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【CAD】月次国内総生産の掲示板

弊社のNY金融筋によれば、「NY賢人エコノミストと称されるエバコアISI率いるエド・ハイマン会長は『astonished』という言葉を用いて腰を抜かすほど驚いたと前代未聞の米4月雇用統計NFPの大幅下振れに言及、FEDは暫く忍耐強くならざるを得ないとの認識を示した」という。

米4月雇用統計で景気動向を敏感に反映するNFPが前月比+26.6万人と市場予想(100万人)を大きく下回り、米FRB無制限QE(量的緩和)の長期化観測が強まり投資家心理を支え、7日の米ダウ平均は前日比0.7%高の3万4777ドルと5日続伸、連日で過去最高値を更新した。

米国では多くの州でワクチン接種の進展により変異種の蔓延で強化された行動制限の緩和が進み、NY州は5月半ばから経済活動の再開を一段と進める方針で、飲食店や小売店、劇場、文化施設などの収容人数の規制を原則撤廃する。

しかし、ワクチン接種が進展し米景気回復が加速しても、想定された程に雇用情勢の改善が進まない、「100年に一度」の公衆衛生危機パンデミックだけに労働市場の改善は容易ではないことが、米4月雇用統計NFPの前代未聞の予想比大幅下振れが証明した。

背景には、1)労働者間に残る感染リスクへの警戒、2)9月まで延長された失業給付により労働参加意欲を失った長期失業者、3)「パンデミック・ウォール」に苦しむ若者、4)就業に必要な子育てサービスの未整備、5)足元の1日のワクチン接種回数ペースの鈍化−等がある。

事実、ワクチン接種を完全に終えた人は18歳以上で4割を超えたが、足元で1日の接種回数ペースが鈍化している。共和党保守派に多いとされるワクチン接種に消極的な人々の存在や3倍の感染力がある変異ウイルスの拡大が経済活動拡大や就業に必要な「集団免疫」獲得の壁として懸念される。

さらに、米雇用情勢の改善の遅れには、過去10年にわたり価格上昇と期待インフレを抑えてきたディスインフレ要因、1)AI(人口知能)やロボット普及等技術イノベーションによる生産性向上とコスト削減による製造業の趨勢的な雇用減少、2)大手企業中心に成長が見込めない業務の外注(アウトソーシング)進展、3)消費よりも貯蓄を優先する高齢者の増加、4)マゾンの労働組合結成の否決など大手IT企業の賃上げ要求停滞、4)低賃金の非製造業・サービス産業の全産業に占める比率拡大による賃金インフレ抑制−等の構造要因がある。

1月にグーグル親会社アルファベットで従業員らがアルファベット労働組合(AWU)を結成したが、団体交渉権を持たないため賃上げ圧力に繋がり難く、4月にはアマゾン・ドット・コムの物流施設で労組結成の是非を問う従業員投票が行われたが、反対多数で否決された。

米アマゾン・ドット・コムはネット通販の受注や配送・荷物仕分け等を担う50万人超の従業員を対象に5月中旬-6月上旬にかけ時給を最大3ドル(約330円)引き上げる。賃上げで従業員らが抱える不満の抑制に繋げる一方でアマゾンのアラバマ州の物流施設で2-3月、労働組合結成の是非を問う従業員投票が行われたが、否決された。

企業が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)、新型コロナ感染拡大に伴うテレワーク等で先を行く米国では巨大IT(情報技術)大手で組合結成の動きが鈍く、最低賃金引上げにも賃金インフレの上方硬直性が、景気回復加速にも拘わらず構造的なディスインフレ要因となっている。