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NEC【6701】の掲示板 2021/06/29〜2021/08/24

長いトンネルの末…復活挑むNEC(6701) AIと通信に追い風
福田直之2021/7/25朝日新聞
 筆者は1年前まで北京特派員だった。中国は急速に人工知能(AI)で実力をつけ「AI大国」として米国に次ぐ位置まで追い上げている。それでも、取材した現地のIT起業家たちは、口々に「NECのAIはすごい」と言っていた。少し調べてみると、NECのAIは中国だけでなく、米国からも高い評価を得ているという。一方、帰国してみると、「日本のAIは周回遅れ」との認識もしばしば耳にする。実際にNECを取材して見えてきたのは、長いリストラのトンネルを抜けた日本の大企業が最先端技術をてこに復活へ挑む姿だった。

米が認めたダントツの精度 リストラの末に残った技術
 米航空宇宙局(NASA)の「アルテミス計画」は2024年に月に人間を送り、さらに33年に火星の有人探査を目指す。計画に使われるロッキード・マーチン製の宇宙船「オリオン」が、故障の予兆検知に使うのはNECの人工知能(AI)だ。

 地球との往復と探査は2年がかりの長旅でリスクは宇宙船の故障だ。「地球から監督して指示するのに約15分かかる。故障は船内で対処する必要があり、その場で判断を支援できるAIの搭載は必須になる」。NECのCTO(最高技術責任者)、西原基夫はそう解説する。15万個のセンサー間の220億超におよぶ関係性を抽出し、正常な動作のモデルを作成。実際の動作と比較し、故障前に異常を検知する。

NECのAIは人口が13億を数えるインドの国民IDにも使われる。社会保障給付の受け取りや、銀行口座開設の確認に使うIDの重複登録を防ぐために使われているのが指紋と顔、虹彩(こうさい)の生体認証だ。

 NECの顔認証技術は、米国立標準技術研究所(NIST)の評価で09年以降、世界首位の精度を誇っている。指紋認証と虹彩認証でも世界首位だ。顔認証と虹彩を組み合わせると、誤認確率は100億分の1以下まで下げられるという。

 1899年に創業したNECは、1980年代のバブル期に半導体で世界シェア首位に立ち、PC9800シリーズで国内のパソコン市場を席巻した。ただ、プラザ合意による円高や日米半導体摩擦、バブル崩壊による内需衰退で「失われた30年の代表企業の一つ」(アナリスト)になった。

 その間は防衛庁の調達を巡る汚職事件での元幹部の逮捕、経営層の内紛、半導体やパソコン事業からの撤退、大量リストラと暗い話が続いた。ピークの2000年度に5・4兆円あった売上高は16年度、半分を割った。

長いトンネルを抜けたのは最近だ。20年度に2年連続で最終利益が過去最高を更新(1496億円)。5月の記者会見で社長の森田隆之は「普通の会社に戻った」と述べた。東海東京調査センターの石野雅彦も「NECはスタート台に立った。とはいえまだ利益率が低い(調整後営業利益率は20年度6%)ので、世界の成長を取り込むことが大切だ」と局面の変化を認める。

 今後の成長の起爆剤になりそうなのが、リストラの間も研究を積み重ねてきたAIだ。18年には生体認証に「バイオイディオム」というブランド名もつけてPRするが、価値は国内で十分認知されていない。