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 「業界では、介護保険制度が始まったら、それぞれの施設が生き残るために経営の効率化を図らないといけないから、私たち職員の給料は下がるだろうとは、いわれていたんです。でも、まさか半分になるとは思っていませんでした」

 家族による介護の負担を減らし、社会全体で介護を支える――。介護保険制度の導入前は、そんな理想が喧伝された。一方で、当時、私が取材する限り、同制度がスタートしてから、給与や待遇が上がったという介護職員はほとんどいなかった。一部の株式会社や社会福祉法人などの事業者は福祉用具のレンタルや食事の宅配など事業の拡大・多角化に乗り出す一方で、人件費をカット。無資格、もしくは非正規雇用の職員が急増したのも、この頃だ。

2025年の超高齢社会にむけて、高齢者介護を社会で担うという介護保険制度の施行から18年が経った。当初は介護を民間に渡すことで、バラ色の超高齢社会が迎えられるかの如く語られたが、実際に振り返ってみれば、介護現場は、行政、地域、高齢者、介護職、家族と、あらゆる角度からみても、問題が山積みのまま放り投げられている。

特に深刻な問題となっているのが、介護人材の不足と介護報酬削減による経営難だ。

人材不足のそもそもの原因は、介護職の低賃金によるものだ。介護報酬の処遇改善加算と、熾烈な人材獲得競争によって、賃金は徐々に上昇しているものの、“介護”は63職種のなかで圧倒的な最下位のままだ。「普通に働いて」「普通の生活」ができない業種に人材が集まるはずがない。

「介護事業者をとりまく一部の周辺事業者が、本来であれば事業所に入るはずの介護報酬に群がり、介護職にお金がまわらないという、とんでもない問題が限界まで来てしまいました」

こう語るのは、株式会社日本介護福祉グループ創業者である藤田英明氏だ。

周辺事業者とは人材会社、有料紹介会社、求人広告会社、コンサルティング、フランチャイズ本部など、介護保険事業所をクライアントとする業者を指している。そもそも介護職の賃金は、介護保険の介護報酬が原資となっており、本来であれば介護職に分配されるべき報酬が、こういった周辺事業者に流れてしまっていることが、介護職の低賃金の大きな引き金になっているという。