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ソフトバンク(株)【9434】の掲示板 2020/03/04〜2020/03/10

楽天はケータイ料金競争の引き金を引いたのか? 「月額2980円」のインパクト
石川 温
2020/03/05 17:00

4月8日から本格サービスを開始する携帯電話事業の料金プランについて、「衝撃的な価格」と胸を張った。
 提供する料金プランはひとつのみ。わかりやすさを重視した。月額2980円ポッキリで、データ通信が使い放題、音声電話もかけ放題だ。
携帯事業について語る楽天の三木谷浩史会長兼社長 ©AFLO© 文春オンライン 携帯事業について語る楽天の三木谷浩史会長兼社長 ©AFLO
 この料金体系が明らかになったのは、発表会前日の3月2日。一部メディアのリーク報道によって「楽天が月額2980円で大容量プランを提供」が世間に知れ渡った。2018年8月に「日本の携帯電話料金は国際的に比較しても高すぎる。4割値下げできる余地がある」と語り、国内キャリアに値下げを迫った菅官房長官も、楽天の料金プランに対して「海外の主要事業者と比べても相当に安い水準になっているのではないか」と太鼓判を押した。

 また、新聞など多くの国内メディアが「楽天が料金競争の引き金を引いた。大手3社も対抗値下げせざるを得ないのではないか」と囃し立てている。

 しかし、楽天モバイルの月額2980円には大きな落とし穴が存在する。

 また、大手3社は、楽天モバイルに対して脅威を抱いているどころか、むしろ冷ややかな視線を浴びせている。「そんなすぐに料金競争は起きない」という見立てなのだ。

「月2980円」の大きな落とし穴

「月額2980円」という価格に隠された大きな落とし穴。それは「楽天モバイルが自前で構築したエリアのみ使い放題」という点だ。

 楽天モバイルは東京23区や神奈川、埼玉、名古屋市、大阪市、神戸市の一部などでスマホと通信を行う基地局を設置。当初、工事が遅れていたが、巻き返しを図り、計画値を上回るペースで基地局の設置を行っている。

 当初は2020年3月末段階で3432局という計画であったが、すでに基地局は3490局が設置済み。今後の見込みでは3月末時点で4400局までになるという。

 つまり、この4400局が自宅やオフィスなど、自分の行動範囲にあれば「使い放題」になるというわけだ。

 ただ、大手3キャリアは、全国に20万規模の基地局を設置している。首都圏においても数万局という単位で基地局が存在する。楽天モバイルと大手3社では基地局の数に圧倒的な差があるのだ。

地下では「ほぼKDDI回線」

 楽天モバイルではその穴を埋めようと、KDDIと提携。自前でネットワークを構築できていない場所はKDDIのネットワークにつながるようになっている。

 先ほど触れた東京23区や神奈川、埼玉、名古屋市、大阪市、神戸市も完璧に楽天モバイルのネットワークが構築されているわけではない。

 地上を歩いて使うぶんには問題なく楽天モバイルに接続するが、地下街や地下鉄、地下ホームなどには楽天の基地局はほとんど存在せず、KDDIのネットワークに繋がってしまう。また、一部の商業施設内でもKDDIにつながる。

 都心のオフィスでは問題なくても、多摩川を渡り、神奈川県に行ってしまうとKDDIにつながりっぱなしということもある。

 月額2980円のプランでは、KDDIネットワークは月間2GBまで利用可能だ。しかし、2GBを超えると、速度が極めて遅くなるか、1GB500円で追加購入する必要がある。

 しかも、ユーザーが、今スマホが楽天モバイルにつながっているのか、それともKDDIにつながっているかを判断するには、楽天が提供するアプリを起動しなくてはいけない。

 起動を怠り、楽天につながっているつもりでスマホを使ったら、実はKDDIにつながっていて、あっという間に2GBを消費していた、なんてことも起こりかねない。結果的に何度も1GB500円の追加を余儀なくされ、月額2980円では収まらない可能性もあるのだ。

 まだ、都心部に住んでいれば、基地局も建っているのでなんとか使い手がある。

 しかし、基地局がひとつも建っていないエリアでは、KDDIしかつながらないので、「2GB2980円」という料金プランでしかない。

 郊外や地方では楽天モバイルのショップも増えてきた。彼ら代理店はいままで、NTTドコモなどからネットワークを借りてサービスを提供する「格安スマホの楽天モバイル」のプランを複数売ってきたが、4月7日をもって、そのサービスの新規申し込みの受け付けを終了してしまう。楽天モバイルがキャリアサービスを開始する4月8日以降は「2GB2980円」という格安でもなんでもない料金プラン、ただ一つしか売れなくなってしまうのだ。

 まさに郊外の楽天モバイルショップも落とし穴にハマってしまった感がある。

「安かろう悪かろう」の不安

 楽天モバイルでは月額2980円という料金プランを設定しつつ、300万人に対して、1年間、無料で使える施策を展開する。おそらく、「1年間無料」につられて契約が殺到することだろう。

 しかし、「安かろう悪かろう」では楽天自身の評価を落とすことになりかねない。1年後にユーザーが大挙して解約するなんてこともありえるだろう。

 大手3キャリアが楽天モバイルを冷ややかな目で見ているのは、「使い放題といってもエリアが限定的」という楽天モバイルの弱点をわかっているからだ。だからこそ、値下げ競争を急ぐ理由なんて、まったくない。

 目先の「2980円」しか評価できていない菅官房長官は、今後、4社間での料金競争を期待しているようだが、いずれ肩透かしに終わることにまだ気がついていないことだろう。

(石川 温/週刊文春デジタル)