投稿一覧に戻る ソニーグループ<6758>の掲示板 3 hardWorker 2022年1月29日 20:48 開発責任者「テスラは参考にするが模倣しない」 ソニーのEV、「プレステ」「aibo」との意外な共通点 佐々木 亮祐:東洋経済 記者 /木皮 透庸:東洋経済 記者 2022.01.29 試作車の初公開から丸2年。販売を本格検討するソニーの真意はどこにあるのか。開発トップである川西常務を直撃した。 1月上旬、アメリカ・ラスベガスで開催された世界最大のテクノロジー見本市「CES 2022」。そこで、ソニーグループの吉田憲一郎社長は「ソニーのEV(電気自動車)の市場投入を本格的に検討する」と発表した。 2020年のCESでソニーが開発したEV「VISION-S(ビジョンエス)」の試作車を公開してから丸2年。この間、どのように開発を進め、ビジョンエスはどのように進化したのか。開発の指揮を執るソニーグループの川西泉常務を直撃した。 ビジョンエスは「ショーケース」 ――ソニーのスマートフォン「Xperia」は完成品自体でそこまで稼いでおらず、それに使われる部品の1つであるイメージセンサーで稼いでいます。ビジョンエスも、完成車は出すけども、別の部分で稼ぐ可能性はありますか。 ビジョンエスの位置づけは、ソニーブランドをモビリティの世界できちんと示すことだ。 イメージセンサーを車載で使っていただくのは大きなビジネスになる。その“ショーケース”として、具体的な事例として示すのがビジョンエスだ。おそらく今のXperiaも同様の意味合いは少なからずあるだろう。 ひいてはプレイステーションもそうだ。本体は当社のハードウェアだが、ソフトウェアは(ソニーグループのゲーム事業子会社の)SIEも出すし、ほかのゲームソフト会社も出している。ハードウェアを起点として、エコシステムを作っていくことに重きがある。 ――プレイステーションといえば、本体は採算割れギリギリの価格で販売し、その後ソフトウェアや月額制有料会員サービスで稼ぐビジネスモデルです。 当社が販売しているaiboでも、買った後にユーザーに楽しんでもらう月額制サービスを提供している。(いずれは)自動車もハードウェアの売り切りで(顧客が)高い、安いと判断する時代ではなくなるのではないか。 (自動車も)顧客が購入した後の楽しみ方を考えるフェーズに移っている。ビジョンエスも販売後に付加価値を提供していき、トータルでビジネスを構築していきたい。顧客にその価値を認めていただけるかどうかがカギになる。 ユーザーとのダイレクトな関係を築き、ユーザー体験を向上し続ける。これはプレイステーションであれ、aiboであれ、ビジョンエスであれ、変わらない。顧客との結びつきに関しては、これまでのソニーの価値観を維持していきたい。 Flourish logoA Flourish data visualization ――ビジョンエスを一般販売するときの価格や投入時期はどう考えていますか。 ビジョンエスには先端のIT技術を投入するため、現実問題としてあまり安い価格にできない。価値を認めていただける顧客に、それなりの価格を提示することになる。もちろん、なるべく安くする努力はしたい。 投入時期については、はっきりと言えないが、新興勢力も次々に出てきて、EV化のスピード感が増している。そうした時代の要請にきちんと対応していきたい。 2年前から進化した3つのポイント ――「量産の予定はない」との方針を転換して、量産車を一般消費者向けに販売することを本格検討します。なぜ方針を転換したのですか。 2020年のCESで試作車を発表して以来、開発や検討を進めてきた。一般販売に向け、まだすべてクリアできたわけではないが、EVとして商用化を検討するに値するレベルになった。 2年前から進化した部分は大きく3つある。1つがイメージセンシングの技術だ。(これまでスマートフォンなどに多く使われてきたが)モビリティへの適用の可能性が広がった。 加えてネットワーク。今後、自動車がネットワークに接続することは大前提になる。5G通信のネットワーク網も含めた、ネットに繋がった世界での技術の可能性が広がった。最後に、もともとソニーの強みでもあるエンターテインメントの部分も進化した。 ――この2年間、最も力を入れて開発した部分はどこですか。 全体的なボトムアップを続けてきた。とりわけ「走る、曲がる、止まる」という車の基本動作はソニーの中に知見がなかったので、地道に勉強して開発してきた。 既存の自動車産業のサプライヤーが構成する車の作り方に対して、ソニーならどういう組み立て方ができるのか。これまでメカニカル(機械的)に制御されていた部分が、EVではソフトウェアによる電子制御が増えていく。 技術的にはまだまだ伸びしろがあり、ソニーとしてもやるべきことはたくさんある。