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HEROZ(株)【4382】の掲示板 2019/05/11〜2019/06/14

日本経済新聞より。

将棋の名人を倒した人工知能(AI)が、株式市場に挑む。東証マザーズ上場のHEROZは500万人の将棋ファンをとりこにしたアルゴリズムを武器に、金融や建設の大手と相次ぎ提携。B2B(産業向け)サービスで次の一手を打つ。
セブン&アイ・ホールディングスの株を買おうと思ったら、ねじ専門商社の小林産業と主要空港の冷暖房などを手掛ける空港施設の株も一緒に購入するよう提案された。
SMBC日興証券のAIによると、全く無関係に見えるこの組み合わせが、利用者のリスク許容度を満たしつつ最も収益性の高いポートフォリオなのだという。同社は3月、利用者一人ひとりに合わせた運用方法を自動的に提案する「AI株式ポートフォリオ診断」を開始した。
支えるのが、HEROZが将棋ゲーム向けに開発した独自のAIだ。プロの棋士が数十手先を読むように「約3600銘柄の10年分の決算データや株価推移を基に、1カ月先の期待収益性を予測する」と、林隆弘最高経営責任者(CEO)は説明する。SMBC日興との実証実験では、AIの提案に従って毎月ポートフォリオを変更した約7割の利用者は、変更しなかったケースよりも収益率を高められた。
林氏は1999年にNECに技術開発職として入社し、2009年に同僚とHEROZを立ち上げた。試行錯誤を重ねる中でたどり着いたのが、自らもアマ六段の腕前を持つ将棋だった。
有段者のエンジニアを集め、12年にオンライン対戦ゲームの「将棋ウォーズ」を提供した。機械学習やディープラーニング(深層学習)などの技術を活用し、対戦するAIが次第に賢くなるのが特徴だ。1兆局面以上を学習したAIの「Ponanza(ポナンザ)」は17年に佐藤天彦名人に勝利し、人間のトップ棋士を上回る実力を証明した。
18年4月に東証マザーズに上場すると3営業日にわたって初値が付かないほどの人気となった。ブームは一服したが5月10日時点でも約900億円の時価総額を保つ。
ただし成長速度は、上場1年目のスタートアップとしてはやや物足りない。19年4月期の売上高は前の期比12.5%増の13億円、営業利益は同12.9%増の4億円の見通しだ。日本の将棋人口は約700万人とされるが、将棋ウォーズの会員数は500万人を超えた。ゲーム頼みでは、成長を続けるのは難しい。
そこでHEROZはB2Bサービスを事業の柱に据える。SMBC日興との提携はその象徴だ。金融分野ではマネックス証券とも協業。投資家の売買の傾向をAIで解析し、投資技術の向上を支援するサービスを提供する。建設分野では竹中工務店と組み、構造設計をAIで効率化する。
目下の課題はAI人材の確保だ。45人いる社員のうち、約30人が開発者だが「国内では思うように採用できない」と林氏は明かす。国内のスタートアップとの人材争奪戦が激しさを増している。
スマホ向けゲームで急成長した後、次の舞台としてB2B事業に展開するスタートアップは数多い。だが成功例はごくわずかだ。HEROZが成長の天井を打ち破るには、競合が思いつかなかったような「次の一手」が必要だ。(井原敏宏)