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【来週の注目材料】米物価上昇傾向は継続か~米消費者物価指数
8/7 17:10 配信

 11日に7月の米消費者物価指数(CPI)が発表されます。米国のテーパリング開始期待が広がる中で、雇用と並んでカギを握る物価に対しても注目が集まっています。

 前回6月のCPIは事前予想の前年比+4.9%を大きく上回る+5.4%に、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアCPIの前年比も事前予想の+4.0%を大きく上回る4.5%となりました。
 米国のインフレターゲットの対象は日本やユーロ圏などほとんどの国で採用されているCPIではなくPCEデフレータですが、同系統の指標ということもあり変化傾向は似ています。7月30日に発表された6月のPCEデフレータは前年比4.0%、コアPCEデフレータは3.5%とこちらもかなりの高水準に。インフレターゲットである2.0%を大きく上回った状況が続いています。

 パウエルFRB議長はこうした状況について、アフターコロナの景気回復による一時的なものであるという姿勢を崩していません。先月27日・28日に開催されたFOMCを見ても、声明では物価の上昇について「概ね一時的要因を反映」と表現。FOMC後の議長会見では「インフレの大半は経済再開に関連する一時的な要因」「インフレは時間の経過とともに低下する」と、今後物価は落ち着いていくという姿勢を改めて強調しました。

 ただ、議長会見の中で「インフレが目標を持続的に上回った場合は手段を使用」と、今後も持続的に物価上昇が続くようだと、対応を行う可能性を示しました。地区連銀総裁を中心にFOMCメンバーの中からも直近の物価上昇に対して警戒感が強く示されており、議長としてもある程度の配慮が必要であったものと見られます。

 こうした状況を受けて、物価上昇がどこまで続き、今後どこまで高まってくるのかが注目されています。2か月続けて5%台という直近の状況に対するインパクトもあり、今後も物価上昇傾向が続くようだと、早期のテーパリング期待などにつながってくるとみられます。

 前回のCPIの内訳を見てみましょう。もっとも大きく伸びたのは「中古車・トラック」で前年比+45.2%。続いてガソリンの+45.1%となります。また、航空運賃の+24.6%、自動車保険の+11.3%なども目立ちます。ガソリンは原油価格の影響もありますが、総じて移動関連の費用拡大。パウエル議長が一時的とした理由もこの辺りにありそうで、行動制限緩和もあって一気に人やモノの移動が活発化し、抑えられていた価格が跳ね上がっている状況が見られます。

 ただ6月半ば以降にNY州やカリフォルニア州といった人口の多い州での行動制限緩和が進んだこともあり、7月も同傾向が強まっていると見込まれます。
 今回の事前予想は前年比+5.3%、コア前年比+4.3%と、前回から若干の伸び鈍化もかなりの高水準に。3か月連続での前年比5%を超える物価上昇は、社会生活にも影響が大きくなることから、地区連銀総裁などからの警戒感が一層強まると見込まれます。

 議長は、物価は当面高い水準で推移するという見方を示しており、落ち着くとしても、もう少し先という見通しを示しているだけに、今回強めの数字が出てきても、すぐに緩和姿勢を後退させるという可能性が低いですが、テーパリングに向けた圧力が高まったという印象は強まります。事前予想を超えて、前回以上の物価上昇を示すと、そうした圧力はかなりのものになると見込まれますので、ドル買いの大きな材料になる可能性があります。

MINKABU PRESS 山岡和雅