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(株)三井E&S【7003】の掲示板 2018/06/02〜2019/05/11

 厳しい情勢が続く造船業界。近年の円高是正により受注環境は多少改善したものの、2008年のリーマン・ショック以降の世界不況による受注減や発注キャンセル、これに90年代からの韓国・中国での急激な造船能力増強の動きが相まって、世界的な「船腹過剰問題」は依然尾を引く。船価もここへ来て多少上昇の気配はあるものの、回復の足取りは鈍い。業界からは「2019年度以降もしばらくはこうした傾向が続く」との声が聞こえる。

 90年代初めまで、日本の造船業は世界トップの地位にあった。それを脅かし始めたのが韓国と中国の急速な造船能力増強だ。

 韓国は90年代以降、大型造船所を相次いで建設。国の後押しもあって受注量ベースの世界シェアは90年代前半の約25%から、00年代前半には同40%近くまで高まった。

 08年のリーマン・ショックで造船市況が悪化すると今度は中国が代わってシェアを伸ばし、10年に世界シェアで首位となった。為替が円高傾向だったこともあり、日本の造船各社は韓国、中国勢の安値攻勢に対抗できず、日本は世界3位の固定状況が続いている。

 世界造船受注量は06年に、それまでの最高を記録した。新興工業国・地域(NIES)、「BRICS」などの新興国の経済成長と資源価格高騰に支えられ、物資を輸送する船舶の需要は基本的に拡大傾向が続くとの読みが多くの人の共通認識だった。リーマン・ショックは、そうした常識を打ち壊した。翌年の09年の世界造船受注量は前年の半分近くまで落ち込んだ。

 受注量が落ち込む一方で造船所の建造能力が増加していれば、必然的に起こるのが船価のたたき合いだ。中国と韓国、日本の3強が過当競争を続けた結果、十分な利潤を得られない状態のまま企業体質が悪化。「日本は過去の造船不況の経験から過剰設備の削減を進め、市況維持を図った。

 だが、韓国はしていない。中国も不採算の造船所を整理したとはいえ、まだまだ過剰。それが世界的な船腹過剰状態を生み出している」。日本造船工業会の加藤泰彦会長(三井E&Sホールディングス〈HD〉相談役)は不快感を隠さない。

 韓国は1月、政府系金融機関の韓国産業銀行が約56%の株式を持つ造船世界3位の大宇造船海洋と、同首位の現代重工業を合併させることで、条件付きMOU(了解覚書)を締結した。これにより韓国は3強体制が2強体制に集約され、競争力を一層強化していける土台が整った。

 ただこれは、実際には苦境に陥った大宇造船の政府救済策に過ぎないとの見方もあり、日本政府は大規模金融支援が世界貿易機関(WTO)の補助金協定に違反する疑いが強いとして、18年11月、韓国をWTOに提訴している。単に大宇造船の救済なら合併新会社が安値受注をさらに加速させ、市況が悪化する懸念もある。


 日本造船業界もこの間に大きな変化を遂げた。かつては三菱重工業や三井造船(現三井E&SHD)、IHIなどの総合重工系メーカーが国内建造量シェアで上位を占めていた。

 だが、船価下落と過当競争の中、大手は造船事業を分社化して、相互に統合させる動きが加速。13年にはIHIとJFEホールディングス(HD)の造船部門が統合し、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)が誕生した。

 一方で川崎重工業と三井造船が同年、経営統合を断念するなど、再編の動きは必ずしも一直線には進んでいない。

 造船は船体の溶接、スクリューの仕上げ加工などに高精度の熟練技が要求される。船の種類はコンテナ船、ガス船、客船、タンカー、貨物船などさまざまで、各メーカーともそれぞれ得意な船種へ特化を進めている。加えて造船所は地方雇用の受け皿という基幹産業の側面もあるため、容易には合併・集約は進まない。

 とはいえ、このままで各社が小規模事業所を抱えて、生産性の向上と高採算部門シフトだけで生き残れるかというと、それはまた別問題である。