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運用会社と「規模の経済」

米国では投資信託のフィーが不当に高いといって投資家が訴訟を起こす。原告のよりどころは運用会社の受託者責任を定めた法令だ。「空気」で運用報酬が下がる国に住んでいると、何も訴訟までして争わなくてもと思うが、最近日本にも「最善の利益」という法文ができたので、全くのひとごととは言いきれない。

米国の話で興味深いのは、多くの判例を経て絞られた争点の一つが「規模の経済」であることだ。通常、運用会社の収入は残高とともに増えるが、運用にかかる費用は比例的に増えるわけではない。乱暴に言えば、運用額が100億円から1千億円に増えても費用は10倍にはならない。ここに規模の経済の利益が生じる。

運用会社が規模の経済による利益を投資家と分かちあっているか検証するために、法廷では費用の詳細などが吟味される。ただし、立証責任は原告側にあり、これまでに勝訴した例はないそうだ。

規模の経済の一方で、運用には「規模の不経済」もある。ファンドが大きくなりすぎると市場で身動きが取りづらくなり、優れた運用者でも成績が伸び悩む。規模の不経済が働き始めると運用担当者は募集を止めたくなる。しかし営業部門はまだ残高を集めたい。海外ではこうしたジレンマをよく見聞きする。

規模の経済を目指すのが運用会社の利益最大化戦略だとすれば、規模の不経済を避けるのは品質管理に当たる。そのはざまで最適な規模を探ることは多くの業界に共通する経営原理だ。運用会社のトップには運用実務経験者を、とはよく言われることだが、合理的な組織であれば原理の実践には必ずしもトップの運用経験を要しないだろう。

国内運用業界は概して訴訟や不経済を生む規模とは無縁だから、こうした心配をするには及ばない。それが喜ぶべきことかどうかは別として。