒字で安定しそうなことを差し引いても、デジタル関連収支の赤字を半分相殺するのが関の山というイメージにとどまる。  今年1~8月合計で見た場合、サービス収支赤字はマイナス2兆7198億円に達しているが、このうちマイナス3兆7984億円がデジタル関連だ。  インバウンド需要の急回復を主軸としてヒト関連で稼いだプラス2兆3329億円の黒字が、全て掻き消されてしまっている構図が良く分かる。  その上で損害保険会社が海外の保険会社に支払う再保険料支払などを中心として、赤字を拡げるカネ関連収支が常時マイナス1兆円を超える赤字を記録している。  インバウンド需要を背景にヒト関連収支で黒字を積み上げても、相応の赤字が残る構造になっている(※紙幅の関係上、カネ関連収支についての議論は別の機会に譲る)。  ■デジタル関連赤字、やはり多い米国向け  また、参考までに、デジタル関連収支の支払先について、完全ではないがイメージを掴むこともできるので紹介しておく。  ここでは、米巨大IT企業のプラットフォームサービスへの支払などが含まれる通信・コンピューター・情報サービスに限定して、国・地域別に支払を確認することになる。  (外部配信先では図表、グラフなどの画像を全て閲覧できない場合があります。その際は楽待新聞内でお読みください)  これを見ると、2022年の約3兆円のうち米国向けが約1兆円と3分の1を占める。これにシンガポール(約4000億円)、オランダ(約2900億円)、中国(約2000億円)と続いている。  想像通り、米国向けへの支払がずば抜けており、2017年の約4600億円と比較すれば5年間で2倍以上に膨らんだことになる。この増勢傾向に今後、大きな変化があるとは考えにくいだろう。  ちなみに、上述した通り、カネ関連サービス赤字の拡大は別途、機会を設けて論じることにするが、この項目でも支払先は米国が筆頭で国や税制上メリットが見込める中南米が続く。  ドル/円相場が堅調に推移する背景として、米国へのサービス支払が増えていることの影響は徐々に注目度を増していく論点ではないだろうか。  ///////////////////////////  為替に関わらず、金額の大きさに関わらず、、、 サービス収支の中身の検討はした方が良いだろうネ^^  ps 第一次所得収支への報道は今でも少ない‼️  ー風に吹かれてー  画像:国際収支 2023年は10月まで。 折線グラフは経常収支 橙色棒グラフは第一次所得収支 黄色棒グラフは貿易収支