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【JPY】日銀短観・四半期大企業製造業業況判断の掲示板

1月18日の決定会合後の会見で黒田東彦総裁は、08年のリーマンショック前の物価高を引き合いに、「エネルギー価格や原材料コストの高まりを受けた物価上昇は一時的にとどまる」とし、「仮に賃金上昇を伴わずに物価が上昇しても持続的にはならない」と指摘、「金融政策の変更はまったく考えていない」と重ねて強調した。

日銀は17-18日開催の政策決定会合で、大規模な金融緩和の維持を決め、短期金利-0.1%、長期金利ゼロ%で推移する長短金利操作(YCC)方針を据え置いたが、市場の一部では物価上昇を受けて日銀が利上げの議論をしているとの観測が浮上し政策修正思惑から円買い・ドル売りが進んでいた。

しかし、18日昼頃の東京外為市場でドル/円は一時115円台へ円安が進んだ。日銀が政策決定会合の結果を発表、「展望レポート」で2022年度の物価上昇率の見通しを1.1%と、昨年10月時点の0.9%から引き上げ、「下振れリスクが大きい」との表現を「上下にバランス」へ変更するも予想より低い水準であり改めて日銀の「ハト派」姿勢が確認され材料出尽くしからドル買い・円売りが加速した。

むろん、日銀が目指す持続的2%の物価上昇のハードルは高い。コスト高が起点の物価上昇は消費を冷やす恐れがあり、21年10-12月に消費は持ち直したものの、足元では変異型「オミクロン」感染者の急増が景気先行き不安を醸している。

さらに、資源高に伴う企業の価格転嫁が想定以上に進むものの、値上げに伴う販売減を警戒する企業の声が多く寄せられている。つまり、企業は消費者の値上げ許容度を慎重に見極めつつ可能な範囲で値上げせざるを得ないというのだ。

もちろん、鍵を握るのが賃金であり、賃上げが強まれば値上げしても需要が落ちにくく企業収益も確保できる循環に繋がるが、黒田総裁が会見で述べた如く「仮に賃金上昇を伴わずに物価が上昇しても持続的にはならない」−。

物価の上方硬直性は、賃上げ交渉が進み辛い日本固有の企業風土がある。政府が企業に賃上げを促しても今年の春闘で賃上げ機運が盛り上がるか定かでない。アベノミクスの「官製春闘」でも賃上げは僅かに留まった。

米FRBは金融政策「正常化」利上げに向けた議論を急ピッチで進めているが、黒田総裁は昨年師走12月の会見で「(日本の物価は)2%を超えるといった欧米のようなことになる可能性はまずない」と緩和修正を強く否定した。

何より、インフレに呼応して金融政策「正常化」を進める欧米と異なり、日銀が緩和維持の姿勢を貫くのは財政を含めた日本経済に利上げ耐性がないためである。意図しない経路で2%の物価目標を達成し、利上げを迫られれば国債利払い負担は急増し、民間金融機関が保有する国債も多額の評価損を抱える。

世界最速の少子化・人口減少「慢性内需欠乏症」のデフレ体質が続き、財政赤字の拡大にも潜在成長率ゼロを彷徨う低成長の日本経済にあって未だ利上げなど拙速に過ぎるというのだ。

なお、日銀は「展望レポート」で21年度の成長率予測(中央値)を+2.8%と、前回21年10月見通し(+3.4%)から下方修正、22年度は+3.8%(前回+2.9%)へ引き上げが23年度は+1.1%(同+1.3%)へ引き下げた。消費者物価(除く生鮮食品)見通しは21年度0.0%と前回見通し(0.0%)と同じだったが22年度は+1.1%(同+0.9%)に引き上げ、23年度は+1.1%(同+1.0%)と想定以上に「ハト的」予想となった。