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家が売れているのは北京だけではない。国家統計局によると、中国全体の住宅販売額は1~2月の前年同期比35%減から5月は同16%増まで持ち直した。5月の小売売上高(社会消費品小売総額)が同3%減であるのと対照的だ。マンションと併せて買われる家具、家電、建材の売上高も4月までのマイナスから5月はそろってプラスに転じた。政府系研究機関のエコノミストは「波及効果まで含めれば、不動産業が国内総生産(GDP)に占める比率は2~3割」と話す。中国では俗に「不動産は経済のへそくり」と言われ、景気が落ちこむと国が不動産売買を刺激してきた。国は表向きは不動産バブルへの警戒を解いていないが、税収と雇用の減少に悩む地方政府はこっそり規制を緩めている。天安門広場から東に40キロの河北省燕郊。7月に訪れると高速道路を降りた道ばたに車が何台も止まっていた。開けたトランクには「デベロッパー直売。70年住宅 頭金30%」と広告がつりさがる。折り畳みいすから立ち上がった男がささやいた。「家を見ないか。河北省の戸籍でなくても買えるぞ」。
燕郊は不動産急騰の対策で厳しい販売規制を取る。17年に1平方メートル3万5000元だった平均単価は足元で2万1000元と4割も下がった。北京の半額以下だ。河北戸籍でなければマンションを買えない規制は表向き維持されるが、4月からひそかに運用を緩めたという。おかげで北京から大挙して客が押し寄せ、マンションが5月は900戸、6月は600戸も売れた。昨年の月平均130戸から急増した。路上でもマンションを売る(7月、河北省燕郊)
燕郊は北京と天津にはさまれた河北省の飛び地だ。河北なのでマンションが安く、北京のベッドタウンとして発展したが、新型コロナで状況が一変した。北京に入る検問所の検査が厳しくなり、3月は「朝7時に家を出て北京の会社に着いたのは午後3時」(燕郊に住む会社員)。6月に北京でコロナの「第2波」が起きると、今度は北京から燕郊に戻る時も検査が必要になり「夕方6時に会社を出て家に着くのは夜10時」。コロナで住宅地としての本来の価値があらわになり、地元政府も規制を緩めざるをえなかったようだ。
(北京=原田逸策)