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碧い光に誘われて
1552に飛び込んだ蟲たちの運命…………
【誘蛾灯(1552)物語/最終章】


ばちっ。
少し大きな音がして、視線を移せば、白い光の周りを虫(ロンガー)が飛んでいた。

――今のは、虫が死んだ音だろう。

暑い夏の日。
つっと肌を伝う汗をぬぐいながら、その白い光よりももっと明るいコンビニの店内に眼を細める。彼はわずかに肩をすくめて、ふと思い出していた。――笑いながら語る友人の顔だ。

(――要するに、飛んで火に入る夏の虫っていうのはよ、『夏の虫』を嘲ってる諺なわけだ。だってそうだろ?

火に入った虫は死ぬしかないからな。――だけど俺はこう思うわけだ。火に入っていく虫って言うのは、たぶん……)

ばちっ。
思考を遮る、大きな音が鳴った。白い光に近づいていくと、足元に大きな蛾が痙攣して落ちていた。
「……知っていたのか」
 我知らず呟きが漏れた。
「……死んでいく蛾は、知っているのか?」

(――たぶん、知っているんだよ。白い光(1552)に入れば死ぬってことを。でも入らずにはいられないんだ。

何故かって……入らなければ、自分が生きていることを否定することにもなりかねないからさ)

冗談交じりのその言葉が今になって引っかかるなんて。

(――だってそうだろ? 自分で自分を否定しながら生きていくのと、自分の生き方を貫いて死んでいくのと――どっちが幸せだと思う?)

『それ』は単なる死体に過ぎなかった。
『それ』が生前浮かべていた、皮肉にも見えた自信たっぷりの笑みも。
『それ』が言った全ても嘘のようにその苦しげな顔に否定されて。

「あんたは、知っていたのか……?」

彼はぶつぶつと呟きながら、小さな痙攣すらも無くなった蛾の死体を拾い上げた。

ぼろ、と羽が崩れ落ちて、羽を失った体が手のひらの上に残った。

ばちっ。
また音が鳴った。知っているのだろうか。知っていたのだろうか。これから死んでいく虫と。既に死んでしまった虫と。
……それらは自分が死ぬことを、知っているのか。また、知っていたのか。

それならばもしかしたら愚かなのは、こんな白い光を用意した、『虫(ロンガー)』を馬鹿にする『人間(三🔴UF🔴国🔴投信)』の方では。

蟲(ロンガー)たちは、いずれいなくなる…………

静かに、ひっそりと…………

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