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キヤノン(株)【7751】の掲示板 2024/05/07〜

キヤノン電子管デバイスと量子科学技術研究開発機構(QST)は10日、核融合発電炉に使う中核装置を報道陣に公開した。日米欧などがフランスで建設中の実験炉プロジェクト向けに出荷する。気候変動やエネルギー安全保障上の重要技術で、日本勢も基幹装置で存在感を高めている。

核融合発電は原子の核同士が合わさる際に出る膨大なエネルギーで発電する。太陽の内部で起きているのと同じ仕組みを応用する。二酸化炭素(CO2)を出さないために次世代のエネルギー技術として、各国が技術開発を急いでいる。

QSTの那珂フュージョン科学技術研究所(茨城県那珂市)で核融合発電に用いる「ジャイロトロン」と呼ばれる中核装置2機を公開した。

ジャイロトロンは核融合反応を起こすために、セ氏1億度以上の高温状態をつくりだす役割を担う。電子レンジのようにマイクロ波を発生させて加熱する仕組みで、装置の全長は約3メートルだ。出力電力は電子レンジの2000倍に相当する。1990年代から共同開発してきた。

ジャイロトロンの開発では、日本が世界的に高い存在感をもつ。日米欧などがフランスで建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)では、日本勢が全体の3分の1にあたる8機のジャイロトロンを納める。キヤノン電子管とQSTは21年までに8機の製造を終え、

順次出荷してきた。6機は既に納入済みで、2024年末に最後の2機を出荷する計画だ。

日本はエネルギーの自給率が低く、海外から輸入する石油や石炭などの化石燃料への依存度が高い。核融合発電の燃料である水素は海水から取り出すことができるため、実用化できれば脱炭素への対応やエネルギー安全保障上の切り札になる可能性を秘める。政府は23年に同分野初となる国家戦略を策定し、産業育成に向けてアクセルを踏む。

同日、説明会を開いたキヤノン電子管の豊田一郎電力管技術部長は「核融合発電への関心が高まり、若いエンジニアも入っている。人材を確実に育てて、技術をつなげていきたい」と話した。

核融合発電ではジャイロトロンの他にも、日本のものづくり技術が強みを発揮できる分野は多い。中核部品の1つである超電導コイル「トロイダル磁場コイル」は、三菱重工業や三菱電機、東芝も製作を担う。核融合の効率を高めるために必要な磁場を発生させる部品で、総重量は約310トンに及ぶ一方で、数ミリレベルの精度が求められている。

英政府によれば、核融合の将来の市場規模は約520億~1670億ポンド(約10兆〜32兆円)に広がる見通し。官民が一体となって巨大市場を取り込めるかが問われる。