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【USD】ケース・シラー米住宅価格指数の掲示板

>>98

■ QE2以来、FRBもファンダメンタルズ悪化

 QE2開始以来、米国債を大量に購入して、米財政の資金調達を支えてきたのが、米国の中央銀行FRBである。

 リーマンショック、さらに、コロナ対策で膨らむ財政赤字を賄うために、大量の国債やモーゲージ担保証券を購入してきた。

 今では、FRBの保有する国債とモーゲージ担保証券は日本のGDPの1.4倍に相当する700兆円にも達している。

 そのおかげで、FRBのファンダメンタルズであるバランスシートの健全性、その中核である資産の健全性が大きく損なわれていることは前回の21世紀型大恐慌シリーズ(3)で説明した。

 自己資本が14兆円ほどしかないFRBの資産のほとんどは、700兆円を超える米国債とモーゲージ担保証券である。

 いずれも、大きな「金利リスク」を持つ。米国債全体で見た時に、金利が3%程度上昇しただけで、30%値下がりする。

 ところが、FRBの負債のほとんどは、民間銀行や米国政府がFRBに持つ「預金」である。こちらの方は、金利が上がっても、返済すべき金額は不変である。

 つまり、民間銀行には厳しく制限している「長短ミスマッチ」の「金利リスク」を、FRBは日本のGDPの1.4倍の規模で取っているのだ。

■ FRBは金利を上げられない

 リーマンショック以降のゼロ金利の時代に、QE2によって大量の米国債を保有したFRBでは、金利を上げたら保有する米国債が値下がりして、FRBのバランスシートは決定的に悪化する。

 だから、FRBには金利を上げられない理由が存在する。

 その結果、米国債の「ゼロ金利」状態が続く。つまり、最悪のファンダメンタルズにもかかわらず、金利の「逆数」である、米国債の「価格」は最高値にある。

■ 蓄積する歪みと暴発

 まるで、地殻のプレートの毎年の歪みが蓄積していくように、米国債には、過去最悪のファンダメンタルズと過去最高の価格という歪みが蓄積されている。

 米国債の歪みもまた、表に現れた時に多様な経路を辿り、巨大な津波のような衝撃を与えるだろう。

 改めて断っておくが、私は悲観論者ではない。また、常に「大恐慌が来る」と脅かしてきたわけではない。

 2009年1月に執筆した「太陽経済」(「日本経済復活のシナリオ―太陽経済を主導せよ」)の中では、2008年9月に起きたリーマンショックから「戦前型大恐慌が起きない理由」を説明した。

 事実、大恐慌が起きるどころか今年までに米国株式は市場最高値を更新してきた。

 しかし、アフターコロナが見えてきた米株式市場は大暴落すると想定せざるを得ない。しかも、リーマンショックとは違って、米国の債券とドルも大暴落するリスクが高い。

 しかも、リーマンショックに際しては瞬時に形成された国際協調体制は、今は機能不全だ。

 そうなると、第2次世界大戦後初めての事態であり、マーケットの大暴落から「21世紀型大恐慌」に至るリスクが高い。

 どうしても警告しなくてはいけないと思い、2020年11月に「21世紀型大恐慌」(PHP出版) を書いた。詳しくはこちらを参照してほしい。