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(株)田中化学研究所【4080】の掲示板 2016/09/17〜2016/09/20

【愛の追憶】①         1/4
私が、そんな理由から変遷してしまうとは私自身全く想像していませんでした。中学時代の数学の先生にささやかな恋心を抱いて、それを友達にも悟らせずに自然消滅させた時から、私は年上の男性にしか惹かれないと思いこんでいたのです。

田中君との初めての邂逅は高校1年生の春、授業と授業の間の放課でした。1組の私は、中学時代から仲良くしていた百合さんを訪ね、2組に足しげく通っていました。隣の組なので通うというのは多少語弊があるのかもしれませんが、今思っても通うという言葉がしっくりと来るぐらい、毎日足を運んでいたのです。

そんなある日、席替えをした2組の百合さんの隣に眼鏡をした背の低い存在感の無い男の子が鎮座していました。それが田中君でした。私たちはそんな彼の存在に全く頓着しなかったのですが、放課中に「うるさいな、女は。静かにしろよ」とぼそっと、顔はほぼ正面を向いたままつぶやいたことがありました。蚊の鳴くような声でしたが、その時の放課はたまたま静かだということもあり、隣の私たちにははっきりと聞こえました。私たちは勇ましい女子ではなかったので、お互い目を合わせ、チラッと田中君の方に目をやり、またお互いの顔を合わせて苦笑して肩を少し動かして、あからさまに声のボリュームを落としました。当時の私は3姉妹の真ん中で、仕事で忙しいお父様ともめったに会うこともできないこともあり、男性に対してどことなく怖い存在のようにとらえていました。そんなわけで、事務的、業務的な内容でなければ男子と話すことはありませんでしたし、友達と一緒でなければ談笑もできない感じでした。そんな背景もあり、同じクラスの男子はもちろん、男性とはほぼ関係しない高校生活の滑り出しだったはずだったところに、突如として小さいおじさんみたいな田中君が現れたのです。その事件以来、私は田中君のことが少し気になりだしていました。

百合さんが言うには、田中君は友達らしい人はいなく、ずっと座席の番人をしながら、授業中も放課中も電気の回路みたいなものをいじっているようでした。放課中にはたまに何かが焦げるようなニオイをさせていましたが、煙を出すわけではないので、周囲の生徒も見て見ない振りでした。

そんなある日あの事件が起きたのです。


(鬼大尉)無駄に疲れたわ