ここから本文です
Yahoo!ファイナンス
投稿一覧に戻る

ソフトバンクグループ(株)【9984】の掲示板 2015/06/20〜2015/06/22

>>257

年棒165億円男ニケシュが「ガンバルロー!」
東洋経済オンライン 2015.6.22 15:20 嶋聡

 6月19日午後3時、東京国際フォーラム。4000人を超すソフトバンク幹部社員が長大な列をつくり、続々と入場した。社員たちの表情は例年の社員大会より、真剣に見えた。

 それに先立つ総会ではニケシュ・アローラのソフトバンクグループ(旧ソフトバンク)取締役就任が正式に承認された。世界トップのインターネット企業グーグルで最高事業責任者をつとめたニケシュ・アローラ(47)を孫社長の後継者候補として迎え入れ、代表取締役副社長としたのだ。報酬は165億円と発表された。

 その株主総会で、長い間、孫社長の右腕として事業を運営してきた宮内謙代表取締役副社長が「取締役」となった。これはどういう意味を持つのか。

■ 越王句践にあらず

 中国の春秋時代、臥薪嘗胆で知られる越王句践が呉王夫差を破ったあとのことである。句践の参謀だった「范蠡(はんれい)」が越王句践の目標達成後の行動を「蜚鳥尽きて良弓蔵せられ、狡兎死して走狗煮らる」と予測した。

 「飛んでいる鳥を射尽くしてしまうといい弓も蔵にしまわれ、獲物であるすばしこい兎が死んでしまうと猟犬は用がなくなり煮て食べられる」。

 事が成ってしまうとそれまで役に立っていたものは必要なくなるという意味である。

 国内通信事業中心のソフトバンク1.0でNTTドコモを抜くという目標を果たすことができた。これからは、世界へ羽ばたくソフトバンク2.0へフェーズは変わった。幹部社員が「范蠡」と似た感想を持ったことは否定できない。

 だが、それはまったくの見当違いだったようだ。孫社長には越王句践のような目標達成感はまったくなかったのだ。孫社長が言う。

 「今から4年前、この場所で30年ぶりの大風呂敷、大ボラとして『2040年、世界トップ10、時価総額200兆円』が目標と30年ビジョンを発表した。今は、大ボラでなく、本気で成し遂げてみせると思っている。目標も控えめに世界トップ10と言ったが、本音は『世界一』が目標。……世界一のインターネットカンパニーであるグーグルからニケシュが来てくれたことで世界に挑む体制、世界に挑む的確なチームができた」

 孫社長の口調は淡々と社員に語りかけるものであった。先立つ株主総会。社外取締役である柳井正ファーストリテイリング社長が言った。「孫さんが本当にやるときは、静かに冷静に話す。目が据わってくる」。

■ 富士山からエベレストへ

 柳井さんが続ける。「ホラがホラとして終わらないためには、企業が継続できるようにする必要がある。今までは何兆円の勝負だったが、これからは何十兆円の勝負になる。本当に大ボラを実現しようと思ったら、グーグル、アップルを超えないといけない。当然、順調ばかりじゃない。失敗してもいいが、会社が継続できるように」。

ソフトバンク1.0の時代、私は8年3000日、社長室長として孫正義社長を補佐した。そのときの使命はソフトバンクを「やんちゃなベンチャー企業」から、「ちょっと大人のソフトバンク」に進化させ、「営業利益1兆円クラブ」企業に発展させることだったと『孫正義の参謀』(東洋経済新報社刊)に書いた。 ソフトバンク2.0の目標は、時価総額1位のアップル、3位のグーグルと大きく飛躍した。私が社長室長だった時代の「登る山」は標高3776メートル、日本一の富士山だった。これからは標高8848メートル、世界一のエベレストとなる。

 富士山を登るときに孫社長をサポートするチームと、エベレストを登るときのチームは構成も必要とされる能力も違う。エベレスト登山で体を慣らすためのベースキャンプは5300メートル。富士山より高い地点まで、一挙にヘリコプターで行き、そこから頂点をめざす。世界一を目指すとはそういうことなのである。

 「ニケシュは、真のグローバル企業、世界で最も進んだ企業であるグーグルで最高事業責任者を努めた能力のある人。私の最有力後継者候補である」(孫社長)。

 アップル、グーグルを超えるのが目標で、数十兆円の勝負を託されるとしたら、165億円の報酬もふさわしいものとなる。ニケシュがあいさつをする。

 「22歳のとき、2つのスーツケースと父からの300ドルを持ってインドから7000マイル先のアメリカにわたった。それからずっとアドベンチャーを続けてきた。……そのときと同じ気持ちで、ベストを尽くしたいと思う」

 スタンフォード大教授のジェームズ・C・コリンズは優れた指導者が活躍できる期間を超えて、ずっと繁栄し続ける企業を「ビジョナリー・カンパニー」と呼んだ。ソフトバンクは、ニケシュという後継者候補を得た。個人としてのカリスマ性ある指導者を越えて、3世代、4世代と「何世紀も存続し続ける」(孫社長)ビジョナリー・カンパニーへの一歩を進み始めた。


 「では、日本はどうでもいいのか。とんでもない。今まで、女房役として二人三脚でやってきた宮内ちゃんが代表取締役となって、ソフトバンク・ジャパンをリードしていく」

 新生ソフトバンク(旧ソフトバンクモバイル)の宮内謙代表取締役社長が孫社長に紹介され、プレゼンに立った。

 「超グローバルのニケシュに対し、私は超ドメスティック。しかし、国内グループはずっと皆さんの力で勝ち続けてきた。チーム力をアップして、ソフトバンク・ジャパン2.0に挑戦したい」

 宮内さんのあいさつには「グループ各社」「グループシナジー2.0」など「組織」を意識した言葉が多く見られた。コリンズは「ビジョナリー・カンパニー」に、実は偉大なカリスマ的指導者は不可欠ではないと指摘した。「憲法制定会議に集まったアメリカの建国者のように、偉大な指導者になることよりも、長く続く組織を創り出すことに力を注ぐ」ことが必要だからである。

 ビジョナリー・カンパニーの歴代CEOの特に重要な人物にはカリスマ性は少なく、むしろカリスマを意識的に避けてきた人もいるとコリンズは言う。なぜなら、ビジョナリー・カンパニーは「組織」であることが重要だからだ。宮内さんのあいさつを聞きながら、新生ソフトバンクがビジョナリー・カンパニーをめざす、見事な人事であると思えてきた。

■ ニケシュの咆哮、「ガンバルロー」

 「これからは、宮内ちゃんも日本のリーダーとして、ニケシュもグローバルのリーダーとしてやり抜いていく。志、高く、やりぬいていこう」

 孫社長の言葉で社員大会が終了、社員4000人全員の記念撮影となった。中央に孫社長、ニケシュ、宮内さん。「左手にうちわを持ち、私の掛け声で『ガンバロー』と右手を挙げてください。2回撮ります」。

 司会者がそう説明したところで、孫社長が言った。「ガンバローは、宮内ちゃんにやってもらおう」。急な指名だったので、宮内さんが少しとまどいながら「ガンバロー」をした。

 「次は、ニケシュ」。社員から自然に拍手が起きた。ニケシュは「何と言うのですか」と孫社長に聞いている様子だった。

 「ガンバルロー」

 インド英語なまりのニケシュの「ガンバルロー」に全員が唱和した。少しとまどいながらも、ソフトバンク2.0は確実に進んでゆくであろうことを予感させる「ガンバルロー」であった。