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(株)みずほフィナンシャルグループ【8411】の掲示板 2019/10/16〜2019/10/22


*** 聖堂における貧しき人びと ****  

彼等の吐息に蒸されて隅々までも臭き殿堂
檞の床儿の間にひしめき合ふ もろもろの目は
金色にきらめきて輝く内陣と 敬虔なる頌歌を
合唱する二十の口の歌隊とに注がる。
あたかも蠟の臭ひをパンの香りにかぎなして
幸いなるかな 鞭打たるる犬の如く しひたげられし貧しきもの
守護にして聖なる神の前にぬかづき
見るもおかしさ 一心不乱の祈祷をば捧ぐる。

暗き六日のあひだ神に苦しめられてその揚句
ベンチに光沢をつくる女どもこそ いみじけれ!
見られぬ綿入りマントにくるまれて 
死なんばかりに泣き喚く子供をば彼女はあやす。
汚れたる胸も露はに放り出し スープ食らひの女ども
眼には祈願の色を湛へてあれど さらさら祈る影もなく
お転婆娘の一団が 形くづれたる帽子をかぶり
これ見よがしに振る舞ふを ただひたすらに眺め入る。

戸外には 寒さと飢ゑと それに酔漢
結構なことで もう後一時間もしようものなら 世にも名状し難き不幸の数々!
ーー且はあなたこなたに不幸を洩らし 鼻をならし 小聲でささやく
顎の皺垂れ下がる老婆の群れ

かしこに路頭に迷へるものありと思へば
こなたに昨日巷に寄りつくものもなかりし癲癇共あり
はては いにしへの祈祷書に鼻面つき合せて
犬にひかれ内庭に入り来る盲者も見受けらる。

かくて どれもこれも間の抜けた もの欲しげなる信仰をだらだらと呟き
エスさまに尽きせぬ愁訴をうつたへるれど
焼絵玻璃の光でいろ黄ばめるエスさまは 高き所で夢見てござる
痩ぽつちの悪者どもや 意地の悪い便腹なんぞそしらぬ風に。

********* A・ランボオ 一八七一