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ニデック(株)【6594】の掲示板 2022/10/03〜2022/10/11


 高橋 義仁 専修大学 商学部教授 のコメント


東洋経済オンラインの記事は、経済犯罪を意味する「インサイダー取引」というワードをつかって、同社の経営体制に疑問を投げかける内容でした。ただし、インサイダー取引が金融商品取引法および施行令に基づく「経済犯罪」に該当するには、(1)自身が会社関係者であり、(2)その職務に関し重要事実を知っていて、(3)該当上場会社の代表取締役等またはそれに類する方が重要事実について定められている2つ以上の報道機関に公開して12時間以上の周知期間が経過する前に、(4)特定有価証券の売買等をしたことについての認識がある、のすべてを満たす必要があります。

また、自社株買いの当事者である「自社」は究極のインサイダー(内部者)であることから厳しい規制下にあり、代理人(信託銀行)を立てて代理人への一任決済(取引企業のインサイダー情報の遮断)がシステム的な要件となります。日本電産の信託銀行を通じた自社株買いを「インサイダー取引」とするなら、信託銀行との共謀関係の存在が必要です。

したがって記事が「犯罪レベルの不正行為」を指摘したいのであれば、信託銀行と共謀して犯罪成立要件を満たすことの裏付けが必要ですが、記事にはその点が書かれていません。ただし、頻繁に信託銀行に指示する行為については、不正の未然防止の点からの「信託」を逸脱する行為として、監督官庁からの監視あるいは注意対象になることはあり得ます。

記事にある内容が仮にすべて事実だったとしても、その範囲から「(経済犯罪を意味する)インサイダー取引」と表現するのは明らかに「行き過ぎ」と感じます。一方、会社側の表現「一切事実ではない」の「一切」について、記事に事実が含まれているとすれば、やはり言い過ぎかもしれません。