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(株)PKSHA Technology【3993】の掲示板 2021/08/03〜2021/08/11

>>933

 このようなことは,工学に限られているわけではない.政治学と経済学,医学と薬学などは,それぞれほとんど同じ対象存在を持ちながら,理論間の関係が問われることは少ない.学問の中心を自認する物理学ですら,同じ対象を扱う化学との関係についてはあまり歯切れがよくないようである.
 同一の対象を異なる視点で見ることによって学問領域が成立するという関係には,以上に述べたように機能的関心が変ることによって生じる視点群とは異なるものがあることをここで指摘しておくべきであろう.それは,一般にミクロ,マクロと呼ばれる視点である.例えば経済学にはミクロ経済学とマクロ経済学があり,経済現象を作り出す最小単位と考えられる人間の挙動を根拠として経済を理解しようとするのがミクロ経済学である.一方マクロ経済学では,経済現象を,国家,世界などの大きな範囲で切って,その範囲で表れる諸現象を可能な限り少ない変数の数で説明する体系を作ろうとする.そのとき本来経済現象を担っている個々の人間
の挙動が陽に現れないことが多い.このことは一見不思議なようであるが,実はすべての学問領域で,このような,理解体系における要素の大きさについての指定が体系の独自性を決定するという事実がある.
 例えば,生命現象を理解するために飛躍的に貢献したと考えられる分子生物学は,生命現象を考える上で最も有効な要素の単位は分子である,というドグマを持っていると考えてよい.
それは,過去における解剖学が,単位を器官,組織,そして細胞までに止めていたことにより持つ理解の限界を,大きく越えることを可能にした.
 このような,要素の大きさの指定を,視点における「粒度」とよんでおけば,粒度の重要性が大きいことは容易に理解される.しかも粒度は小さければより深い理解が得られるというわけのものでもないのは注目すべきことである.

  • >>934

     物理学では,観測精度の向上とその分野の発展とが並行しており,従って人間が手にする物体を最初の粒度として,その粒度の微小化をもって学問の進歩とする歴史を持っている.現在それは素粒子の究極に挑戦中と言われるが,それは理解のための視点の粒度が究極に達することを含意しているとも言える.
     もっとも素粒子の究極が理解されたからと言って,人間が何故このような形をしているのかという自然科学上極めて基礎的な問題が解かれるとは誰も考えない.恐らく科学は,この粒度については非常に複雑な関係をその中に待っていると思われるが,そのことはほとんど明らかにされていないと言うべきであろう.
     しかしながら,現実の学問においては,この粒度の指定が重要であることは十分認識されており,しかも学問の内容を決定的にすることから言って先鋭的な話題である.このように各領域における粒度の持つ意味は多様であることが認識されてはいるものの一般的な傾向が論じられているわけではない.
     上述のように,粒度も含めて領域は極めて多く成立しており,しかも新しい領域が成立し続けている.既に述べたように,領域の成立は基本的には機能的あるいは実用的視点の発生に対応しているから,この領域増殖は視点の拡大を意味しており,したがって増殖は当然のことである.この結果起こる問題については後述するが,次節では各領域における学問の形式上の特徴について述べよう.

    (東京大学�吉川弘之● 1992 年 4 月「イリューム」掲載)

    また明日だな。