ここから本文です
Yahoo!ファイナンス
投稿一覧に戻る

オックスホールディングスの掲示板

太陽光発電に中古市場 エネルギー会社・ファンドの投資流入
2019年2月21日 2:00

稼働済みの太陽光発電施設を買い取る動きが活発になってきた。低炭素電源が必要なエネルギー会社や投資ファンドなどが主な買い手となり、2020年度には中古市場が16年度の4倍になるとの予測もある。適地の減少や電力買い取り価格の下落で新設が難しくなり、既存設備を活用しようとの動きが広がる。太陽光を売却した資金を洋上風力などに回す好循環が生まれれば、再生エネの普及に弾みがつく可能性もある。

設置済みの太陽光発電設備を売買する動きが活発になっている
「太陽光発電施設を買いたい企業を紹介していただけませんか?」。施設を持つ企業から売却の相談を受けた地方銀行が、太陽光発電設備の保守などを手掛ける企業に相次いで案件を持ち込んでいる。

中古設備を買い取った企業は大手電力への販売価格などの条件を引き継げる。主な売り手となっているのが中小企業だ。再生可能エネルギーを高い価格で20年間買い取る制度(FIT)が導入されたのが12年。オリックスやソフトバンクグループなど大手企業だけでなく、設備を一括償却することで節税につなげようと多くの中小企業が参入した。これまでの売電収入と中古での売却額を合計すると、投資額の2倍になるケースもあるという。

新設はピークから半減

足元で盛り上がっているのは1件数千万~数億円の中小型の発電施設の売買。だが矢野経済研究所の調べでは、20年度に中古市場は80万キロワットと、16年度の4倍になる見通し。18年9月時点の非住宅の太陽光発電容量(3606万キロワット)のうち2%超に相当する規模だ。

背景には新設投資のハードルが上がっていることがある。事業用の太陽光発電施設の18年度のFIT価格は1キロワット時あたり18円で、12年度(40円)の半分以下。ゴルフ場跡地などパネル設置が容易な土地の開発が一巡し、新たな大規模開発が難しくなっている。18年の太陽光発電施設の新設投資がピークから半減した。

中古施設の価格は新設案件の投資額と大きな差はないが、土地取得などの手間が省けるのも、買い手にとっては利点だ。「買い手の多さに比べて売却に回る案件が少なく、完全な売り手市場」。業界関係者はこう明かす。

主な買い手は電力やガスなど、化石燃料を使わない発電の比率を上げることが求められているエネルギー会社だ。環境の取り組みで選別する「ESG投資」の高まりで再生エネにシフトする動きも活発だ。東京ガスは1日、LIXILから京都府内のメガソーラー(大規模太陽光発電施設)を取得したと発表した。

機関投資家の動きも活発になっている。発電施設の開発や運営を手掛けるパシフィコ・エナジー(東京・港)が立ち上げたファンドでは18年までに5カ所の太陽光発電施設を取得。大和証券グループ本社なども18年7月に太陽光発電施設に投資するファンドを設立。スパークス・グループの運用する再生エネファンドは運用資産が1500億円を超えた。

日銀のマイナス金利政策で債券の利回りが低下し、株価も先安観が出ている。買い取り価格が保証される太陽光発電施設は景気変動の影響を受けにくく、利回りが年5%を超える。

転売を支えるビジネスにも商機が生まれている。太陽光発電施設は保守の状況などによって、発電量が大きく変わる。英保険仲介大手の日本法人エーオンジャパン(東京・千代田)は月内から、既設のメガソーラーを買った発電事業者向けに、不具合を補償する保険を販売する。発電量が一定値を下回った場合などに、パネルの交換・修理費用を一部補償するというものだ。

発電設備の評価を手掛ける三井化学には、既設の発電施設を取得しようとする企業からの受注が18年の同時期に比べ2倍に増えているという。

欧米でも再生エネ施設の中古取引は一般的だ。企業が再生エネを調達するために保有したり、年金基金や大学が資産運用に活用したりする例が多い。

国内では太陽光発電施設を作ったまま放置していることが問題化しているが、三井化学の塩田剛史リーダーは「所有者が長期で保有する企業に切り替わっていけば、適切にメンテナンスされるようになる」と語る。

今後、メガソーラーの中古取引が広がれば、オリックスなどの発電事業者が太陽光から洋上風力や地熱発電などに資金を振り向けることが容易になり、再生エネの普及に弾みがつく可能性がある。(花田幸典)