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中国がアメリカを抜いて「経済で世界一」になる前に、日本が採るべき路線
1/24(月) 7:32配信
現代ビジネス

 21世紀初頭、国際社会を一国でリードしてきたアメリカは、2022年、もはや一国では中国を封じ込める力を持たなくなっている。そうした中、「価値の同盟」を掲げ、イギリス、オーストラリアに共同行動を呼びかけ、昨年12月には「民主主義サミット」を開催した。が、どうもうまくいっていない。

 イギリスはEU(欧州連合)から離脱し、「グローバル・ブリテン(大英帝国再編)」を目指して、米英の軍事的連携を強めている。オーストラリアも、アジア、オセアニアでアジア人の経済力が拡大する中、米英との同盟強化により存在の再構築を図っている。

 このような現状で、アメリカ、中国、ロシア、北朝鮮などに囲まれた日本は、どのように行動すればよいのだろうか? アメリカとの同盟関係を既定路線と決め込むことなく、今後の日本のアジア政策を考えてみたい。

アメリカ中心の「価値の同盟」
 最大の特徴は、アメリカ・バイデン政権の「価値の同盟」戦略である。アメリカは、2021年6月のG7で「価値の同盟」を打ち出し、トランプ時代の同盟解消を脱し、イギリス・オーストラリア・日本と共に、アジアで強力な軍事再編を行ってきた。

 なぜか? 
 問題は中国の「人権問題」ではない。

 人権問題なら、アメリカの南部警察の黒人射殺、イスラエルのパレスチナに対するミサイル攻撃、ヨーロッパのイスラム嫌悪、日本のヘイトスピーチなど、あらゆる先進国も抱えている。確かに中国において権威主義的な傾向は拡大の予兆を見せるが、中国だけの問題ではない。

 最大の問題は、中国の経済、IT、知力、軍事力すべてにおける強化に対する米欧の警戒感だ。アジアで急速に拡大する新興大国中国に対し、アメリカはもはや一国では中国に対抗できない。だからこそ、「価値の同盟」を表明し、組織化を図っているのだ。

 「価値の同盟」の根幹は3つ、(1)QUAD(クアド)、 (2)AUKUS(オーカス)、(3)ファイブ・アイズ(5つの眼)という諜報網だ。

 ヨーロッパは、長年、メルケルという東ドイツの物理学者の女性をリーダーとすることにより、社会主義対資本主義という思想的分断やロシアの封じ込めを極力避け、旧社会主義体制と西欧諸国との調整役に徹してきた。またEUの経済的強化に向け、新中国政策を図ってきた。 

 イギリスのEU離脱後、グローバル・ブリテンとしてアジア進出を拡大してきたイギリスに対して、欧州最大の軍事大国フランスも、影響力を拡大すべくアジア太平洋に乗り出している。

10年後、アジアで生じる「緊張の激化」

 中国は、早ければ2028年にはアメリカを凌ぎ世界第1位の経済大国になる。インドは2030年には日本を抜いて世界第3位になると言われる(英国の民間調査機関「経済・ビジネス研究センター」CEBR(2020.12.26)、BBC News(12.27)+米国家情報会議(NIC)12月10日に発表した報告書「2030年の世界展望:変貌する世界」)。

 あと10年で中国とインドの時代が始まる。その前にアメリカは、米英豪仏の「価値の(軍事)同盟」でそれを押しとどめようとする計画を掲げている。アジア諸国は少なくとも、アジアでの米欧の代理戦争を避ける決意を表明すべきであろう。

 アメリカの元NATO欧州連合軍最高司令官によるリアル小説『2034』は東アジアの局地紛争が尖閣・台湾・南シナ海のどこかで、もうすぐ起こると予測している。

 もし東アジアで局地紛争が起これば最も被害を受けるのは日本列島である。

日本の「地政学的な危うさ」
世界地図を回転させると、日本の地政学的な位置がわかる。台湾と連携することで、アメリカにとってはロシア・中国・北朝鮮を封じ込める3000キロの要塞、前線基地となる

 日本は、通常の地図で見る限りは大陸の極東に位置する小さな島国であるが、北を直角に西に倒すとその地政学的重要性が一変する。明らかなように、ロシア・朝鮮半島・中国に対し、それらの国々が、太平洋に出るのを遮る、3000Km に及ぶ自然の要塞である(地図を参照)。

 米欧の「価値の同盟」に乗って、アメリカの軍事力の肩代わりを承諾した時、日本列島は、ロシア・中国・北朝鮮の目と鼻の先の最前線で、比喩的な意味ではなく地理的にも、アメリカへのミサイル発射を妨げる(イージス艦で撃ち落とす)位置にあることを認識する必要がある。アメリカが日本を守っているのではない。日本がアメリカを守る構図である。

