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吉野家HDにようやく育った「孝行息子」
日経新聞 2013/7/9 6:00

吉野家ホールディングスが円安に苦しんでいる。2013年3~5月期決算は営業損益が7億円の赤字(前年同期は3億円の黒字)に転落。円安による米国産牛肉の仕入れ単価の上昇が、牛丼並盛りの値下げによる集客増を帳消しにした。だが、希望がないわけではない。08年の買収以降、業績の足を引っ張ってきたステーキ店運営子会社「どん」の収益改善だ。


「ステーキのどん」では期間限定で食べ放題も実施(埼玉県の店舗)
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「ステーキのどん」では期間限定で食べ放題も実施(埼玉県の店舗)
 決算と同時に発表した6月の既存店売上高は国内吉野家が前年同月比10.8%増。値下げ効果が持続し3カ月連続で2桁伸びたが、どんは15.4%増とこれを上回った。週末夜のテレビ番組で取り上げられるなどツキもあったが、これで8カ月連続の前年比プラス。14年2月期は6月までの4カ月間で8%近く増え、通期計画(前期比1.4%増)を大幅に上回る好スタートを切った。

 背景にあるのが、外食業界で起きている「ステーキブーム」。ロイヤルホールディングスが運営するファミリーレストラン「ロイヤルホスト」では高級な米国産牛肉を使ったステーキの販売が伸び、6月の既存店売上高は13.9%増とやはり好調だった。どんが運営する「ステーキのどん」や「フォルクス」では、2000円前後と比較的高めのメニューが人気で、今期は客単価も上昇に転じている。

 牛丼との相乗効果も見逃せない。国内吉野家と米国産牛肉の共同仕入れを加速。大量調達することで、円安にもかかわらず、どん部門は3~5月期も原価低減が進んだ。3~5月期の部門営業利益は9000万円と、赤字だった前年同期から黒字転換した。

 これまでは苦難の連続だった。関東を中心に「ステーキのどん」を展開していたどんは06年、ダイエー系だったフォルクスと合併。だが経営は上向かず、吉野家HDが08年に買収した。ところが、翌年に病原性大腸菌O―157による食中毒事件が発生し、客離れが加速。吉野家HDは10年2月期に買収に伴う減損損失を計上し、大幅な最終赤字に追い込まれた。
転機が訪れたのは前期だ。吉野家HDが6億円強を投じ、全店の大半に当たる約160店で改装に着手。12年ぶりに看板を替えた店舗もあったという。昨年11月には、東京・中央の大型複合施設に「フォルクス」の新店を開業。景気回復を追い風に、立地場所を厳選しつつ新規出店を再び増やす方針だ。

 吉野家HDは16年2月期に営業利益で今期予想比6.7倍の200億円、売上高で45%増の2500億円を目指す中期経営計画を実行中。営業利益のうち50億円は牛丼以外で稼ぐ計画だ。収益が比較的安定しているうどん店チェーン「はなまる」を加えても、前期の牛丼以外の営業利益は10億円程度とハードルは高い。売り上げ増と原価低減の両方が見込めるどんにかかる期待は大きい。

 牛丼店でライバルのゼンショーホールディングスとの収益格差を縮めるためにも、牛丼以外の利益拡大が欠かせない。ゼンショーは13年3月期に営業利益の約55%を牛丼以外で稼いだのに対し、吉野家HDの前期実績は約40%と見劣りする。顧客が低価格に慣れて客単価引き上げが難しい牛丼への依存度を減らすためにも、どんに吹く追い風を確実に生かせるかが問われそうだ。

(伊藤正倫)