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大谷翔平「変えないようにすることが変えたこと」の真意

いつものように仮説を立てて、そのデータ的な裏付けをとる作業を始めたわけではない。偶然といえば、偶然。大谷翔平(ドジャース)について別のことを検証していたところ、面白い現象が浮かび上がった。

きっかけは、4月16日のナショナルズ戦である。

大谷はその試合で5打数2安打だったが、凡退した3打席はいずれも走者を得点圏に置いていた。前日までの得点圏打率は16打数1安打で0割6分3厘。開幕戦以来、タイムリーがなかった。

「チャンスに強い」「チャンスで打てない」。この議論そのものは、統計学を用いて様々な選手評価を行うセイバーメトリクスの世界では、〝存在しない〟ということになっている。

今季の大谷のケースに限って言えば、単純にサンプルが少ない。また、ある年は得点圏打率が3割を超えていても、その継続は容易ではない。打席数を重ねれば、結局は実力相応の数字しか残らない。様々な考え方を紹介すればきりがないが、ざっくりまとめれば、そういう結論になる。

よって、16日の試合前にそのことをメディアから指摘されたドジャースのデーブ・ロバーツ監督も「サンプルが少ない」と一蹴している。

  • >>6276

    ただ、あの日の3打席はいずれも初球を打って凡退だった。すると試合後、ロバーツ監督は、「翔平はもともとアグレッシブな選手だが、スーパーアグレッシブだった。ちょっと(本人と)話をする」とトーンを変えた。

    19日、MLBネットワークのラジオ番組に出演した監督は、「投手はピンチになれば際どいところに投げる。打者はストライクゾーンを広げる傾向がある。相手は翔平の積極的な性格を知っているので、それを利用しようとする」と、暗に大谷がボール球を振らされていると指摘した。「もう少し耐えれば、相手もミスをする」

    初球から難しい球に手を出す必要はなく、際どい球を見極めてミスを待つ。それを捉えろということだが、違和感が残った。打った3球はいずれも真ん中付近。相手のミスといってもよかった。

    もっとも翌20日の試合後、監督からどんなことを言われたのかと問われた大谷は、「単純にゾーンが広がっている」と監督がラジオで話した発言をなぞった。

    「アグレッシブなのが悪いとかではない。ゾーンが広がっているというところで、スコアリングポジション(得点圏)ではない場面というのは比較的しっかりできているので、そこを継続していこう、ということですね」

  • >>6276

    大谷が認めたことで、チャンスでボール球に手を出している。だから、得点圏打率が低いーーということで落ち着いたが、大谷はこうも話している。

    「特に変えないようにするのが、変えたこと」

    逆説的な言い方が、どこか引っかかった。ということでデータの確認を試みた。ポイントは2つ。初球打ちを控えるよう具体的に言われたのか。そもそも、本当に得点圏でボール球を振っているのか。

    初球打ちそのものは、これも得点圏打率と同じように考えるべきかもしれないが、サンプルの少ない2020年を除けば、ずっと彼の長所となっていた。

    通算では4割を超えている。ということは、大谷の積極性に縛りをもうけることは、もろ刃の剣となりうる。

    かつてこんなことがあった。2004年4月、イチロー(現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)は、開幕から低迷した。その頃の相手もイチローの積極性を利用し、「初球はボールくさい球」がセオリーになっていた。チームは「それを振る必要はない。見逃せば1ボールから打席が始まるのと同じ」というロジックでイチローを説得した。つまり、「初球は振るな」と。もちろん、イチローも納得した上で受け入れている。

    「ある程度たくさんの投手を見させてもらって、リスクを冒して1球目から攻撃しなくてもいいと考えられる投手もたくさんいるわけですよ」

    さらにこう説明している。

    「つまり、1ストライクと追い込まれてからでも、十分対応できる投手っていうのはいますから。その人たちに対して、1球目から……もちろんチャンスもあるんだけど、そこでリスクを冒す必要性というのはだんだん少なくなってきたんですよ、僕の中では」

  • >>6276

    しかし、初球を打つなという足かせは、マイナスの方が大きかった。4月の打率が.255、出塁率.309に低迷すると、球団は指示を撤回した。5月から本来のアプローチに戻したイチローはその後、ヒットを量産し、メジャーの年間最多安打記録を更新している。

    余談が長くなったが、初球に関して、大谷にどんな指示があったのか。

    19日のメッツ戦。1対4と3点をリードされて迎えた五回2死一、二塁の場面で打席に立った。ロバーツ監督と話し合いをしてから初めての得点圏である。どうアプローチするのか。初球はストライクでも見送るのか。

    様々な思いを巡らせながら見つめていると、大谷は左腕のショーン・マナイアが投じたスライダーをフルスイング。結果は空振りだったが、初球には制限がかかっていないことがわかった。ストライクだったとはいえ、さすがに昨日の今日。なにか言われていたら、大谷でも自重するのではないか。ドジャースもそこまで踏み込まなかったということだろう。

    ということは、やはりボール球に手を出しているから、得点圏で打てないのか。16日の3打席は例外なのか。

  • >>6276

    翌20日、3点を追う六回1死満塁の場面で大谷は、内角のカットボールを振って三振を喫した。見逃せば明らかなボールで、大谷も「あそこは、テイクする(見逃す)のがベストな反応だった」と口にしている。「せめてファウルっていうのが理想」

    ただ、今年の大谷を見ていると、そこまでボール球を追いかけているイメージがない。20日の試合後、走者が得点圏にいる場面といない場面でのボール球を振る確率を調べてみると、こういう結果になった。

    ・得点圏 28.8%

    ・走者なし/走者一塁  29.5%

    ほとんど差がない。むしろ、得点圏の数値の方がわずかながら低い。よってストライクゾーンを広げているから、という解釈は成り立たない。

    参考までにSTATCAST(ホークアイを用いた大リーグ独自のデータ解析ツール)のデータを検索できる「Baseball Savant」を利用して、得点圏でボール球に手を出したコースを確認してみた。絞り込むことで、見えるものもある。

    すると実際、別のことが見えてきた。図1を見ると、得点圏では外角低めのボール球に全く手を出していないことがわかる。得点圏に走者がいない場合も調べてみると、1球を除いて結果は同じだった。

    ちなみに昨年はどうだったのか? 走者に関係なく、外角低めのボール球だけに絞り、どれくらい振ったかデータを抽出すると、こういう結果になった。

  • >>6276

    やはり、かなり振っている。 右投手ならチェンジアップ、左投手ならスライダーを外角低めに集めることで、大谷に追いかけさせていた。そのコースに絞ってスイングする確率を計算すると、昨年は16.3%。今年は20日試合終了時で0.5%だった。まだ4月ではあるものの、今季の高打率や三振の少なさは、こうしたデータからも裏付けられそうだ。

    先述した19日のマナイアとの対戦。2球目は際どいコースだったが、外角低めに外れるスライダーを見送った。4球目、ほぼ同じコースにスライダー。やや内側で、見逃せばストライクと判定されたかもしれない。しかし、その球はファウルで逃げた。

    翌日、マナイアが振り返っている。

    「あの4球目で仕留めたかった」

    結局、チェンジアップを1球挟んで、6球目のスライダーを大谷は右前に運び、開幕戦以来の適時打を記録した。初球のアプローチも含めて「特に変えないようにするのが、変えたこと」と話したことの答え合わせのような打席だった。