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20歳株式投資初心者に物申す会の掲示板

「わからないものには投資しない」神様バフェットが備えている「3つの視点」
9/25(土) 6:02配信

現代ビジネス

投資だけをやれば良いのか?

 最近では、学生起業の活発化やインターン制度の普及などで大学生の時からビジネスに関わることは珍しくない。しかし、ほぼ40年も前の私の大学生活は全く異なったものであった。

 もともと、「金儲けなんかくだらない」と思っていたので、卒業したら南米を放浪しようなどと考えていた。したがって就職活動などする気はなかった。

 その私の人生観が突如変わったのが、5月15日公開「『機会によって自らを変えよ』リクルート・江副氏の言葉が今の時代に輝くワケ」で述べたリクルートとの出会いである。

 それまで馬鹿にしていた金儲け=「ビジネス」の面白さに取りつかれ、慌てて就職活動を始めたのだが、その結果就職したのが上田短資である。今でも短資会社というのは余り世間に知られておらず、傘下の外為ブローカーである上田ハーローの方がはるかに有名だと思う。

 当時はディ―ラーというと、どこのメーカーですかと聞かれた時代であった。何しろ大蔵(財務)大臣が「1ドル=100円が120円になってなぜ円安なんだ!?」と発言したことが話題になったほどである。外国為替ディーラーなどという職業がこの世に存在することを知る人はごくわずかで、トヨタなどの自動車販売会社のディーラーだと思われたわけだ。

 また、入社後によく話題になったネタに「ある地方金融機関の頭取が、呼びつけた部長に朝刊を見せて『君、この新聞によると、昨日の高値は110円で安値は109円だ。安値で買って高値で売ったら小学生でも儲かるだろ! 』と叱責した」というものがある。

 読者はこれらのネタの面白さが十分わかるであろう。しかし、その頃の一般の人々はそうではなかった。だから、私が投資に携わり始めたのは当時としてはかなり早い部類と言えよう。

 しかし、今や普通の若者がFX、株式などのオンライン取引を行う時代である。そして、11歳の時に株式投資を始めたバフェットは「投資を始めるのは早い方が良い」と述べる。

 確かにそれは事実(特に複利で増やすバフェット流では、後になるほど利益が急拡大するから、早く始めた方が有利)なのだが、若いころから投資だけをやっていれば成功するというわけではないとも思う。

 投資判断を正確に行うためには、幅広い分野の知識が必要不可欠であり、その知識は「狭い意味での投資」だけを行っていても身につくものではないからだ。

商売と投資はつながっている
 バフェットが若いころ競馬に夢中であったことは有名だ。「競馬予想紙」を自ら発行したと伝えられるほどの熱の入れようであった。当時の彼にとって「自らの才覚で資産を増やす」という点で考えれば、株式投資も競馬も同じであったということだ。

 またバフェットは商才にもたけていた。祖父が経営する雑貨店でワンパック(1本当たりにすると安い)のコーラを買い、それをばら売りして稼いだ。実は丁稚奉公時代の松下幸之助も、ワンカートンの煙草を同僚にばら売りしてかなり儲けている。2人は共通する商才を持っているのかもしれない……。

 さらに、バフェットは当時流行していたピンボールマシンをゲームセンターの大人の経営者にレンタルしたり、ゴルフ場の池の底に沈んでいるロストボールを拾って売りさばいたりもしている。

 つまり、バフェットの投資の能力は商才と深く結びついているし、色々な商売を経験することによって才能がさらに磨かれ投資にも役立ったと考えられる。

 その後、当時日本などの新興国に追いあげられていた衰退繊維業の会社に大型の投資を行った。これが、現在バフェット率いるバークシャー・ハサウェイである。

 バフェットいわく「バークシャーへの投資は人生最大の失敗の1つ」であるが、この衰退産業の企業を苦労して経営し、業態転換を果たしたうえで、結果的に世界時価総額トップテンの企業にまで発展させた「商才」は絶賛に値する。それと同時に、この経験が企業経営への理解を深め「株式投資」の成功へ導いたともいえる。

良い会社がわからなければ成功できない
 3月6日公開「投資の神様・バフェットが『日本の商社』に投資した『本当の理由』がわかった…!」など、当サイトで例年解説している「バフェットからの手紙」は、「(バークシャー・ハサウェィの)経営者から投資家への手紙」である。

 この手紙では「自分が投資家であれば知りたいことを経営者の立場で答える」ことをモットーにしている。

 つまり、バフェットは経営者の立場でもものを考えるから「良い企業の本質」がわかり投資でも成功できるのだ。つまり「経営者と投資家」という複眼思考が大事なのである。

 さらに、バフェットは消費財を扱う企業や小売りなどの身近なビジネスへの投資を得意としている。そのような企業はビジネスモデルが単純でわかりやすいということもあるが、コカ・コーラ、ジレット、ウォルマート、アメックスなどの企業の商品やサービスは「消費者」として自分が良し悪しを判断できるという点が大きい。