 それゆえアメリカを守るためにイージス艦を1兆円も払って購入し、日本が中国に対する守りの最前線に立つ必要はない。

 2017年11月、北朝鮮が射程1万3000キロの大陸間弾道弾を装備したことが明らかになった時、アメリカは北朝鮮に「長距離核ミサイル」を爆破させた。これでノーベル平和賞だとトランプ前大統領は豪語したが、現実ではさすがにかなわなかった。

 次いでトランプは、2018年10月には、ゴルバチョフとレーガンが1987年に結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱すると表明した。すなわち北朝鮮から、ワシントンやニューヨークまでを狙えるミサイルを全廃させるとともに、欧州戦争を危惧して結ばれた中距離核戦力全廃条約から離脱することにより、「東アジアでの核戦争はありうる」という事実を容認したのだ。

慎重なインドと積極的な日本

 インドもASEANも中国と国境を接するがゆえに、QUADや AUKUSには批判的である。しかし日本は現在、岸田政権を含めて、アメリカの要請に積極的に従おうとしている。しかしこれらの同盟に加わることは、日本にとって極めて危険である。日本が最前線になりうるからである。

 では中国と結ぶのか。

 中国とは経済・貿易における交流は続ければよい。その際に重要な“同盟”が「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」である。これにより世界の半分近い経済圏が東アジアのリードの下に入る。いずれ欧州もこれに連動する可能性がある。

 一方で、中国と政治的・軍事的に結ぶ必要はない。しかし、中国やロシア、北朝鮮から日本に核ミサイルを撃ち込まれない程度の経済外交関係は維持し続けねばならない。

 米欧の軍艦を無批判に次々と受け入れ、イージス艦を購入し、台湾だけと強い協力関係を結ぶのは極めて危険なことだと、日本のメディアはもっと報道すべきではないだろうか。

 かといって日米同盟を破棄する必要はなく、これは維持したままでよい。現状維持でよいから、QUADに加わって最前線で反中国の立場をとるのではなく、これまで通り、経済は中国・アジア諸国と、政治はアメリカと、是々非々で連携していくべきだ。反中国外交、ましてや反中国軍事同盟に与するのでなく、隣国との経済友好関係を持続しつつ、米欧の軍事同盟からは距離を取ることが日本の利益にかなっている。

 仮に戦争になれば、広大な中国のみならずロシア・北朝鮮三方に対して、日本が一国で守りを固めなければならない可能性もある。その結果、細長く攻撃されやすい日本列島と市民が最大の被害を受けることになる。

 東シナ海に「自由な航行」を主張して駐留するアメリカやイギリスの軍艦が万一攻撃されたとしてもその被害は数千人、他方、日本の大都市や原子力発電所が爆破されれば数十万人の被害が予想され、長期にわたる経済的・社会的停滞を被る。

 核ミサイルが発射されたら、たとえ打ち落としてもその残骸の放射能が日本列島に広範に降り注ぐと、日本学術会議の物理学者は警告している。

  • >>169

    この先、日本はどう動くべきなのか?
     以上のように、2022年現在、バイデンのアメリカは、「価値の同盟」を掲げ、米豪日などと共に米欧の利害と主導権を守るために、中国の軍事的封じ込めを図っている。

     日本はどうすべきだろうか。日本の経済的利益や、安全保障上の危険性などから考えると、米欧が進める軍事同盟には加わらないことが日本国の利益にかなうように思われる。加われば地政学的に、戦争の最前線になる。

     たとえ日米同盟を維持したままでも、現在の米欧の軍事再編に対しては中立を保ち、中国をはじめアジアとは経済的関係、米欧とは政治外交関係というように、双方と交流を続けることは可能であろう。

     軍事同盟に加わらなければ、核ミサイルは打ちこまれない。もしそれに反して大陸から万一核ミサイルを打ち込めば、その国は国際的に非難され孤立する。

     「価値の同盟」に参加する国々は、中国を米欧から締め出し、あからさまに台湾に次々と代表を派遣するという挑発的な行為を繰り返すべきではない。

     アジアにAUKUSのような、アングロサクソンとフランスの軍事力を拡大する軍事植民地主義的メリット(軍事外交による武器販売の利益)を持つ軍事同盟は、アジアの主権をも損なう。

     これに加わらず、ASEANなどアジア諸国とも連携して、中国を含む地域経済圏、RCEPを発展させていくこと、「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定」などに中国やアメリカも招き入れる努力を重ねることが、日本の安定と発展を守るだろう。

     アメリカの軍事的攻勢は、国際的利益を守るという普遍主義というより、中国に追い抜かされる前に中国を抑えようとする自国中心主義的なものであり、1国では対応できないため米欧軍事同盟により抑え込もうとするものである。

     インド、ASEANも危惧している米欧による中国封じ込めと台湾介入による挑発がさらに緊張を生む前に、アジア諸国の連携によって、現状の緊張を緩和し、経済再生を図っていくことが求められている。

    羽場 久美子(青山学院大学名誉教授)