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コラム:アップルに学べ、自動車メーカーの半導体不足解決策
Jonathan Guilford

[ニューヨーク 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 半導体は世界中で不足し、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターなど自動車メーカーは十分な製品を造るのに必要な量が手に入らない状態だ。コロナ禍は原因の1つに過ぎない。自動車メーカーが生産を軌道に戻すためにはアップル、特に「iPhone(アイフォーン)」に学んでサプライチェーン(供給網)に積極関与する必要がある。   

 12月10日、半導体は世界中で不足し、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターなど自動車メーカーは十分な製品を造るのに必要な量が手に入らない状態だ。

半導体不足は自動車メーカーの収益を圧迫し、GM、フォード、BMW、ダイムラーは強い需要にもかかわらず、減産を余儀なくされた。

各社はさまざまな取り組みを打ち出し、自社製半導体の設計を打ち出したメーカーもある。問題の根幹は、自動車メーカーが意思決定を外部に任せる一方、在庫の圧縮や契約期間の短縮を進め過ぎたことにある。

大手自動車メーカーは、部品や製品を直接納入する「1次請け」企業と協力し、高度なレベルにおける部品の仕様を定める。1次請けはメーカーからの要求に沿って半導体の仕様を定め、それを他社に発注する。

つまりメーカーが半導体の性能を熟知しているとは限らないし、半導体メーカーも自動車メーカーのニーズを完全に把握しているわけではない。しかも、受注期間はたいてい短い。他の産業では1年単位が一般的なのに対し、数週間単位の契約が多い。

アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏は、「草葉の陰」で嘆いていることだろう。アイフォーンは最先端のハードウェアとソフトウェアをカスタマイズし、統合したことで圧倒的な勝利を収めた。

アップルは念入りに設計された部品と製造能力を、特定のパートナーから直接調達している。大局的な仕様を示し、あとはサードパーティーに部品作りを任せる体制であれば、決してうまくいかなかっただろう。

調査会社IDCによると、世界的な半導体不足にもかかわらず、アップルは昨年第3・四半期にスマホの出荷台数が前年同期比で20%余り増えた。一方、GMは昨年第4・四半期の販売台数が約43%減少した。

自動車業界のサプライヤーは大手メーカーとの間に距離があり、アップルのように効果的に対応することができない。自動車が技術的に高度になり、GMなどはIT関連サービスから数十億ドルもの収益を見込むようになっているだけに、現状を維持するのはますます難しくなっている。

ただ、状況は変わりつつあるのかもしれない。例えば、フォードは昨年11月に半導体製造のグローバルファウンドリーズとの提携を発表した。もし、自動車メーカーが半導体メーカーと直接、長期契約を結ぶようになれ、半導体メーカーは新しい工場や設計に投資する余裕が生まれる。

事態は動き始めたが、老舗自動車メーカーは電気自動車(EV)大手テスラに追いつこうと競っているのが現状だ。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はジョブズ氏並みの「仕切りたがり」ぶりを見せることがある。

自動車メーカーはアップルからもっと多くを学び、デトロイト方式を減らすべきだ。

●背景となるニュース

*独BMWは昨年4月、半導体不足のために英国とドイツの工場の生産を削減すると発表した。半導体供給不足の問題は7月も続き、BMWは減産を拡大した。7月には米フォード・モーターも半導体不足のために8工場で生産を縮小した。

*米ゼネラル・モーターズ(GM)は昨年10月、半導体不足による生産落ち込みの影響が業績に及んだと発表した。需要に十分に応じるだけの生産ができなかったという。

*フォードは昨年11月、半導体製造のグローバルファウンドリーズとの戦略的な提携を発表した。半導体の供給確保が狙い。同じ日にはGMのマーク・ルース社長も、半導体供給不足に対応するため複数の半導体メーカーと協力する計画を明らかにした。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)