われわれが持つIT技術とかけ合わせて、どう車を進化させられるか。そうした議論を協力会社と重ねてきた。 ――試作車は自動車受託生産大手のマグナ・シュタイヤー(オーストリア)に委託しましたが、マグナ社の生産キャパシティはそれほど大きくありません。量産にあたって、どのような会社と提携していきますか。 やはり、車としての完成度を維持できること。走る、曲がる、止まるをきちんと担保して、安心して乗れるということ。そこの実現性をよく見極めていきたい。 2020年のCES以降、世界中のさまざまな自動車メーカーから話をいただいており、実際に話を進めているところもある。サプライヤーやIT系の会社、ほかのサービス事業者からも、ありがたい話をいただいている。 ――車内空間でのエンターテインメントを楽しむとなると、システムが運転の主体となる自動運転レベル4、5の世界になります。 現実的にみると、そこに行き着くにはまだ時間がかかるだろう。先端技術のレベル4や5の可能性は当然大事だが、今の(人の運転をシステムが支援する)レベル2以下のADAS(先進運転支援システム)でも交通事故はたくさん起きていて、まだ課題がある。 目下起きている交通事故を減らす、なくすことに対しても、ソニーのセンサー技術でまだまだ貢献できる。理想と現実の両面を追っていきたい。 ソニーらしいやり方を模索する ――EV専業で最大手のテスラが、2021年の販売台数が93万台と、ほぼ100万台メーカーになりました。川西さんはテスラをどうみていますか。 テスラも創業から20年近く経っていて、いろいろ苦労してきたと思う。1つの自動車ブランドを立ち上げるにはそれぐらい時間がかかる。そういう意味では決して簡単ではない。テスラを参考例として注視はしているが、模倣する気はない。ソニーとしての新しいやり方を考えていきたい。 EV化のトレンドがなかったら、おそらく当社も参入していない。少なくとも、エンジンやトランスミッションを今から頑張る気にはなれない。 ――あらためて、ソニーグループ全体にとって、今回のEV参入表明にどのような意義がありますか。 ビジョンエスは、今手がけている事業領域、すなわちコンシューマーエレクトロニクス、半導体、ゲーム、映画、音楽、金融と、すべての出口になっている。もっともシナジーを出しやすい領域がモビリティだった。ソニーの技術力を示すブランドアイコンにしていく。 返信する そう思う1 そう思わない12 開く お気に入りユーザーに登録する 無視ユーザーに登録する 違反報告する ツイート 投稿一覧に戻る
hardWorker 2022年1月29日 20:48
開発責任者「テスラは参考にするが模倣しない」
ソニーのEV、「プレステ」「aibo」との意外な共通点
佐々木 亮祐:東洋経済 記者 /木皮 透庸:東洋経済 記者
2022.01.29
試作車の初公開から丸2年。販売を本格検討するソニーの真意はどこにあるのか。開発トップである川西常務を直撃した。
1月上旬、アメリカ・ラスベガスで開催された世界最大のテクノロジー見本市「CES 2022」。そこで、ソニーグループの吉田憲一郎社長は「ソニーのEV(電気自動車)の市場投入を本格的に検討する」と発表した。
2020年のCESでソニーが開発したEV「VISION-S(ビジョンエス)」の試作車を公開してから丸2年。この間、どのように開発を進め、ビジョンエスはどのように進化したのか。開発の指揮を執るソニーグループの川西泉常務を直撃した。
ビジョンエスは「ショーケース」
――ソニーのスマートフォン「Xperia」は完成品自体でそこまで稼いでおらず、それに使われる部品の1つであるイメージセンサーで稼いでいます。ビジョンエスも、完成車は出すけども、別の部分で稼ぐ可能性はありますか。
ビジョンエスの位置づけは、ソニーブランドをモビリティの世界できちんと示すことだ。
イメージセンサーを車載で使っていただくのは大きなビジネスになる。その“ショーケース”として、具体的な事例として示すのがビジョンエスだ。おそらく今のXperiaも同様の意味合いは少なからずあるだろう。
ひいてはプレイステーションもそうだ。本体は当社のハードウェアだが、ソフトウェアは(ソニーグループのゲーム事業子会社の)SIEも出すし、ほかのゲームソフト会社も出している。ハードウェアを起点として、エコシステムを作っていくことに重きがある。
――プレイステーションといえば、本体は採算割れギリギリの価格で販売し、その後ソフトウェアや月額制有料会員サービスで稼ぐビジネスモデルです。
当社が販売しているaiboでも、買った後にユーザーに楽しんでもらう月額制サービスを提供している。(いずれは)自動車もハードウェアの売り切りで(顧客が)高い、安いと判断する時代ではなくなるのではないか。
