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テストの掲示板

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hardWorker どちらとも言えない 2020年11月21日 09:52

ドル安志向の強さで知られるブレイナード氏

次期財務長官として有力視されるブレイナードFRB理事(写真:ロイター/Brian Snyder)

まず、ブレイナード理事は多くの市場参加者が認識するとおり、現在のFOMC(連邦公開市場委員会)ではカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁と並んでハト派筆頭格である。そうした志向と整合的に、同理事は前職の米財務次官(国際担当)時代はドル安志向が強い人物としても耳目を集めてきた過去がある。

例えば、アベノミクスの下で円安・ドル高が最も勢いづいていた2013年1月、ブレイナード財務次官(当時)は「ゲームのルールが今後も守られると信じる」と言明し、ドル売り・円買いを招いた。また、為替市場では2014年6月以降、長らくドル高が続いてきたが、こうした動きがアメリカ経済にもたらす引き締め効果についてブレイナード理事が講演で残した有名なフレーズがある。

2016年9月12日、『The "New Normal" and What It Means for Monetary Policy』と題した講演でブレイナード理事は「FRB/USモデルの推計に従えば、2014年6月から今年(2016年)1月までのドル相場上昇はアメリカの経済活動にとって、おおむねフェデラルファンド(FF)金利にして200ベーシスポイントの利上げに相当した」と述べた。講演時点の話だが、「ここまでのドル高は利上げ8回分(25ベーシスポイント<=0.25%ポイント>×8)に相当する」と述べ、ドル高に対する警戒感を露わにしたのである。

今年7月以降は明確にドル安が進んでいるのでこの手の発言を警戒すべきではないとも言えるが、当該講演が言及された2016年1月と比較すれば名目・実質実効ベースのいずれにしても今のドル相場のほうが高いのだ。インフレ率も振るわない現状も踏まえれば、遠慮なくドル安に関心を示してくるかもしれない。

ウォール街はブレイナードなら歓迎

片や、ウォーレン議員が反ウォール街の旗手という立ち位置にあることは周知の通りである。ブレイナード理事は為替相場に関連して日本にとっては警戒すべき人選になるが、ウォーレン議員は金融規制強化などをもたらす「金融市場全体にとって最悪の人選」という解釈が大勢である。こうした株安をもたらす人選になるとすれば、やはり円高を招来する材料になる。

人事は水物であり予想してもせんなき事である。トランプ政権の株価至上主義を批判してきた経緯から、バイデン次期大統領は民主党左派へ配慮せざるをえず、ウォーレン上院議員指名の可能性は低くないとも言われている。この場合、金融規制に限らず、経済政策全体が左傾化するリスクがあるため、財政赤字は膨張、「ドルの過剰感」は強まる話になる。その点からも円高リスクであろう。

一方、勝利演説で分断ではなく団結を強調した以上、あからさまに挑発的な人選も控えられるとの期待もある。ブレイナード理事は日本にとってはうれしくない人選でもウォール街に象徴される金融市場にとっては歓迎されるとの下馬評であり、財務次官出身(でかつ女性)という経験も勘案すればベストな人選にも思われる。いずれにせよ、円高を恐れる日本にとってはバイデン次期大統領誕生に並んで重要な政治材料と考えて差し支えないだろう。