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ソフトバンクグループ(株)【9984】の掲示板 〜2015/04/15

日経新聞 6月21日朝刊より

2020年に年2兆円を超すとされる東南アジアのネット通販市場を巡り、日本と中国のインターネット通販のトップ企業が攻略に動き始めた。中国アリババ集団(浙江省)は華僑・華人の消費パワーを掘り起こし、楽天は得意のM&A(合併・買収)で迅速な基盤拡大に動く。大手による成長市場の覇権争いは日本企業のアジア戦略も左右しそうだ。

 「割引はあるし品切れもない。最近のお気に入りの店はここ」。インドネシアの女子大生、ナディアさん(20)はタブレット(多機能携帯端末)を使って、ドイツ系のネット通販サイト「ザロラ」で月に3~4回は洋服や化粧品を買う。購入額は月平均80万ルピア(約8000円)。最低賃金が220万ルピアのジャカルタでは、ナディアさんは中間層の上位の消費者だ。

 日本経済研究センターの調査によると、東南アジア主要5カ国で09年に約90億ドル(約8800億円)だったネット通販市場は、20年に250億ドルになるという。ここに日中のネット通販大手が目を付けた。

華僑3000万人狙う
 中国ネット通販の巨人、アリババが狙うのは東南アジアの華僑・華人市場だ。中国文化に根ざした習慣や嗜好を持つ人々は世界で4500万人とされ、そのうち7割の約3千万人が東南アジアで暮らす。

 すでにアリババのネット通販サイト「淘宝網(タオバオ)」はシンガポールとマレーシアでそれぞれ20万人超の利用者を抱える。中国語が使える点に着目した華僑・華人たちだ。同地域でのアリババの広告宣伝はゼロ。それでも「両国の12年の取引額は前年比80%増」(淘宝網の海外事業を担当するダフィー・リー氏)。女性向けの衣類やカバンが売れ筋という。

 利用者は店舗運営者とチャットできる機能を使って配送費などを自力で交渉。時には断られたりするが、お気に入りの商品を手にするまであきらめないタフな客も少なくないという。

 この点からもアリババは大きな商機が東南アジアで待ち構えると見る。現地の物流会社とも提携交渉を進めているもよう。リー氏は「淘宝網を窓口にして荷物を一括配送できるようにする」と意気込む。

 「みなさん、ともに成長しましょう」。昨年11月、バンコク中心部の劇場で、楽天の三木谷浩史社長は仮想商店街に出店する約800人のタイ人業者にこう呼びかけた。M&Aで事業基盤はアリババよりも素早く整えた。

M&Aを駆使
 「今なら全商品、ポイントが3倍」。タイ最大規模のネット通販サイト「タラッド・ドット・コム」のトップ画面にはこんな言葉が踊る。楽天は同サイト運営会社を09年に買収した。

 サイトの見た目や使い勝手は日本の「楽天市場」風に改装。「Rakuten」の文字が大きく表記されている。衣料品から化粧品、家電、食料品など幅広く取り扱い中間層の旺盛な消費を取り込む。日本の浴衣なども買えるようにしてある。出店企業はすでに2千店を超えたと見られる。11年にはインドネシアで「楽天ブランジャ・オンライン」を開設。出店数は約500店に増え、ジャカルタなどではバイクによる自社配送を始めた。12年にはマレーシアに単独で進出した。

 東南アジア3カ国での楽天の流通総額は日本の1%にも満たないとみられるが、腰を据えて経営の柱に育成する。

 成長の期待が大きい東南アジアのネット通販市場だが、一部の国を除き発展段階はまだ黎明(れいめい)期だ。インドネシアでは交流サイト(SNS)のフェイスブックなどを使ったネットオークションから始まり、ようやく仮想商店街やファッション系サイトが立ち上がってきた。

 そんな東南アジアの無名サイトにも世界からマネーが流れ込む。ソフトバンクは韓国子会社を通じてインドネシアの仮想商店街「トコペディア」に出資した。「ザロラ」に出資する独ベンチャーキャピタルなどは、マレーシアやフィリピンなどアジア9カ国・地域のネット通販に計1億ドルを投じた。同地域で目立った動きのない米アマゾン・ドット・コムなども地元サイトの買い時を見定めているのかもしれない。