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新コスモス電機(株)【6824】の掲示板 〜2015/04/27

日本が水素革命をリードする3つの理由  編集委員 西條都夫

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2014/11/25 7:00
 安倍晋三首相が解散を表明し、俳優の高倉健さんの死去が明らかになった今月18日、産業界でも一つのビッグニュースがあった。究極のエコカーと呼ばれる燃料電池車(FCV)の「ミライ」をトヨタ自動車が発表したのだ。
関連記事
・11月18日 日経朝刊13面 「燃料電池3割小型化、ホンダ、来年度発売」
・11月19日 日経朝刊3面 「トヨタ、究極のエコカー世界に先駆け」
・11月21日 日経朝刊2面社説「燃料電池車は水素社会の扉を開けるか」
 燃料電池や水素エネルギーが非常に重要なテクノロジーであることに異論は少ないだろう。筆者はこの分野の技術競争や市場競争で、日本はかなり有利な位置にいると考える。その理由を説明したい。
■有力自動車メーカーとLNG技

トヨタ自動車が発表した燃料電池車「MIRAI(ミライ)」(18日、東京都江東区)
 一つは強力な自動車メーカーの存在だ。トヨタに続いて、ホンダや日産自動車もFCVを投入する。この3社はトヨタ―独BMW、ホンダ―米ゼネラル・モーターズ、日産―米フォード・モーター―独ダイムラーというそれぞれの提携関係をけん引する立場にあり、世界のFCV技術は日本が先導しているといっても言い過ぎではないだろう。
 週刊ダイヤモンド誌の10月25日号の水素革命の特集によると、日本の燃料電池の特許出願件数は6万5000件あまりで、米国(3万件)や中国(1万5千件)、ドイツ(1万2千件)に大きく水をあけているという。こんな数字にも、日本の技術の厚みは表れている。
 2つ目の強みは、水素の供給インフラが整備しやすい環境にあることだ。FCVや定置型の燃料電池が本格的に普及すれば、水素の自給が難しくなり、いずれ海外から輸入する必要が生じる。そのときはおそらく液化水素の形で船で運び、液体のまま港や水素ステーションに保存し、最後にクルマなどに充填するとき気化する仕組みになるだろう。
 実はこの仕組みは液化天然ガス(LNG)とまったく同じ。産地でガスを液化し、巨大な魔法瓶であるLNG船に詰め込んで日本まで運び、液体のまま各地のガス供給設備に配備し、最後に家庭などに届ける段階でガス化する。
 水素ステーションの整備に力を入れる岩谷産業の上羽尚登副社長は「日本はガスの経験を通じて、『液化された気体』の取り扱いに慣れており、LNGの陸揚げ基地の整備や高圧ガスタンクローリーの開発普及など知見も豊富。これは水素社会を実現するうえで、一つの強みになる」という。
西條都夫(さいじょう・くにお) 87年日本経済新聞社入社。産業部、米州編集総局(ニューヨーク)などを経て企業報道部編集委員兼論説委員。専門分野は自動車・電機・企業経営全般・産業政策など。
 ちなみに米欧ではガスは気体のままパイプラインで運んでくればいいので、LNGの利用は日本ほどは進んでいない。水素インフラのいち早い整備は、FCVの普及や水素関連のイノベーションを促す強力な武器になるだろう。
■再生可能エネ買い取り制を奇貨とせよ
 3つ目はやや皮肉な話だが、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の失敗も水素社会の到来を早めるかもしれない。電力会社が受け入れ不可能なほどの太陽光発電が各地で稼働すれば、何が起きるか。せっかく作った電気でも、それを電力会社の系統に流し込めば需給の不一致で大混乱が起きる恐れのあるときは、残念ながら捨てるしかない。
 だが、水素社会が来れば事態は変わる。余った電気で水を電気分解して水素をつくっておけば、エネルギーの「貯蔵」が可能になる。それをFCVのドライバーに売れば、捨てるしかなかった電気に値がつくようになるのだ。
 FITの見直しは必至だが、それでも再生エネの普及を進めたい人は、目標を水素社会の実現に切り替えてはどうか。FITほどはもうからないかもしれないが、太陽光発電からつくった水素は二酸化炭素(CO2)フリーであり、地球環境問題の解決に寄与できる