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財政リスクの「警鐘」ならず 無風CDS「日本化」映す 1/2
日経 編集委員 高井宏章 グローバルマーケット2021年9月5日 12:00 [有料会員限定]

大規模な財政出動に逆行する形で、国の信用力に対する市場の評価が高まっている。債務不履行(デフォルト)のリスクをやり取りするクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では主要国国債の保証料率の低下(信用力の改善)が鮮明で、新興国への警戒感も後退気味だ。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は危機を察知する「炭鉱のカナリア」の体質も変えつつある。

米国債を対象としたCDSの保証料率(5年物)は足元約0.1%で、0.2%台に上昇した2020年春の半分以下、過去10年でみて最低水準にある。年間1000ドル程度のコストで100万ドル分の米国債のデフォルトリスクを他者に転嫁できる計算だ。米政府の債務上限問題の影響もほとんど見られない。

日本やドイツ、中国なども米国と似たり寄ったりの動きで、新興国に目を向けても傾向は変わらない。通貨安とインフレに苦しむトルコは水準がやや高めなものの、「コロナ前」の19年末と比べて保証料率の上昇幅は全般に限定的だ。

コロナ禍で財政が膨張するなか、これは奇妙な現象に見える。

国債市場では、「財政悪化→国債価格の下落(金利の上昇)」という教科書通りの反応は、利下げや国債買い入れなど強力な金融政策で抑え込まれている。一方、CDSは中央銀行の守備範囲外であり、ほぼ信用力の評価のみで保証料率は決まる。財政リスクが高まれば、保証料率が上昇するのが自然だ。

変調の一因はカネ余りだろう。国債のCDSは現状「金融機関がプロテクション(保証)の買い手、ヘッジファンドなどの投資家が売り手に回るケースが多い」(みずほ証券の大橋英敏チーフクレジットストラテジスト)。リスク管理上、対政府ビジネスのカウンターパーティー(取引相手)リスクを軽減するのが狙いだ。超低金利で売り手の投資家がCDSに高い利回りを求めなくなれば保証料率は低下する。