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(株)オープンハウスグループ【3288】の掲示板 2022/12/30〜2023/07/14

都心から郊外へ進出 価格高騰にあらがうオープンハウスの選択
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/01421/

「都心部に手の届く価格の住宅を供給する」ことで急成長してきたオープンハウス。合理的経営を徹底するも、さすがに東京の中心で「買える価格」の維持は厳しくなってきた。「家が買えない」時代の申し子。その戦略の変遷は、住宅市場の今を象徴している。
 「都心部は正直きつい。商品として成立させるのが難しくなってきた」。2013年の株式上場から急成長の不動産デベロッパー、オープンハウスグループ。直近7年間の売上高成長率は平均30%を超え、23年9月期には売上高1兆円の大台を突破することが確実視される。だが、創業者の荒井正昭社長の口をついて出たのは、危機感あふれる言葉だった。
 オープンハウスグループの稼ぎ頭は、グループ内の不動産販売会社、オープンハウスが中心に手掛ける戸建関連事業だ。13年からの「異次元の金融緩和」でマンションの価格上昇ペースが勢いづく中、価格競争力のある戸建て商品を武器に「東京に、家を持とう。」というキャッチフレーズを掲げた。「マンションは買えないけど都心部に住みたい」という顧客の受け皿となることで成長した。
 世帯年収700万~1000万円の層向けに、東京23区内で戸建て住宅を5000万~6000万円という価格設定で提供する。住宅購入の主力層である20~40代の共働き世帯なら手の届く、絶妙な価格設定だ。こうした戸建て住宅を、1都3県で年間約5000棟供給してきた。地価の高い東京でこれだけ安く販売できる理由は、仕入れた土地の収益率を最大限に高めるビジネスモデルにある。
 例えば50坪(約165m2)程度の土地を仕入れた場合、面積約17坪(約60m2)、3階建てのコンパクトな戸建てを2~3棟建てる。3階建てなら、都内の一般的な3LDKマンションと同じくらい、もしくは少し広めの80~90m2程度の広さが確保できる。これで東京に戸建てを持てるなら十分だと考える人は少なくない。オープンハウスにとっても、土地を分割せずにそのまま家を建てるよりも大きな利幅が取れる。

「供給エリア拡大」に活路
 こうしたビジネスは従来、大手デベロッパーがあまり手を出さず、地場の工務店がそれぞれ行ってきたものだ。同社はそこに大きなニーズがあるといち早く気づき、「顧客が買える価格」で家を提供してきた。
 だが地価や資材、人件費の上昇などで主戦場だった都心部での価格維持が難しくなり、同社は新たな戦略で、顧客のニーズに応える必要に迫られた。
 現在のオープンハウスグループのキャッチフレーズは「好立地、ぞくぞく。」に変わっている。同社が選択した戦略は「供給エリアの拡大」。「お客様の予算が変えられないなら、それに合う形で住宅を供給する」と、営業を統括する黒田昭・専務執行役員は説明する。
 同社が今、供給を強化しているのは東京の中心部から電車で30~40分離れた郊外エリアだ。東京都内ならば江東区や江戸川区、練馬区など。立川市にも、23年に新たに営業所を開設した。
 埼玉県の戸田市や浦和美園(さいたま市)にも力を入れている。一昔前は2階建て住宅しか建っていなかった地域で、3階建て住宅を3500万~4000万円で販売できるようになった。東は千葉県の船橋市、西は神奈川県の湘南エリアと、都心部から放射線状に供給エリアは膨らみ続けている。
 だが、同社は利便性を重視するパワーカップルなどを主力顧客に、コストパフォーマンスの良い住宅を供給することで成長してきた。エリアを郊外に広げれば価格は維持できても利便性は落ちる理屈だが、いかに顧客を納得させたのか。
 「毎週、現場から上がってきたデータを分析して議論し、商品を企画している」(荒井社長)。こうした中で、距離は都心から離れても、駅近ならば顧客は受け入れると判断した。荒井社長はデータに基づいた仮説検証サイクルを高速で回して意思決定することで、顧客の予算を満たし、かつ利便性の高い物件を提供できているという。
 オープンハウスは、早い段階から「グループ内の製販一体」を徹底してきた。用地の仕入れから企画、建築、販売までを一気通貫で行う体制だ。販売現場で得た消費者のニーズの変化や販売価格の変動といったデータを集められる。
営業チラシはAIですぐに作成。担当者が営業活動に専念できる体制を構築している(チラシの物件は販売終了)
 製販一体のメリットは、それだけではない。すべてグループ内で完結させれば納期遅れなどのリスクを低減できるため、住宅の着工段階で顧客を見つけて販売し、早期に資金を回収することが可能になる。その資金は次の用地仕入れに充てる。在庫回転率を上げることで高いROE(自己資本利益率、22年9月期は24.7%)を実現。この「稼ぐ力」が、物件の価格競争力を高めている。
「このモデルは長く続かない」
 同社の成長ペースに、現時点で陰りは見えない。だが、荒井社長は「このビジネスモデルは長くは続かない」と断言する。
 会社を急成長させた戸建関連事業にこだわらず、富裕層向け海外不動産の開発・販売、投資用不動産事業、マンション販売事業など、収益多角化に向けて動き出していることは、その言葉が本音であることの証左だろう。
 用地仕入れを統括する吉田真太郎開発事業部長も「用地取得のコストが年々高くなってきていて、顧客の予算を実現できる水準の出物が少なくなってきた」と明かす。営業エリア拡大と手ごろな価格の維持。そのバランスの持続可能性が問われている。
 「5000万~6000万円で家を買いたい層がいる限り、要望に応え続ける。だが消費者のニーズが変わればオープンハウスも変わる。ただそれだけのことだ」(荒井社長)
 「家が買えない」時代の申し子、オープンハウス。住宅業界が注目する急成長企業の創業トップが漏らした言葉は、住宅業界の未来を予言しているのかもしれない。