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サスメド(株)【4263】の掲示板 2023/02/25〜2023/03/08

長文 後半
医療用アプリやAI、承認迅速に

 新たな製品の承認については、最低限の有効性を確認した段階で医療現場で使える第1段階と、治療や診療の十分な効果を確認する従来の薬事承認に近い第2段階に承認を分ける、2段階承認制度を厚労省が検討する。開発企業にとってのメリットは、第2段階の承認に向けて、実際の診療で集めたデータ(リアルワールドデータ)を治験の代わりに利用できるケースを認めることだ。

 特に診断を支援するAIは判定の精度や性能向上を証明すればよく、診療で得たリアルワールドデータだけで第2段階の承認が得られる可能性がある。開発後に被験者を集めて1年以上の期間と数億円の投資をかけて治験を実施するというSaMDの開発プロセスが、治験を経ずに現場で利用しながら性能を改善していく形態へ変わる可能性が出てくる。治療用アプリについては、医薬品と同様に用いた場合と用いない場合の治療効果を比較する必要があるケースが多い。治験を不要にできるかは未知数だが、補助的なデータとしてリアルワールドデータが活用できる意義はありそうだ。
 2段階承認に合わせて、診療報酬の決め方も従来の医療機器より柔軟にする。十分な効果を証明していない第1段階の承認時点では、同種の医療機器や治療薬より保険の点数を低く抑える。効果を確認した第2段階の承認後に改めて診療報酬の改定を議論して、効果が近い医療機器などと同等まで保険の点数を引き上げられるようにする。

 さらにソフトウエアの改善などによって効果や性能のさらなる向上が確認できれば、承認後も段階的に保険点数をアップする機会を与える制度を検討するという。開発企業にとっては承認後もソフトウエアの効果を高める機能改良への意欲が高まり、製品間での競争が期待できる。

 開発企業からは歓迎の声が上がっている。治療用アプリの開発・販売を手掛けるCureApp(キュア・アップ)の佐竹晃太CEO(最高経営責任者)は「治験などに投資する前に顧客(医師や患者)の声を集められる観点から、SaMDの開発は加速するのではないか」と期待する。

 実際の診療で得たリアルワールドデータを治験の代わりに使うことを認める方向で議論することも大きな転換点になると見る。これまで厚労省は「医薬品や医療機器の有効性を確認するには治験を必須とすることがゴールドスタンダード(絶対的な基準)だった」(佐竹CEO)からだ。
 例えばCureAppは、ニコチン依存症と高血圧症を対象とする治療用アプリの開発において、被験者をアプリを使った人と使わなかった人の2群に分けて安全性と効果を確認する治験を行っている。高血圧症の治療用アプリでは被験者390人を集めて20年1月から約1年かけて治験を実施。承認取得は22年4月と治験着手から2年以上を掛けている。

 診療だけで有効性を審査する選択肢を増やす制度改革について佐竹CEOは、「国としてリアルワールドデータの解析から得られるエビデンスの活用を積極的に広めようとしていることを示しており、意義深い」と話す。
 最低限の有効性が確認された段階の早期承認で医療保険が適用されることもSaMD開発の後押しになりそうだ。AIを活用した画像診断支援システムの開発と販売を手掛けるエルピクセルの島原佑基社長は「医師を支援するAIが正当な評価を受けるために、この仕組みに期待している」と話す。
 というのも、現状では画像診断支援AIの活用に対して、十分な保険点数がついていないからだという。「導入すると医療現場側が支払うコストが増えるため、診断支援AIが普及しにくい状況となっている。今後、第1段階承認の後で保険点数がつけば、医療機関にとっても導入のインセンティブになる」(島原社長)。

 島原社長は新制度の下で第1段階承認の後で低価格ながら保険点数がつくようになれば、医療機関が診断支援AIを導入しやすくなるほか、同分野への参入企業を増やす効果があると指摘する。これまでは開発や治験に多額の投資をしても承認後の保険適用の扱いが見えにくいため、開発に踏み出せない企業があった。島原社長は「大手企業や異業種の企業にとって開発の追い風となる」と、医師を補助する診断支援AIの新規参入が活発になる可能性を示唆する。

 厚労省は23年4月以降に設置する有識者から成る審議会などで検討を進める。新型コロナウイルスの治療薬を含めて、厚労省は「迅速な承認」を掲げた新しい審査制度をつくってきたが、審査に入ると安全性や効果に対する慎重な判断を重視するあまり看板倒れに終わった例もある。
 一方で規制を緩めすぎると有効性が低い製品を安易に承認したり保険適用したりして医療現場の混乱を招くため、開発促進とのバランスが求められる、、、