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それゆえに日揮の大型受注に市場は警戒を強めている。足元の株価は5月につけた年初来高値から4割近く安い水準で、21日には年初来安値の1673円をつけた。カナダのLNG受注を5月に公表して以降、市場は明らかに受注をリスクと捉えている。
 市場の不安を払拭すべく会社側は損失を防ぐために万全の体制で臨んでいる。「(受注に際しては)休日返上でリスクを精査した」。佐藤会長はこう振り返る。17年3月期の米国と中東の失敗経験を細かく分析したうえで、今回はあらゆるリスクを想定して受注価格に盛り込んだという。
 工事が長期化しない工夫も凝らす。現場の人手不足に左右されないようにする「モジュール化」を推進。具体的にはプラントに必要な素材などを別の場所で製造して組み上げ、現地では据え付けや接合を中心にして仕事を極小化する工夫だ。自社が抱える経験豊かな人材をカナダ案件に集中投下し、リスクを軽減する考えだ。
 大型受注を機に会社の組織体制も大きく変える。8日には「19年10月に持ち株会社に移行する検討を始めた」と発表した。持ち株会社にぶら下がる事業会社には、LNGプラントなどを手がけるエネルギー部門やインフラ部門を新設する。国内事業も別カンパニーとして新事業の柱として成長させ、リスクが大きい石油やガスの依存度を引き下げる狙いだ。
 現場のリスク低減と将来の事業の柱を育成する2つの策で収益改善を狙う日揮だが、それだけでは投資家は納得しない。低迷する株価が本格反転するためには、「1兆円受注」が実際に利益を生み出すことを市場に示す必要がある。