日本郵船(株)【9101】の掲示板 2023/02/28

最終

口座を見ると、含み損は▲300万円近くになっており、往復で▲1,300万円近くになっていることに気づき、心臓が早鐘を打つのを聴きます。

ドキドキ　ドクドク　脈が速くなり、心臓は早鐘を打ちます。

口の中はカラカラで、老人の口臭はきつくなります。

気がつくと15:00、大引けです。

画面には、「これは何かの間違いだ。夢ならさめる。さめてくれ～」

呆けたように、木造建ての古い家のきしむ床を、三日に一度の洗濯で放つ悪臭にまみれた足袋をじっとりと足の股からぬめりだす加齢臭の汗で踏み、洗面所で流れる冷水を手のひらで受けて、顔を上下に動かして洗うというあの国のやり方で何度も洗います。
夢でなかったことを悟らされるのは、ストックボイスの福永記者が「お持ちの方には申し訳ございませんが、今日のバツは日本郵船【9101】です」の声が、止めを刺すように老人の耳に、溺れたときに耳の中に入ってくるやうに滲みこんできたそのときでした。

老人は「一世一代の勝負に負けた。日本郵船【9101】のことはこのワシが誰よりも知っている。間違っているのはマーケットの方だ。きっと3月になれば権利取りの買いが入り、野村しゃんの大量報告書が増えた％あたりで出る。　そして、そのときはまた株価は4,000円に向う。そうさ、ワシは今まで旨いことやってきた。これからもやっていく。この掲示板はこのワシが取り仕切っておる。ワシじゃ。ワシなんじゃ。新参者の桜錦や、おばかもの、その他カエルごときに何がわかる！勝負は三月じゃ。これは上昇過程でよくある調整、初押し、ふるい落としというもんじゃ。ふふふふ。ここの船長はワシじゃあああ」とひとりごちました。

気が付けば、夕刊配りの青年が、郵便受けにガサガサと音を立てて日経新聞の夕刊を入れ込む音が聞こえます。

「議員宿舎、家賃をもっと見る　

コンテナ市況下落、海運三社、ＯＮＥは来期の見通しを下方修正」

夕刊を手に、ぐさりと刺さったトゲの記事が、あざ笑うかのように老人のあたまをつるりとなでた。

「或る老人の破滅　全編」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　了