 つまり、「経営者、投資家、消費者」の3つの視点で判断をしているということである。

 株式投資だけであっても、「複眼思考」が大切であるということだ。

投資対象は無限にあるが
 前述の競馬だけではなく、切手、銀(歴史に残る大投資家である)、農地(息子の1人が農業に携わっていた関係)、ストックオプション、ビル、債券など多くのものにバフェットは投資をしてきた。最初から株式投資に集中していたというわけではないし、現在でも株式以外への投資を拒んでいるわけではない。

 仮想通貨への投資には否定的だが、それは投資対象を絞っているというわけではなく、単純に(バフェットの)投資対象として不適格というだけのことである。もし、今はやりのモダンアートが投資対象としてふさわしいと判断すれば、躊躇なく資金を投じるであろう。

 ただし、バフェットの基本方針は「わからないものには投資しない」である。例えばITバブル期のドットコム企業への投資姿勢を見ればはっきりとわかる。

 だから、前記のバフェットが投資したものについてバフェットは「わかっていた」ということになる。

 実際、バフェットは91歳(1930年8月30日 生まれ)になった現在でも、読書や経営者との対話などの中での知識の吸収に余念がない。

 要するに「知らないものには投資できないから、たくさん知っている方が有利」ということだ。また、体験していないことは理解しにくいから「多くの体験をした方が有利」ともいえる。

 投資をスタートするまでに時間がかかったとしても、それまでの体験が無駄になるわけではない。幅広く社会で体験したことと座学で勉強したものが融合したときに大きな成果を出せるという一般論は、投資にも通用するのだ。

 バフェットが株価をチェックするのはせいぜい1日に1回だ。スクリーンをじっと眺める時間があったら、資料や読書で勉強したり色々な「体験」を積み重ねたりした方が有意義だということである。

森を知らなければどの木に投資すべきか分からない
 バフェットが、無数にある投資対象の中から「現物株式への投資」を選び、その分野に注力しているのは、色々な投資を経験した上で現物株への投資がもっとも効率的だと判断しているからである。

 この点については、我々自身が勉強して判断しなくても世界有数の富豪である「投資の神様」の判断を尊重してもよいのではないかと思う。

 そしてその後に2つの分かれ道がある。「本格的に勉強する気がないのであれば(手数料の安い)インデックスファンドに投資すべきだ」というバフェットの言葉は最近知られるようになってきたが、この選択が1つ目の道だ。

 もう1つは「本格的」に勉強するという道だが、これは「バフェットと同じように」ということであるから、生半可ではない。ゴルフにはハンディキャップがあるが、投資には存在しない。つまり、タイガー・ウッズとノーハンデで勝負するようなものだ。

 しかし、それだけの覚悟がある投資家にはバフェットの戦略が参考になる。彼はまず有望な業界(産業)はどこなのかを考える。いくらバフェットでもすべての企業を詳細に研究することはできないからターゲットを絞り込むのだ。実際、会社四季報2021年第3集によれば、日本の上場企業だけでも3822社ある。

 もちろん、この業界を絞り込む過程で、米国産業全体の動向に関する基礎知識が必要であることは言うまでもない。

 そして、その業界でも傑出していると思われる企業に狙いを定めて徹底的に研究する。つまり、バフェット流を成功させるには「森を見て業界を選ぶ能力」と「木である個別企業の研究を徹底的に行う能力」の両方が必要不可欠なのである。

  • >>9

    次のリーマンショックがいつ来るのかも重要だ
     バフェットの師匠であるベンジャミン・グレアムは「ミスター・マーケット」という言葉を使って、市場を擬人化し、振り回されないことの大切さを説いた。バフェットも、市場そのもの値動きで利益を得る気はないが、リーマンショックのような「嵐」に備える必要は強調する。

     実際、ITバブル崩壊のような急落時のバフェットの現金準備は潤沢で、毎回チャンスをつかんでいる。

     逆に言えば、投資を成功させるためにはあらゆるリスクを想定しないといけないということだ。

    忍耐と一瞬の判断
     バフェットは投資の利益は「忍耐に対する報酬」だと述べる。実際、これだけ苦労して「準備」しても、投資のチャンスは一瞬である。

     「次のチャンスがやってこなかったことはない」と言うバフェットの言葉があるが、この言葉自体がチャンスを逃した時のバフェットの悔しさを表していると思う。

     バフェット流は、たとえて言えば釣りのようなものかもしれない。何日も釣り糸を垂れていてもピクリとも動かないと思ったら、突然大物が食いついて激しい「バトル」になる。そしてその一瞬で勝負が決まるのだが、そのために忍耐強く待ち続けるのだ。

    大原 浩(国際投資アナリスト)