(自動車も)顧客が購入した後の楽しみ方を考えるフェーズに移っている。ビジョンエスも販売後に付加価値を提供していき、トータルでビジネスを構築していきたい。顧客にその価値を認めていただけるかどうかがカギになる。
ユーザーとのダイレクトな関係を築き、ユーザー体験を向上し続ける。これはプレイステーションであれ、aiboであれ、ビジョンエスであれ、変わらない。顧客との結びつきに関しては、これまでのソニーの価値観を維持していきたい。
Flourish logoA Flourish data visualization
――ビジョンエスを一般販売するときの価格や投入時期はどう考えていますか。
ビジョンエスには先端のIT技術を投入するため、現実問題としてあまり安い価格にできない。価値を認めていただける顧客に、それなりの価格を提示することになる。もちろん、なるべく安くする努力はしたい。
投入時期については、はっきりと言えないが、新興勢力も次々に出てきて、EV化のスピード感が増している。そうした時代の要請にきちんと対応していきたい。
2年前から進化した3つのポイント
――「量産の予定はない」との方針を転換して、量産車を一般消費者向けに販売することを本格検討します。なぜ方針を転換したのですか。
2020年のCESで試作車を発表して以来、開発や検討を進めてきた。一般販売に向け、まだすべてクリアできたわけではないが、EVとして商用化を検討するに値するレベルになった。
2年前から進化した部分は大きく3つある。1つがイメージセンシングの技術だ。(これまでスマートフォンなどに多く使われてきたが)モビリティへの適用の可能性が広がった。
加えてネットワーク。今後、自動車がネットワークに接続することは大前提になる。5G通信のネットワーク網も含めた、ネットに繋がった世界での技術の可能性が広がった。最後に、もともとソニーの強みでもあるエンターテインメントの部分も進化した。
――この2年間、最も力を入れて開発した部分はどこですか。
全体的なボトムアップを続けてきた。とりわけ「走る、曲がる、止まる」という車の基本動作はソニーの中に知見がなかったので、地道に勉強して開発してきた。
既存の自動車産業のサプライヤーが構成する車の作り方に対して、ソニーならどういう組み立て方ができるのか。これまでメカニカル(機械的)に制御されていた部分が、EVではソフトウェアによる電子制御が増えていく。
技術的にはまだまだ伸びしろがあり、ソニーとしてもやるべきことはたくさんある。われわれが持つIT技術とかけ合わせて、どう車を進化させられるか。そうした議論を協力会社と重ねてきた。
――試作車は自動車受託生産大手のマグナ・シュタイヤー(オーストリア)に委託しましたが、マグナ社の生産キャパシティはそれほど大きくありません。量産にあたって、どのような会社と提携していきますか。
やはり、車としての完成度を維持できること。走る、曲がる、止まるをきちんと担保して、安心して乗れるということ。そこの実現性をよく見極めていきたい。
2020年のCES以降、世界中のさまざまな自動車メーカーから話をいただいており、実際に話を進めているところもある。サプライヤーやIT系の会社、ほかのサービス事業者からも、ありがたい話をいただいている。
――車内空間でのエンターテインメントを楽しむとなると、システムが運転の主体となる自動運転レベル4、5の世界になります。
現実的にみると、そこに行き着くにはまだ時間がかかるだろう。先端技術のレベル4や5の可能性は当然大事だが、今の(人の運転をシステムが支援する)レベル2以下のADAS(先進運転支援システム)でも交通事故はたくさん起きていて、まだ課題がある。
目下起きている交通事故を減らす、なくすことに対しても、ソニーのセンサー技術でまだまだ貢献できる。理想と現実の両面を追っていきたい。
ソニーらしいやり方を模索する
――EV専業で最大手のテスラが、2021年の販売台数が93万台と、ほぼ100万台メーカーになりました。川西さんはテスラをどうみていますか。
テスラも創業から20年近く経っていて、いろいろ苦労してきたと思う。1つの自動車ブランドを立ち上げるにはそれぐらい時間がかかる。そういう意味では決して簡単ではない。テスラを参考例として注視はしているが、模倣する気はない。ソニーとしての新しいやり方を考えていきたい。
EV化のトレンドがなかったら、おそらく当社も参入していない。少なくとも、エンジンやトランスミッションを今から頑張る気にはなれない。
――あらためて、ソニーグループ全体にとって、今回のEV参入表明にどのような意義がありますか。
ビジョンエスは、今手がけている事業領域、すなわちコンシューマーエレクトロニクス、半導体、ゲーム、映画、音楽、金融と、すべての出口になっている。もっともシナジーを出しやすい領域がモビリティだった。ソニーの技術力を示すブランドアイコンにしていく。