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時代遅れの物価予測、英中銀は刷新を バーナンキ氏指南

英イングランド銀行(中央銀行、BOE)が経済予測手法の点検のために招いた元米連邦準備理事会(FRB)議長のバーナンキ氏は12日、報告書をまとめ公表した。経済予測のあり方だけではなくインフラや人事制度といった中銀組織の運営体制の弱点も指摘。急速なインフレに対応しきれなかった「全ての中央銀行の予測プロセスとその活用を見直す強い動機となる」と述べた。

「報告書の内容に驚きはあまりない。しかし、興味深いのは、バーナンキ氏が『重大な欠点』『深刻な時代遅れ』 のテクノロジーだなどと強い言葉を使っていることだ」。ラボバンクの英国担当エコノミスト、ステファン・クープマン氏は「これはイングランド銀行が過去10年ほどの間、指導力に問題があったことを示している」という。

バーナンキ氏の報告書は全86ページに上った。現在の英中銀が導入している経済予測モデルは「COMPASS」と呼ばれている。バーナンキ氏はこれを「置き換えるか、少なくとも全面的に見直す」必要性に言及した。伝統的な経済予測モデルは、物価や賃金がゆるやかにしか調整しないという仮定が含まれ、「長期的なインフレ期待が2%に固定されるとの前提を置いている」などと指摘している。

  • >>5962

    市場が注目していたのは市場とのコミュニケーション手法の見直しだ。現在、英中銀は市場が織り込む金利予測を元にした扇形の「ファンチャート」でインフレ予測を示している。「1996年に始まった時は目新しかったが、今は民間金融機関が手元でも作れる。何の役にも立っていない」といった声がトレーダーらからは聞かれていた。バーナンキ氏はこのチャートを「有益な情報をほとんど伝えておらず廃止すべきだ」とした。

    代わりに、英中銀独自の見通しを示すことを検討するように提言した。見通しに加え、様々なリスクの可能性を踏まえて複数のシナリオを公表することを推奨した。中銀は報告書を受けて年内をメドに新たな手法を決める。

    中銀の市場とのコミュニケーションツールとしてはFRBが米連邦公開市場委員会(FOMC)で示す「ドットチャート」が代表例だ。FOMCのメンバーがそれぞれ予測値を点描で示す。この方式を12年に導入したのが当時FRB議長のバーナンキ氏だったことで、今回も導入の是非が注目された。

    ドットチャートの開示については賛否がある。「メンバーが考える幅を示すことでいろいろなシナリオがあることを示すことができる」(エコノミスト)といった半面、「メンバーの個別予想を示すFRB形式のドットを提供することは情報が多すぎる」(JPモルガンのエコノミスト、アラン・モンスク氏)との意見も少なくない。モンスク氏は、米地区連銀総裁はそれぞれで独自のスタッフを持つが、英金融政策委員のメンバーは全員が共通のスタッフに依存することになる点も指摘する。

    FOMCには、議長や理事に加え12の地区連銀が参加する。地区連銀総裁で投票権があるのは常時投票権を持つニューヨーク連銀を含む5地区連銀総裁だ。「ドットチャート」の点描はFOMCが開催される前週金曜日の終わりまでに各メンバーが本部に提出。公式には2日間あるFOMCの2日目の朝まで変更が可能だ。各地区の連銀スタッフがそれぞれの総裁を支えている。

    そもそも英中銀がこの「バーナンキプロジェクト」を始めたのは政治の圧力の影響が大きかった。英国のインフレ率は23年10月に41年ぶりとなる11.1%を記録。主要先進国では最もきついインフレに直面しベイリー総裁は議会で矢面に立たされ、インフレへの対応が遅れたことを認めた。

  • >>5962

    英中銀が3カ月ごとに行う家計調査のなかで、BOEのインフレに関する仕事に「満足している」から「不満」を差し引いた数値は23年5月からマイナス圏に沈んだ。1999年の統計開始以来でマイナスとなるのは初の事態だ。2024年に総選挙が控える英政権からの圧力は高まり、保守党議員からは中銀の独立性を見直す提案さえも飛び出していた。

    英議会は3月にBOEに関する調査を開始。こうした動きに対抗するかのようにBOEは7月に、バーナンキ氏に予測手法の見直しプロジェクトを依頼。ノーベル経済学賞も受賞する重鎮に任せ「政治的な注目をそらす」(ラボバンクのクープマン氏)狙いがあった。

    バーナンキ氏の報告書にはベイリー氏への援護射撃もあった。米国と欧州連合(EU)、カナダ、ニュージーランド、スウェーデン、ノルウェーについて中銀のインフレ予測の精度を比較し、英中銀による1年後予測の誤差は各中銀で真ん中程度だったと結論づけている。

    バーナンキ氏の提言のなかで最も強調されたように見えるのは予測に必要なITインフラの脆弱性だった。「データベースにアクセスしたりするためのソフトウエアがひどく古く、使いにくい」とデータ処理に必要なツールの老朽化を指摘した。

    特定のデータ系列を検索して抽出したり、グラフなどを作成したりといった作業も煩雑になり「こうした欠陥はスタッフをいらだたせ、予測プロセスを複雑にしている」と断言。経済予測の手法の見直し以前にインフラ投資が不可欠だと訴えている。

    人事制度への言及も目を引いた。バーナンキ氏は個別の面談を通じて「職員らは昇給や昇進には様々な部署を経験すべきだと考えている」ことを明らかにした。専門性を磨いても中銀内での「出世」につながらないと考えているわけだ。「平均職務年数は約3年と低い」として見直すことを提言している。

    新型コロナウイルスの感染拡大によるサプライチェーンはかつて無い事象。その後のロシアによるウクライナ侵攻といった異常事態が引き起こしたインフレ対応には各国中銀が手を焼き、なお難しい手綱さばきが求められている。バーナンキ氏が英中銀に示した提言や課題は日銀を含む世界の中央銀行にも共通する。