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20歳株式投資初心者に物申す会の掲示板

世界景気に先行するOECD景気先行指数(加盟国+主要新興国)は最新8月に100.95と16カ月連続で上昇し、2011年5月以来の高水準を回復してきた。過去の循環回復周期は20カ月前後であるほか、約10年ぶりの上昇過熱とあって、改めて世界景気のピーク到達と回復終盤入りが意識される。

ただし、過去には米FRBの利上げ継続など引き締め転換まで指数は高止まりが維持された例があるほか、今回は先行き世界的なコロナ感染の再減少と供給制約・品不足の修復改善、物価下落などが下支え要因となる可能性もある。

世界経済はデルタ変異株などによるコロナ感染再増加もあり、景気の減速が懸念され始めた。中国では不動産の引き締めやデジタル企業などへの規制強化、米国ではコロナ対策の財政出動息切れとFRBによる緩和縮小懸念などもあって、景気V字回復のペース失速が本格警戒されている。
その中で世界景気に先行するOECD景気先行指数は、加盟国+主要新興国ベースで最新8月に100.95と前月の100.86から改善し、16カ月連続での上昇となった。過去最低水準となった昨年4月の88.98をボトムにV字回復が続き、2011年5月以来、約10年ぶりの高水準を回復している。

一方で世界的な在庫・設備投資の循環や消費の買い替えサイクルなどに影響される景気循環でいえば、OECD景気先行指数の加盟国総計では「前月比プラス基調」の循環回復周期が最近は20カ月前後となってきた。具体的には2016年2月の底入れ(=起点のゼロ月)から翌月以降の回復周期が21カ月、2012年9月の底入れ後が21カ月、2009年1月の底入れ後が25カ月、2005年5月の底入れ後が25カ月、1998年10月の底入れ後が17カ月といった周期パターンが繰り返されている。

その点、現在は足元の9月で「17カ月目」となってきた。日柄的には循環回復の後半入りが意識されつつある。トレンドを示す同指数の「前年同月比」でも8月は+2.8%となり(7月は+3.8%)、4月の+12.8%をピークにプラス幅が縮小となってきた。昨年11月に30カ月ぶりの前年比プラス転換となったあとは、V字の急回復が続いてきたが、改善モメンタムの勢いが鈍化しつつある。

日経平均株価は世界景気に敏感な銘柄が多く含まれており、OECD景気先行指数とは高確率の連動実績が見られてきた。実際に昨年11月から今年2月にかけては、先行指数のV字急回復と連動した急上昇を辿っている。その分だけ、先行き先行指数の循環回復が終盤入りに向かうとなれば、日経平均は現状の「新政権期待」と「10−11月の衆院総選挙に向けた対策期待」を消化したあとには、戻り売り圧力の漸増と反落リスクが意識されてくる。

米国での景気減速懸念は、FRBが量的緩和縮小という「コロナ危機対応の正常化」に着手しても、その後の「利上げと金融引き締め」は大幅遅延となる可能性がある。
過去のOECD景気先行指数と日経平均の関係では、FRBが利上げを複数回継続させ、引き締め局面へと移行しない限り、世界景気は天井ピークに到達したあとも、高原状態の高止まりが維持されてきた。同時進行で日経平均も下落圧力が抑制され、高値圏での高原相場が持続延命されている。

例えば前回のOECD指数の循環回復は、2017年11月の100.91で天井ピークをつけた。FRBはその約1年前である2016年12月からからFF金利0.75%への利上げに着手していたが、日経平均が天井到達で下落転換となったのは、OECDピークから約1年後、FRB利上げ開始から約2年後となる2018年10月以降となっている。その2018年10月時点で米FF金利は2.25%までの利上げが進められており、まさに「中立金利に接近・上振れとなる引き締め強化」が一因となる形での日経平均の下落転換となっている。

その前にOECD指数の循環回復は、2004年3月の100.60で天井ピークという局面があった。当時はその3カ月後からFRBの利上げが始まったが、日経平均は日柄調整による横這い化や価格調整による短期下落を経ながらも、中長期トレンドでは株高基調が持続。OECD指数のピークから約3年後となる2007年2月で、株高の天井ピークをつけている。同月にかけて米FF政策金利は5.25%にまで引き上げられるという、引き締めが強化されていた。

その点、今回のFRBはコロナ危機「有事対応」の見直しはあっても、利上げと中立金利以上の引き締めは大幅に遅延するという見方が強い。少なくとも2022−2023年の利上げ開始までは、OECD景気先行指数の高止まりと、日経平均の高原相場や高値模索が維持される可能性がある。

しかも現在の世界景気減速懸念については、供給制約や半導体などの品不足、感染恐怖による労働者の仕事敬遠など、供給不足が影響している。それが米国を始めとして短期的なインフレの急上昇を招き、景気に悪材料をもたらしてきた。

一方で今後については、世界的にコロナ感染の再減少とコロナ共存への対応進捗、経済活動再開の一段の拡大といった余地が残されている。先行きタイムラグを経ながらも、供給制約と品不足の修復改善や、物価下落へと寄与。世界景気の急減速を抑制し、昨春以降のV字急回復から健全な巡航速度化への軟着陸を促す余地も残されている。