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豊田通商(株)【8015】の掲示板 2022/02/05〜2023/01/26

豊田通商、北海道で国内最大級の風力発電 送電網も整備

2022年9月13日 18:00 (2022年9月14日 5:13更新) [有料会員限定]

政府は再生エネの電源比率を現状からほぼ倍増させる目標を掲げる(北海道苫前町にあるユーラスの風力発電機)
北海道で2023年から国内最大級の陸上風力発電設備が稼働する。豊田通商などが国の補助金も活用し、送電網や蓄電池を合わせて開発する。発電能力は原子力発電所半基分に相当する54万キロワットで道内の風力発電量は約2倍に増える。発電と送電を一体で整備し、再生可能エネルギー普及の課題である送電網の強化につなげる。

風力発電を整備するのは北海道北部の稚内市から幌延町にまたがる地域。土地が広く、風力発電に適した強い風が吹く。豊田通商の子会社で国内最大の風力発電事業者、ユーラスエナジーホールディングス(東京・港)が45.7万キロワット、コスモエネルギーホールディングスのグループ会社であるコスモエコパワーと新電力のLooop(ループ、東京・台東)が計8.5万キロワットを発電する。

一部の発電設備は既に着工しており、23年から段階的に稼働する。発電した電力は固定価格買い取り制度(FIT)で大手電力に販売する。54万キロワットの発電能力は、一般家庭で約18万世帯分の需要に相当する。ユーラスは出資する送電子会社を通じて計80キロメートルの送電網を自前で整備し、コスモなどの発電設備も合わせて北海道電力の送電網とつなげる。

世界最大規模となる容量72万キロワット時の蓄電設備も整備する。蓄電池はジーエス・ユアサコーポレーション製の大型リチウムイオン電池だ。電気自動車(EV)1万台分に相当する蓄電能力があり、電力需要の少ないときには一時的に電力をためておけるようにする。

発電設備の投資額は非公表だが、ユーラスが担う送電網と蓄電池の整備費は約1000億円で、そのうち4割は国の補助を活用する。ユーラス子会社が13年に公募された「送電網実証整備事業」に基づいて補助を受ける。他は借り入れなどでまかなう。

大手電力以外での送電網整備は全国でもまだ珍しい。送電網の整備や保守・運営は原則、大手電力傘下の送配電会社が責任を負う。北海道北部は再生エネ開発の適地だが、北電は原発の停止後に送電事業のコスト削減が求められ、大規模な送電網の開発が進まなかった経緯がある。

送電事業は国が認可する形で大手電力以外でも参入できるようになった。ユーラスは発電設備の容量に応じて発電事業者から送電網の利用料を受け取り、借り入れなどで投じる資金については長期間かけて回収する。将来は蓄電池にためた電力を卸電力市場の価格が高騰した際に売るといった施策を通じ収益力を高めることも検討する。

再生エネをさらに増やすには、送電網に投資して送れる電気の量を増やすことが解決策になる。ただ、国が認可した「送電ライセンス」を持つのは大手電力を除くとJパワー系やユーラス子会社など数社にとどまる。送電網への投資の回収が難しいためだ。

燃料費の高騰もあって大手各社の業績が悪化し新規投資が難しくなるなか、発電と送電事業を一体運営して安定収益を稼ぐユーラスの事業モデルが軌道に乗れば、今後の送電に対する投資の拡大につながる。

ユーラスは建設する北海道の風力で発電した電力を首都圏にも供給する構想を描く。北海道内の電力需要は冬のピークでも500万キロワット超と、首都圏の10分の1以下にとどまる。新たな風力発電で供給余力が生まれる見込みだ。

経済産業省は30年代前半をめどに北海道から日本海の海底を通って本州を結ぶ直流の送電ケーブルを整備して送電能力を高める計画を掲げる。将来的にはこうしたインフラも活用し、需給逼迫などには首都圏へ電気を送る考えだ。都市部での電力の安定供給に加え、脱炭素に向けた火力発電依存度の引き下げにもつなげる。

政府は30年度までに電源構成に占める再生可能エネルギー比率を36~38%と、現状からほぼ倍増させる目標だ。ただ風力発電や太陽光発電は天候によっては出力が大きく上下する。「調整弁」となる蓄電池の整備が遅れていることに加え、風力発電所などから電気を送るための送電網の能力も足りず、再生エネ普及の障壁となっていた。